サイドストーリー

困った虫がわいて出た
「受けるんじゃなかったよ、こんな依頼。喜んだ弾みに受けちまったよ・・・。」
ゼンは下水道の中で自分のACリーサルに乗りながらそんなことをぶつくさとつぶやいていた。
喜んだ弾みというのはあのとき死んだと思われていたフラジャイルが生きていたことがあとでわかったからだ。
まあ、とうぶんレイブンの仕事は出来ないだろうが、ちゃんと安静にしていればまた仕事に復帰できるそうだ。
「自分から受けたくせにいまさらそんなこと言わないでくださいよ。
ま、下水道調査はさすがにこたえるでしょうけど。フフッ。」
「はいはい・・・。しっかしつまんねえ所だなー、ここ。調査っつうだけのことはあるぜまったくよー。」
ゼンはACを汚したくないのでずっとはじっこばかり歩いていた。調査なのでたいていは何も出てこない。
それが普通だ。だが、ゼンはそうは思わなかった。こういうことだと絶対いつも面倒なことになるからだ。
しかしレーダーには何も映らない。と、
「わ!わ!わ!わあ!わあ!わ!わ!わあ!わー!」
いきなりレーザーっぽいのが多数飛んできたのでブースタで避けた。
「な、なんだ?!敵!?」
「はい。あれは大きなクモです。」
「いやいやいやいや、未確認生物っつうでしょふつー。」
「いいえクモです!似てるでしょクモに!」
「クモっつったっていくら足が8本でも胸と腹どころか頭と胸と腹の全部がくっ付いてるだろ!
オペレーターなのに無責任な事言わない!」
ブレードで1匹倒し、拡散ロケットでもう1匹も倒した。
ACのパーツを色々と変えたため、今度は自律小型兵器が拡散ロケットになったのだった。
「なんじゃこりゃー?!」
「クモ!」
「無責任だろ、勝手に敵がなんだか決め付けんのは。資料とか調べろよ。」
なんてわけのわからない会話をしながら敵を4匹くらい倒した。
「奥のほうに水量の制御スイッチがあるはずです。それで敵の侵入が止められます!」
「ふーん。おーあったあった。」
水量の制御スイッチを見つけたが、4匹また寄って来たので、2匹を拡散ロケットで蹴散らしてあとの2匹は無視した。
制御スイッチを押すと汚水の水量を調整するために汚水の入ってくるハッチが閉まり、『虫』も入ってこなくなった。と、
「うわぁぁぁ、くっつくなぁぁぁぁぁぁぁ!」
いきなり虫がひっついてきたのでブレードで刺した。
「そんなに恐がらなくても・・・フフフッ。」
「ACに・・・おれのリーサルに・・・下水が・・・。」
「なんだ、恐がったんじゃないんだ・・・。」
「くっそー!」
やけになったせいかそこらへんにいる虫を全部拡散ロケットで倒していった。
「レ、レイブン落ち着いて!」
「落ち着いてられっかバカヤロウ!」
「ば・・・ばかですってぇ!」
「あ、機関部だ。」
「ちょっと!話を変えないでくださいよ!」
「ん、これか?」
近くにあったスイッチを押すとアナウンスが流れた。
『機関部への搬入ゲートのロックを解除します。』
すると中には巨大なクモのような『虫』がいた。
「わー、デカ。」
「こ、これは・・・。」
「何いきなり真剣になってるのさ、レイン。」
「い、いいでしょ別に!」
と、いきなりプラズマ砲っぽいのを連発してきた。
「のお!」
一発当たりそうになったがかわした。
「あっ!」
「どうしたの?!」
「だ!足が下水に・・・。・・・貴様・・・。」
「レ、レイブン・・・?」
さすがにゼンでもキレた。拡散ロケットを連射しながらブレードで斬った。
だが、1回斬るとプラズマ砲みたいなもので吹き飛ばされた。
「あ!コアにもはねた!てめぇふざけんなー!」
「ちょっと!子供がそんな言葉使っちゃダメ!」
「うるせーバカ!」
「バ、バカですって!」
「ああそうだよ!レイン!あ!拡散ロケットが弾切れ・・・くそっ、いままで結構使ってたからな・・・。」
拡散ロケットから武器を切り替え、マシンガンを撃った。いままでの攻撃が効いていたのか、30発ほどで倒せた。
敵は数本の足をだらりとたらし、他の足はいまだにつめが天井に引っかかっていた。
「ふう。」
「倒せましたね。でも、あれは一体・・・?」
「さあな、あとで調べといてくれるか?」
「いいですけどせめて私のことは年上としてみてくださいよ。」
「バカなのに?」
「バ、バカですってぇ!」
「はいはい、わかってますよ。」
「うう・・・。」
「んじゃあおれ帰るから。」
「はい、わかりました。」
ゼンはリーサルを出口まで戦闘モードもままにして、ブースタでうまく汚水を避けていった。
ガレージについてからリーサルをきれいに洗った。においも丹念に消して。そしてこう叫ぶ。
「もう二度と下水道になんか入るもんか!」
作者:ゼンさん