「…イン、ウ…イン、ウェイン？」
 
「ぁん？」
 
「ぁん？じゃありません！作戦中に居眠りしないでください！やる気あるんですか！？」
 
「…ない。」
 
「………とにかく！敵の戦力は不明です。慎重に行動してください。」
 
「はいはい。今日もメリルさんは仕事熱心なこって。」
 
……オレことウェイン=レッドハットは今、不本意ながらミラージュの依頼を受け、セクション５１７にいる不審者の排除に向かっている。
どうせ敵勢力はＭＴが関の山。こういうのはとっとと終わらせるに限る。
ちなみにこのうるさいのはメリル=レイグルズといい、オレが地上でレイヴンを再開したころからの付き合いで、出会ってもう半年になる。
 
ウェイン「ところでさぁ。」
 
メリル「なんでしょう？」
 
ウェイン「オレがミラージュ大嫌いなの知ってるよな？この依頼まわしたのってわざと？」
 
メリル「いいえ。この依頼しかなかったんです。どうせアリーナの試合もないんですからいい暇つぶしでしょう。
なんでそこまでミラージュを嫌うんですか？」
 
ウェイン「それについてはおいおい話そう。そろそろ移動を開始する。」
 
メリル「なんかいつもそれですねぇ。ま、いいでしょう。では気をつけて。」
 
そんなこんなでオレはブースターをふかす。
どうやら不審者たちもこちらに気づき、ＭＴを起動しだしたようで、レーダーに動力反応が現れ始めた。
 
不審者「レイヴンか！応戦する！」
 
ＭＴはこちらを視認するやいなや、いきなりロケット弾を飛ばしてきた。
…が、まだ距離があったのと、向こうがロクに狙いを定めてなかったのもあって、ロケット弾はあさっての方向に着弾する。
 
ウェイン「！？　なんのつもりだ？威嚇が通用しないとわかっているはずだがな。」
 
オレはＭＴに急接近し、左右に装備されたライフルを放つ。計６発の弾丸を受けたＭＴは爆発炎上、ただの鉄クズへとその姿をかえる。
 
不審者「ちくしょう！よくも！」
 
すぐ近くのＭＴがライフルを乱射する。が、いつまでも同じ場所にいるほどオレはお人好しではない。
素早くもとはクレストのものと思われるビルから回り込み、そこから同じようにライフルを叩き込む。
安ＭＴの装甲がそれに耐えられるわけがなく、その場に崩れ落ちる。…とその刹那。
ロケット弾がオレのＡＣ、Ｆ・ハウンドに迫る。咄嗟に機体を右にずらすが、１発もらってしまった。
 
ウェイン「ちッ、油断もすきもねぇ。」
 
意外な攻撃に少々感心に近いものを感じた。もっとも次の瞬間にはそれは鉄クズと化していたのだが。
 
ウェイン「…残り５機か。面倒くさい。不審者の排除くらい自分らでやれってんだ。」
 
オレのＡＣはコアと左肩のレーザーキャノンを除いて全てクレスト又はキサラギの製品で構成されている。
さすがにパーツ選びにまでは企業の好き嫌いを持ち込まない。命を預けるものだからな。
全パーツ中２つというのはオレなりの最大の譲歩だ。完全に特定の企業の製品しか使わないレイヴンも当然いるがな。
そいつらから見ればオレは半端者だろう。
 
ウェイン「この先の狭い道路に２機、さらにその先の広場に３機。
広場に直通しているこの道路は、あいにく倒壊したビルが塞いで使用不可。…ここを通るしかないか。
 
この区域はもともとクレストが管理していたのだが、何年か前のごたごたで権利が曖昧になり、今はミラージュが管理をしている。
もっとも当のミラージュは、地上の開発に目を向け、地下に関してはほとんど手をつけていない。
不審者たちはそこにつけこんだのだろう。オレにとってはいい迷惑だ。
 
不審者「うわあぁぁぁっ！来るなぁっ！！」
 
ウェイン「それには当たってやれんな。恨むなよ。」
 
メリル「ウェイン、通信が入りました。敵の本隊が隣の区画に集合しているようです。全て撃破してください。」
 
ウェイン「…帰っていいか？」
 
メリル「ダメです。」
 
ウェイン「どうしても？」
 
メリル「どうしても。」
 
ウェイン「やれやれ、オレの負けだな。それじゃ本隊やっつけてきま〜す。」
 
オレは渋々ゲートを開ける。ゲートは二段構えで、一方の扉が閉じるまでもう一方は開かない仕組みだ。セキュリティ維持のためらしい。
 
ウェイン「この扉の向こうに２機…。経費を抑えるためにもコレを使うか。」
 
ガシャン
 
扉が閉まった。オレはもう一つの扉を操作し、すぐにレーザーキャノンを構える。ＭＷＣ−ＬＱ／１５。ミラージュの最新作だ。
長射程、高威力、そして軽量と３拍子揃っている。１５発しか撃てないが、それだけで十分だ。
ロックオンマーカーが緑から赤に変わり、射線が通ったことを示す。
その瞬間、トリガーを引き、レーザーが放たれる。レーザーは的確にＭＴを捉えていた。
 
ウェイン「残り７機。一気に行くか。」
 
オレは隣の区画に突入し、残りを掃討する。５分足らずで本隊は全滅した。
 
ウェイン「ふっ、余裕だな。この程度も処理できんとはミラージュも底が見えてるな。」
 
メリル「ウェイン、至急さっきの区画に戻ってください！突如所属不明のＡＣが現れました！コーテックスには登録されていません！」
 
ウェイン「わかった、今行く。どのみち拒否権はないんだろう？それにこのままじゃ収まりがつかんところだ。上等上等。」
 
口ではこう言ったが、オレはコーテックスに登録されていない、というあたりが妙に引っかかっていた。
専属レイヴンという可能性も考えられる。が、クレストがここにレイヴンを送り込むメリットはない。キサラギも同様だ。
ミラージュがオレをハメた、ということも考えられる。以前実際にあったからだ。
しかし、あのときと今回は事の重大さがまるで違う。ということでこの線も無しだ。暴走した無人ＡＣが現れるような場所でもない。
オレは一つの結論に行き着いた。しかし、これは今挙げたどれよりもあり得ないものだ。正直正体のわからない敵はこの上なく恐ろしい。
 
ウェイン「管理者実働部隊…の残党か？まさかな。」
 
オレは再び１０分ほど前に来た区画に戻ってきた。そして…、最もあり得ない現実がそこにいた…。
 
 
 
 

あとがき
なんつーかこう、初投稿です。この話のもとネタはタイトル通り「不審集団排除」です。
ＡＣがでるという展開はオリジナルですが。
これからも拙いＳＳを投稿していきますが、皆さんどうか暖かい目で見てやって下さい。
これからもよろしくお願いします。