サイドストーリー

One Raven’s Chronicle No.4 乱入者(前編)
「コ、コイツ、ただ者じゃない!くっ、損傷率が60%を超えた!このままでは…。」
 
ウェイン「キョウ!大丈夫か!?ここからなら援護できる!任せてくれ!」
 
「ダメだ!!俺がオトリになるから早く逃げろ!お前は生き延びるんだ!このまま2人とも死んだらユリカは…!」
 
「アハハハハ!逃げる相談かしら?ム・ダ・よ!」
 
ドドドドシャァッ
 
「ぐわあぁぁっ!ウェイン!早く逃げろぉっ!ここで俺たちが死んだらユリカは…ユリカはこの世で1人っきりになって
しまう!」
 
ウェイン「だったらなおさらだ!お前が死んじまったらオレはどのツラ下げてユリカに会えってんだ!バカ言ってねぇで
とっとと逃げるぞ!」
 
「どの道ダメージを受けすぎたオレの機体では逃げきれん!だからお前が生きてユリカを幸せにしろ!」
 
ガガガガガガガガガガ
 
「うおぉぁぁぁッ!?ぐっ…、ウェイ…ン、ユリカを…頼…む…。」
 
ザザザザ…ザー…ブツ…ッ
 
ウェイン「キョウ!?キョウ!!?バカ野郎ォーーーーー!!!」
 
アハハハハハハハ!!脆いわねぇ…。さぁ、次はアンタの番よぉぉッ!!」
 
ウェイン「…ふざけろこの野郎…。」
 
キュィィィィ……
 
ウェイン「貴様さえ…、貴様さえ…!」
 
ゴゥッ
 
ウェイン「貴様さえ来なければぁーーーーーー!!!」
 
 
 
 
 
 
ウェイン「うわぁぁーーー!?はぁ…はぁ…。またか…。」
 
あの日から、オレは悪夢を見るようになった。そしてそれはキョウの命日が近づくほど、頻繁になってくる。
あの後、オレは病院の一室で目を覚ました。そのとき聞いた話によると、オレは依頼で向かった先のアヴァロンヒルで
気を失った状態で発見されたらしい。なぜかACは完璧に修理され、新品同様だったらしい。キョウの方はACさえ見つかっていない。
思えばあれからだ…。ミッションでも、アリーナでも、窮地に追い込まれるとモニターに『INTENSIFY』と表示され、驚異的な戦闘力
が発揮されるようになったのは。もっともその代償と言うべきか、オレのACはオプションパーツの取り付けが一切できなくなってしまった。
…オレはあのとき何があったのか、何故生きているのか…。それが知りたい。そして必ず…、必ずキョウの敵を取る…!!
 
ユリカ「お兄ちゃんどうしたの!?」
 
慌てた様子でユリカが入ってきた。まぁ無理も無いだろう。
 
ウェイン「ユリカ? なんでもない。うなされてただけだ。」
 
ユリカ「ねぇ…、私の本当のお兄ちゃん…、シュウおにいちゃんは本当に死んじゃったの?だってACの残骸もなかった
んでしょ?だったら…。」
 
ウェイン「もしあいつが生きていたら真っ先に帰ってくるか連絡いれるかするさ。それがないんだ。望みは薄いな。」
 
ユリカ「…ううん。きっとシュウお兄ちゃんは無事よ。ホラ、便りがないのは何も無いの証でしょ?」
 
ウェイン「そうかもな。いや、きっとそうだ。まずオレ達が信じなきゃな!」
 
ユリカ「うん!絶対にそうだよ!」
 
ウェイン(キョウ、やはりユリカは強い娘だよ。さすがはお前の妹だ。この強さが強がりに変わる前にキョウ、早く帰って来い。)
 
オレはユリカの強さに励まされた気がした。そう、せめてオレたちくらいあいつの生存を信じなきゃいけない。
そう心に言い聞かせつつ、オレはアリーナに向かった。
 
 
 
オレがアリーナに到着したのは午前11時。そこでオレを待っていたのは、整備が完了したオレのACと
その前で誇らしげに立っているカークの姿だった。
 
カーク「よおーウェイン!見ての通り整備はカ〜ンペキだ。あとはお前さんが微調整と最終確認をしといてくれ。」
 
ウェイン「あぁ、わかった。で、おっさんは試合見てくのか?」
 
カーク「そうしてぇのはやまやまなんだが、なにしろ昨日の突貫作業のせいで眠くて仕方がねぇ。だがよ、おれは
お前さんに賭けたぜ。だから負けんなよ!ガハハハハ!!」
 
カークは笑いながら去っていった。オレはどこかに異常がないか入念にチェックする。精密機械の塊である
ACは、どんな小さな異常も命取りになりかねない。
 
ウェイン「各部異常なし…と。なんか冷たいものでも飲んでくっかな。」
 
確認を終え、ACから降りようとしたとき、不意に声がかかった。
 
「ウェイ〜ン」
 
ウェイン「んっ?どこだ?」
 
「こっちこっち〜。」
 
声の主はメリルだった。いつもと違う点といえば、コーテックスの制服ではなく私服だったという点だ。
 
メリル「へへ〜♪応援にきました〜♪」
 
ウェイン「応援はありがたいんだがよ、お前仕事は?」
 
メリル「私はあなた専属のオペレーターですから♪あなたが依頼を受けない日はヒマなんですよ。それに…。」
 
ウェイン「…それに?」
 
メリル「パートナーのアリーナにおける戦いぶりを見るのもオペレーターの務めですもの♪」
 
ウェイン「はぁ…。さいですか。」
 
仕事以外で彼女に会うのはこれが初めてだ。あぁ彼女の素はこうなのか、と1人で感心していた。と同時に、周囲から
「イチャイチャしてんじゃねぇよ」と言いたげな、嫉妬に満ちた冷たい視線を痛いほど感じていた。
 
