サイドストーリー

エース(1st Story)


「ほう…あんたか。負け知らずでここまで来た新人は。」



負け知らず、か…。

あんな連中に負けるほうが難しい。



「………。」

「どうした?怖気付いて何も言えなくなったか?」



…黙れ。貴様のような凡人以下の者と話をするほど暇じゃない。



「おい、何か言えよ。」

「貴様にくれてやる言葉などない。」

「!!な、何だと…!てめえ…俺が誰だとわかっているのか!?」

「貴様の名前など興味はない。」

「…ほ〜う…!このランク1位の俺様の名を知らないで来たとはな…。

 よっぽど命を粗末にするのが好きなようだ…!」

「早く始めろ!話をする為にここへ来たわけではない!」

「…くっ!てめえ…この俺にお願いしますだとか

 何か言え!お前の方がランクは下なんだからよ…!」

「消えろ。」

「…上等じゃねえかクソ野郎!!望み通りクズ鉄にしてやるよ!!」



ドーム状の密室で繰り広げられる「アトラクション」

それはこの地下世界の住人の楽しみの一つだった。

私はその「アトラクション」の「プレイヤー」だ。

レイヴン同士の、ロボット同士の激しい撃ち合い。

私はそんな世界に「勝ち」を求めて入った。

いざやってみると、まあ何とも骨のない連中ばっかりだ。

戦う者戦う者、クズばかり。

何の苦労もせずに、もうトップの奴と対戦というわけだ。

「BB」…フン、どうせ使い物にならないただのゴミクズなのだろう?



BBは開始直後にオーバードブーストでこちらに突進してきた。

ある程度近づいてきたと同時に、BBは右手のバズーカを発射させた。

ドンという音とともに発射される、3つの大きな実弾。

…当たる方が難しい。

私は左へブースト移動してかわし、空を飛んで

左肩のグレネードを止まっているBBめがけて発射させた。

BBはそれを真正面からくらってしまい、右腕が吹っ飛ぶ。



「ぐっ…!」



右腕は回りながら宙を舞い、天上に当たって爆破した。



「まだまだ、これからだ…!」



BBは左肩のグレネードを前にやり、私を追いかけるように

同じく空を飛んできた。

次第に高度が同じになり、距離も縮まる。

そしてBBは私の目の前に来ると、そのグレネードが火を吹いた。

私は右へよけた。

BBの攻撃は止まらない。

立て続けにグレネードを撃ってくるBB。

無駄だということがわからないらしい。

何度撃っても、私には当たらない。

当てようという考え方自体が、間違っている。

私は薄鈍いBBの後ろへ回り込み、その背中めがけてチェインガンを乱射した。



タタタタタタタタタタタタタタタタタ……!!



「うっ…!ぐああ!」



BBのACの後ろはみるみるその姿をへこませて、

火を吹き、爆発し、凄まじい音を立てて地面へ落ちた。



「くっ!ブースターが機能停止した!

 これじゃあOBも使えんな…!」



私はそんな「クズ」を上から見下ろした。

こらえていた笑いが、漏れた。



「ックックックック…ふふふはははははは…!」



私は装備をグレネードにすると、上から「クズ」にぶち込んだ。

「クズ」はもはや身動きの取れない的にすぎない。

爆音がするたび、私は笑った。



「はははははははははははは…!!」



「クズ」の部品が取れていく。

腕、頭、右肩武器、左肩武器、エクステンション…。

見るも無惨な姿になっても、私は砲撃を止めなかった。



「ははははははははは…っははははははははは!!!!」



目の前に倒れていたのは、体と脚だけ残った

「クズ」だった。



「これでお前は1位だ…。」



…何を言っている?

…これで?

私はACの脚で「クズ」を踏みつけ、言った。



「戦う前から勝敗は決まってたのだよ。」



この言葉に「クズ」は答えた。



「これで、私の積み上げてきた努力が全てパアだ…。」

「…何?」



私は踏みつける力をいっそう強くして言った。

「何が努力だと!?この弱い力が?このゴミのような力が!?

 お前ははなから弱かったんだよ!クズだったんだよ!!」



それきり、BBは何も言わなかった。

しばらく沈黙が続いた。

私は踏みつけていた足を戻し、アリーナを後にしようと入口へ向かった。



「ふははははははははは……ははははは!!!!」



ドームに、狂気じみた笑い声が響いた。
作者:アーヴァニックさん