サイドストーリー

名銃から放たれる物語
−ミラージュの研究施設−

女性研究員「柄澤さん。少し休憩を取られてはどうですか?」
柄澤「ああ、じゃあ、きりが良い所で休憩をもらおうか。」
女性研究員「はい。それでは、後でコーヒー。机に置いておきますね。」
柄澤「ありがとう。助かるよ。」
机に広げられた図面を見る。
それはy字に近い形をした新しい銃の設計図で、図面の端には殴り書きでEnergyと書いてある。
そして、時折考え込みながらペンを走らせた。

柄澤「ふぅー・・。」
少し冷めたコーヒーを手にパソコンの電源を入れる。
カタカタ・・・。
パソコンのキーボードを叩き、パスワードを入力した。
柄澤「KARASAWA HARUKIっと・・・。」
起動して間もないパソコンのマウスをネットに繋ぎメールを開く。

メールが届いてます


TITLE

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SENDER

麻生弘司

TEXT

お久し振りです。 
相変わらず新しいパーツの開発に精を出していますでしょうか。
私の方でも今。新型のエクステンションに力を入れてます。
 そういえば、先週の休日に柄澤さんに薦められていた推理小説を本屋で見つけたので思わず買いました。
今のところ、3分の1くらい読んだのですがとても面白いです。 
私の予想だと、主人公の恋人が犯人ではないかと睨んでます。でも、会社の同僚も怪しいですね。
そういうことで、読み終わったらまたメールで感想を書きますね。
それでは、また今度。お互い研究が一段楽したら飲みにでもいきましょう。

柄澤「ああ、そうだな。」
メールの相手は自分より3つ年下で、ライバル企業であるクレストの研究員。麻生弘司(あそうひろし)からだった。
ライバル企業の麻生が柄澤と知り合ったのはインターネットの何気ない掲示板。
お互い、研究員ということですぐに打ち解けあい、研究の合い間を縫ってはメールでやりとりした。
もちろんその間にはミラージュとクレストの文字はなく、柄澤にとって麻生は友人であり弟分のような存在だった。
カタカタ・・・。
返信のメールを打ち、コーヒーを口に含む。
その味は少し、苦かった。

それから、一週間。
新しい銃の開発は順調に進み。麻生とのメールも変わりはなかった。

TITLE

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SENDER

麻生弘司

TEXT

こんにちは。
この前、うちの会社の本社ビルにテロリストが襲撃をしたらしく、たまたま、私の居る研究所も近かったので大騒ぎでした。
でも、レイブンの活躍でなんなく治まりました。
その時のレイブンはあっと言う間にテロリストのMTを退治し、すごかったです。
私もレイブンとして戦うことはできなくても研究員として良い武器を開発して協力できたらな。と思いました。
 さて、小説ですが、全部読み終わりましたよ。 まさか犯人が主人公の弟だったとは意外です。
でも、最終的に自分が犯行に使った凶器の銃で自殺するんですよね。 どこか悲しいお話でした。
それではお体の方。無理しないで、がんばってください。 

所長「それで、柄澤君。これがその試作品かね。」
柄澤「はい。重量は1520と重いですが、破壊力を1600とし。弾数は50発でエネルギー出力を取り入れてます。」
所長「うむ、すばらしい。 実にすばらしい出来だ。」
柄澤「ありがとうございます・・。」
横でまだ名もない試作品の銃を見つめ、口を開けている研究施設所長の顔が柄澤には貪欲で愚かに見えた。
所長「よし、本社に連絡を入れ次第。この試作品を元に各工場で生産を開始しろ。」
部下「はっ」
柄澤「所長っ お待ちください。 まだ、この銃は試作段階でして。」
柄澤は自ら設計した銃の性能がどれほどの物か分かっていた。
そして、それは驚異的な威力を誇り銃口からは放たれるのは恐怖であると・・。
所長「大丈夫だよ、柄澤君。この銃なら十分、新製品として通用する。」
柄澤「しかしっ」
所長「そうだ、この銃を開発した君の努力を讃え、名前をKARASAWAとしよう。」
柄澤「MWG−KARASAWA。素晴らしいじゃないか。 はっははは」
皮肉にもこの時。ミラージュの研究施設で後に名銃と呼ばれるMWG−KARASAWAは誕生した。
MWG−KARASAWAの登場は企業問わず、レイブン達の間でも、衝撃的であった。
多くの新人レイブンはそれに魅了され、またアリーナにおいて上位にランクするベテランのレイブンもその銃を放って置かなかった。
これにより、ミラージュはその地位をさらに確固たるものにしていく。

メールが届いてます


TITLE

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SENDER

麻生弘司

TEXT

こんにちは。
柄澤さんが開発したMWG−KARASAWAすごい人気ですよ。
データを見ましたが驚きました。あの威力で発射感覚を550まで縮める事ができるなんてさすが柄澤さんです。
今、うちのクレストもMWG−KARASAWAに対抗するような銃を製作するよう上から言われているのですが難しいです。
私では柄澤さんの開発した銃に対抗できるような物が作れるか不安ですが、それでも一応、設計図を描いてます。
今度は私が柄澤さんを驚かすようなすごい銃を作ってみせるので期待していてくださいね。
 最近、テロリストが各地で過激的なテロ行為を行っていると聞きます。柄澤さんもお気をつけください。

柄澤「・・・。」

その夜。ミラージュの研究施設が襲撃を受けた。
施設を破壊していくレイブンの右腕に持っている銃はMWG−KARASAWA。
青い閃光の後にはミラージュの研究施設がその姿をガレキの山と炎の海に変えていた・・・。
柄澤は自ら開発した銃によりその命を絶ったのだ。


男性研究員「おい、麻生。知ってるか? 昨日、ミラージュの研究施設が襲撃されたらしいぜ」
麻生「ああ・・・。」
すでに麻生は朝、起きた時にニュースでそれを知っていた。
男性研究員「研究施設はほぼ壊滅。生存者は1人もいないらしいぜ。」
麻生「・・・。」
男性研究員「ミラージュには悪いが俺らクレストととしては大喜びだよな」
バシッ!
男性研究員「痛っ、なにすんだよ!?」
気が付いたら右腕の拳で隣のおしゃべりを殴っていた。
麻生「悪い。俺、新しい銃の研究があるから・・・。」
そう言って、その場からゆっくりと重い足取りで自分の研究室へ向かった。
麻生「くそ! どうして・・・どうしてだよ!」
研究室に入るとすぐ机を思いっきり叩いた。
自然と瞳からは涙が流れ下の図面を濡らす・・・。
麻生「今度、一緒に飲もうって言ったのに・・・。」
麻生「柄澤さんのMWG−KARASAWAよりすごい銃を作って驚かそうと思ってたのに、どうしてだよ!・・。」
力強いはずの言葉はどこか震えている。
麻生「ちくしょう・・・。」
そして、麻生は設計図を完成させようとひたすら定規とペンを動かした・・。


−2ヵ月後−

1人の男がアリーナを観戦していた。
ランクEの新人同士による対戦で周りの観客も本人達に負けずと白熱している。
男「・・・。」
男が見つめる先には赤い機体と青い機体が戦っている。
赤い機体の右腕にはMWG−KARASAWAがその銃声を響かせている。。
青い機体の右腕にはMWG−KARASAWAに対抗して作られたCWG−XCMK/70が握られていた。
お互い一歩も退かず、ほぼ互角の戦いを繰り広げるが勝負が決まる前に観客席の窓に1人の男の後ろ姿が反射し、消えた。

男にはもう、二つの銃声は聞えない・・・・。
その手には本が握られていた。

終わり
作者:フロイトさん