「ここまでひどいとは・・・。」
ブレイはエターナルＭＫ−�Vはもう使えなかった。
「デスサイズは無理にやれば明日に完成させるけど・・・どうする？」
「別に無理やらなくても良いです。」
「でも・・・。」
「それより・・・。」
ブレイは整備主任にある設計図を見せた。それはエターナルの四号機であった。
「これの開発までのデスサイズは繋ぎにする予定でしたから。」
「それにしてもこれはすごい。左右に内蔵式ブレード、更に右腕のブレードはパルスライフルとしての運用も可能。
主武装は右腕に小型榴弾を発射するガンランチャ−を、左腕には高出力エネルギーランチャーを装備。
その武器は背中につけることも可能・・・か。」
「基本的にはＡＣのパーツですが、セラフを元に設計し、内蔵式ブレードとパルスライフルはそのまま流用しました。
しかし、この機体には問題が・・・。」
「何ですか？」
「機体の本体と左右の武器です。このパーツは市販のものではなく、全てがオリジナルです。
しかも、主武装のランチャーはトッキングさせる事により
高出力バスターランチャーと拡散型榴弾を発射するショットガンランチャーにすることを前提に設計した武器です。」
「機体の本体は開発が可能だが、武器は・・・。」
この設計図には本体のパーツのデータは書かれていたが、主武装のデータは書かれていなかった。
「武器はまだ設計が未完成なんです。ですから本体の設計図だけでもと思いましたから。」
「分かりました。出来るだけ頑張ってみます。」
「ありがとうございま・・・。」
「すみませーーん！！」
上から声が聞こえ、上をブレイと主任が上を見る。そこにはＡＣからこちらを見る少女が見ていた。
年齢はブレイと同じ位であろうか。
「ブレイさんですか〜〜？」
「そうですけ・・・ど！？」
いきなりその少女はＡＣから飛び降りた。しかし、少女は普通は骨折くらいをするの高さを怪我なく降りてきた。
ここにはもうブレイと主任しかいなかったが。しかし、
二人は少女が強化人間なのが一発で分かった。
「よっと・・・それで。」
少女は何事もなかったように聞いてきた。
「シャウシュッツさんの弟子なんですよね。」
「そうですけど・・・。」
「シャウシュッツさんの練習メニュー教えて下さい！」
「え・・・？」
「もしくはシャウシュッツさんに弟子入りさせて下さいって言っておいて下さい。あと、これ！」
一枚のディスクを渡せれた。少女はそのまま去る。
「・・・・・・。」
「・・・・何なんでしょうか、あの少女。」
「・・・・さあ・・・。」
「・・・・・もう休んだらどうでしょう・。」
「・・・やる事がありますので・・・・。」
「・・・・・・そうですか。じゃあ、お先に。」
主任は格納庫から出た。ブレイは、ソリッドランサーに繋がっているコンソールを動かし、何かを打ち込み始めた。
蒼の部隊の強襲があったのは今からわずか三時間前。今はハンクが周りの護衛を行っている。
また襲ってくるかもしれないからだ。
「カイルさんに勝つにはあれが必要だな・・・。」

「何やってるんだ？ブレイ。」
翌朝になって格納庫に来たシャウシュッツが夜中からやっている事について聞いた。
「カイルさんに勝つためのプログラムをインストールしているんです。」
「プログラム？」
「実は、カイルさんのフォーニングＭＫ−�Vにはあるプログラムがインストールされているんです。」
「あれは三号機なのか・・・で、そのプログラムってのは？」
「アサルトプログラムです。」
「それは何なんだ？」
「本来、ＡＣは設計上、能力の７０％しか出せないんです。」
「どうして。」
「常に１００％にしていると、力に機体が押し潰されるんです。
しかし、アサルトプログラムは潰されるギリギリまで性能を上げる事も可能です。」
「俺のも？」
「いえ、アサルトプログラムは慣れていない人が使うと機体が潰れてしまう恐れがあるんです。
ですから、これは私が以前練習用に作ったプログラムです。」
「名前はなんと言うんだ？」