そうこうしているうちに、アナウンスがながれた。…ついにカロンブライブと戦う時が来た。
 
 
 
カロンブライブ「戦場ではなかなかの戦果を挙げているようだが、アリーナは戦場とは違う。ここではお前など三流でしかない。
一流との差を見せてやる。」
 
ウェイン「上等だ。心行くまで見せてもらうぜぇ?一流との差とやらをな!」
 
戦いが始まった。オレはその場でレーザーキャノンを構え、先制攻撃をかける。
 
ドシュウゥー ドシュウゥー
 
カロンブライブ「…バカにしているのか。」
 
ウェイン「まっさかぁ?ダメもとダメもと♪」
 
カロンブライブ「ならば次は本気で来い。」
 
ウェイン(ちっ、意外に冷静だな。Gなんか顔真っ赤にして怒ってたのに。)
 
オレは構えをとき、OBで再び距離を開ける。
 
ウェイン「へっ!やっぱGの単細胞同じ戦法は通じないか!」
 
カロンブライブ「どうした!逃げるだけでは勝てんぞ!」
 
カロンブライブは距離を詰めつつ、EOと熱強化ライフルによる波状攻撃にでた。3ヶ所からの同時攻撃には、
さすがのオレも完全に回避するのは不可能だ。ライフルとEOが確実に装甲を蝕む。
 
ウェイン「よ〜しそのままそのまま…行けッ!」
 
パスッパスッパスッパスッ
 
カロンブライブ「ミサイル!?小賢しい!!」
 
ウェイン「おおっとぉ!攻撃は上からだけじゃあねぇンだぜぇ?」
 
カロンブライブは、一瞬だがミサイルに気を取られた。そこから生じたスキを、オレが見逃すわけがなかった。
すかさずライフルを叩き込む。ミサイルも2発命中した。
 
カロンブライブ「上下からの二段攻撃か…。やってくれるな。だがっ!」
 
ドバッ
 
カロンブライブはひるむことなくトリプルロケットを放つ。近距離ということもあって、ロケットは全弾命中した。
 
ウェイン「つつつ…。へッ、そうこないとな。今度はこっちが…、何だ!?」
 
突如アリーナの入り口ゲートが開き、MTが侵入してきた。こんなことは前例が無い。
 
主任「おい!何故ゲートを開けるんだ!!まだ試合中だぞ!しかも何なんだアレは!?」
 
職員「わかりません!開閉システムがハッキングされ、こちらの操作を受け付けません!
このままでは観客に被害が…。」
 
主任「わかっている!観客を全て避難させろ!レイヴン、奴らを始末してくれ!!」
 
ウェイン「了解だ。」
 
カロンブライブ「任せろ…。」
 
敵はカイノス/E02,エグゾセ、アローポーターで構成された小隊が5つ。エグゾセで撹乱、アローポーターは
その支援に回り、カイノスがとどめをさす、といった腹だろう。
 
カロンブライブ「不届き者共が…。皆殺しだ…。」
 
試合を邪魔されたのがよほど頭にきたのか、鬼の形相で次々と撃破していく。その鬼気迫る戦いぶりに、
一瞬我を忘れてしまった。
 
ウェイン「…。はっ!いかんいかん。オレも仕事せんと。」
 
確かに敵は多かった。しかし、所詮はMT。ACにかなうはずがない。
 
「やはりACには勝てんか。まあいい。もとより捨て駒だ。」
 
奥からACが2機。1機はEランクのギムレット。もう1機はパルスライフル、ブレード、グレネード、ミサイルを装備した
見慣れぬAC。どのパーツもこれまで一度もお目にかかったことがない。ただ、オレはそれらから、新しさというよりは
むしろ古くささを感じた。肩には9と書かれた玉のエンブレムが描かれている。
 
ウェイン「どうやらお前らが親玉のようだな、ギムレット。」
 
ギムレット「会いたかったぜぇ、ウェイィン。この俺が貴様のような小物に負けるはずがないんだ…。今ここで
それを証明してやるよォォ!」
 
ウェイン「やれやれ…。こーゆーことする時点で私は負けてますよってのを証明してんだろうが。しょうがない。
オツムの悪いお前にしっかりと「現実」を認識させてやるよ。
おい、あのバカはともかく、あの得体の知れないのは警戒した方がよさそうだ。」
 
カロンブライブ「わかっている…!貴様ら…タダですむと思うなよ…!!」
 
 
 
 
 
あとがき
初の前編後編ものです。いやー長かった…。
いつもの1,5倍ですもん。余談ですが、カークは
かなり前に書いたボツ案の名残です。
作者:キリュウさん