サイドストーリー

OSLS:第一話――レイヴン~砂漠のデッドアングルスナイパー~――
ドーム型の建物の中で、赤と黒のAC――アーマード・コアが、各々の武器を手に、熾烈な戦いを繰り広げている。
「くっそぉっっ!!」
四脚の暗い赤色をしたACコブラワインドのパイロット――スネイクチャ―マーは、再び焦りと苛立ちを感じだした。
――否、違う。
これは、”敗北”への焦りだ。
いつものように相手をいたぶり――
いつものように焼き尽くし――
いつものように敗者を見下し――
いつものように嘲笑う――
この俺が……敗ける!?
「っなことあってたまるか!!」
コブラワインドの両腕から、赤と青の猛火が雄たけびをあげる。
「……甘い」
ハスキーな、男の声だ。
漆黒のACのパイロットは、おそらくそれをよんでいたのだろう、あっさりそれをかわした。
「舐めるなぁ!!」
スネイクチャ―マーは火炎放射器を撃ちながら、四脚ACの機動性を利用し、全速で突進し、間合いを詰めていく。
ここで、リニアガンで仕留めたいところだが、既に弾は切れている。
「手のうちようは……それで終わりか?」
漆黒のACはブースターを吹かし、コブラワインドの真上を飛ぶ。
――轟音
スナイパーライフルの銃弾が、コブラワインドの右腕を火炎放射器ごと貫き、青い猛火が掻き消える。
――轟音
今度は左腕が貫かれ、赤い猛火も掻き消える。
「っ!!」
ほぼ完全に、打つ手がなくなった――。
――いや、まだ一つ残っている。ジョーカーと言うには小さすぎるが、それでも無いよりはマシだろう。
漆黒のACは、余裕を見せ付けるかのように、コブラワインドの真正面に舞い降り、通信回線を繋いだ。
「おい。聞いてるか?」
「……。」
「おい……。まあいい。勝負はもうついた。あきらめて降参したらどうだ? その様子じゃ、もうまともにやりあえないだろ?」
「……。」
「おい、聞いてるのか?」
スネイクチャ―マーは、あえて無言を守りとうした。相手に策を気取られないためだ。
間抜け目!
スネイクチャ―マーは、銀色のレバーに手をかける。この距離なら、回避は不可能だし、反撃も無理だ。
(……残念だったな。その余裕が命取りなんだよっ!!)
レバーを上げた。すると、コアの背中から、自立型攻撃兵器――EOが飛び出
し、敵のコア目掛け、弾丸を連射する。
スネイクチャ―マーは、満面の笑みを広げた。敵パイロットは無様な醜態を晒し、さぞかし慌てているだろう。
余裕を見せてカッコつける方が悪いのだ。

”それが現実ならば”――

「……同じ言葉を、二度も言わせるな」
その瞬間、赤い閃光が閃いた。それは、EOを撫で斬り、ぎりぎりコクピットをかすめる。
スネイクチャ―マーは驚愕した。自分が見たのは全て幻想だったのだ。
EOが射出されたまでは合っているが、弾丸を撃つ瞬間には、EOはブレードで破壊されたのだ。
緊張の糸が一気に解け、股間から湯気が立ちだした。
試合終了のブザーが鳴り響き、コールがかかる。
「試合終了! WINNER――ロセム=アキヤマ」
それに答えるように、漆黒のAC――イーヴルロードは、高々と右腕を上げた。
その腕には、彼の代名詞ともいえる武器――SRF-40が握られている。
別室の観客のモニター室にも、その姿が映し出され、大きな歓声と拍手が巻き起こる。
たかがCランカーの試合にも関わらず、ギャラリーの数は多い。4,50人はいるだろう。
その上、老若男女を問わず、全員がアキヤマのファンだというのだから、その人気ぶりは賞賛に値する。
……まぁ、スネイクチャ―マーが忌み嫌われているということもあるのだが。
「っくしょう!! ちくしょう!!畜生!! 畜生!! 畜生!! 畜生ぉぉっ!!
!!」
スネイクチャ―マーは、コンソールを何度も何度も叩いた。
敗北したことが、余程悔しく――いや、こいつには、そんな概念は無い。皆無と言ってもいい。
ただ、アキヤマが勝ったことが、気に食わないだけなのだ。
「……うるいな」
やや長い茶髪の青年――アキヤマは、通信を切り、
コクピットから空を仰ぎみる……。
だが、天井が邪魔で、青く澄み切った空が見えない。
彼は、空が人一倍好きだった。小さい頃からの憧れ、というのもあるが、なぜか昔から、空を見上げると、心が落ち着くのだ。
(にしても、無駄な試合だった。何が1,2を争そう程の残虐者だ。点で話しにならん。ただの弱い者虐めか……)

――自分に”スリル”を味あわせてくれる人間と、真っ向から戦いたい――

それは、レイヴンになってからのアキヤマにとって、最大最高の願いなのだ。
だが、こうも楽にCランクに辿り着け、特に目立った好敵手はいなく、
更にどいつもこいつも武器やパーツの性能に頼っている者達ばかりだ。
トップランカーの「ムゲン」という奴も、大した者ではないだろう。
アキヤマは、絶望しかけていた――。
――今のアキヤマがそう思うのも、無理はなかった。
なぜなら、アキヤマの願いを叶える者は、”まだ”ここには現われていないからだ。
アキヤマの願いを叶える者は、これから巣立つのだ。
新たなるレイヴンとして――。

時は同じくして――

とある市街の上空を、一機の輸送機が飛んでいく。
そこに、あのレイヴンがいた――!

次回、第2話「――レイヴン 蒼い火の鳥 ~バーンストーム~――」
ご期待ください。
そして、文才なんぞ皆無に等しい私ですが、これからもよろしくお願いします。
作者:フドーケンさん