サイドストーリー

サイレントライン:ナインボール隊の恐怖
空中要塞は燃えさかる炎と機体の残骸
がナインボール隊を照らし出し、
その光景はさながら地獄のようだった・・・

「・・わからねぇ、何が一体どうなってやがるんだ?」

半壊したハンクの機体「エリアルガンナー」は
すでに機能の7割を失っており、歩行するのが
やっとという状態であった。
そのほかの機体も同じような状態であり、
コアの機体に関しては二門あるリニアキャノンの
片方が使用不可能になっていた・・・

「ちっ!!コレで墜ちやがれ!!」

キュイィィィン・・・バゴォォォン!!

「!!・・・回避行動終了・・
 反撃開始・・・」

ドゴオォォン!!

「うわあぁぁ!!」

「コア!!よくも!!」

バシュゥゥン!!・・ドオォォン!!

「・・・損傷率35%・・・攻撃開始・・」

バガガガガガッ!!

「くっ!!きゃあ!!」

チェインガンの弾丸がヒットし、機体の装甲が
はがれ落ちバランスを失う!!

「メイアーー!!」

「ムーンライトォ・オーバーリミットォ!!」

キュウワアァァン・・・バシュウゥゥゥン!!

ふいに、スキが出来た相手にオーバーリミットをたたき込み、
それを受けたナインボールは跡形もなくなる

「よし!!これで残りは5機か・・・」

「シャウシュッツ、大丈夫か!!」

「ああ、そっちこそ無事かコア?」

「オレは良いが、メイアが・・・」

「・・・大丈夫、システムが一部エラーを
 起こしただけだから。」

「そうか、ならいいんだけどな。」

「感傷に浸ってる場合はないぞ!!」

「ああ、そうだな斬鬼。」

「・・・来たぞ!!」

シャウシュッツ達に必死の抵抗のおかげか、
当初7体いたナインボール部隊も3機と減ったが
それでも抵抗をゆるめないナインボール部隊に
徐々に押され始めていた・・・

「やばい!!・・・うわぁぁ!!」

ナインボールの集中砲火を受けたハンクの機体が
腕や足がもぎ取られたように吹き飛び、横転する

「ハンク!!・・ちぃ!!」

バガガガガガッ!!

ソリッドランサーのマシンガンの直撃を受けてもなお、
突撃をやめない・・・

「ブレードセット・・・攻撃開始」

ガシュン!!・・・ズバワァン

「くっ!!格闘戦で勝てると思うな!!」

ガシュン!!ズバワァァァァン!!

ムーンライトの光がナインボールの胴体を
真っ二つに切り裂く!!

「これでやっと4体か・・・」

「くそ!!ライフルの弾が切れた!!」

「斬鬼、戦闘は可能か?」

「微妙なところだ。」

「ナッツ、そっちはどうだ?」

「レーザーライフルもあと10発だ。」

「まずいな、ここまで追いつめられるとは・・」

「企業のMT部隊やレイブンチームもほぼ全滅状態だ。」

「最強のACって言うのもあながち嘘じゃないな・・・」

「問題はこれからどうするかだ。」

「後退するか?」

「だが、その間無防備になる。」

「どっちに転んでも良い状況じゃないな。」

その頃、空中要塞に近づく一つの輸送機があった・・・

「・・・派手にやっているな。」

「大丈夫ですか?まだ病み上がりでは?」

「これくらいは問題にはならんさ。
 それに、かつては最強の名を欲しいままにしていた
 やつがこれくらいでばてるわけにはいかんからな。」

「分かりました。・・ルートはこのままで行きますよ。」

「ああ、そうしてくれ。」

ACに乗ったレイブンがそう言うと、輸送機は
速度を上げ、要塞に突入する・・・

だが、その頃の戦況は最悪の一言であった。
味方は倒れ、弾薬は尽き、さらに敵は
健在という状態であった。

「くそ!!このままじゃあやられるだけだぞ!!」

「本気でやばいな。」

「くそ!!墜ちろ!!」

キュイィィィン・・バゴオォォン!!

片方のリニアキャノンがナインボール達を包む!!

「やったか!!」

だがそこに現れたのは小破した程度の
機体があっただけであった・・・

「・・・万事休すか・・」

その時、一機の輸送機が上空に現れる!!

「・・・情けないな、その程度の敵に苦戦するとは・・・」

投下されたACがナインボール隊の一機にターゲットを絞り、
チェインガンを乱射する!!
いきなりの攻撃に回避する間もなく、
装甲が破壊されていく・・

「反撃・・開始・・・」

上空にいたはずのACにパルスライフルの照準を
あわせるも、ナインボールがトリガーを引くことは無かった

「でやあぁぁぁ!!これでとどめぇ!!」

ガシッ!!・・ズゴオォォォォン!!

