サイドストーリー

封鎖の理由
ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ・・・
AM7:20 聞き慣れた電子音。
もうろうとする意識の中、手を伸ばし音を止めベッドから出る。
朝起きたらパソコンの電源を入れ、依頼・メール・今日の運勢を確認するのがレイヴンになってからの日課だった。
 「運勢は好調。メールは、なし。依頼は・・・・1つか。」
言いながらフィーは、依頼文を読み始めた。
 
ミッション名:封鎖地区工場調査
 
依頼者:ユニオン
作戦領域:封鎖都市内軍事工場
敵勢力:不明
作戦目標:工場内の調査
 
前払い報酬:0 成功報酬:40000
 
以前ミラージュの施設から入手した管理者の情報の中に、封鎖地区にある軍事工場に関するデータがあった。
何をしているかまでは、分からなかったが最近の管理者の暴走・封鎖地区の増加と関係がありそうだ。
ついては、工場内の調査を依頼する。
なお、敵勢力と遭遇した場合は、可能な限り撃破してくれ。
それに見合った報酬を上乗せしよう。
それでは、よろしくたのむ。
 
 「報酬は、なかなかだな。」
フィーは、すぐに依頼承諾のメールを出した。
 「だけど、念のため僚機を付けといた方がいいか。」
そう言うと彼は何度か一緒に戦った事のある「デス・エンジェル」と言うレイヴンに僚機の依頼を出した。
「デス・エンジェル」の腕は、最初に組んだ時から気に入っていた。
数分後、彼から「YES」のメールが返ってきた。
 
 
同日 PM4:30
フィーは、輸送用トレーラーの中で再度依頼の確認をしていた。
 「そろそろだぞ。」
低い声のトレーラーの運転手が言った。
 「はいよっ。」
軽く答えるとフィーは、トレーラー後部のハンガーへ向かった。
そこには、重装逆関節・KARASAWA・2551ブレード・小型ミサイル・追加弾倉と、
KARASAWAを中心とした機体構成の愛機 リーン・ラグナロク MK−3 「セシルス」の姿があった。
階段を上がり、ハッチを開けコクピットに座る。
休む間もなく手前のコンソールにいろいろと入力し、機体を起動させた。
そこに彼のオペレーターから通信が入った。
 「こんにちは、レイヴン。調子はどう?」
 「おかげさまで、今日の運勢は好調だぜ。」
 「そう。じゃ、ミッションがんばってください。」
 「了解。」
短いやり取りの後トレーラーが止まり、さっきの運転手から通信が入った。
 「作戦領域に到着。後部ハッチ開けるぞ。」
ゴオオオオオオゥゥゥゥン
低い駆動音と同時にハッチが開いた。
外の景色を見てフィーは驚いた。
そこは、なぜ封鎖されたのかが分からないぐらい綺麗な街並みだった。
 「なぁ。本当に、ここ地殻変動で封鎖になった所なのか?」
彼は、オペレーターに聞いた。
 「そのはず・・・・・・ですけど。」
彼のオペレーターも同様に驚いていた。
 「う〜ん。まあぁ、いい。リーン・ラグナロク MK−3「セシルス」出る!」
彼は機体をトレーラーから出し戦闘モードを起動させた。
レーダーに反応。
だが、敵のものではなかった。
どうやら僚機の「デス・エンジェル」の方が早く来ていたらしい。
 「やっと来たか。フィー。」
街角から「デス・エンジェル」の機体「B:ブレード O:オンリー S:スピード S:スペシャル」通称BOSS(ボス)が姿を現した。
パイロットの名前から悪そうに見えるが、性格は軽い。
しかし、ピンチになると真面目&本気になる。
彼の機体は軽量2脚。色は、赤と黄色。武装は、名前からわかるようにパイルバンカーと月光のみ。
フィーから見れば[ よくそんな機体でやってられるな ]と言う感じだ。だが、彼のブレードの腕は確かである。
 「待ったか?」
 「いや、いい。それよりも早く終わらせようぜ。」
 「あぁ。」
二人は、封鎖工場へ向かった。
 
