サイドストーリー

サイレントライン:決戦、そして真の敵
「はぁーーー!」
「ソード!」
シャウシュッツとカイルの機体が空中で激突する。
力を力が消す。そんな事を繰り返し、既に30分が過ぎていた。
「やるな、シャウシュッツ!!」
「そっちもな、カイル!」
今度は距離を取り、カイルがマシンガンを連射する。
「ガンナー!」
シャウシュッツはマシンガンから放たれる弾を巧みな操作感覚で避け、レーザーライフルの引き金を引く。
「遅い!!」
カイルは敵に確実に当てることのできるガンナープログラムを使った攻撃を避けた。
「くそっ・・・!?」
その時、シャウシュッツはめまいを覚えた。
「どうした、戦いはまだ始まったばかりだぞ!」
通信機から聞こえるカイルの声にも、わずかだが、疲労の色が見えた。
当たり前か、とシャウシュッツは思った。これだけ極度に長引いた戦いは今まで一度もやっていないからだ。
普通なら、長くても五、六分のAC戦だが、ここまで長い戦いはカイルもシャウシュッツも初めてだ。
「行くぞ!!」
カイルのフォーニングがマシンガンを放った。
シャウシュッツはめまいをしながら何とか避ける。
「このままでは・・・!!」

「ハァ、ハァ、ハァ・・・。」
「ハァ、ハァ・・・。」
ハンクとカルトの所も多少疲れが出始めていた。
『喰らえー!!』
二人は同時に、カルトは多弾頭ミサイルと垂直連動ミサイルを組み合わせた他方向攻撃。
ハンクは垂直ミサイルと水平連動ミサイルを合わせた三次元攻撃を放つ。
互いが互いのミサイルを破壊し、機体に来るのはほんの二、三発である。
二人はそれを難なく避けていた。
(このままじゃ、まずいな。)
ハンクは心の中で思った。恐らくカルトも同じ気持ちであろう。
基本的に、ガンナーアセンを扱うレイヴンの最大の弱点は弾切れである。
ACは素手による格闘戦は想定されてはいない。接近戦の主はブレードを使うからである。
弱点を付かれないように弾は出切るだけ両者残してきたが、
これ以上戦闘が長引けば、弾が切れるのは火を見るより明らかである。
しかし、カルトにはEOがある。弾が切れても、EOで攻撃してくるはずだ。
「いちかばちかでやるか・・・。」
ハンクは弾を確認した。マシンガンはあと二百発少し、ミサイルはあるが、連動はない。
「エクス、バックウェポン破棄・・・。」
ハンクが武装を破棄した時、カルトもロケットとミサイル、エクスを破棄していた。
お互いに考える事は一つらしい。
「行くぜー。」
「うぉー。」
二機のACが駆ける。
目指すは零距離での発砲。
お互いに投てき銃で動きを止めようとする。しかし、お互いの攻撃は空を切る。
しかし、始まりには終わりは付き物である。それが戦いでも・・・。
「うっ・・・!?」
カルトはめまいを覚えた。その瞬間をハンクは逃さなかった。一気に接近すると、
ガガガガガガガガガ
マシンガンの音があたりにこだまする。
「しっ・・・しまった・・・!!」
マシンガンを連続で近距離から、しかも、ジェネレーターを・・・
「やったのか・・・・。」
「ハン・・・ク・・・・・よ・・。」
通信機からカルトの声が聞こえた。
「真の敵に気を付けろ・・・。」
「真の敵?」
「そうだ、敵は・・・・お前・・・達・・・の近くに・・・。」
その時、ジェネレーターが爆発を起こし、通信が途絶えた。
「カルト!・・・・真の・・・敵・・・・・。」
ハンクの脳裏にこの言葉が刻まれた。

カルトとハンクの決着が付こうしていた時、カイルとシャウシュッツの戦いも決着を付けようとしていた。
それぞれの武器を捨て、間合いを詰める。
お互いの月光が威力を消す・・・はずだった。
「ソード!!」
シャウシュッツが間髪いれず起動させたプログラムでカイルの月光がかき消され、
カイルは機体を後退させ、ダメージをやり過ごす。
「ふぅ、どうやらお前相手に手加減ありでは勝てないようだ。」
「やっと本気を出すか・・・。」
シャウシュッツは戦闘が始まった時から気が付いていた。
本気じゃ無い、と。
「アサルトプログラム起動!!」
その瞬間、カイルのフォーニングMK−Vは後ろにいた。そのまま、月光を振り下ろす。
「くっ!!」
何とか月光で防いだが、わずかだが、パワー負けしている。
「そらそらーー!」
さっきとはまるで違う動きのフォーニングがそこにいた。次第にシャウシュッツは押されていく。
「これが・・・・!?」
その時、フォーニングの動きが緩んだ。
「今だ!!」
その時、フォーニングの中では、カイルの苦痛が見えた。
アサルトプログラム、更に“あるシステム”の情報処理をAC、いやカイルが追いつかないのである。
本来は難なくできる操作が疲れのせいで出来ない。
その時、ソリッドランサーの接近に気が付いた。その時のカイルに反撃の余地は無かった。
「しまっ・・・。」
「終わりだーー!」
シャウシュッツの放ったオーバーリミットがカイルの機体を破壊した。しかし、まだ動ける状態である。
「見事だな、シャウシュッツ・・・。」
カイルの声にあまり元気が感じられない。
「これが、終わりではない。始まりだ・・・。」
「始まり・・・?」
「そう、我々はお前達の、いや世界の敵と戦っていた。」
「世界の敵・・?」
「そうだ、そして、その組織の名は・・・・。」
その時、フォーニングは爆発を起こし、跡形もなく消えてしまった。
「カイルーー!!」
シャウシュッツの声は虚しく響くだけであった。

「ナンバー4よりナンバー6の身体の再生完了しました。」
「それぞれの機体の再現完了。」
何処かの地下と思われる所で研究員と思われる人々がさわしく動いている。
「各部異常は無いな。」
「総帥。」
一人の研究員が一人の男に気が付き、敬礼する。どうやらここは軍で、どうやらその男は階級が高いらしい。
「今の所はあり・・。」
「総帥!!」
一人の研究員が近づいてきた。
「大変です。ナンバー1とナンバー2がACを強奪、基地より脱走しました!」
「何だと!」
「追撃用部隊、基地の護衛部隊は壊滅、追う手立てがありません。」
「私が行きましょう。」
後ろから声、振り向くとそこには一人の男がいた。
「しかし、まだお前は・・・・。」
「久しぶりの体です。肩鳴らし程度にはなります。」
「・・・分かった。しかし、無理はするな。」
「了解。」
その男は基地の格納庫に行くと、今の企業では作られていないパーツで出来たACに乗り、そいつ等の後を追った。
これが、真の敵の正体を明かすとは知らずに・・・・。
作者:カイルさん