サイドストーリー

One Raven’s Chronicle No.5 乱入者(後編)
ギムレット「うおらうおらぁ〜っ!死ねぇ〜!!」
 
ウェイン「へっ!相変わらず乱射することしか頭にねぇようだな!」
 
ギムレットはろくに照準もつけずにただマシンガンやロケットをばらまいていた。素人ならいざしらず、
Cランクのトップ二人にそんな攻撃が通用するわけがない。外れた弾が壁や床に食い込む。
 
カロンブライブ「貴様など俺たちの相手ではない!失せろッ!」
 
ウェイン「こんな雑魚に熱くなるな!オレが正面から仕掛ける。お前は側面か背後から
強烈なのをお見舞いしてやれ!」
 
カロンブライブ「わかった。ヤツは火力だけは本物だ。十分に注意しろ。」
 
ギムレット「おのれちょこまかとぉ!ロケットでもくらえ!!」
 
ドンドンドンドン
 
ウェイン「おらおらッ!もっと撃って来いよ単細胞!!」
 
オレがギムレットを煽っている間に、カロンブライブは背後に回りこむ。気づかれてしまっては
意味がないので、ロックはしない。
 
カロンブライブ「ブレードの間合いに入った!この距離なら外さん!」
 
ギムレット「しまった!後ろだとォ!」
 
カロンブライブ「今ごろ気づいても遅い!」
 
ザシュッ
 
ギムレットが気づいたときには、彼のショートレンジブレード、CLB−3771がコアと脚部の
接続部を捉えていた。コクピットは無事だったが、コアは脚部にいわば乗っているだけの状態で、
それは少しでも動けばコアと脚部は泣き別れとなることを意味していた。
 
ウェイン「勝負あったな。しかしこの状況でもあいつが動かないということは…。」
 
カロンブライブ「ああ。こいつも捨て駒ということだな。」
 
ギムレット「おい!話と違うぞ!なぜ援護しない!」
 
「………。」
 
ギムレット「貴様ァ!なんとか言グワァァァァッ!!!」
 
火球が二人の間を通り抜け、ギムレットを焼き尽くす。あまりに唐突な出来事に言葉も出なかった。
 
「小物が…。我が手に掛かって死せることを冥府で自慢するのだな…。しかし小物とはいえ、あやつを無傷で
退けるとはな。強すぎる力は均衡を崩し、滅びをもたらす…。危険な芽はここで摘み取るべきか…。」
 
このACから聞こえる声は、間違いなく普通の人間の声だ。単調な機械音声ではない。しかし、なぜか
このACには人が乗っている気がしなかった。
 
「我が名はハスラーワン…。ウェイン=レッドハット、貴様をイレギュラーと認定した。我々への脅威となる前に
排除する。」
 
ウェイン「イレギュラー、か。聞き飽きたな。…仕掛けるぞ!」
 
オレたちは散開しつつ、接近する。ハスラーワンは動かない。
 
ウェイン「おい、ミサイルで先制するぞ。タイミングはこちらに合わせろ。」
 
カロンブライブ「了解だ。」
 
ミサイルのロックを開始する。ハスラーワンはまだ動かない。
 
ウェイン「ロック完了、撃て!」
 
カロンブライブ「よし!発射!」
 
二機のACから計五発のミサイルが放たれる。こちらの予想では、ハスラーワンは前か後ろに動くはずだった。
左右に動いては、爆雷投下ミサイルはかわせるかもしれないが、垂直ミサイルを完全に回避するのは難しい。
そして、後ろに下がればライフルが、前に出ればブレードが待っている。
 
ハスラーワン「…。」
 
カロンブライブ「何っ!?」
 
ウェイン「くぅっ!」
 
ハスラーワ予想通りまえに出た。想像を絶する速度で。ブレードなど当てるどころか振る暇さえなかった。
目標を見失ったミサイルが迷走する。
 
ハスラーワン「ぬるいな。次はこちらから行くぞ…。」
 
オレがターンブースターで向き直るや否や、パルスライフルを連射してきた。回避が間に合わず、直撃を受けて
しまった。いたるところの装甲が熔けてしまっている。その連射力もさることながら、威力もまた脅威だ。
 
