サイドストーリー

真の力 偽の力 〜第二章 破滅編〜


ある休日の事。
私は、2週間ぶりに立ち上がった。
そして、台所に向かった。
足取りは重く、フラフラとしていた。
「千鳥足」とは、この事をいうのだな、と思う。
…着いた、台所だ。
私はまず冷蔵庫を開けた。
ガチャッ…ギィィィィィ……。
牛乳。
生肉。
生野菜。
ドレッシング類。
その他食物など、いっぱいあった。
私は牛乳を引っ張り出すと、震える手でパックの口を開け、私の口の方へ持っていく。
…そして、一気に上を向いた。
ゴクッ!ゴクッ!ゴクッ!ゴクッ…!
ビチャァ…ビチャビチャァ!!
私の口に、一気に牛乳が入っていく。
そして、あふれ出ていく。
飲み込めずに出たものは、無惨に床へ落ちていく。
こぼれていく。
気にするものか…!
ゴクッ!ゴクッ!ゴクゥッ…!!
…ピチャッ…ピチャッ……。
「……はあ…はあ……はあぁッ!!」
体力が戻ってきた。
同時に、強力な「飢え」が始まった。
「…もっと……もっと……もっともっともっとだ!!」
私は冷蔵庫の中のものを大量に取り出した。
生肉、生野菜、生魚、漬物、果物…。
生肉はパックのビニールを取り、そのまま口に放り込んだ。
かなり大きいが、そんな事は気にならない。
グチャッ、グチャッ、グチャッ、グチャッ…。
足りない…。
今度はパックをいっぺんに数枚はがし、両手で持って食べた。
そう、まるで、野蛮な獣のように。
これでも…足りない…。
キャベツが目に入った。
両手で抱えて、食った。
バリッ、バリッ、バリバリッ!!
…うまい。
バリッ、バリバリッ…ガブッ、ガジガジガジガジ!!
……トサッ…。
芯の部分が落ちた。
………勿体無い…。
私は、牛乳で白くなった芯を口に放り込んだ。
…ガリィッ!!ガリッ!!ガリッ!!
たりない…。
まだまだたりない…。
もっと、もっともっとひつようだ。
たべものをくれ。
わたしは、れいぞうこのものすべてをとりだした。
おさらにのっているもの、ぱっくされているもの。
そのすべてをとりだして、ちょうりせずに、くった。
おなかはまだまだみたされていない。
ぜんぜんいっぱいにならない。
がりがりがりがり。
くちゃくちゃくちゃくちゃ。
ごくごくごくごく。
ごりごりごりごり。
………がちゃっ。
だれかが、きたみたいだ。
わたしはからになったれいぞうこをあけたまま、げんかんへいった。
とたとたとたとた…。
「よぉ、今度こそ金、貰いに来たぜ。」
めのまえには、くろいすーつをきたひとたちが3にんたっていた。
「…随分と雰囲気変わってねえか?アンタ。」
「当たり前だろゴルド、こいつはずっとあそこから動いてねぇんだぜ?」
「…ハハッそうか。…おいコールハートさんよぉ、今日も払えねぇのか?」
…なにをいっているんだ?
わたしのしょくじのじゃまをしておいて、そんなことをいうのか?
「………。」
「ねぇようだな…おいブロン!ドアに鍵をかけろ…。」
かちゃっ。
「OKゴルド、これでこいつも逃げられねぇ…。」
「よし…やれ!!」
「あいよッ!」
「やれやれ…こいつも殴り飽きたぜ…。」
どかっ!!
ばきっ!!
どすっ!!
「うぐぇぇぇぇぇぇ!!」
びちゃびちゃびちゃぁ…!!
「…おいゴルド、こいつもう吐いちまったぜ?」
「構わん、殴り続けろ。」
ばきっ!!
ばしっ!!
どがっ!!
べきっ!!
ずがっ!!
…がぶっ…ぶちぃぃぃぃぃぃっ!!
「うっ…うっぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「!!」
「どうしたシルバ!?」
「うっ、腕がァ!!おっ…俺の腕がァ!!」
「腕がどうした!?」
「こいつ…俺の腕を…腕を喰いやがった!!」
「なっ…!!」
ぐっちゃぐっちゃぐっちゃぐっちゃ…。
「あんたらに、はいたぶんもどしてもらわなきゃあな…。」
「うっ…うわぁぁぁぁぁぁッ…くっ、来るな!!」
「落ち着けシルバ!!くっ…ブロン、何をしている、行けェ!!」
「………。」
「何をしているんだ、ブロン!!」
どしゅううううううううう………。
どさっ。
「ブロン………?うっ!!」
くちゃ、くちゃ、くちゃ、くちゃ…。
「ひでぇ…首が…ない……首を食いちぎられてる…。」
とっ、とっ、とっ、とっ…。
「しょくじのじゃまをして、なぐって、はかせるなんて…。」
とっ、とっ、とっ、とっ…。
「くっ…来るな!!」
がちゃがちゃがちゃがちゃ!!
「入口が…ドアが…ドアが開かない!!」
とっ、とっ、とっ、とっ…。
「おまえらもうゆるさない…。」
「うわぁ……ううっ…来るな…来るなあァァァァァァァァァァァ――――――――――――――ッッ!!」