「まずはノーマルプログラム、これは射撃と格闘の性能をある程度上げる事が可能です。
アサルトプログラム程ではありませんが使う人の腕次第でその力は限りなく上がります。」
「それだけか？」
「いえ、後二つ、ソードプログラムとガンナープログラムです。
ソードは格闘に必要な機動性とブレードの威力をかなり上げます。
ガンナーは射撃に必要な安定性とＦＣＳの性能を上げます。」
「その三つを使いこなす事し、アサルトプログラムを超えろ・・・と。」
「はい・・・そうだ。」
ブレイは昨日の少女に渡されたディスクを見せた。
「これは？」
「昨日弟子入りを志願した少女から渡されて。」
「またか・・・とりあえず見ておこう。」
「あと・・・。」
ブレイが付け加える。
「機体に音声認識装置を取り付けておきます。プログラムのときだけですが、十分に使えます。」
「分かった！」
シャウシュッツは格納庫から出て行ってしまった。
「さて、もう少しだな。」
ブレイは残りの片付けに入ろうとした時、
「すみません。」
誰かに声を掛けられた。振り向くと、そこには昨日の少女がいた。
「あれ？昨日の・・・・。」
「はい、昨日レイヴン試験をクリアーしたミリィと申します。」
「そうなんですか・・・で、何の用ですか？」
「ディスク、渡してもらえました？」
「渡しましたが、あれは？」
「レイヴン試験の私の戦闘記録なんです。」
「そうですか。」
ブレイはまたコンソールを操作し始めた。
「あと、一つ・・・。」
「何です？」
ブレイはコンソールを打ち続けた。
「実は、僚機になって欲しいんです。」
「依頼ですか？」
「はい・・・でも、もう雇ってあるんですが、念の為に。」
「でも、私にはＡＣが・・・・。」
ブレイはエターナルＭＫ−�Vを見た。
「これを借りれば良いじゃないですか。」
ミリィはソリッドランサーを指差した。
「・・・そうですね。プログラムのテストほどに、少し借りますか・・・。」
ブレイは電話を使いシャウシュッツを探して、許可を貰った。
「良いそうですし、行きましょう。」
「はい！」
ミリィは自分のＡＣに乗った。ブレイもソリッドランサーに乗り、輸送機に乗り込んだ。
「あれ？エターナルじゃあ無いんですね。」
「ええ、あるテストを兼ねて。それと、エターナルは大破しましたから。」
「そうですか、それにしても君は昨日の・・・。」
「どうも、よろしくお願いします。」
「・・・何ですか？」
「また、英雄の弟子入りかい？」
「・・・はい・・・。」
そうこうしている内に目標地点に到着した。
「今回の依頼は研究所に侵入したＡＣとＭＴ部隊の撃破。行きます。」
「了解。」
二人は輸送機より降下した。
ミリィの機体は重装甲の中二脚に１０００マシンガンと両肩チェインガン。
左腕に実弾防御に優れた実盾を装備しており、コアはエネルギーの中型ＥＯ。狭い空間では脅威の武装である。
(機体の欠点は、重量と多少防御の薄い所だな。それ以外はこれと言って欠点は無い。)
「来ます。」
研究所から球体型のＭＴが数十機出てきた。ブレイはそのＭＴの横にあるエンブレムに気がついた。
「あれは、親衛隊のエンブレム！！」
「えっ・・・！？」
その時、球体のＭＴからミサイルが発射された。二人は何とか避ける。
「え・・・！？な、何！？」
「気をつけて！そいつ等は蒼の部隊の親衛隊です。」
「親衛隊？」
「そうです。親衛隊は隊長であるカイルさん、副隊長のカルト、あと作戦参謀である人の護衛なんです。」
「こいつ等は昨日戦闘記録を見たけど、そんな奴聞いた事無いわ。」
「当たり前です。親衛隊は蒼の部隊でも滅多に出る事に無い部隊です。
カイルさんとカルトはかなりの実力者ですから、親衛隊を付けないんです。
それに、以前のは通常部隊でした。恐らく保険でしょう。」
「と、言う事は奥にいるＡＣは・・・。」
「恐らく、参謀でしょう。」
「こいつ等は普通と何が違うの？」
「レーザー砲が外に付けられ、ミサイルを追加されています。その為、通常機より硬くなっています。」
「でも、行くしかないんですね。」
