サイドストーリー

壮絶なる戦い


多数の人間が住む地下都市「レイヤード」。

ビルの立ち並ぶ中に、爆破した緑色の人型ロボットが2機。

そしてその奥に、そのロボットよりひとまわり大きい白い人型ロボットが2機、

その「手」に持っているマシンガンの銃口からは、白煙が上がっていた。



「やれやれ…よりによってこんなところに敵部隊が来るとはね。」

「文句を言うなジョニー…。しょうがないだろう?私たちはクレスト専属のレイヴンなのだからな。」

「でもなぁ…普通本社ビルまで敵来るか?ケヴィン。」

「たまにはそういう日もあっていいんじゃないか?」

「はぁ、なるほど…おっと、どうやら敵さんのお出ましだぜ」



空からけたたましい音を立てて、近寄る2つのプロペラ機。

来るや否や、ミサイルを発射する。

あたりに爆音が響く。



「敵さんのミサイルは精度が悪いねぇ。」

「さぁ…?腕にもよるんじゃないか?」

「ケヴィンもイヤミが好きだねぇ…。よっと。」



人型ロボットの片方は、後ろの肩についているミサイルを発射させた。

ドン、という音とともに勢い良く飛び出した4つのミサイルは、片方のプロペラ機に命中し、

粉々になって空中で消えた。



「ほい!あと1機よろしく!」

「フン…任せておけ。」



こちらに飛んでくるプロペラ機。人型ロボットはマシンガンを乱射する。

動力元が壊れ、プロペラ機は右へ行ってしまう。

そして右端のビルをえぐるように突き進み、火を吹く。

ガガガガガと物凄い音を立てて、やがてビルにはじき返され、爆発した。



「あ〜あ〜あ〜あ〜!ひどいことするもんだねぇ…。」

「この際敵に情けは無用だと思わんか?ジョニー。」

「だとしてもだぞ?…ん?おいケヴィン、レーダーを見てみろよ。」

「ああ、気付いている…。デカイやつが来たものだな。」

「ACとはねぇ。…久々に燃えてきたね。」

「やれやれ…戦いが好きなやつだな。」



上から来る、2機の赤い人型ロボット。

ズシン、ズシンと大きな音を立てて着地する。その2機は後ろのブーストで一気に加速し、

白い人型ロボットのところに向かって行った。



「来やがったか…ありゃミラージュの部隊だな。」

「俺はあの太いヤツを担当するから。ケヴィンはもう片方を頼む!」

「わかった…しかし本当にマイペースなヤツだ。」

「昔からだろ?いい加減慣れろよな。」

「フン…じゃあ俺はコイツと楽しんでくるよ。」

「お気をつけて…!」



白い人型ロボットの片方はブーストで、もう片方のロボットから離れた。

それを追うように、赤いロボットの片方は追っていく。



「よし…いい子だ。」





「おっと…!!」



赤いロボットは近づくや否や、いきなりバズーカを発射した。

白い方は「左腕」に命中し、外れ、吹っ飛んで地面に落ちた。



「おいおい、いきなりかよ…。」



白いロボットは「首」を回転させて外れた「腕」に目をやった。

赤いロボットは「背中」の部分からビットのようなものを出し、白いロボットめがけて発射させた。



「うおっ!不意打ちか…?よっ…ととと…いよっと!!」



白いロボットはその2、3発もの強力なエネルギー兵器を巧みにかわし、ビルの陰へと隠れた。

そしてその影から赤いロボットを覗き込むようにして見た。

その姿は、まるで隙を見つけようとしている人そのものだった。



「やれやれ…。いい加減イクシードオービット引っ込めろよ。撃ったって当たりゃしねーのによ。」



赤いロボットはこれ以上撃っても無駄だと判断し、「背中」のビットをしまった。



「ふ〜ん…祈ってみるもんだねぇ…こういうのは。覚えておこう。」



それと同時に白いロボットは勢い良く空を飛んで、

近づきながら「手」に持っているマシンガンを乱射した。

弾は全て命中し、赤いロボットのメインカメラを破壊した。

