孤高のクールガイ
ゴウゴウゴウゴウゴウゴウゴウゴウ……。
「それではレイスフォード。今回の作戦を詳しく説明します。」
「んな事どうでもいいからよ、今度の休日、どっか行こうぜ?レインちゃん?」
「…オ、オホン…!こっ、今回の任務はトレネシティで暴れている所属不明のMTの撃破です!
敵の数は30機ほどと考えられます…!」
「俺いい店知ってっか……30機だと…?」
俺の名前はレイスフォード。レイスフォード・ギャラクシアスだ。
周りからは「クール気取りのクソ野郎」だとか「ただのカッコつけナンパガイ」とか…評判はよくねぇな…。
んで俺は今、輸送機に乗ってる。
理由は…んなもん言わなくてもわかんだろ?
引き受けたのよ…俺。
…おいおい何をって…依頼に決まってんだろうが…。
これでも一応「レイヴン」だぜ?
まあ、それは置いといてだな…。
今回の依頼は、いたって簡単。
「MTの撃破」ただそれだけだ。
でもなぁ……この依頼が、すんげぇ大変だって事がわかってりゃ良かったのに…って思うね、マジで。
「それではハッチを開きます。出撃してください。」
「はいはい…サポート頼むぜ?レインちゃんよ。」
「…ちゃ、「ちゃん付け」はやめてください!」
「俺がなんて呼ぼうと勝手だろ?」
「あ……あのね…。」
ガチャッ。
ゴオォォォォォ…。
「さて……マジに行くか。」
ブシュウゥゥゥ…。
ブシュアァッ!!
…ヒュウアァァァァァ……。
…ドスゥン!!
……さて。
頼むぜ、俺の相棒「MG/1000」さんよ…!
ドドドドドドドドドドドド!!
チュウンチュウンチュウンチュウン!!
ドンドンドンズガアァァァ…!!
この小さな市街地にいる、1機だけのACと呼ばれる人型兵器と、
多数いるMTと呼ばれる兵器。
たった今、平穏を保っていた「何か」が、音を立てて切れたのだ。
そして町は、火薬の煙と残骸、くず鉄で満たされていた。
「おいレインちゃん、あと何機だ?」
「残り23機よ!!」
「まだたった7機しか……わかった、サンキュー。」
…ピピッ。
ドゴォン!!
「……甘ぇな。」
ブシュアァッ!!
突如MTの、キャノンとでも言うべき高エネルギーの塊が、
ACめがけて発射された。
だがACは後ろを向いていたのにもかかわらず、全てを予測していたかのように横へ移動。
いとも簡単にかわし、そのまま振り返って右手の銃の引き金を引いた。
ズドドドドドドドド!!
チュンチュンチュン…ドゴアァァァ!!
そしてMTはくず鉄と化した。
一瞬にして…。
「……レイスフォード?」
「なんだ?」
「電話ですけど…。」
「こんな時にかよ!?」
「ええ、レイカさんという女性からですが…。」
「…レイカかよ……何とかならねぇか……おやおや敵さんだ…。」
ドドドドドドド…!!
チュウンチュウンチュウンチュウン!!
「あいにく私はあなたほど器用じゃないので…。」
ドゴアアアア!!
「褒め言葉として受け取ってやるよ…。」
ボウン!ボウン!ボウン!
ドン!ドン!ドン!
人型のMTが撃ったライフルはACに命中した。
だが、その装甲に弾かれるだけで、何も効果はなかった。
ただ自分が何処にいるか、それをわからせてしまっただけだ。
「……しゃーねーな、回線繋いでくれ……。」
ドドドドドドドドドド!!
チュチュチュチュチュチュチュチュ…!!
ドウンドウンドウン!!
ボガアァァァ……!!
「…あと21。」
「…しもし……もしもしレイスフォード!?」
「ああ…そうだよ……。」
「そうだよって、あんたよくそんな冷静でいられるわね!?」
チュウン!!チュウン!!
「うるせ……ちっ。」
ドドドドドドドドドド!!
カンカンカンカン…ドゴアアアン!!
「ねえ!!ちょっと聞いてる!?」
「あーはいはい聞いてるよ…。で、何だよ?」
ドドドドドドドドドドドドドドドド!!
チュウン!!チュンチュンチュン!!
ドンドンドンドンドォォォォン!!
カンカンカンカンカンドガアァァァァ!!
「あんたに絶対謝らせるからね!!」
「何の話だよ…あと18っと……。」
「コッチのセリフよ!!何その数!?今までヤッた女の数!?」
「だといいんだがな…。」
…ヒュルルルルルルル……。
ミサイルとでも言うべきだろうか?
何処までも追尾する「火薬の塊」は、確実にACに向かって行った。
「で、マジに何の話だ……?」
しかしACはその場で止まっていた。
ミサイルがギリギリまで近づいた時、即座に上に飛んだ。
ブシュオオッ!!