ウェイン「INTENSI…FY?」
 
カロンブライブ「インテンシファイ?こんなときになにを言ってるんだ?」
 
ウェイン「INTENSIFY…オレを助けてくれるのか?わかった。もってくれよ、ハウンド…!」
 
カロンブライブ「おい、何をしている!?」
 
ウェイン「コード入力…076374219803。………強化完了。システムオールグリーン。INTENSIFY、起動!」
 
INTENSIFY…。英語で増強という意味をもつそれは、ACの各能力を向上させ、戦闘能力を飛躍的に高める
システムのことである。しかし、その代償として、オプションパーツを一切とりつけられなくなり、また、ACの限界
を遥かに超えた能力を無理に行使するため、ACへの負担はかなり大きい。
さらにパイロットへの肉体的、精神的負担も少なくないため、確実に寿命を縮める諸刃の剣である。
 
 
カロンブライブ「お、俺は夢でもみているのか…!?」
 
それが彼の感想だった。先ほどまでの動きからは到底考えられないような、人間離れした動きを見せていたからだ。
明らかに反応速度、運動性が向上しており、ハスラーワンと互角以上の戦いをしている。おそらくトップランカーでも
このような動きはできまい。
 
ウェイン「おおおおおぉっ!」
 
バシュウゥ バシュウゥ
 
ハスラーワン「ちぃ!調子に乗るな!」
 
ドゴオォ
 
ウェイン「当たるかぁっ!」
 
ハスラーワン「この距離でかわすとはな。」
 
ウェイン「オーヴァードライヴ!全弾発射!!」
 
ズバババババババババッ
 
垂直ミサイルがすさまじい勢いで連射され、白煙を残しながらハスラーワンに迫る。だがそれだけではなかった。
空になったそれをパージすると、ミサイルを追うようにOBを起動する。
 
ウェイン「ライフル、フルブースト!!」
 
ドガガガガガガガガガガガガガ…
 
ACを左右に振ってFCSを眩惑しつつ、ライフルをマシンガンの如く叩き込む。その動きはあたかも分身しているような
錯覚を引き起こす。ミサイルとライフルの猛攻のより、ハスラーワンは少なからずダメージを受けていた。そして…
 
ウェイン「零距離、沈めぇーっ!」
 
バシュウゥ バシュバシュウゥ…
 
至近距離から容赦なくエネルギーの奔流がほどばしる。嵐のような攻撃をうけたにもかかわらず、まだ動けるようだ。
しかし、装甲がはがれ、中身が露出しているところをみると、どうやらかなりのダメージを受けているようだ。
 
ハスラーワン「これ以上は危険か…。止むを得ん、後退する。」
 
カロンブライブ「逃がすか!」
 
ハスラーワン「邪魔をするな…!」
 
ビビビビビ
 
カロンブライブ「この程度で!…い、いない!?」
 
パルスライフルを受け、気をそらした隙に、ハスラーワンは忽然と姿を消していた。
 
ウェイン「…どう…やら、助かった…な…。」
 
カロンブライブ「お、おい大丈夫なのか?」
 
ウェイン「心配ない…。疲れているだけだ…。少し、休ませてくれ…。」
 
 
 
 
「…そうか、奴はお前をそこまで追い詰めたのか…。」
 
ハスラーワン「申し訳ない。私としたことが油断をしてしまった。」
 
「よい。奴がINTENSIFYを有していると確信できただけで十分な成果だ。」
 
ハスラーワン「時に…、オペレーション・エンドオブデイズの方はどうなっている?」
 
「こちらは至って順調だ。既に所在もつかんでいる。フフフ…、この美しき星に、人類など不必要なのだ。
愚かな管理者、そして管理者が放った盾と矛ともども地球上から消し去ってくれよう…。」
 
 
 
 
 
 
 
あとがき
はぁ…。やっとここまできましたよ。
書いてる時間が夜中遅くだから後で
読み返すと誤字脱字が…(汗
作者:キリュウさん