「・・・ええ。」
いくら親衛隊でも、レイヴン二人に落ちた。
「遅いよ。」
ミリィはマシンガンを一発も無駄弾が無く敵を落とす。
「ガンナー起動！！」
ブレイの声と共に、自動的に脚が安定、目標を補足。
「落ちろ！」
ブレイは引き金を絞り、敵を落とす。
「ソード起動！！」
再び声と共に、今度は機体の機動力が上がり、ブレードからエネルギーの刃が出る。
ブレイが一気に二機に近づいた。
「・・・斬・・。」
その後は神業に近かった。近いとはいえ、距離はある。しかし、それを一瞬にして落とした。
「これで終わり！」
ミリィは最後の敵を落とす。
「ふぅー。終わった。」
「それにしても、かなりの腕ですね。新人とは思えません。」
「父親がレイヴンだったの、その時操作方法を教えてもらって、特訓したの。」
「その父親は？」
「引退したけど、生活が苦しくなって、私がレイヴンに。」
「そうですか、じゃあ奥の敵を。」
「そうね・・・。」
二人は奥に進んだ。途中にＭＴがいたが、ブレイがガンナーを起動させてすべて落とした。
一番奥にＡＣの反応があった。そこは研究所のデータが保管されているメインコンピュータールームであった。
「ここか、開くぞ。」
二人は注意深くドアを開けた。そこには一機のＡＣが大破していた。
「アルスターさん！」
「ミリィちゃんか、すまない。」
「それよりどうして・・・。」
「上だー！！」
ブレイの声にミリィは反射的に機体を後退させた。
すると、ミリィのいた付近をチェインガンが吹き飛ばした。
「まだレイヴンがいたか。」
そこに一体のＡＣが降りてきた。
「何なの・・こいつ。」
敵は軽コアの実弾ＥＯを装備。色は黒と緑の迷彩。
まだ市販にはなかなか出回っていない大型ミサイルを複数発射する武器腕。
左肩にチェインガン。右肩にもまだ出回っていないレーザー砲を装備している。
「アヤ参謀か！！」
「その声はブレイか、久しぶりだな。」
「・・・知り合い？」
「私が蒼の部隊の知り合い、だと言う事は知っていますね。」
「一応は。」
「アヤ参謀は作戦や何処で何をやるのかを指揮しているんです。つまり、実質上の隊長なんです。」
「そういう事、じゃあ、行くわよ。」
アヤはチェインガンを構えた。
「行くしかないわね。」
「アヤ参謀はカイルさんと同等の実力です。」
「俺も支援くらいはやれる。」
三機は散開する。アヤはチェインガンは連射してきた。
基本的には避けられない武装ではないが、狭い所ではかなりの脅威になる武器である。
「喰らえ！」
アルスターはバーストライフルの引き金を引いた。しかし、相手は地形を巧みに使い避ける。
アルスターの機体、レヴァティーンはコアはＯＢ。色は白に近い灰色。軽二脚。
武装はバーストライフルとショートブレードだけ。肩には新装備のバックパックブースター。
エクステンションにターンブースターを装備して、旋回能力は高い。
「遅いよ。」
アヤはレーザー砲を発射。アルスターはまともに喰らい、右腕ごとバーストライフルを失う。
「すまない。離脱する。」
アルスターは機体を引かせた。
「喰らえーー！」
ミリィは両肩ガトリングを連射した。
しかし、機動力は明らかに低い機体のはずなのに相手はそうとは思えない程の機動力で瞬間的に回避する。
「ガンナー起動、発射！」
ブレイはプログラムを起動させ、レーザーを発射、アヤのＡＣの右肩を当たるする。
当たった事により、中に入っていた大型ミサイルが爆発し、周りが見えなくなる。
「レーダーが使えない！？」
「しまった、電磁パルスか！！」
「そういう事、なかなか強かったわ。また会いましょう、レイヴン・・・・。」
煙が晴れた時、アヤのＡＣはいなかった。
「それにしても、一体何なのあいつのＡＣ。明らかに異常よ。」
ミリィはもう我慢なら無いらしい。
「仕方が無い。一度帰還だ。それとブレイ。」
「何です？」
「帰還したら、聞きたい事がある。」
「・・・・分かりました。分かる範囲でお願いしますよ。」
三機は帰還した。これから正式には歴史が語られるとは知らずに。