ふいに目の前に現れたACにパイルバンカーを
たたき込まれ、コアに大穴が空く・・・

「おい、あの機体って・・」

「ああ、スナイパーライフルにグレネード、
 そして硝煙がでているチェインガン・・」

「エース・・・」

「それに見慣れないACもいるな。」

「しばらく見ないうちに不抜けたな、この病み上がりの
 レイブンに出し抜かれるとは・・・
 よくやったな、サイラス・・」

「ふう、結構きわどかったですけど。」

「済まないな、エース・・」

「その声、シャウシュッツか?」

「ああ、そっちは機体は変えてないみたいだがな。」

「あの程度の敵、このアルカディアで十分だ。」

「・・・まだ、奴らやる気満々だぜ!!」

「そのようだな、コア!!」

「・・・くそ!!やっぱりこれ以上は無理か・・」

「たしか、ハンクとか言ったな?
 俺が乗ってきた輸送機がある、そいつで撤退しろ。」

「だが、その間無防備に・・」

「オレが援護する。・・・頼んだぞ、エース!!」

「まかせろ、シャウシュッツ・・」

ブースタを使い、輸送機に接近するハンクの機体を敵が
見逃すはずがなかったが、エースをはじめとする
レイブンチームの活躍によって無事に収容された・・

「すまないな、シャウシュッツ・・・」

「いや、お前も良くやったよ。あとはゆっくり休め・・」

「ああ、そうさせてくれ・・」

収容が確認するとすぐさま、ブレードを構えて
ナインボールに突っ込む!!

「もらったぁ!!」

ガシュン!!・・・・ズガァァァァン!!

機体の半分をブレードでもって行かれたナインボールに
味方が集中砲火をかける!!

「戦闘・・・続行・・・続・・・」

ボガアァァン!!

「よし!!これで残り二機だ!!」

エースの出現により徐々にレイブンチームに形勢が
傾いてきた頃、一機のACがエレベータを上がってきていた・・

「・・・なかなかやるようだな、
 これでこそ、私の出番が来るという物でもあるが・・・」

「・・カーライル、聞こえているか?」

「総帥、何でありましょうか?」

「・・・先の戦闘で我々の作戦の大半は達成した。
 あとは脱出のためにいくらか時間を稼ぐだけで良い。」

「了解しました、総帥・・・」

パニッシャーに乗ったカーライルはそう言うと通信を切り、
機体のシステムを通常モードから戦闘モードに変更させた・・・

ガッシャアァァァン!!

「よし!!これでラストだ!!」

一機のナインボールを撃破すると残った最後の一機に
集中砲火を浴びせかける!!

「・・・なんとかこれでどうにかなったな・・・」

「ああ、手強い相手だった・・」

「シャウシュッツ、これからどうする?
 進軍するにせよ、消耗しすぎているぞ。」

「それなんだよな・・・撤退しかないのか・・」

「確かに、オレだけが一機増えても戦況に変わりはないな。」

「そうだな、エース・・・」

「輸送機はどうだ?」

「何とか無事だが、とにかく機体の損害が問題だ。」

「撤退だな。」

「それしかないわね、コア。」

「そう言えばメイアの機体はどうだ?」

「う〜ん、やっぱり火器管制システムがおかしいわね。
 これじゃあまともな銃撃戦は無理よ。」

「よし、損害が激しいヤツから順に乗るしかないな。」

「ああ、そうしよう。」

その時、奥の大型シャッターが開きそこから一条の
光が飛んでくる!!

「うわあぁぁ!!」

「フライレ!!大丈夫か!!」

「ああ、左腕が吹っ飛んだけだ!!」

「くそ!!まだ動けるのかナインボールは!!」

「・・・前にも言ったはずだ、退避などさせん!!とな・・」

「・・・カーライルか!!」

「チキショウ、もう援軍が来たのかよ!!」

「くっ、どうしますエースさん?」

「・・・オレが囮になる。その隙に逃げろ!!」

「シャウシュッツ!!無茶を言うな!!」

「・・・そうだな、この場でまだまともに動くのは
 俺とシャウシュッツ、サイラスぐらいだな。」

「エースまで!!」

「さっさといけ、この場にいても邪魔なだけだ。」

「・・・分かったよ、だが死ぬなよ!!」

「誰に向かって聞いているんだ?」

「こっちだってそんな気はない。」

「・・・行こう、コア。」

「ああ、そうだな・・・」

「・・・ほう、私の相手はお前達3人だけか・・」

「・・・不服そうだな、カーライル?」

「ふん、だがこちらも遠慮はしないぞ。」

「そうされては困る・・来い!!」

シャウシュッツの一言を合図に動き出す
4機のAC・・・
シャウシュッツやエースも一流の技術と
技を持っているが、カーライルはその二つを
圧倒するほどの性能差を見せつけていた・・

「くっ!!幹部クラスというのもあながち
 伊達ではないな!!」

「ちっ!!そう簡単に!!」

ダダダダダダッ!!