ある休日の事。
やっと意識が戻った。
やっと意識が普通になった。
たった今、パソコンからレイヴンの手続きをしているところだ。
これをコーテックスにメールする。すると日時が指定されて帰ってくるのだ。
体力や筆記などの試験があり、その結果次第で最終試験である「実戦」に入るわけだ。
これを取れば、私は新しい力を得られる気がする。
いや、新しい力は得られる。
私は必ず手に入れられる…!!
………ところで、玄関にある昨日の「食べ残し」はどう始末しようか…。
肉片は多少残っているし、
血は床や壁に染み付いて、こびりついている。
そして、かなり血生臭さが残っている。
血みどろの衣服もだ。あのスーツは血だらけでどうしようもない。
…いや、考えるのも面倒だ。
「食品」に気を配ってどうするというのだ?
………ピピッ。
…お?
どうやらメールが帰ってきたようだ。
ダブルクリック…と。
『筆記、体力、実技試験。7日後AM6:00集合 時間厳守。』
6時、か……早いものだな。
私は腕の時計に目をやる。
「22:37、か…。特にやる事は無いな。寝るとするか…。」
玄関の「食べ残し」が気になったが、
考えるのも面倒なので、さっさと寝ることにした。

ある休日の事。
『ピピピピピピピピピピピピピピピピピ!!』
朝の5時。
目覚し時計の音が、部屋中に響く。
私はもそもそと布団の中から出て立ち上がり、
寝ぼけ眼で机の上の目覚し時計を止めた。
『ピピピピピピッ……。』
目覚し時計は、少し遠めのところに置く。
そうすれば、2度寝はある程度防げる。
ちょっとした生活の知恵だ。
そして私は、着替えと車のキーを用意した。

ゴアアァァァァァァ……。
この車に乗っていると、あの日のことを思い出す…。
よくもまぁ、これに乗って帰ってこれたものだ。
未だに不思議である。
さて、もうすぐ目的地だ…。
この一週間、必至で体力作りと勉強をした。
本当に、必至だった…。
それを、全て出し切る時が来た…。
キイィィィィィ……バタン!
コツ、コツ、コツ、コツ、コツ…。
…ここが、試験会場か…。
目の前に建っていたのは、他ならぬグローバルコ−テックス本社ビルだった。

ガチャッ。
ギイィィィィィ…。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…。」
終わった。
試験が終わったのだ。
ここまでキツイとは思わなかった。
…だが、手応えはあった。
筆記は完璧。
体力は抜群のはずだ。
ッフフフフ…!!
「れな」に感謝しなくちゃな…。
あのアマのおかげで、こんな優越感に浸る事ができる。
「……フハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
高層ビルが立ち並ぶ町並みの中、私は大笑いせずにはいられなかった。

「ブウウゥゥゥゥゥゥゥ………ガクン!」
バック。
「ギギィ!」
サイドブレーキ。
「ドルドルドルドルド……。」
エンジンを切り、
「カチッ、グッ。」
鍵を抜く。
「ガチャッ……バタン!」
車を降り、
「グイ…カチッ。」
ドアの鍵穴に鍵を入れ、ひねる。
「カシャッ…。」
つまり、ドアに鍵をかける。
コツ、コツ、コツ、コツ…。
エレベーターまで着いた。
上だ。
カチッ。
………。
………。
……ウウウゥゥゥゥン…ガクンッ。
ゴアァ―――……ガッタン…。
「でさアイツ、マジ馬鹿で鍵間違えてやんの!!」
「ッハハハ!何よそれぇ〜!チョー馬鹿じゃん!!」
エレベーターの扉が開き、降りてきたのは若いカップル2人。
私はすぐエレベーターに乗った。
ゴ――――…ガン!
ウウウゥゥゥゥゥゥン…。
…バキィィッ!!
私の拳が、エレベータの壁を叩いた。
叩かずにはいられなかった。
憎くて、憎くて、しょうがなかった。
そして「れな」への憎しみは、また増えていったのだった。

