最終話「守りたい者」
いつもと変わらない朝がやってきた。
「依頼がこないぞ」
トゥールは愚痴をたれている。
「きっときますよ」
場を和ませるためにファナレは言った。
「全く、二日も経っているのになぜ依頼がこないんだーー!!」
エスカレートする愚痴。
この二日間何も食べていないのだ。
「このままだと僕達は飢え死にですかね」
にこにこしながらファナレは言った。
「嫌だー!!絶対それだけはやだー!!」
悲鳴が部屋に響いている。
「冗談ですよ、きっときますよ」
少し笑いながら言った。
ピピ ピピ ピピ
「依頼がきましたよ」
「よっしゃ!依頼内容は・・・・なんじゃこりゃ」
「え・・・どれどれ地下複合都市アンバー・クラウンに侵入してほしいですとの事ですが」
「こりゃあ、どうすればいいのだろうかな」
「依頼金はいくらだ?」
トゥールはコーヒーを飲み始めた。
「1億Cだそうです」
「ぶぅっ」
コーヒーが逆流して、口から飛び出した。
「汚いなぁ。ちゃんと書いてありますよ」
コンパクトパソコンをトゥールに渡した。
「ほ、ほんとうだ・・・・」
しばらくして、トゥールはかんがえた。
(これなら食料にはこまらないし、ACの整備だって出来る・・・・。何て、おいしい話じゃないか)
「よし、決めた!!」
トゥールは、この依頼を請けるようだ。
「ちょっと待ってくださいよ。怪しいとは思わないんですか?」
ファナレは、慎重に決めようとトゥールに言った。
しかし、
「こんな、おいし・・・・・じゃなくて、もしかするとアリュマージュの手がかりを見つけられるかもしれないんだぞ!!」
「トゥールさんが、そこまで言うのならしょうがないですね。僕も往きますよ」
「うれしいぞ、いい仲間をもっている俺は今、ものすごく感動しているぞ」
トゥールは涙を流しながら叫んでいる。
「そこまで、うれしがる必要はないとおもいますけど・・・・」
(よっしゃ!!これで、欲しかったACパーツが買えるぞ。うっしっし)
トゥールの頭の中には、お金しかなかった。
「それじゃ、用意するか」
「そうですね。もう、そろそろ時間になるところですし、ね」
ガシャンガシャンガシャンガシャンガシャン
「目的地到達。それから、どうするんだ?」
「え〜と、もうそろそろ依頼主からの輸送機が来ると思いますけど・・・・」
辺りは薄暗く、月の光で少し周りが見える。
パラパラパラパラパラパラパラパラパラ
「あ、輸送機が来ましたよ」
「やっと、おでましか」
土ぼこりを、出しながらトゥールのACの近くに着陸した。
ウィィィィィン
輸送機の後ろの扉が開いた。
「そこのAC達よ。中に入りたまえ」
中年の男が、トゥール達に言った。
「あいよ」
「分かりました」
ガシャンガシャンガシャンガシャンガシャンガシャンガシャンガシャン
ウィィィィィン、ガシャン
ACが全て収納し終わったのを見計らって扉が閉まった。
トゥールとファナレは、コックピットから出て来た。
「ふぅ、外の空気はおいしいなぁ」
トゥールは深呼吸した。
さっき、見掛けた中年の男が、下で待っていた。
「諸君らに、話がある。ついてきてくれ」
「ついてってやるぜ」
「トゥールさん、大声出し過ぎですよ」
「へえ〜それで俺たちに調べて欲しいってわけね」
「しかし、なんでそんな危険をおかしてまでもやらなくてはならないんですか?」
「それは・・・・・」
中年の男はしばし黙っていたが、重い口を開いた。
「あるお方の指示があったから、だ」
「おい、爺さん答えになってないぜ」
「そうですね」
「それ以上、君達が知る権利は無い」
「冷たいぜー」
「生きるか死ぬかなんですよ」
「それじゃ、配置についてくれ」
「え、おいちょっと」
「行っちゃいましたね」
「しょうがないな、ACの中で待機するか」
「そうしましょ」
パラパラパラパラパラ
輸送機が動き出した。
数時間経過・・・・・。
ドォォォン!!
