サイドストーリー

One Raven’s Chronicle No.2 実働部隊
区画の中に入ると、そこにはACが1機佇んでいた。外見には特に異常はは見当たらない。
ACがこちらを向く。オレは右肩のエンブレムを見て驚愕した。
それは、かつてレイヤードに恐怖を撒き散らした、管理者実働部隊のものだった。
 
ウェイン「まさか今になってこいつらと戦うハメになるとはなあ。」
 
実働部隊「モクヒョウカクニン ハイジョカイシ」
 
そう言ったが早いか、そのACはいきなりグレネードをぶっ放してきた。それも構えずに。これは普通では考えられない。
2脚などのACが膝をついて構えるのは、反動でひっくり返るのを防ぐためだ。
あのグレネードは軽量型とはいえ、発射時の反動はかなりのものだ。
当然ACのOSには、このようなことを防止するためキャノン系は構えないと撃てないようにプログラムされている。
書き換えればいいかもしれないが、構えず撃つにはプログラムを解除するだけでなく、姿勢制御もイジらないといけない。
そこをイジると、さらにイジらないといけない箇所がふえ、結局OSのほとんどをイジるハメになってしまう。
そもそも必ずどこかに爆弾を抱えており、歩行さえままならなくなることさえある。そのため、OSをイジるのは半ば自殺行為なのだ。
 
ウェイン「こいつ…まさかアレを組み込んでやがるのか!?火力じゃこちらが不利だ。どかどか撃ちやがって。
…まあやってやれないことはないんだがな。」
 
状況はかなりヤバい。向こうは細かいところは違っているが、いつぞやにクレストの施設に出没したACに似ている。同型機かなにかだろう。
装備は腕に黒色のレーザーライフルにブレード、肩にはオービットとグレネード、そしてエクステンションに連動ミサイルを装備している。
片やオレの装備は、右手に対AC用ライフル、左手にはアサルトライフルを持ち、右肩は垂直ミサイルで左肩はレーザーキャノンだ。
明らかに火力が違う。天井が低いここでは垂直ミサイルが使い物にならないしレーザーキャノンは構えなくてはならない。
そんなことしてたら即黒コゲだ。そういった状況から、オレがまともに使えるのはライフルだけだ。
 
ドゴォーン ドゴォーン
 
ウェイン「ちっ!高価なグレネードをどかどか乱射するたぁお金持ちだな。こっちはライフルしかまともに使えねえってのに。うおっ!?」
 
ついに1発もらってしまった。コア直撃は免れたが、脚にくらってしまい、中身が露出している。幸い
機動力の低下はあまりなかった。しかし飛び散った装甲と露出している中身が、グレネードの威力を雄弁に物語っている。
 
ウェイン「この野郎!調子に乗るんじゃねぇ!」
 
ドガガガガガガ ドガガガガガガ
 
オレはライフルで懸命に応戦する。相手は重量級ではなかったが、それでもこの程度ではびくともしていない。
ヤツがオービットを放った。と同時に連動ミサイルが飛び出る。
ミサイルはどうにかかわしたものの、オービットが頭上を飛び交う。その間にヤツはレーザーライフルを構える。
 
ウェイン「ええいうっとおしい!ピーピーピーピーと!くそっ!このままじゃジリ貧だ!だいたいライフルだけで…。
ん?いいこと思いついた♪」
 
オービットがエネルギーを使い果たし、自爆する。しかしヤツはかまうことなくレーザーライフルを撃ってくる。
オレはここで賭けにでた。
 
ウェイン「こうなったら一か八かだ!どうせミサイルは役にたたねえんだ!だったらない方がマシだ!」
 
オレは垂直ミサイルと左手のライフルを捨て、おもむろに投げつける。ヤツは一瞬戸惑ったようだが、すぐにそれを避ける。
だがそれこそオレの狙いだ。ヤツの頭の真横に達した瞬間、オレは垂直ミサイルにライフルを叩き込む。
 
ズッドオォー…ン
 
案の定垂直ミサイルは中のミサイルに誘爆し、大爆発を起こす。それと同時にレーザーキャノンを構える。
まさかこれでACを倒そうという虫のいいことは考えていない。そして、予想通りヤツはまだ動いている。
 
ウェイン「とどめだ!頼むからこれで成仏しろ!」
 
ドシュー ドシュー ドシュー ドシュー
 
あの爆発によって片腕を吹き飛ばされ、満身創痍という言葉がよく似合うヤツに容赦なくレーザーキャノンを叩き込む。
1発目でもう片腕を、2、3発目で両脚を、最後の1発でコアをブチ抜き、ヤツは完全に機能を停止した。
 
実働部隊「…ギ…ガガガガ…サクセン…シッパ…イ」
 
ウェインぜぇ…ぜぇ…、てこずらせやがって…。」
 
不意にメリルから通信が入る。
 
メリル「ウェイン!大丈夫ですか!?あのACは一体…。」
 
ウェイン「とりあえずオレは無事だ。それよりもあのACは実働部隊のエンブレムをつけていた。
おそらくは残党と思われるが、一応調べてみてくれ。」
 
メリル「わかりました。あ、今のACの件ですが、ミラージュが特別報酬を出すそうです。15000も。」
 
ウェイン「ま妥当なところだな。あと迎えを呼んでくれ。動けないことはないが長距離は無理だ。」
 
メリル「今手配します。30分ほど待っててください。」
 
オレはふぅ…、と大きなため息をつく。この件がこのまま終わればいいのだが、と思いながら。
 
ウェイン「おっと、あいつにメールを送っとかないとな。仕事のあとで必ず送らないと心配するからな。」
 
『ユリカへ。今日も無事に終わりました。予想外のことがおきましたが、なんとかなりました。
なお、今回は特別に報酬が出たので、帰りになにかおいしいものを買って帰ります。』
 
ウェイン「これでよし、と。おっ、どうやら来たようだな?」
 
オレがメールを送信するのとほぼ同時に、迎えのトレーラーが着いたとの知らせが入った。俺はすぐにのりこみ、家路についた。
 
「やはりダメだったか。…まあいい。」
 
「しかしこの程度の相手に苦戦するようでは、どうやら人違いだったようですね。」
 
「…そうですか。」
 
「我々の仕事は始まったばかりだ。」
 
 
 

あとがき
2話目です。うーむ、つぎどうつなげましょうか…。
ユリカの存在も二番煎じどころか三番煎じくらい
ですし…。もっと精進せねば…。
作者:キリュウさん