サイドストーリー

サイレントライン:ハザード強襲
「なん・・・て・・強さだ・・・。」
この言葉を最後にクロノは気を失った。
それを、赤と黒の機体が見下ろしていた。

「何で俺達は居残りなんでしょう。」
「さぁ。」
クロノとテイルは、他のメンバーが作戦を実行していた時、グローバルの防衛に携わっていた。
テイルとクロノの機体は、こちらの時代のパーツで作られていた。
テイルの機体は、以前機体と同じスタイルで、コアはOB、軽二脚、色は青。武装はマシンガンと月光だけである。
クロノの機体も同じで、コアはOB、色は緑、中二脚。武装は小型ハンドグレネード、
新型のブレードハルバード、チェインガン、バーストミサイルを装備していた。
「それにしても、ハザード社の連中、よくやる・・・。」
テイルは呟く。
現在、グローバル社にはハザード社に住んでいた所を破壊された市民、企業の代表者などが集まっている。
更に、護衛として企業のMT部隊が周りを囲んでいる。他にも、急ピッチで設置された砲台が複数ある。
「こちらポイント105、異常無し。」
企業のMT部隊の通信を耳にしながら、防衛を続けていた。
その時、通信機から焦り声が聞こえた。
「ポイント129にハザード社と思われるACを確認。至急増援を・・・ぐわぁー。」
「クロノ!」
「はい!!」
二人はポイントに向かった。
ポイント129はグローバルの中枢データがあり、最も重要で、MTがかなり配置されている場所である。
「これは・・・!?」
「ちっ!」
そこのMT部隊は全滅していた。たった、一機のACにより・・・。
「所詮この程度か・・・・企業のMTは・・。」
そこにいたのは、色は赤と黒、軽二脚。コアはOB。
武装は右腕にパイルバンカー、左腕に月光、両肩にそれぞれ小型一連ミサイルを装備していた。
「クロノさん、テイルさん、聞こえますか!?」
通信機から女性の声が聞こえた。
「聞こえるが、君は?」
「私は、貴方達二人の補佐を勤めさせていただくイルザと申します。早速ですが、敵
ACの外装パーツは、ミラージュ、クレストの新パーツを使っています。
全体的に、向こうの方がトータルバランスは上です。気をつけて。」
「了解!!」
二人は敵に向かってブーストダッシュで接近した。
「ほぉ、まだ生き残りがいたか。少しは骨がありそうだ。」
それに気づいた赤と黒の機体のパイロットもブーストで接近した。
「貰った!!」
クロノは先手必勝とばかりにハンドグレネードを放った。
しかし、相手は人のような動きで避け、クロノのファイナルトリガーの後ろに周り、月光で背中を切り裂く。
「しまった!!」
切られた衝撃で機体が前に倒れる。
それに追い討ちとばかりにパイルバンカー打ち込もうとしたが、テイルの月光で防がれる。敵は一度間合いを取る。
それを追撃するテイルのグロックウェポン。クロノはその間に体勢を立て直す。
「うろちょろと・・・!」
テイルはマシンガンを連射するが、相手の巧みな、人並みの動きで避ける。ACの動きをここまで再現できるのだろうか。
「流石は、伝説のレイヴンと言われた事はある。」
相手から通信。その声には少し聞き覚えがあった。
「その声・・・・ハザードか!!」
「その通り・・・。」
ハザードはミサイルを発射。攻撃ではなく、誘いである。
それを知らないテイルはミサイルを避け、一気に間合いを詰めた。
それを待っていたのかのように、ハザードはパイルバンカーをテイルのACのコアに叩き込んだ。
「な・・・・・。」
コアを破壊された事により、テイルのグロックウェポンは全システムが停止、崩れ落ちた。
「テイルさん!!」
クロノが叫んだ。
「・・・・心配しないで下さい。気絶しているだけです。」
「良かった・・・あいつ・・!」
クロノはハザードに向き直った。ハザードは既に臨戦体制に入っている。
(隙と言える隙が無い。)
クロノはすぐに思った。ハザードの機体は、接近戦を想定しているが、武器腕に新しく出たデュアルブレードを装備していない。
防御面を重視した為か。機動力も先の戦闘からかなり高い。
「・・・このままでは埒が明かないな。」
ハザードは一気に間合いを詰めた。
「くそっ!」
クロノも間合いを詰める。
お互い、射撃武器なら避けられない距離まで入る。
「貰った!!」
この距離なら、とクロノはハンドグレネードを発射した。
「!?」
しかし、驚愕を味わったのは、クロノであった。
ハザードは、当たる寸前で、月光でグレネードの弾を切り裂いたのである。
ハザードはそのままの速度で、クロノのACのコアにパイルバンカーに打ち込んだ。
「なん・・・て・・強さだ・・・。」
この言葉を最後にクロノは気を失った。恐らく、かなりの衝撃がかかったのだろう。
それを、ハザードが見下ろしていた。
「・・・・・終わりだ。」
狙いをコクピットに定め、パイルバンカーを打ち込もうとして、急な衝撃に機体が傾く。
「何だ?」
周りを見ると、そこにはエースのACがいた。
「ちっ、遅かったか!?」
「・・・・・。」
ハザードはそのまま、話し掛けた。
「貴様、カイルを知っているか?」
「何だと!・・・・・知ってはいるが・・・。」
「なら伝えといてくれ。」
ハザードは機体を後ろに向かせ、
「人が始まり、終わった場所で待っている、と。」
ハザードはOBを起動。エースは追いかけようとしたが、OBの速度には追い付けず、逃がすしかなかった。
「人が始まり、終わった場所・・・?」
エースはただ、立ち尽くしていた。