シャウシュッツも負けじと応戦するも、
相手の圧倒的なスピードに虚しく回避される

「ほう、さすがにやるがしょせんその程度!!」

バシューン!!

「バズーカか!!ええぃ!!」

カーライルが放ったバズーカがアルカディアの足を
直撃する!!

「くそ!!やらせるか!!」

バガガガガガッ!!

「エース!!無事か!!」

「どうした!!他人を気づかう余裕などあるのか!?」

ガガガガガガガッ!!

「くっ!!・・・強い・・」

「ここまで来て!!」

一体のACに追いつめられ、なすがままの3人。
それは突如起きた・・・

「・・・なんだあの数の航空機は!!」

「・・・脱出したか・・・」

「・・・ご苦労だった、カーライル。
 あとはお前も脱出しろ。」

「・・と言うことは、カーライルは
 時間稼ぎの囮か!!」

「・・・残念ですが総帥、その命令を聞くわけには
 参りません。」

「カーライル、ここで無駄死にをすることは無い。」

「いえ、私はここに死に場所を見いだしました。
 ・・・そして、シャウシュッツと決着を!!」

「・・・τ(タウ)ポイントで待っている。
 生きていたらここで合流だ。」

「ありがとうございます、総帥・・・」

「くそ!!」

「・・・決着を付けるぞ、シャウシュッツ!!」

再び、バーニアをふかし機動戦法を仕掛ける
カーライル・・・
作戦の失敗と相手の策略にはまった二人に
この攻撃はそれ以上に大きな物があった・・

「・・・このままやられるだけなのか?」

「・・・つけあがるなぁ!!」

チャキ・・・バガアァァン!!バガアァァン!!

狙いをすまし、グレネードを2連射する!!

「そう簡単にはあたらんよ!!」

ガガガガガガガッ!!・・・ガシュン!!

「ちっ!!・・・接近してくるだと!?」

「・・・そうくるか、カーライル!!」

「とどめだぁ!!」

ガシュン!!・・・キュワアァァァン・・・

突撃してくるカーライルに合わせてシャウシュッツは
左腕に搭載されているブレードにエネルギーを
チャージさせ始めた・・・

「はっ!!いまさら遅いわ!!」

「・・160・・190・・220・・」

「・・・コッチに俺がいることを忘れるな!!」

ダアァーン!!ガウゥーン!!

「なっ!!スナイパーライフルか!!」

エースの狙撃により、バランスを大きく崩すパニッシャー。
そのため、狙いをずらし再度狙い直すこととなる・・・

「コッチも忘れるな!!」

バゴオォォン!!

サイラスが放ったパイルバンカーがパニッシャーの
右肩に直撃する!!

「ちっ!!邪魔をするなぁ!!」

バシューン!!ガガガガガガガッ!!

「うわ!!」

「ちっ!!シャウシュッツ!!」

「チャージ完了!!・・・戦闘コード
 コード:ソリッドランサー起動!!」

「くそ!!コンビネーションか!!」

「ここで終わらせる!!・・・いけえぇぇぇ!!」

「くそ!!間に合わない!!」

ガガガガガガガッ!!

「ちっ!!照準が!!」

キュワァァン・・・ガシュウゥゥゥン!!

強烈なエネルギーがぶつかり、強い閃光が生じる!!

「・・・やったか?」

視界が戻ったとき、そこには黒煙をあげる
パニッシャーがあった・・・

「・・・良い戦いだった・・シャウシュッツ・・」

「・・・これで終わりだな、カーライル・・」

「・・あの時、お前がダークマターを裏切った
 時から俺はお前に復讐するために今日まで生きてきた・・」

「・・カーライル・・」

「そして、このざまだ・・・やっぱり隊長にはかなわないか・・
 思えば、俺がダークマターに入隊してからあんたには
 1度たりとも勝ったことがなかったな・・・
 そう、あの時もこんな風にやられたっけ・・・

 ・・・なんだ、目が見えないな・・・
 そうか、やられたんだったな・・・
 ・・・寒いな・・・隊長・・・
 また、あのコーヒーが飲みたいですよ・・・
 楽しかったなぁ、みんなで寒いときに隊長が
 入れてくれたコーヒーを飲みながら騒ぎあったり
 ・・・あれ、なんだろう・・涙か・・・
 久しぶりだな、いつだっけ最後に流したのは・・・」

「・・・シャウシュッツ、そろそろ俺達も帰還しよう。」

「ああ、そうだなエース・・・」

「いつまで続くんでしょうかね、この戦い・・・」

すでに空は夕暮れになっており、一つの燃え尽きたACが
その太陽で寂しく、照らされていた・・・

   サイレントライン:ナインボール隊の恐怖 完
作者:ハンクさん