ある休日の事。
玄関が血生臭いのが気になる。
まあ、このコールハートを尋ねてくる人などいはしないが…。
私はパソコンの前で、メールが来るのを待っていた。
椅子に座り、背もたれに首ごとかけて、ぐたっとしていた。
………。
………。
………ピピッ。
ガバァッ!!
私はすぐさま体制を立てなおし、メールを開いた。
…ダブルクリック。
『おめでとうございます、あなたはレイヴンになるチャンスを得ました。
 3日後の19:00にコーテックスの面接室へ来て下さい。』
………フフフ…!!
ハハハハハ…!
どうだい「れな」?
これが私の「力」だよ。
お前に見せてやりたいよ。
どうだい…?
「ハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハァ!!」
これで私は新たな「力」を手に入れたわけだ…。
いや、まだだが…もう手に入れたに等しい…。
三日後が待ち遠しい。
レイヴンになったら、金を稼いで、金を稼いで、金を稼ぐ。
「経済力」が欲しい。
「金の力」が欲しい。
私に「力」をくれ…!!

それから三日後の事。
私は再び、グローバルコーテックスへ向かった。
中へ入り、指定された部屋へ行く。
ドアを開けると、白い部屋にテーブルが一つ。
イスが奥に一つ、手前に2つあり、奥と手前には一人づつ、座っていた。
つまり、空いているイスは一つ。
片方、つまり奥の方はおそらくコーテックスの社員だろう。
もう1人は…私以外の「合格者」か?。
…2人?
あれだけの人数がいたのに?
随分といたはずだ。
そう、学校の受験の人数ぐらいは…。
たった、2人だと?
「コールハートさん…ですね?」
コーテックスの社員らしき人は、私にそう言ってきた。
私は首を縦に一度、振った。
すると社員は、手を空いている椅子に向けた。
…座れ、と言っているのか?
私は椅子へ真っ直ぐ歩き、椅子を引いて、座った。
「…ではまずギャルソンヌ様、コールハート様、合格おめでとうございます。
 それでは、今回の実戦試験の説明をさせて頂きます。
 目的地はトレネシティ。20:00到着予定です。
 作戦の成功は一定時間の生き残り。
 敵勢力は所属不明のMTです。 
 さらに詳しい事は機内で説明いたします。
 …それではガレージへお向かい下さい。出発いたします。」
社員は立ち上がり、部屋の入口へ向かって行った。
私ともう1人の合格者は、その社員の後についていった。

ゴウンゴウンゴウンゴウン……。
「…それでは詳しい解説に入ります。
我がグローバルコーテックスでは、レイヴンを志す
諸君に共通のテストを課しています。
テストは実戦で行います。
今回は市街地に展開している小部隊との戦闘です。
我々が知りたいのは、
あなたたちの意思と、そして力です。」
…ここは、輸送機の中。
ハッチにはAC(アーマード・コア)と呼ばれる人型兵器が2機、入っている。
そしてその一つに、私は乗っている。
かつて…そう、レナと出会い、「れな」と出会う前までは、
私はMT(マッスル・トレーサー)というロボットに乗っていた。
クレストという、くだらない会社の一員として。
これは、MTとはわけが違う。
操作が違う。
精密さが違う。
兵器の威力が違う。
何よりも、臨場感が違う。
「…なぁ、ちっと緊張しねぇか?」
「…?」
隣の男…つまりもう1人の合格者が、私に話し掛けてきた。
「何だか胸がバクバクしちまってよぉ…。」
「……何が言いたいんだ?」
「え?」
「何が聞きたい?」
「いや…つまりよぉ…その…おめぇも緊張してんじゃねぇのか?」
「緊張…フン。」
「…あんだよその『フン。』てのは!?」
「お前に言っても、どうしようもない。とっとと黙れ。」
「…んだよ、バーカ!」
…ガコッ!!
途端に、ハッチが開いた。
「それでは出撃してください。健闘を祈ります。」
……ブウゥン…。
ブシュアァァァァァ………。
……ゴオォォォォォォォ…。
……ォォォオオオオオオオオオ…!!
ガシャアァァァ…!!
着陸した。
地に、足がついた。
そう。
ここは、戦場だ。