 
工場はかなりの規模だった。
以前はMTの生産工場だったらしく、生産ルートには造り途中の上半身だけのMTが数機あった。
それを横目に進んでいると、レーダーに反応。
さっきとは違い、今度は敵のようだ。
 「3機か・・。そこのゲートの向こうだな。」
デス・エンジェルが言いながらゲートに向かった。
敵もこちらに気づいたらしいく、ゲート越しに何か撃っている。
 「ムダな事をして。もう少し考えたらどうだ?」
そう言うとデス・エンジェルはゲートを開け、飛んできた銃弾を左右に避けながらMTに向かって突っ込んでいく。
次の瞬間、3機のMTは次々に爆発した。
 「お見事・・・。」
彼の鮮やかなブレード捌きに、ついつい見とれてしまう。
 「んっ、まだ奥にゾロゾロといるみたいだぜ。」
言われてフィーがレーダーを見ると、赤い点がいくつも現れていた。
 「よく封鎖地区に、これだけの戦力が残っていたもんだな。」
 「で、どうする?まとめて片付けるか?」
 「目的は調査だからな。ムリに倒さなくてもイイだろ。あとあと何が待っているか分かんないし。」
 「でも、調査って一体何を調査するんだよ?」
そんな話をしていると、フィーのオペレーターから通信が入った。
 「レイヴン、地下の格納庫らしき所に大型の熱源を感知。」
 「大型って?」
 「分かりません。でもACより遥かに大きいみたいです。」
 「まぁ、とりあえず地下の格納庫に行けってことだな。」
二人は、ゲートを開け邪魔な敵だけ倒し、あとは 「オーバードブースト」で敵の頭上を飛び越えていった。
 
 
しばらく行くと少し大きめの場所に出た。
 「ここは?アリーナより狭いな。」
フィーが言いながら周りを見ていると、向かい側のゲートが開き1機のACが入って来た。
機体は真っ黒。目だけが不気味に赤く光っていた。
 「えっと、ランカーAC Vanisher MkーU パイロット ZERO 機体は軽量二脚 武装は、GSー56ショットガン 月光。だそうです。」
オペレーターが、敵機体のデータを読み上げた。
 「接近戦重視か、それならこっちだって・・・ん?」
デス・エンジェルがしゃべっていると、敵が回線に割り込んできた。
 「ネズミが紛れ込んでいるというのは、オマエ達のことか。」
 「だったら?」
 「見逃す訳には、行かない!」
言い終わる前に、敵のACがOBで突っ込んできた。
 「いきなりかよ。」
言いながらフィーは、KARASAWAを構え発射。
青白い光が轟音とともに、Vanisherに向かって飛んでいく。
 「当たるかよ!」
しかし、Vanisherは軽量級の軽やかな動きでそれを避けた。
 「おぉ、速いな。」
 「俺が、やる!」
デス・エンジェルのBOSSが、Vanisherに斬りかかった。
が、とっさにVanisherが後ろにさがりショットガンを発砲。
まともに食らったBOSSは、バランスを崩し地面に倒れこんだ。
 「マズイ!」
 「もらったーー!!」
ここぞとばかりにVanisherがブレードを振った。
避けられるはずがなく、BOSSのコアに命中。
激しい振動がデス・エンジェルに襲いかかる。
しかし、次の瞬間。
 「そこだっ!」
Vanisherの着地を狙い、フィーがKARASAWAを撃った。
直撃ではなかったが、右腕に命中。
Vanisherの右腕が、ショットガンごと吹っ飛んだ。
フィーがよろめいたVanisherにもう1発たたき込もうとした。
その時、赤と黄色の機体が間に入ってきた。
 「これでも食らえーー!」
BOSSのパイルバンカーがVanisherの頭部に勢いよく突き刺さった。
 「まだまだー!」
間髪入れずに月光を振りかざす。
当たり所が悪かったのか後方へ吹き飛ばされたVanisherは、地面に横たわったまま火花を散らしながら動かなくなった。
 「敵ACの反応、消えました。」
オペレーターが、報告した。
 「オイ。普通、頭に刺すか?」
 「イイんだよ。当たれば、どこでも。」
 「そうなのか?」
 「で、地下への通路は、アイツの入って来た方だよな。」
 「にしても、ACまで居るってホントここに何が、あるんだよ?」
言いながら、二人は先へ進んだ。
 
