AC3SL外伝:悲しみの戦士
ショットガンとエネルギーライフルの弾が、アリーナの中で交差する。そこでは、二機のACが戦っていた。
一機のACは、中二脚、コアはOB、色は暗い青。武装は、エクステンションに連動ミサイル。
右肩に多弾頭ミサイル、左肩に小型50発ロケット。両腕には、強ショットガンを持っていた。
もう一機は、逆間接、コアはOB、色は赤。
武装は、エネルギーライフルとオービット、最大レンジのブレード、ハルバードを装備していた。
なぜ、二機は戦っているのか。ここはアリーナではあるが。観客はいない。
つまり、アリーナの戦いではない。では、一体・・・・。
その時、青色のACのショットガンの弾が赤色のACの腰部をを貫いた。
赤色のACは、二つに分かれ、力なく地面に落ち、じたばたと、腕を動かしていたが、青色のACが腕に乗り、動きを抑える。
そして、ショットガンを赤色のACのコクピットに定める。
「最後に忠告だ。コクピットから出て投降しろ。私は命まで取ろうとは思わない。」
青色のACから通信。男であった。
「・・・・・・・・。」
赤色のACから反応は無い。
「・・・忠告はした。」
男は、ショットガンの引き金を絞った。
弾は、コクピットを破壊した。青色のACのパイロットは、コクピットから出ると、赤色のACにコクピットを見た。
子供はトラウマになり、大人は目を背けたくなる光景があった。
パイロットは、至近距離から撃たれた弾のせいで、単なる肉の塊にしか見えなかった。恐らく、即死であろう。
コクピット自体も、弾のせいで使える計器は一目見ただけでは分からないほど壊れていた。
しかし、男は、血の付き壊れた計器を一瞥して、一つの計器から、一つの箱を取り出した。
その後、元人現肉の塊の中に手を入れ、一つのチップを取り出した。
「こちらカルト、目標の物を回収、帰還する。」
「了解。帰還してください。」
カルトと名乗った男は、腰につけた携帯型通信機の通信をして、ACに乗り、帰還した。
「よく、あんなのに手を入れられたわね。」
休憩室でくつろいでいたレイヴン、カルトに、一人の女性レイヴンが話し掛けてきた。
「一応は、依頼だからな。」
カルトは、キサラギからの依頼で、施設から脱走した強化チップを入れた被験者を確保して欲しいとのことだった。
しかし、被験者は施設近くを通っていたミラージュ社の輸送車に入っていた無人ACを奪い逃走、アリーナに逃げ込んだのである。
それがあの戦いだったのである。
殺しても構わないから、キサラギ社は強化チップ、ミラージュ社はACに詰まれているAIの回収を行なったのである。
「私は、依頼でもあんな塊に手を入れたくはないわ。」
「確かに、女子供、男でも吐き気がする光景だったからな。」
「そうでしょー。」
「しかし、依頼は依頼だ。よく覚えておけ、ローズ。」
「はいはい、肝に瞑しておきますよ。」
女性、ローズは、やれやれと、手を動かした後、休憩室から出て行った。
カルトはローズが出て行った後、多少苦笑した。
ちなみに、カルトは、ローズが言うには、『無口、無鉄砲、無愛想』が揃ったレイヴンで、ローズに時だけかなり話す。
これでカルトは話したほうなのである。更に、無鉄砲というのは、依頼で僚機を雇っている時、味方をかばうほどなのである。
無愛想というのは、人との話で、自分に関係ある話しかしないからである。
今のカルトは、こんな時間がいつまでも続くと思っていた。
しかし、それを打ち壊す依頼が入ってきた。
「それではな!!」
カルトはAC、エクリウスを操り、高機動型MTにショットガンをかまし、落とす。
「はいはい、落ちてよ!!」
ローズは、右腕のライフルと左腕のハンドガンで逆間接のMTを破壊する。
ローズのAC、ヒートファイヤーは、四脚、コアはOB、色は赤。
武装は、赤いライフルと熱量ハンドガン、右肩に携帯型リニアガン、左肩に小型一連ミサイルを装備した、熱攻撃重視型。
ヒートファイヤーは、一発の攻撃力が低く、一発で形勢を逆転できる武装は無いが、
熱による攻撃で、相手のACをオーバーヒートさせ倒すのである。
それにより、あらゆる敵において安定した戦いが可能なのである。
今回、カルトとローズは、クレスト社からの依頼でローダス兵器開発工場の救援に来たのである。
衛星砲からの砲撃が来る中、ミラージュ社のMT部隊を破壊していた。
その時、白いカスタムACが来て、グレネードを発射してきた。
「ちっ、厄介な奴が来たものだ。」
「知ってるの?」
「噂程度でな。油断するなよ、強敵だ。」
そう言うと、カルトは右、ローズは左から、敵に回り込んだ。
「うっ!?」
その時、グレネードを乱射してきて、それに反応できず、カルトは当たってしまった。
エクリウスは、左腕を失い、肩膝を付いた。
「カルト!!」
ローズは、エクリウスの前に機体を動かす。
「ローズ、逃げろ!!」
カルトの声は、ローズには聞こえなかった。
エクリウスの前に出た直後、敵ACからプラズマ弾が連射された。
ローズは避けれず、避けようとせず、プラズマ弾が全弾当たった。ローズのヒート
ファイヤーは音を立てて倒れる。
「なっ・・・」
カルトは、そのまま、少しの間呆然とした。
しかし、敵ACはブレードを出し、こちらに近づいてきた。
「カ・・・ルト・・・。」
「ローズ!!」
どうやら、コクピットへの直撃だけは免れたらしい。
「脱出しろ、もうその機体は・・・・。」
「ごめん、それは無理・・・。」
その時になって、カルトは敵ACがすぐそこで、ブレードを振り上げていたのが分かった。
「させない!!」
ローズは、機体に残っていた全エネルギーを使い、機体でブレードを受け止めた。
「ローズ!」
ローズのヒートファイヤーは敵ACに張り付いたまま離れない。
「カルト・・・今から、機体を自爆させるわ。」
「な・・・!?」
「早く離れて。もう、カウントダウンは開始したわ。」
「そんな事をしたら、お前も・・・。」
「いいの、カルト、早く行って。」
「しかし・・・・・。」
「カルト・・・・。」
ローズは一息置いて、
「好きだったわ。だから・・・・。」
その時、ヒートファイヤーは爆発して、エクリウスは吹き飛ばされ、カルトはそのまま気を失った。
それから数時間後。
カルトは奇跡的に助かり、一週間の入院で、仕事に復帰した。
ローズはと言うと、機体の自爆のせいで、遺体の回収は出来なかった。
ヒートファイヤーは、自爆の中でも残ったパーツを回収。謎のACのパーツも回収された。
この依頼の後、一つだけ変わった事がある。
以前、出来るだけ僚機を付けて依頼をこなしていたカルトだったが、
この依頼の後の依頼では、全くというほど僚機を雇わず、単独の仕事が増えたのである。
人とも話すことは無く、より無愛想、無鉄砲、無口になったのである。
なぜ、こうなったのか、それは、彼の性格上のことなのである。
助けられなかった悲しみで、自らの心を閉ざし、依頼を一人でこなすようになったのである。
この事を知っているのは、彼の性格を良く知る者のみである・・・・・。
後書き
うーん、今回は少々ダーク気味に書いたんですが、上手く表現できなかった。
そろそろ、ネタがやばい。
何とかしないと。
作者:カイルさん
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