「・・・なるほど・・・。」
エースから、襲撃事件を聞いて、カイルは頷いた。
「人が始まり、終わった場所・・・・あそこか・・・。」
既に、周りに和んでいるクラインが言った。クラインの事は、テイルとクロノを含め、全員に言った。
全員が良いとは言ってはくれなかった。だが、何とか説得して、良しにしてもらった。
「知っているのか?」
「ああ、確か、リセットポイントとも呼ばれる場所だ。」
「一体何処に?」
既にここには、作戦に参加したメンバーが揃っている。
「・・・・ここだ。」
地図を見たクラインが指を指し、言った。そこは、何も開発が進んでいない砂漠のエリアだった。
「ここは、昔、大都市があった所だ。そこには、世界の大半の人が住んでいた。そして、そこを中心に大破壊は起こった。」
「確かに、人が始まり、終わった所だな。」
「ここに、本隊がいる。」
「ところで、聞いていいか?」
カタストロフがクラインに、シルバが引き際に言った言葉を話した。
「タイムハザード計画か・・・。」
クラインは呟く。
「それは、その名の通り、時間を破壊する計画だ・・・。」
「具体的には、どういう?」
「ACが過去、大破壊が起こるかなり前の過去に行ったらどうなる?」
「・・・・・・まさか!?」
「そう、過去に行って、全てを初めから作り変えるつもりなんだ。」
「それでは、未来が変わってしまう!今の俺達は、存在できなくなる!!」
「それだけではない。奴等は他の世界、別世界にまで行き、全てを支配するらしい。」
「一体、それの計画は進んでいるんですか?」
「既に、他の世界に行く次元転移装置は完成。過去へ行く時空転移装置は完成率30%だったはず。」
「どちらにしても、やばい事には代わりなしか。」
ハンクが呟く。
「場所は分かっているんだ。今行くしかないだろう。」
ノヴァが言う。
「しかし、この状況で攻めてもやられるだけだな。」
クラインは言う。しかし、クラインの言う通り、今は機体の整備が済んでいない。
それに、武器の弾がもう少なく、武器本体の予備が無い。つまり、壊れたらもうお終いである。
「それなら、心配無いわ。」
アヤが言った。話しによると、地上の基地に残っていた整備員を呼んで、
明日には、大破壊時のデータを元に作った新型武器と共に来るらしい。
「明日まで、おあずけというわけか。」
そして、奪還の依頼を受けたメンバーはディーを墓に埋め、その他のメンバーも、自分の機体のチェックを行なっていた。
最終決戦に向けて。
「アヤ!」
その声に通路を歩いていたアヤが立ち止まる。そこには、ミリィとブレイがいた。
「依頼の時に聞いた、ファーストについて、答えを聞いていませんでした。」
「それには私も興味があります。」
アヤは溜め息をついた。
「話したくは無かったけど、仕方ないわね。」
アヤは、少しためらい、
「実は、私が作った人工人間、一人じゃないの。」
「え・・・?」
二人は驚く。
「この話しは、他の人にも言っておいて。いいか?」
「はい・・・。」
「私の作った人工人間、AEGIS HUMAN(イージスヒューマン)、通称A・Hと呼ばれた。
イージスとは、昔の神話に出てきた神聖な盾のことを指す。人々の秩序の守る事を目指して作り上げたんだ。しかし・・・。」
「しかし?」
「A・H自体は常人より腕力、脚力、記憶力は高い。だが、成長しきるまでは常人と同じなの。
その為、私は完成した二体の個体を二組の夫婦に預けた。一人は、既に子供がいる夫婦。
つまり、ノヴァの弟としたカイル。もう一人は、子供いない夫婦。名前は・・・・ハザード。」
「ハザードって、敵の!?」
「そう、コードはぞれぞれ、ハザードはファースト、カイルはセカンドと名づけた。
つまり、あの二人は、遺伝子上では兄弟なんだ。」
「兄弟には見えないけど・・?」
ブレイは聞く。ブレイは、以前テレビでハザードの姿を見た事がある。しかし、兄弟
にしては、全く違う。
「ハザードはACによる戦闘を想定した個体。肉体での戦闘は重視していない。
カイルは、企業の重役を密かに殺す暗殺者として調整した個体。
その為、ACによる戦闘はハザードには及ばないけど、
二人共ACの操作技術、武術は常人が相手にしたら瞬殺される程の腕を持つわ。
だから、個体を形勢する時に、遺伝子が変わったから、兄弟とは思えないほどになっているわ。
他に、フィールドバックシステムは二人共使え・・・・。」
その後は、カイルがシャウシュッツとハンクに語った話しだった。
「じゃ、また。」
アヤは立ち去った。二人はそれぞれ、話す人を決め、立ち去った。
この戦いは、この世界だけではなく、彼等の知らない世界にまで及び、
それにより、蘇った死者と人工的に作られた戦士が彼等の前から一生消える事を知らない。
作者:カイルさん