サイドストーリー

AC3SL外伝:学生レイヴン
「こんな時に悪いですが、緊急の依頼が入りました。」
「時期が悪すぎるよ。」
彼、マグナ・アストレイは電話を置いた。
ここは、学校の職員室。彼は、この学校の生徒。年齢は15歳くらいである。
「マグナ、また依頼か?」
「はい、そうなんです。」
マグナの担任が話し掛けてきた。
「大変だな。まあ、校長には俺から言っとくから、依頼に行って来い。」
「毎度毎度すみません。」
マグナは、教室に戻った。既に次の授業は始まっていた。とはいっても、体育ではあるが。
マグナは帰り支度をすると、家に戻った。しかし、その家というのが、
「お帰りなさい。」
「ああ。」
そこは、グローバルコーテックスの宿舎、つまり寮。
そう、マグナの正体は、レイヴンだったのである。
しかし、子供の為、学校に通っている。その為、早退、遅刻、欠席は当たり前になっている。
ちなみに、学校でマグナがレイヴンだと知っているのは、マグナの担任と校長だけである。
マグナは、部屋に行くと、パイロットスーツを着ながら、依頼内容を聞き、承諾のサインを出し、格納庫に向かった。
「おっちゃん、サイレントハンターの調子は?」
「抜群じゃ。お前さんの機体の特徴、エネルギースナイパーライフルと月光もな。」
おっちゃんと言われた整備員が言った。
「流石はおっちゃん、元レイヴンである事はある。ACについてはよく知っている。」
「お世辞はいい、さっさとACに乗った乗った。」
マグナは苦笑しながらAC、サイレントハンターに乗り、機体を輸送機の乗せる。輸送機は目標地点に到着した。
「コンティオ、目標地点に到着しました。」
「了解。コンティオ、サイレントハンター出る!」
マグナ、いやコンティオはサイレントハンターを操り、輸送機から降りる。
そこは、ある市街地だった。前方には、MT部隊がいる。
「今回の依頼を確認します。依頼は、市街地を通過するクレスト社の重役の乗ってい
る車の排除です。重役の車が到着前に、護衛のMT部隊を排除してください。」
「了解、行くぞ。」
コンティオは、五機のMT部隊と戦闘に入った。
コンティオのサイレントハンターは、色は、黒とわずかに白。コアはOB、軽二脚。
武装は、右腕にエネルギースナイパーライフル、左腕にムーンライト、
右肩に小型一連ミサイル、左肩に50発の小型ロケット、エクスにターンブースターを装備している。
敵MTは肩からロケットを発射してきたが、素早く避け、
エネルギースナイパーライフルを一機に叩き込み、そのまま、近くにいたMTを月光で切り裂く。
「悪いが、これも依頼でな。」
その後の敵は、ロケットで、コクピットを狙わず、機体を動けなくするだけにした。
もちろん、前の二体も。
「コンティオ、重役の車が到着しました。」
「了解。」
数秒後、右手の通路から一両の車が来た。
「悪いね。」
コンティオはエネルギースナイパーライフルの引き金を引き、車を破壊した。
「目標の破壊を確認・・・・敵ACを確認!!」
「何!?」
上にAC用輸送ヘリが現れ、一機のACを降ろした。
「レナ、敵は!?」
コンティオは、自分のオペレーター、レナ・ファランクスに聞いた。
「・・・・・・ランカーACブラックスナイパーです。」
「ホーンテッドか!!」
ホーンテッドのブラックスナイパーは、素早く市街地に紛れる。
コンティオは、レーダーを見た。
ホーンテッドは、右にいた。
ホーンテッドはグレネードを連射してきた。
しかし、コンティオは素早く機体を操作、直撃するグレネードをロケットで破壊する。
「ちっ!!」
ホーンテッドは再び市街地に紛れる。コンティオは、レーダーを見なかった。
ACでの戦闘の場合、大体の戦いが近距離、中距離がある。まれに長距離があるが、
ほとんどは、近か中である。
もう一つ、特徴がある。大体AC戦の場合、正面からの撃ちあいは、高威力の武器を持っていない限り、あまりしない。
ホーンテッドの武装は、遠距離戦を重視したアセン。近距離でも威力を発揮するが、正面からの撃ちあいには向かない。
その為、攻撃方向は限られる。
ガシャン。
すぐ後ろで物音。ホーンテッドのブラックスナイパーが空中から来て、地面に着陸した。
ホーンテッドからグレネードが発射される。
しかし、コンティオはターンブースターを起動。月光でグレネードの弾を切り裂く。
「そんな、事が!?」
「出来るんだよ、ホーンテッド。」
一瞬の隙をつき、エネルギースナイパーライフルを発射。ブラックスナイパーのジェネレーターを破壊する。
「ちっ、流石だな。コンティオ。」
「そういう、あんたもな。」
「コンティオ、敵との雑談は控えてくださいよ。」
「いいじゃんかレナ。ところで、輸送機はいつ来るんだ?」
「あと、5、6分ですね。」
その時、既に太陽は地平線に消えようとしていた。
「そうか。じゃ、コーヒーでも飲んで待つか。ホーンテッド、あんたもどうだい?」
「じゃ、甘えさせてもらうか。」
「敵とのコーヒーブレイクも・・・・。」
コンティオは、通信機を切った。
「良いのか?」
「良いの良いの。あいつは仕事に忠実だから、こういう事が嫌いなだけだから。」
「そうか。それにしても、流石はアリーナの二位だな。」
「ま、これも実力って奴かな。」
「調子に乗るな。」
そんな事を話しながら、コンティオとホーンテッドは、コーヒーを飲みながら、輸送機を待った。

「知ってるか?マグナ。」
親友のカールが話し掛けてきた。
「何がだ?」
「昨日、市街地でクレストの重役が殺されたって。」
「今日、ニュースでやってたろ。」
「それだけじゃない。俺、その時、そこでACが戦ってるのを見たんだ。」
「へえ。」
「かっこよかったなー。確かあれって、アリーナの二位のコンティオさんのサイレントハンターだと思ったんだよ。」
「あの?」
「そう、あと何人か見たんだ。でも、警備兵が来て、避難させられたんだ。
その時、ホーンテッドさんのブラックスナイパーが来たんだ。生のAC戦、見たかったなー。」
目の前にいるのがそのコンティオだと知らず、カールは悔しがっていた。
その様子を見て、マグナは苦笑した。
「おい、もう席につけ。」
担任が入ってきて、朝のホームルームが始まった。

「マグナ、緊急の依頼です。」
その日の昼、学校の職員室。マグナは、脱力した。

コンティオ。
通り名 名も無き狩人
機体名 サイレントハンター。
ミッションでは、全くと言うほど人を殺さない、アリーナ二位のレイヴン。
その正体は、ほぼ毎日来る依頼で勉強が出来ない、哀れな一人の少年である事を知っているのは、数少ない。
作者:カイルさん