サイドストーリー

エース


広いドームの中、2機の機械が向き合いたたずんでいる。

『…君がここまで早く勝ち上がってくるとは、正直驚いた。』

『……』

『君も知っての通りレイブンは飛びたてる者とそうでない者がいる。
無事飛び立てた者も、初めのうちは負けるに負け自分の無力さを痛感するものだ。
しかし君は違った。
信じられないほどのスピードで勝ち続けた上、敗北という言葉を知らない。
私のライバルでもあったBBさえ、いとも簡単に倒してしまった。
君の存在は、私に恐怖という感情を覚えさせた。
しかしだからといって負けるわけにはいかない。』

1機の機械の眼に光が灯った。
それに応じる様にもう一機の眼も光る。

『1位の面子にかけて、君を止める!!』

2機は同時に駆け出した。
シュバーー
一機が上空へと舞い上がる。

『喰らえ!!』

ズガーン!!
肩から火の玉が放たれる。しかしそれは相手をかする事も無かった。

『おりゃぁぁぁぁぁ!!!』

続けざまに放たれる火の玉、当たらない。
すると今度は無数の弾を雨のように降らした。
ババババババババババババ!!

『いかに操縦が上手くても、こればかりは避けきれまい!!』

確かに当たった。当たったが156発中12発…。

『ば…馬鹿な…!。そんなことが…そんなことがあってたまるかぁぁぁ!!!』

上空から一気に急降下する。2機の距離が一瞬にして縮んだ。

『…なに?』

地上を駆けていた一機が、まるで時が止まったかのように突然静止した。

『オーバーヒートでもしたのか?悪いがこれで決めさせてもらう!!』

一瞬の出来事だった。
上空から大振りに剣を振り下ろし、確実に斬ったはずだった。
だが静止していたはずの一機の姿が無い。

『!?どこにいった!?』

その瞬間脚が飛んだ。バランスを崩した機体はその場に倒れた。
ブゥン
倒れた者に剣が突きつけられた。

『…私の負けだ』

相手の戦意損失を確認した一機は、剣をゆっくり下ろした。そして動けなくなった相手に手を差し伸べた。

『…すまないな』

その手をしっかりと掴み、2機は共にドームを後にした。

『一つ聞いていいか…?』

『……』

『君は奴と契約したのか?』

『……』

『そうか…君の実力は本物なんだな…』

作者:エマイルさん