だが、たったそれだけの事だった。

赤いロボットはすぐさまバズーカを構え、白いロボットめがけて発砲した。

白いロボットはブーストで後退したが、かなりの至近距離にいたため避けられず、

「頭」に命中し、粉々になりバランスを崩して後ろに倒れそうになった。



「あっちゃ〜、無理しすぎたかな………ほっ!」



しかし白いロボットはまだ機能停止しておらず、すぐにバランスを立て直した。

赤いロボットはそんな相手にミサイルを発射しようと、ハッチを開けた。



「あ〜もうめんどくせぇ!どーせお前しかいねーんだし、全部くれてやるよ。ほら!受け取りな!」



白いロボットの方が、一足先にミサイルを発射させた。

大量のミサイルが空に舞った。

その矛先は、すべて赤いロボットに向けられていた。





ビルの連なりをはさんで、向かい合いながらブーストで移動する、白と赤の2機のロボット。

時折ビルの隙間から見える相手のロボットの「顔」を見るたびに、緊張感は高ぶってくる。



「全く…そう睨むな。戦いはまだ始まってはいない。」



突然、赤いロボットは空高く飛んで、そこからミサイルを撃ってきた。



「かわしてくれというような攻撃はしないほうが身のためだ。」



白いロボットはそこで一旦止まった。何もせず、ただずんでいるだけだった。

ミサイルがもうすぐそこまで来たと同時に、白いロボットは前へブースト移動し、赤いロボットに近づいた。

ミサイルはすべて白いロボットのすぐ後ろの地面に着弾し、ただ爆破するだけだった。

赤いロボットは空中から着地した直後で、こちらには気付いていなかった。



「フン…戦いの時は常に気を配っていろ。よく今まで生き延びたものだ。」



白いロボットは「右手」のマシンガンを乱射した。

赤いロボットはたった今気付いたらしく、驚いたような反応を見せた。

すぐさま「右手」で攻撃を防いだが、そのせいで「右手」の武器に弾が全て当たり、吹っ飛んで粉々になった。



「やれやれ…もっと勉強してから来い。それとも、死にに来たのか…?」



すると赤いロボットはブーストで後退し、壁を背にした状態となった。

赤いロボットは睨むような姿勢をとった。

ガチャン、ガチャンという音と、ズシンという重低音があたりに響く。



「ほう、武装解除か…。今度は何をしようというのだ?」



赤いロボットの武装はみるみる外れていき、その装備は床に落ちていった。

残ったのは、「左手」に付いているブレードだけとなった。

そして赤いロボットはかなりの速さで白いロボットに近づき、「左手」に付いているパーツから

発せられる光を思い切り振って、白いロボットを切った。



「…その程度か!!」



しかしその光は白いロボットを弾いただけだった。白いロボットは少し飛ばされたが、

すぐに「右手」のマシンガンが火を吹いた。

連続する発射音。赤いロボットは「左手」で自分をかばったが、すぐにマシンガンの弾に弾かれた。

容赦なく降り注ぐマシンガンに赤いロボットは何も抵抗できず、ただただ「終わり」を待つだけだった。





「…おい、聞こえるか?」

「…何だ?ケヴィンか?」

「そうだ。…どうしたジョニー?元気が無いじゃないか?」

「…悪い、俺、あと15秒で死ぬわ。」

「…!!」

「やられちまった。完全にコイツは機能しねーや。しかももうすぐ爆破だってよ。」

「…そうか…。」

「早く通信切ったほうがいいんじゃねー?」

「ああ…わかった。」

……プツッ…。





遠くで、爆音が聞こえた。

あたりは静まり返る。何も無かったかのように。

自分の目の前には、無残にも倒れ、哀れにも敗れたミラージュのAC…。



…無惨?

…哀れ?



戦いなんてのは、いつも最後に残るのは虚しさだけだ。

戦いで生き延びるぐらいなら、いっそ死んだ方が楽なんじゃないのか?

作者:アーヴァニックさん