サイレントライン:蒼の部隊強襲
「テストモード起動します。」
コンピューターの声と共にシャウシュッツの新型、ソリッドランサーが起動する。
「師匠、いいですね。」
通信機からブレイの声。
「ああ、いつでもOKだ。」
「これはあくまでカイルさんから聞いた事です。一度しか言いません。
オーバーリミットはブレードのパワーを最大限に上げて相手に放つ技です。
しかし、それには放つまでに通常よりエネルギーを上げ、当てる瞬間に最大限に上げます。
しかし、上げるのをコンマ二桁でも狂えば機体が吹き飛びます。」
「了解した。タイミングは体で覚えろ、とそういう事だな。」
「はい。カイルさんもマスターするのに一ヶ月かかったんですから、完全に覚えるまで依頼では使わないで下さい。
それではテストを開始します。」
言うと同時に二体のMTが動く。
シャウシュッツは、カイルがブレイに言って、わざと逃した事は聞いていた。
その為、ブレイに言ってオーバーリミットを教えてもらったのである。
「まずは機体の機動性をチェックするか。」
MTから放たれる散弾を一発も当たらずに回避していく。シャウシュッツはブレードのエネルギーを上げ始めた。
「タイミングは体で覚える、か。無茶を言う。」
シャウシュッツは一気にMTに近づく。
「オーバー・・・・。」
シャウシュッツはタイミングを見極める。
「リミットー!!」
MTに当たった瞬間、エネルギーを最大限に上げる。しかし、
「!?」
突如衝撃が走る。
「ダメージが100%を超えました。テストモードを中断します。」
「駄目ですよ、師匠。」
通信機からブレイの声。
「何が駄目だった?」
「当たった瞬間にはもう遅いです。」
シャウシュッツはソリッドランサーのコクピットから出た。
テストモードはコンピュータの中だけの架空戦闘だが、やり方によってはいいテストになる。
「当たる瞬間、そこで放つんですから。」
「カイルは一ヶ月と言ったが、毎日やってか?」
「はい、毎日。見ていた限りでは一日二、三時間は。」
「二、三時間!?」
「はい、その位を目安にがんばってください。じゃあ、私は練習が残っているので。」
そう言うと、ブレイはジムのほうに行ってしまった。
ちなみに、ブレイはシャウシュッツに弟子入りするまでカルトの肉体のトレーニングをかかしていない。
その後、シャウシュッツの考えたAC訓練をやる。その内容は、
・腕立て二十回
・腹筋二十回
・ビーバー(気をつけの姿勢からしゃがんで腕立ての姿勢になって戻って一回)二十回
・スクワットジャンプ十回
これを一セットで三回。
その後ランニング一時間で終わる。
シャウシュッツの考えた訓練は、
・長距離からの目標破壊五分(移動無し)
・長距離からの目標破壊三分(移動有り)
・ミサイルの回避四分
・AIのAC三機との戦闘
・模擬戦(今は無し)
これを一セットで二回。
どちらにしても激しすぎる訓練である。しかし、ブレイはこれを楽々とこなす。
「俺も休むか・・・。」
ちなみ彼は全治一週間と言われた。シャウシュッツは病室に戻ると、睡眠薬を飲んで寝た。
そうしなければ練習が気になって眠れないから。
「あっ、そうだ。」
筋トレを終えたブレイが格納庫戻って来た時、思い出したように、整備主任を呼んだ。
「すみませんー!」
「何です?」
「実は、ブレイブガンナーの事で・・・。」
「何でしょう。」
「師匠から、修理を頼んでおいてくれと、言われたので・・・。」
「ソリッドランサーがあるのに?」
「はい、何でも練習に使うとかで。」
「分かりました。」
「それと後一つ・・・。」
ブレイはポケットから何か出した。
「この機体を組み立てて欲しいんです。」
「これは?」
それはACの機体データだった。
「部隊から出る前、カイルさんから貰ったものです。色は黒。名前はデスサイズ。」
「軽量二脚に出来るだけの武装をした機体ですね。死の鎌と言うのにブレードが無いんですね。」
「駄目ですか?」
「いいですが、何で・・・。」
「エターナルMK−Vは強力ですが、癖のある武装ばかりですから。」
「分かりました。しかし、組み立てには二、三日はかかります。」
「分かりました、ありがとうございます。」
そう言い、エターナルMK−Vのコクピットに入っていた。
「データ受信完了。訓練を開始します。」
「・・・こちらグランデ、目標施設を確認。」
「・・・・こちらグラキレ、施設付近にMT確認。機数二。」
「分かった。本部、こちらカルト・・・。」
地上のグローバル社の約一キロの先にある山。そこから三機のACが見ていた。
重二脚が一機、軽二脚が一機、中二脚が一機、計三機の少数部隊である。
グローバル社は地上に本社を構えるようになった。
ここにはレイヴンの為の寮、緊急病院、レストラン、トレーニングジムが完備されている。
「・・・本部から返答。作戦を開始せよ、だそうだ。」
中二脚のパイロット、カルトが言う。