ピピッ。
ガシィン!ガシィン!ガシィン!ガシィン!
ブシュアァァァァァァ…!!
ドウン!!ドウン!!ドウン!!
チュインチュインチュイン!!
ドン!ドンドンドン!!
ズガアァァァァァン!!
…これだ!!
この圧倒的な「パワー」が欲しかったのだ!!
フハハハハ…!!
そうだ!!
そうだそうだそうだそうだ!!
もっと狩ってやる!!
無力なMTどもを狩ってやる!!
ガチャッ。
ヒュウゥゥゥゥゥン…。
ドアァァァァァァ!!
……ァァァアアアアアアアア!!
ズバアァッ!!
ドゴオォォォォォォ!!
「…ハーッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」
こうして俺は、次々と敵MTを撃破していった。
もう残りの敵も少なくなってきた。
もう1人の合格者も、敵を倒してい……。
…「もう1人」?
……フフフ…。
フハハハハ…!!
どうして早く気付かなかったのだろう?
私の邪魔をするものは、一人たりとも許さない…。
その「将来性」があるものも、だ…。
「そいつ」は近い未来、敵になる可能性がある。
…ならば、いっその事……。

「ひゅうッ!!クールだねぇこいつ!!」
俺はこのACに「快感」を感じていた。
昔からの夢だった。
こいつに乗ることは。
まだ動きがぎこちないとはいえ、俺は満足していた。
「…もう敵も少なねぇな、もう少しだ!!」
もう少しで、俺は夢にまで見た「レイヴン」になれる。
これで病気がちなお袋や妹に、いろいろしてやれる金が作れる。
もう少し、もう少しなんだ…!!
ズバアァッ!!
…!?
何だ?
何が起きたんだ!?
ズバアァッ!!
うわあぁッ!!
前に吹っ飛ばされた。
何が起きたんだ…いったい…。
俺はACを後ろに振り向かせる…。
ウイィィィィン…。
そして、メインカメラに写ったものは、
俺と同じACがブレードを構え、今にも斬りかかってくるところだった!!
「うっ…うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ズバアァッ!!
ズバアァッ!!
ズバアァッ!!
ズバアァッ!!
ズバアァッ!!
ズバアァッ!!
ドウン!!ドウンドウンドウン!!
「あああああ……あああああああああああ!!」
ズバアァッ!!
ドドドドドドドドドドドド…!!
壊れる…。
壊れてゆく…。
俺のACが…。
俺の夢が…。
俺の人生が…。
ズバアァッ!!
ズガンズガンズガンズガン…!!
ごめん…お袋……妹…。
何にも…して……やれな…く………て……。
…ドガアァァァァァァァァァ…!!

ある休日の事。
パソコンを開くと、メールが届いていた。
開いて読んでみると、それはどうやら合格通知のようだった。
…そう、「レイヴン」としての。
…フフフフフ……。
ハハハハハ…!!

ある休日の事。
私も「レイヴン」としてだいぶ慣れた時であった。
私のAC名は「ザ・サン」。
太陽のように強くなるという思いを込めて、この名をつけたのだ。
雲がかかろうと、この世界を我が物顔で照らし続ける…。
「鬱陶しい」?
自分をアピールして何が悪いというのだ…?
あの女……!!
…いや、怒ってはいけない…。
……どうだい「れな」?
私はこんなにも強くなったよ?
…フフフフフ…!!
今の姿を見せたら、「れな」は何て言うかな?
いや、何も言わせないさ…。
見つけたら、殺すか、生け捕るかだ。
家畜としてやるか?
奴隷としてやるか?
なぶり殺してやろうか!?
…どの道、ただではおかない。
生かすことは、許さない。
許されないんだ…!!
………ピピッ…。
…ん?メールだろうか?
私は「受信箱」を見た。
新着メールが来ていた。
「キサラギからか…。」
…ダブルクリック。
「先日ミラージュによって建造された、
 ナイアーブリッジへ破壊工作を依頼する。
 この橋は、完成以来、市民達の日常的な
 交通手段として利用されている。これを事故と
 見せかけて破壊し、ミラージュの信用と権威を、
 大きく失墜させることが目的だ。
 指定した場所に爆弾を設置し、離脱してくれ。
 なお、依頼の性質上、必要以上に人目につくのは
 好ましくない。行動は迅速に頼む。
 また、できればミラージュが引き起こした事故に
 市民達が巻き込まれた形としたい。爆弾の設置に際し、
 橋を通過するモノレールを破壊すれば、
 報酬を上乗せしよう。以上だ。」
…任務か…。
いいだろう。
市民を巻き添えにするのは山々だが、
それによって金が増えるというのなら…!!

