AC3SL:ネームレスの戦い
「そこまで、勝者ネームレス。」
その声で、アリーナの観客席から歓声が上がった。
アリーナでは、一機の紫色のACが、煙を上げている黒い茶色のACを見ていた。
「あとは、トップランカーだけか。」
紫色のACのパイロット、ネームレスは呟いた。
その時、前で倒れているAC、ムゲンのパイロット、メビウスリングから通信が入った。
「流石だな。」
「当然の結果だ。」
「一つだけ、言っておこう。彼を侮るな。」
「彼?」
「今のアリーナトップ。通称、漆黒のアサルト・・・・侮れば、お前でも負ける。」
「・・・肝に命じておこう。」
そう言うと、ネームレスはアリーナから出て行った。
その日の夜、ネームレスは、アサルトのアリーナの公式戦の記録を見た。
その結果、信じられない事がわかった。
アサルトが、漆黒のアサルトと呼ばれる理由。それは、彼に攻撃が全く当たらないのである。
ほとんどの試合、無傷。相手はぼろぼろなのである。
その後、彼と戦ったランカーレイヴンは、まるで影を攻撃してるという錯覚を覚えるらしい。
しかし、一回だけ彼に攻撃を当てた者がいる。
その名は、フォグシャドウ。事実上のアリーナトップ。
一度だけ、ショットガンの弾が当たったが、その後は、全く当たらず、瞬殺された。
その後のコメントで、『当てた時、背筋に悪寒が走り、攻撃が当たらなくなった。』と話していた。
その時、ネームレスはメビウスリングが言った言葉を思い出した。
『侮れば、お前でも負ける。』
その時、ネームレスはアサルトの公式戦の記録を片っ端から見たため、寝たのは夜の二時くらいだった。
「さて、両者が試合会場に着きました。」
リポーターが喋る。ここは、アリーナではなかった。
試合場は、複数あり、必ずアリーナでやる訳ではない。
今までの試合は、全てアリーナでやったが、今回は観客が気になり、アリーナではなく、レイヤードのアヴァロンヒルに来ていた。
「これは、全ての地域に生放送されています。今回の戦いは、アリーナ始まって以来の名試合になるかもしれません。」
リポーターは、アヴァロンヒルに仕掛けてあるカメラで状況を話していた。
ネームレスは、所定位置に着く。
「両者、位置に着いたな?」
「ああ。」
「同じく。」
ネームレスは、これから戦う相手の声を初めて聞いた。
「それでは、レディー・・・・・・ゴー!!!」
審判の合図と共に、ブースターで相手に近づく。
その時、ライフル弾が装甲を叩いた。ロックはされてはいなかった。
(ノーロック撃ち!?)
ネームレスは、急きょ後退する。
ノーロック撃ちの技術は知っていたが、相手が撃ってくるとは流石のネームレスでも分からなかった。
(確かに、侮れば負ける。)
レーダーを見ながら、相手の場所を予想、ネームレスはOBを発動。一気に予測地点に機体を動かした。
しかし、予測地点にはいなかった。
別方向から銃声と共にライフル弾が装甲を貫き、精密機器にダメージを与える。
(くそっ!いつの間に!!)
ネームレスは、ターンを起動。周りを見る。しかし、周りは砂が舞っており、視界が悪い。
それにしても、よくこの視界でノーロック撃ちができるな、とネームレスは関心と同時に絶望した。
(このままでは、確実に負ける。)
ネームレスは、適当な所にOBで突っ込んだ。すると、そこにはOBで移動中のACがいた。
(もらった!!)
ネームレスは、肩のレーザーキャノンを発射した。
しかし、弾は明後日の方向に飛んでいった。
理由は、撃つ寸前に、アサルトのACから発射されたライフル弾で軌道がそれたからである。
「何とか、姿を見つける事が出来た。」
そこには、緑色のACがいた。中二脚でコアはOB。
武装は、ライフルに最大レンジブレードのハルバード。
肩には、左肩にデュアルミサイル、右肩に小型一連ミサイルを装備していた。
アサルトの機体は、特化した機体ではなく、どちらかと言うと、あらゆる状況に置いての柔軟性を兼ね備えた機体であった。
「これが、アリーナトップの機体か。」
ネームレスは、ブーストダッシュで間合いを詰め、右腕のフィンガーと左腕の高速マシンガンを連射した。
しかし、アサルトは冷静それを避け、時々ライフルで攻撃してくる。
(くそっ、これだけ近くでも一発も当たらないとは・・・・!!)
ネームレスは武器をレーザーキャノンに切り替え、至近距離から発射。またも避けられる。
「このまま、負けられるか!!」
ネームレスは、OBで相手の後ろに周り込んだ。
しかし、アサルトも負け時とターンを起動。お互いに真正面に向き合った。互いの武器が、互いの至近距離で発射された。
「アサルト、アリーナ始まって以来、二回目のヒットです!!」
リポーターの興奮した声が聞こえたと同時に、フォグシャドウが言ったのと同様に、背筋に悪寒が走った。
「ちっ!!」
その時、気がついた。
アサルトの気配がさっきとは違う。さっきの気配とは段違いの殺気。
そして、一瞬の内に腕の武器が破壊される。
「速い!!」
ネームレスは耐久値を見た。既に、半分を切った。
「・・・・このまま、負けると思うな。」
ネームレスは、レーザーキャノンを構えたまま、接近してアサルトの方にターンで緊急旋回した。
レーダーキャノンは、アサルトの機体にヒット。そのまま、吹き飛ばされた。
ネームレスは、衝撃で壊れたレーザーキャノンをパージした。アサルトのAC、クイーパーも立ち上がる。
「試合はこれからだぜ、漆黒のアサルト。」
ネームレスは、最後の武器、リニアガンを構えた。
アサルトも、無言のまま、ライフルを構える。
二機は、同時に動いた。
この戦いの記録は、ここまでしか残っていない。
この戦いの後、アサルト、ネームレスの両方は行方不明になっている。
この動きの後、カメラが全て謎の故障。直った時には、二人は姿を消していた。
この戦いがどうなったか、それはあなたのご想像に任せるとしよう。
作者:カイルさん
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