彼の機体は右腕に黄色ショットガン、左腕に投てき銃、右肩に45発ロケット、左肩に多弾頭ミサイルを装備。
エクステンションに垂直連動ミサイルも装備している。
「了解、突入準備に入ります。」
重二脚のパイロット、グランデが言う。グランデの機体は右腕にハンドグレネード、
左腕にシールド、両肩装備の四連ビームキャノンを装備した機体である。
「突入準備完了。」
軽二脚のパイロット、グラキレが言う。
グラキレの機体は右腕にエネルギーライフル、左腕に2551ブレード、
右肩にAD/20、左肩にオービットを装備していた。
三機とも色は暗い青。コアは中EOである。
「・・・行くぞ!」
三機はグローバル社に向かって動き始めた。
「終わり!!」
ブレイは最後のACにロケット弾を叩き込んで落とす。これで一セット目が終わった。二セット目に入る。
「すごいな・・・。」
その様子が映し出されているモニターを見ていたハンクがため息をもらした。
「新人でここまでやれるのか?」
隣にいたノヴァも同じような事を言う。
「ここまですごいとはな・・・。」
ハンクの言葉が終わる前にノヴァは立ち上がる。
「どうした?」
「機体の調整だよ。新人に負ける訳にはいかないからな。」
「そういう事。頑張れよ。」
ハンクは励ます。ノヴァは相槌を返すとAC、リングMK−U改に乗った。
「システムチェックを開始します。」
コンピューターが一からシステムに異常が無いか確認する。ノヴァも操作スティックの感覚を確認する。
あと、ノヴァは強化人間です。
ドゴォーーン。
突如衝撃。それに格納庫にいた人々は混乱する。
『ACが本社を攻撃した。至急迎撃せよ。繰り返す・・・・。」
AC進入のアナウンスが流れた。今ここにレイヴンは三人だけ。
「ハンクさん!ノヴァさん!」
外部スピーカーでブレイが答える。
「先に出ます。」
「分かった!俺も出来るだけ早く出る。」
「システム、戦闘モード起動します。」
ノヴァとブレイの機体が動いたのは同時だった。
「ノヴァさん!?」
「一人では危険過ぎる。」
「どうして、そんなに速く起動を・・・。」
「システムのチェック中だったんだ。行くぞ。」
「分かりました。」
二人が外に出た時、もうカルトは帰還した後だった。が、グラキレとグランデは残っていた。
そして、周りは・・・。
「ひどい・・・。」
「なんて奴等だ。」
既に施設の半分は崩壊した後で、
帰還しようとしていたレイヴン達は突然の襲撃にただただ破壊されただけだったらしい。
「あの二機は・・・!!」
「知っているのか?」
ハンクを初め、多くのレイヴンはもうブレイが管理者部隊の近くで育った事は知っていたが、
責めることはしなかった。
それだけでは責める理由にならなかったからだ。
「グラキレとグランデです。実力そのものは低いですが、
あの二人は兄弟で、兄弟ならではの連携攻撃を得意としている二人です。その連携は部隊一です。」
「厄介な奴等だな。」
ノヴァの言葉が終わる前に全機が動いた。
「俺は軽二脚をやる。お前は重二脚を。」
「分かりました。あと、軽二脚のパイロットはグラキレです。」
二機は離れた。
「私はグランデですか。」
多少不安だった。
グランデとは部隊にいた頃何回か戦った事があったが、この装備で勝てるとは言い切れない。
「行くか・・・!」
二機は同時に動いた。それぞれ旋回しながら様子を見る。初めに仕掛けたのはブレイであった。
オービットを出して攻撃。攻撃が当たるが、それをものともせず、ハンドグレネードを叩き込む。
「くっ!」
ブレイは機体を上げるが、左足に当たった。それにより左足が動かなくなる。
「・・・・・。」
ブレイはブースターを吹かして一気に突撃する。
グランデは四連ビームキャノンを構え、一気に発射した。これでエターナルMK−Vの左腕と右足が使えなくなる。
「遅い!!」
ブレイはハンドグレネードに切り替えている隙を尽き、後方に回り込むと、ハンドロケットを叩き込む。
グランデは流石にこのままでは、と思ったのか、一気に離脱した。
「どわっ!」
足が無くなっていたので、機体が地面に叩きつけられる。
「エターナルはもう駄目だな。」
ブレイはそんな事をつぶやきながらコクピットから這い出た。
「くうー、やるな!」
ノヴァは多少の苦戦を強いられていた。
ノヴァとグラキレはお互いに間合いを取りながら右腕武器で応戦していた。
「あらよっと!」
ノヴァはグラキレの出したオービットをライフルで落とす。
「そろそろ行くか・・。」
ノヴァは武器をスラッグガンに切り替え、OBを起動し、高速移動でグラキレの背後に行く。
グラキレはすぐにエネルギーライフルを向けようとしたが、スラッグガンを近距離から受け、コアが変形した。
しかし、グラキレはそのまま退いた。
「あれで退けるとは・・・なんて奴だ・・・。」
ノヴァも大破したエターナルを担ぎ、帰還した。
作者:カイルさん
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