サイドストーリー

死闘、そして・・・
ヴンッ!!
紅いACが強烈な斬撃と同時に蒼く発光するエネルギー波を飛ばしてくる。
「くっ・・・!」
俺は飛んできた光波をかろうじて回避することに成功した。
間違いない。あの光波はLS-99-MOONLIGHTと同質のものだ。
あたれば命の保障はないだろう。
姿勢制御用バーニアを使って体制を立て直した俺はすぐにトリガーを引き絞る。
ACの手にしたライフルから光弾が発射される。威力と連射性を重視したレーザーライフルだ。
だがしかし、敵はビームの直撃を受けたにもかかわらず、まるで効いているように見えない。
「ちっ・・・!!」
俺は舌打ちをした。
ナインボールへの復讐を決意し、今日までレイヴンとして生きてきた。
だがナインボールは、俺が所属していたレイヴンズ・ネストが開発した
AIによって動くネストの歩兵であり、先日までパートナーを務めてきた
ラナ・ニールセンはネストのメインコンピュータ、そして目の前には
ネストが創りだした最強のAC・・・。
俺は自分が今まで何をしてきたのかわからなくなっていた。
だが、トリガーを引いた瞬間、俺にはひとつの答えが出ていた。
―あのACを破壊して、生き残る!!―
ドドドォォォーーーン!!!
ヤツの放ったミサイルが爆発する。回避行動をとったが、いくつかは被弾したようだ。
もう残りAPは少ない、コクピット内に警報が鳴り響く。
俺は不意に動きを止めた。敵ACは人型へ変形し、地上に降り立つ。
「・・おおおおおおおーーっっ!!!」
ブースターを全開にし、一気に距離を詰める。
このとき、俺の頭の中には最後の案があった。
予想通り、近距離と認識した敵は、光波を打ち出してくる。
それこそが、俺のねらいでもあった。
ブレード使用時には一瞬ではあるが、隙が生まれる。
それはこのACも同様だった。
ヴンッ!ザシュ!!
ブレードからでたレーザーがACの装甲を切り裂く音が聞こえた。
俺の放った空中斬りは、見事敵ACを捕らえていた。
ジ・・ジジ・・・ギ・・・
ACは炎上し、象徴的な翼のような巨大なバーニアが地面に落下する。
そして―
ドォォーー・・ン!!
ACは、跡形もなく消滅した。

後日、
俺宛てに一通の新着メールがあった。
差出人の名は無く、代わりにネストのマークと「9」のロゴが張り付いていた。
それは、丁度俺があの翼のACと戦っているときに送られてきたものだった。

―レイヴン、お前がこのメールを読んでいるならば、私との闘いに見事勝利したということだろう。
私は、百年計画の名のもとに、世界を再建させるために誕生した存在。
クローム、ムラクモの二大企業を使い、全ては私の計画どおりに進んでいた。
だが、そんな中、私の手の中を飛び立つ存在があった。お前だ、レイヴン。
お前は、私の差し向けた刺客を見事打ち倒し、私を超える存在となったしまった。
お前が正しいか、私が正しいか、それは誰にもわからない。
だがお前には、この世界の行く末を見届ける必要がある。
生き続けよ、レイヴン。そして見届けるのだ、この世界がどうなっていくのか。
それができるのは、お前だけなのだから。―
作者:テリーさん