グローバルコーテックス、ACガレージ。
私は「ザ・サン」に乗り込み、歩かせた。
向かわせた先は、AC輸送機。
ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン…。
ガコッ!
グオオォォォォォォォォ……ガシャン!!
ハッチが閉まる。
いよいよ、出発だ…!!
フウウイイィィィィィィィ…………。
ゴウゴウゴウゴウゴウゴウゴウゴウ…!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!

「目的地点に到達しました。
 ハッチを開きます、出撃してください。」
ガコッ…。
ブシュアァァァァァ………。
……ゴオォォォォォォォ…。
……ォォォオオオオオオオオオ…!!
ガシャアァァァ…!!
……ほう、ここが「ナイアーブリッジ」か…。
ダダダダダダダダ…!!
チュンチュンチュンチュンチュンチュンチュン!!
なっ…!!
もう敵がいるのか!?
ドウン…。
…ァァァァァアアア!!
ドガァン!!
くっ…デカイ物をくらったようだ…。
…私の邪魔をするものは許さん!!
ドウンドウンドウンドウン!!
ズガァ!ズガァ!ズガァ!ズガァ!!
邪魔なのだ!!
邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔ァァァ――――――!!
ドウドウドウドウドウドウドウドウドウン!!
ズガァ!!
ドガァン!!
ドウン!!
ドッガァ!!
ズギャァン!!
邪魔者は消えた…か?
これで、ようやく爆弾を設置できる…。
カチャッ。
カチャッ。
カチャッ。
カチャッ。
カチャッ。
…ん?
モノレールが通っている…。
…邪魔だ。
私の「金」となってもらうか…。
………!!
…今のは!!
私は、モノレールが進むのと同じ方向にブーストした。
ドシュアァァァァ…!
………!!

ある休日の事。
人間は死ぬ時、目で見えるものが超スローで見えるそうだ。
私は、まさに「それ」を体感した。
死にかけではないが、それ以外に表現しようがなかった。
モノレールには、紛れもなく……。
忌々しい青髪。
醜い大きな青い目。
すぐ折れそうな細い足。
…紛れもなく「れな」が乗っていた。
男と、一緒に…!!
ためらいはしなかった。
迷いはなかった。
正しいと思った。
私は、引き金を引いた。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
ドウドウドウドウドウドウドウドウドウドウ!!
ズガァドガァドガドガドガァァァ!!
ドドドドドドドドドド…!!
ドウドウドウドウドウドウドウドウ!!
ドウンドウンドウンドウンドギャアァァン!!
ドドドドドドドドドド…!!
バキィ!!バキバキィィィ!!
バキッ!!
…ヒュウウウウウゥゥゥゥゥゥ…。
バッシャアアァァァァァァ……。
……カチッ。カチカチカチッ…。
「あああああああああああああああああ!!………はぁ…はぁ……はぁ…。」
モノレールは、落ちた。
海の底へ、沈んだ。
弾…弾も切れた…。
全て、撃ち尽くした。
「れな」に向けて…。
「はぁ…はぁ……ッフフフフフ…!!」
勝った。
私は勝ったんだ。
「れな」を、殺した。
2度と、歩く事はない。
「ッハハハハハハ…!!」
2度と、息をする事はない。
「アッハハハハハハハ!!」
2度と、その顔を見なくていい。
「アーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハァ!!」
ミッション残り時間は、30秒。
爆弾は、すべて、仕掛けた。
帰れる。
だけど、帰りたくはなかった。
ずっと、笑っていたかった。
それが、本望だから。
それが、本願だから。
「アーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」
あと30秒したら、どうなるのだ?
「ッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ…!!」
爆破するのだろうか?
「ハハハハハ……ハーッハッハッハッハッハッハッハッハァ!!」
そんなこと、どうでもいい。
「アッハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
今はただ、笑っていたい。
「フフフフフ……ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
それが、本望だから。
「ハハハ……ウハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
それが、本願だから。
「ハハハハハハハハハハ………アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
5秒前。
「ハハハッ……ハハハハハハハハ……アッハハハハハハハハ!!」
4。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!俺はッ…俺は勝ったんだ…!!」
3。
「ヤツを、殺したんだァァァァァァァ―――――――――――――ッ!!」
2。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
1。
「ウヒッ…ウヒッ、ウヒヒッ…ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャァァ―――――!!」 
……0。


作者:アーヴァニックさん