サイドストーリー

始まり
AC・コックピット内
「作戦は成功。レイヴン、お疲れ様。」
オペレーターが作戦の成功を告げる。そう難しくもないミッションを終えた少年は、
深いため息をついた。
「どうしました?レイヴン?」
「いや、つまらないミッションだったから・・・」
「レイヴンなり立てのあなには丁度いいと思いますが?」
「むう・・・」
彼の名前は刃(ジン)。まだレイヴンになって2週間ほどしかたっていない、新人である。
彼の戦いは2週間まえの、試験から始まった。
   
  2週間前・輸送機内部
「はぁ〜緊張するよ、ホントに。お前はどうよ?」
コックピット内にレイヴン希望者の声が響く。刃は今、試験用のACの中にいた。
「俺か?」
刃は簡潔に答えた。
「お前しかいないだろ。」
彼の言うとうり輸送機には2機のAC、つまり2人の希望者がいる。
「別に緊張はしていない。やれる事をやるだけだ。」
希望者は少し意外そうに、
「へぇ、そんなもんかねぇ。俺は緊張しまくりだけど。お前なんて名だ?」
「刃だ。そう言うあんたは?」
「俺はティコってんだ。」
刃は16歳ほどの少年である。痩せ型の体系に黒髪。なんとなく、寡黙で生真面目そうな雰囲気がある。
それに対しティコは、短めの金髪に3連ピアス。横柄で、どこか不良っぽい雰囲気である。
年齢は18歳ぐらいだ。
2人が自己紹介をし終わったあたりで、試験官からの通信が入り、輸送機のハッチが開かれた。
「おい刃、準備はいいな。やられるなよ!」
「当たり前だ」
「じゃ、いきますか!」
2人は戦場に飛び出した。
 
    第2都市区・レイヴン試験場
逆脚戦闘メカ・モアにライフル弾が叩き込まれ、爆発、炎上した。2機のACは次々と敵を撃破していく。
「懐がガラ空きだぁぁ!」
ティコは的確な射撃でモアを撃破する。
「刃!堕ちてねぇよな!」
「ああ。」
刃は積極的に接近戦を仕掛け、敵を切り裂く。
どちらも新人にしては良い、と言うよりすごい動きをしていた。ティコは遠距離戦に秀でていて、
すべての敵をライフル、しかも一撃で落としている上に、ノーロック撃ちも軽々とこなしていた。
刃は格闘戦に秀でており、ブレードの扱いが上手い。それ以上に試験官が注目したのは刃の回避率だった。
いまだ一撃も被弾していないのだ。試験用の機体で。
おそらく試験官も(本当に新人か?)と思ったことだろう。
「やるな、刃。」
「あんたもな・・・これで最後だ。」
刃はオーバードブーストを起動し、突撃した。
 
  試験終了後・格納庫
「いや〜これで俺たちも、晴れてレイヴンか。」
ティコはいつになく上機嫌で話していた。丁度今、合格を通知するメールが届いたばかりなのだ。
「だがこれからは実戦だ。試験のように甘くはないぞ。」
刃が坦々と感想を述べる。
「わかってるよ。そんなモン、覚悟の上だ。きっと次に会うのは戦場だろうな。」
「そのときはそのときだ」
そう言うと刃は、自分のACへ飛び乗った。
「行くのか?」
「ああ。・・・達者でな。」
「刃もな。またいつか一緒に戦えるかもな。」
「ああ。」
そう言って、刃は去って行った。
 
  現在・刃の格納庫
「エマか、・・・そうだ、クレストの・・・了解、すぐ行く。」
刃は輸送機に乗り込んだ。戦う理由を胸の中に秘め。
彼の戦いは始まったばかり。
作者:サンドラの槍さん