 
二機のACは、格納庫へ行くエレベーターを降りて、通路を進んでいた。
 「なぁ、なんかMTの数、減ってないか?」
 「そういえば、地下へ来てからあまり見てないな。・・・おっ。あれか?」
目の前にはゲートがあった。
 「開けるぜ。」
そう言うとデス・エンジェルは、ゲート脇のスイッチを押した。
開いたゲートの先には、巨大な機動兵器の姿があった。
縦に延びた身体。腕の所にある、羽のような物。
 「でっ、でかい。」
おもわず、フィーがつぶやく。
敵の機動兵器は、まだ完成していないのか、無数のコードや足場などが体に付いていた。
 「これを、調査するのか?」
デス・エンジェルが全体を見回していると、格納庫内に警報が鳴った。
 「いったい何が・・・?」
警報が鳴りやむと、機動兵器の目が光り、足場がきしむ音がした。
 「オイ、もしかして・・あれ、動くのか?」
フィーが、慌ててKARASAWAを構える。
しかし、それよりも早く機動兵器からプラズマキャノンが飛んできた。
 「うわっ!」
不意を付かれたフィーは、回避ができなかった。
 「今のは、かなり利いたな。」
体勢を立て直すと、今度こそKARASAWAを撃った。
止まっているのだから、はずれるはずがない。
しかし、機動兵器は直撃でも少しぐらついただけだった。
 「うわっ!かってぇ。」
 「任せろ!」
言うなり、デス・エンジェルはOBで突っ込んでいった。
そして、ジャンプして敵の腹あたりにパイル・バンカーを突き刺した。
さすがにこれは利いたらしく、装甲の一部が吹っ飛んだ。
しかし、デス・エンジェルもゼロ距離でプラズマキャノンを食らってしまった。
 「大丈夫か!?」
 「マズイかもな。APがレッドゾーンになってやがる。って、うわっ!!」
まだ機動兵器が撃って来る。
デス・エンジェルはギリギリで回避しながら、障害物の陰に隠れた。
 「こんの野郎!!」 
フィーは、プラズマキャノンを回避しながら吹き飛んだ装甲の内側に向かってKARASAWAを連射した。
全弾命中。
当たったところが、爆発した。
 「チャンス!!」
大きくグラついた機動兵器を見たデス・エンジェルは、一気に駆け寄り月光を斬り付けた。
数回斬られた機動兵器はその後、活動を停止した。
 「終わったか。」
フィーがそう言った時、格納庫内のスピーカーから機械仕掛けのような声がした。
 「プロトタイプ大破。オリジナル出撃準備。」
そう言うと、さっき壊した機動兵器の後ろからもう一機、同じ機動兵器が出てきた。
 「まだあるのか?」
 「もう機体が保たないぞ。」
二人が、そう言うとオペレーターから通信が入った。
 「レイヴン、ユニオンより通信です。
  「離脱しろ」とのことですが。」
 「そうさせてもらうぜ。」
 
その後、工場を脱出した二人は急いで領域を離脱した。
 
 
数日後
フィーに、オペレーターからメールが届いた。
 
レイヴン、まずは無事で何よりです。
先日のミッションでとり逃したもう一機の機動兵器ですが、あの後、別のレイヴンがアヴァロンヒルで撃破したようです。
さて、本題に入りますが。
あの後、私が独自に調査した結果、やはりあれは管理者の兵器だったようです。
それと、全てではありませんが最近になって封鎖された地区には、何らかの工場なり軍事施設があるようです。
やはり、裏で今回のような事が行われているのでしょうか?
それにしても、最近の管理者の部隊といい、今回の機動兵器といい一体管理者は何がしたいんでしょうか?
ただ暴走しているだけなのか、それとも何か目的が・・・・。
まぁ、現在までに分かっている事はこれくらいです。
また何かあったら追って連絡します。
それでは。
作者:フィーさん