サイドストーリー

哀しみの序曲:中編
「彼」がいつまでも起きてこないので部屋まで執事は呼びに行った。
しかし「彼」は部屋に居なかった。
おかしく思った執事は豪華に飾り付けられたテーブルの上に一枚のメモ用紙があることに気付いた。

――しばらくの間 留守にします。すぐに用を済ませるので 心配しないでください。僕は――

その後からは「彼」が泣きながら書いたのだろうか、にじんでいて執事には読めなかった。
大慌てでいると思いきや 執事はいたって穏やかだった。
「坊っちゃん あなたはお強くなられた…」
そう 執事には「彼」が あの時何を言おうとしていたのかうすうす気付いていたのだった。
「元気でまた お屋敷の前で走り回られることを見られるよう爺は祈っておりますぞ」
執事もまた 「彼」とは違う決心をした。
「自分の息子に思える「彼」を笑顔で迎える」
というものであった。


「場所は えっと…アヴァロンヒル? 聞いたこと無いなぁ…」
貯金を使い果たしてまで武装を充実させたAC「トルフ」に乗りながら「彼」はぼやいた。
エンブレムには青い大きな字で「ファナレ」と書いてあった。
「とりあえず AC乗りを探そうか…」
「彼」が歩いている町では「AC三原則」というものがあった。

1、ACによる歩行可能
2、ACの武装を許可
3、ACでの戦闘を禁づる
            というものである。
「彼」はとりあえずACから降り小さなカフェに入った。
こじんまりとしているがそれでいて存在感溢れるような店であった。
「彼」はカウンターに着くと ブレンドコーヒーを一杯注文した。
それぐらいの金は残っているが少々心苦しい。
落ち着いてコーヒーを飲んでいると後ろから
「ヤッホー マスター、相変わらず小さい店だねぇ!!」
と、元気の良い…というか良すぎるような女性の大声が響いた。
女性は アイスコーヒーを注文して なぜか「彼」の隣の席に着いた。
「ねえ あのACってボウヤの?」
不意に耳元で静かに囁かれ「彼」は思わず距離を開けた。
「人が質問してるのに その態度は無いでしょ」
「いきなり びっくりするじゃないか!!!!!!!」
入店してきた時の女性の声の何倍も大きな声で叫んだ。
「なるべく静かにしてくれよ」
マスターが言ったので 「彼」は
「すいません」
と素直に謝った。

――何で僕がこんな女のせいで誤らなきゃいけないんだ…。

「それに僕はもう15歳だぞ!? ボウヤってのも失礼じゃないか!!」
「ゴメンゴメン 歳のわりには幼く見えたからねぇ」
何だコイツ と「彼」は思った。
「ああ そうだよ あれは僕のだ。 で?何の用?それに君、誰?」
「自己紹介するのは男からってルールでしょ」

――どんなルールだ!!

そう思いながらも「彼」は自己紹介をした。
「僕の名前はカ……じゃなかった『ファナレ』AC乗りのファナレだよ で君は?」
「私の名前は『メグ』 同じAC乗りのメグリムよ」
「で そのメグさんが僕に何の用だい?」
「彼」はすかさず質問した。
「ぶっちゃけて言うけど 私とコンビ組まない!?」

――ハァッ!? この女とコンビだって!? 何の因果があってそうしなきゃいけないんだ!!

「……」
「おんや〜〜? ダンマリかい? ボ.ウ.ヤ」
今までの生活では縁の無いような声を 耳元で聞き「彼」はしばらく石化したように固まった
5秒ほどしてから正気を取り戻し
「僕は 君とは」
と、断わろうと言葉を発しようとしたその時に
店が、いや そのあたり一帯が揺れた。同時にガラスの割れる音、
コンクリートの砕ける音とともに ACのレーザーブレードを発する音が近くで聞こえた。
「そんなことは 後!! ACに乗り込むよ!!」
メグリムに言われ 「彼」は彼女と自分のコーヒー代金を払い足早に駐機ガレージへと駆けた。


後編へ


裏話:はい 中編で一区切りついたんで裏話です。
ファナレことカトルが主人公の話を作ってみました。
かなり後付け設定を自分で考えてしまいました。あとメグさん久々の登場ですが…
ただのHなお姉さんになってしまいました。
皆さんスイマセン批判はメールに送ってくれて結構ですので 評価メールください。
作者:ジェットさん