そしてそのミサイルはビルをえぐり取るだけで、その意味を全うする事はなかった。
「ひっどぉ―――い!!あんたとひどい別れ方したのよ!!謝ってもらうからね!!」
「言いたい事は……それだけか?」
ブシュオオオオ……。
ACは、空に留まっていた。
そして地面を見渡した。
それはまるで、獲物を見つける「カラス」のような雰囲気をかもし出していた。
…バババババババ…!
…バババババババババババババ…!!
地面から飛んでくる、無数の弾。
それはACに当たる事はなく、空へ消えてゆくばかりだった。
「それだけか…って。そ、それだけだけど……。」
「じゃあなレイカ。おまえはいい女だったよ。」
「……そ、そうやって逃げるのね…!あなたはいつもそうやって…。」
「レインちゃん、回線切ってくれ。」
「いい事を言って逃れプツッ………。」
ドドドドドド……ドドドドドドドド…ドドドドド…ドドドドドドドド!!
ACは4つの方向に銃口を向け、撃った。
そして地上には、4つの爆破音が響いたのであった。
そしてACは再び、地上に降り立った。
…ブシュウウゥゥゥゥゥ…。
…ガシャン!!
「…ふう、あと14だな……。」
「…だいぶ減りましたね。あと少しです…がんばって。」
「応援サンキュー…。」
ドドドドドドドドド!!
ガン!!ガンガンガン!!
ズガアァァァァァ!!
「よし!あと5だ!!」
「…スフォード…レイスフォード?」
「何だレインちゃん?」
「また電話です…。」
「…マジっすか?」
「マジっす。」
「…お相手は?」
「レナ…という女性ですが……。」
「は!?…アイツかよ…!」
「…何か?」
…ヒュルルルルルルル…。
「おっと…!!」
ブシュウ!!
ドウンドウンドウゥゥゥン!!
「……しゃーねぇな、回線繋いでくれよ、ったく…。」
ドドドドドドドドドド!!
チュチュチュチュチュチュ…ドオォォォン!!
「……もしもしレイスフォードさん?」
「あ?何だよ…。」
「ねぇ…どうしても買い物、付き合ってくれないかな?」
「まったく…大体なんでお前の買い物に付き合わなきゃいけねぇんだよ。」
バババババババ…!
ブシュウウン!!
ババババババババババババ…!
…ゥゥゥウウウウウウ…!!
…ズバアァッ!!
………ドゴオオオオオ!!
「だって……レイスフォードさんと一緒じゃなきゃイヤなの…。」
「…なんか怪しいんだよな、オマエ。」
「…え?」
「……なんかオマエってさ、…おっと……!!」
ドゴオォォォォン!!
突如、ビルは赤い炎に包まれた。
ACは即座に左によけたため、直撃は免れたもののその炎に機体がやられた。
「…くっ!!」
「ねぇ…どうして私のこと怪しいなんていうの?どうして?」
「その態度だ、その態度。」
ドドドドドドドドドド!!
チュチュチュチュ……ドガアァァァ!!
「おまえのその態度だ……おまえは何故、怒らない?」
「え?」
「お前の機嫌の悪い姿なんか、見たことがねぇんだよ。」
「だって…私レイスフォードさんが好きだから、そんなところ見せられない…。」
「ハイハイわかったよ。俺は嫌いだからな。」
「そんな、ひどい……!」
ブシュウウゥゥゥゥ…!!
ドドドドドドドド…!!
カンカンカンカンカンカンカン…ドゴアアアア!!
「お前は何か『詐欺臭い』…俺のカンがそう言ってるんだ。じゃあな。」
「待って…もうちょっとだけ……!!」
ババババババババババ!!
キン!!キンキンキンキン!!
「…お前の言う事は聞かねえし、お前の攻撃は効かねえよ!!」
ドドドドドドドドドドド!!
チュウン!!チュンチュンチュンチュン!!
ドドドドドドドド!!
チュンチュンチュンチュンチュンチュン…ドッガァァァァン!!
「…じゃあな。回線切るぜ。」
「待って!レイスフォードさプツッ………。」
「…ふうぅぅぅぅ………終わったぜ、レインちゃん。」
「…その呼び方やめてくださいよ。」
「さて、帰ろうぜ。」
「はい…しかし、さすがですねレイスフォード。あれだけのMT相手に余裕で…。」
「褒めてくれんのかい?」
「…いえ、やめときましょう。」
「何だよそりゃ…。そうだ、今度お茶でも?」
「輸送機内での続きじゃない…。」
「いいじゃねえか、今度の休日、どっか行こうぜ?」
「あなたと付き合うと絶対ヤバイ。私のカンがそう言っているのよ。」
「俺のパクリじゃねえか…。」
「詐欺って言うか…あなたただのプレイボーイだし…。」
「ひっでえ…。」
「…まあでも、1回ぐらいならいいかな…♪」
「おッ…マジかい?」
「あなたがしつこいからよ…。」
「ハハハ…。」
「あら…この音、輸送機が来たようね…。」
「…そうみてぇだ。」
「帰りましょう。」
「…ああ。」
彼の名は「レイスフォード・ギャラクシアス」。
いかなる状況でも冷静に判断し、
いかなる任務でも余裕の表情を見せる、凄腕のレイヴンである。
作者:アーヴァニックさん
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