輸送機に衝撃がきた。
ウィィィン ウィィィン ウィィィン
警報がけたたましく鳴っている。
「どしたんだ」
「識別不能のACが攻撃してきてます」
「なんだと!!」
「この付近は確かストラグルの拠点だと思われます」
「くっ!!よりによってこんなことが起きるとは!!」
「艦長!!このままでは持ちこたえられそうにありません!!」
「しょうがない!!備兵供を出せ!!」
「了解!!」
「乱気流に巻き込まれたのか?」
「違うようですよ。どうやら、何者かがこちらに攻撃しているようです」
「おい!!早く出撃してくれ」
「出撃だって」
「それじゃ、降下しましょうか?」
「よっしゃ!暴れてやるぜ」
「自然破壊は駄目ですよ」
「トゥール、クー・ド・ヴァンいっくぜぇぇ!!」
勢いよく輸送船から飛び降りた。
「ファナレ、シャドゥメイカーいきます」
トゥールの後を追うように降りた。
『敵AC排除する』
赤い色と黄色で目立っている敵ACがトゥール達に近付く。
「あいつは・・・俺達よりアリーナの順位が低い・・・・え〜と誰だっけ?」
「8位のレイヴン名は不明、AC名コンビュスシオンです」
「早々と決着着けるぞ。ミサイルコンボをやってやるぜ」
トゥール両肩から2発のミサイルが発射されたかと思うと拡散して計6発のミサイルが襲う。
「了解です」
ファナレも両肩に付けたミサイルを発射した。
同時発射数が6発の高性能だが弾薬費がかなりかかるのでトゥールが使用を禁止させているが
一瞬で止めを刺すときだけにしか使用されていない。
そして、計12発のミサイルが敵ACを襲う。
『俺をあまく見たな』
敵ACは拳を構えた。
「・・・・あれはどこかでみたような」
トゥールは目を瞑って考えた。
(あれは・・・・昔教わった格闘技・・・もしかすると)
トゥールが目を開けた瞬間、全てのミサイルが空中爆発した。
「そ、そんな!」
ファナレは開いた口が塞がらない状態だった。
「やはり・・・アリュマージュなんだろ?」
「え?・・・・あの人がアリュマージュさんですか」
『俺は・・・くぅぅぅ頭が・・・・!』
「アリュマージュ、大丈夫か!」
トゥールがアリュマージュに近付く。
『お前らを倒す!』
ブレードで斬りかかって来た。
「く!」
トゥールはとっさに右手に持っていたバズーカで防御した。
ザシュ
バズーカが真っ二つに斬られた。
「どうやら話し合いじゃ解決しそうに無いな」
トゥールは一旦アリュマージュとの距離をとった。
『逃がさん!!』
なおも攻撃の手を緩めない。
「昔のお前は何処へいったんだよぉ!」
トゥールも突進した。
ガキィィィィィン
『やるな!』
「へっ、お前もな!」
二人は熱戦を繰り返した。
「す、すごい・・・二人ともすごい」
ファナレはあっけにとられていた。
『はぁはぁ』
「ぜぇぜぇ」
「昔より腕が上がっているな」
『俺はお前を殺すだけだ』
「けっ、負け惜しみすんなよ」
『問答無用!!』
二つのACが草木を踏み潰しながら突進した。
ザシュゥゥゥ
二つのACの影が交差した。
『ぐはぁっ!!』
コンビュスシオンが草の上に倒れこんだ。
「よし、これで終わったな」
「待ってください。AC2機が向かってきます」
漆黒の闇からブースターの光が近付く。
「はぁ、なんで俺はこんなにモテモテなのかねぇ」
〔やはり、兄さんの予想は当たったね〕
【それにしてもアリュマージュという奴は使えんな】
〔そうだね。強化チップを埋め込んでも弱いね〕
【しょうがない。我々で排除するか】
「・・・・アリュマージュが変だったのは貴様らのせいか」
〔ガラクタを強くしただけだよ〕
【ふっ、我々がそいつを強くしてやったんだ有りがたく思え】
「・・・ファナレ」
「何ですか、トゥールさん」
「アリュマージュを連れてここから離れろ」
「分かりました。トゥールさんはどうするんですか?」
「俺はアリュマージュを馬鹿にしたあいつ等をぶっとばす!」
「それなら僕も」
「駄目だ!!」
「なんでですか!!」
「お前とアリュマージュだけでも助かって欲しいんだ」
「トゥールさんばかり良い格好させられません」
「ファナレ・・・俺は馬鹿だけどこれだけは言える」
「・・・・・・・」
「ファナレとアリュマージュは俺の大親友だってな」
「トゥールさん・・・・・分かりました」
「すまんな」
「早く追いついてきてくださいね」
ファナレは気絶しているアリュマージュを自分のACに乗せて漆黒の闇にとけこんだ。
〔兄さん、後の二人が逃げてくよ〕
【追いかけるぞ】
「待ちな、お二人さん。あんた等の相手は俺一人で十分だぜ」
〔だってよ、兄さんどうする?〕
【貴様は何処かで会ったな?確か、アンプルールの弟子とか言ってたな】
「・・・・あの時のACはお前だったのか!それなら師匠の自爆で死んだはずじゃ・・・」
【ふふふ、確かにそうだな。しかし、私の愛馬はその程度では壊れないのだよ】
「師匠の仇と親友を馬鹿にした分をはらってもらうぜ・・・」
〔僕達を倒せると思うかい?〕
【これからここはお前の処刑場所になるのだよ】
「それはどうかな」
(ファナレ、アリュマージュ…すまない。どうやら俺は生きて帰れねぇみたいだ・・・
しょうがねえか。師匠・・・貴方が俺とアリュマージュを守ってくれた時こんな覚悟だったんですね?)
トゥールは自分の心に言い終わった。
「二人同時に相手してやるよ。掛かってきな!!」
トゥールは拳を構えた。
二機のACが突進してくる。
人工の月が眩い光を放っている。
死を受け入れる者は恐怖を感じずにはいられない。
それがたとえどんなに強い人間でも・・・・・・。
この戦いの結末は誰にも分からない・・・・・。
なぜならその戦いはある者によって歴史の闇に消されたのだから・・・・・。
これを見ている貴方に1つだけ質問をさせてもらいます。
あなたには守りたい者がありますか?
たとえそれが自分の命を落とすとしても・・・・
たとえそれが相手を傷付けるとしても・・・・
それでも守りたい者は誰ですか?
親、兄弟、恋人・・・・。
この質問に本当の答えがあるのでしょうか?
僕はこの質問の答えが何か知りません。
その答えはあなた自身が決める事です。
それがあなたにとって守りたい者ならば・・・・・・。
作者:カトルさん
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