サイドストーリー

第一話 「入隊」
 20世紀中盤から始まった際限の無い軍拡競争は21世紀の中盤に衛生兵器に
よる「大破壊」で最悪の終焉をむかえた。わずかに生き残った人類は生活の場を地下に移し、
同じ過ちを繰り返さぬよう管理された。旧時代に成立した「政府」は無く、代わりに「企業」が
管理者の下で各地域を統治した。やがて「レイヴン」と呼ばれる賞金稼ぎに管理者「AI」は破壊され
人類は地上に舞い戻った。それから50年、地上の探索はほぼ終了し、大半の人類が生活の場を地上に移していた。
「企業」は地上に眠る大量の資源物資、旧時代の遺産を巡り、旧時代と変わらぬ抗争を飽きることなく繰り返し。
軍拡の道を進んでいった。
この物語はそんな混迷した時代の一人の「レイヴン」の物語である。

                   極東地区ムロマチ反乱組織「室町神風連」本部
 薄汚れた部屋に二人の野戦服姿の男が座っていた。
「で、キミは我が組織に入隊したい。そういうことかね?」
すぐ向かいに座った幹部クラスの男が言った。特に特徴のつかみ所がない男だ。
「はい」
「しかしだねぇ。キミはレイヴンだそうじゃないか。レイヴンはその他の組織への加入は禁止されていたと記憶しているが」
「わかっています。しかし、どうしても入隊したいのです。自前のACもあります。おねがいします」
「まぁ、最後まで話を聞きたまえ。別に入隊しなくても活動をする方法はあるのだよ。企業の依頼を受けず、
組織の依頼のみを受ければいい。それでわが組織に協力したことになる。給料は報酬と言う形で払えばいいわけだ。
それでもいいなら入隊を許可しよう」
「はい!ありがとうございます!でわ、失礼します」
こうして俺は「室町神風連」への入隊を果たした。退室したあとこんな会話が交わされていたことも知らず。
「隊長、本当に入隊させるのか?あんな新人」
「新人でも活用場所はあるよ。ひょっとしたら化けるかもしれんしな。死んでも我が隊には損害はないよ」
「それもそうだな」
                        
                     「神風連」格納庫
 「え〜、岩本徹三(俺の名前だ)さんですね?オペレーター役のハンス・ウィンドです。
初めまして、よろしく。コレがこの基地の地図です。必要最小限の所しか書いてませんけど我慢してください。
とりあえず・・・・・酒場で説明します、ついて来てください。」
金髪の碧眼、典型的な西洋人だ。どうも俺のOPらしいが・・・かなり雰囲気は軽い。
「徹三さ〜ん、早く来ないと置いていきますよ〜。」
                   酒場「ラック」の前
 基地内のこぢんまりした酒場だ。ドコの基地にもあるごく普通の物。
「今日は、入隊祝いで俺がおごりますよ」
「ん?そうか。悪いな」
「その代わりあんまり高い物は注文しないでくださいね」
「ちぇ、ちゃっかりしてるなぁ」
「兵隊家業はそんな収入は良くないんですよ、早く入りましょうよ」
ウゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜
「何だ!?」
「敵襲ですよ。企業も何度痛めつけても懲りませんからね・・・・・定期便ってヤツですよ。
とりあえず格納庫に行ってください。整備兵に聞けば何とかなるはずです。俺は指揮所に行きます」
緊張した声を残してハンスは指揮所に走って行った。
 「クソ!!入隊当日に襲撃か・・・・そうとうついてるらしいな」
                   格納庫
「メインPC起動。武装確認、FCS起動完了。機体bO05岩本機出撃許可を要請する」
「こちら管制塔。機体bO05岩本機出撃許可発令。敵を殲滅してください」
「了解。岩本機出るぞ」
                 基地西方5qの地点
「こちらハンス。岩本さん、聞こえてます?」
「おう、聞こえてるぞ。敵はドコに出た?」
「2時方向にMT5、戦闘ヘリ3、大型MT1ですね。戦力的には大したしたことないです」
「レーダーが捕らえた。OB起動する。突っ込むぞ!!」
「了解」
OBを吹かし機体は一気に加速、猛烈な速度をだす。
「可視距離に到達。逆間接MTか、食えるな」
手近な距離にいたMT一機(逆間接型の中量MTだ)をロックオン・・・・・発砲。命中!!
が、ほとんどが装甲に弾かれた。角度が悪かったようだ。
敵も負けじと応戦する。ロケット弾6発を発砲。一発をきわどい差でかわす。
MTが扱うロケット弾は反動が大きく。撃った直後は動けない。その隙に一気に距離を縮める。
距離200。外す訳がなかった。発砲。全弾命中し敵は発火。破片をまき散らして爆発する。
「こちら、岩本一機食った。初撃墜だ!!」
「了解。そっちに大型MTが一機逃げていきました。叩いてください」
「了解。見えた、大型MT一機確認」
「敵は大型砲を搭載してますね。注意してください」
敵の砲は・・・・戦艦などに積む40p以上の大型砲だ。
「あんなの食ったら機体ごとバラバラだな。接近戦しか無いか」
敵弾が雨のように降る。長期戦は無理のようだ。
OBを吹かしながらも接近するが、敵の火力が強力すぎて迂闊に近づけない。
そうしている間にも装甲は削られる。大型砲も射撃を開始した。
はやり初期装備に機銃だけ変えた武装では不利のようだ。
「クソ!!このままじゃラチがあかねぇ!!」
そうしている間にも大型砲が至近距離に着弾、右腕の装甲が吹き飛び、回線が焼き切れる。
右腕が使用不能になった。すなわち、主武装が使えなくなった事を意味する。
「ハンス!!支援よこせないか?」
「無理ですよ。あんなのが相手じゃMT何かじゃ歯が立ちませんよ」
「チッ、こうなったら格闘戦に持ち込む!!」
「了解、死なないでくださいよ」
OBのスロットルをギリギリまで倒す、一気に加速。
距離50、ブレードを起動。一閃
MTの装甲を叩ききる。その一撃が致命傷となったのか敵の移動速度が鈍り。発火、爆発した。
ブレードの刃が弾薬庫を直撃したらしく、アッという間に大型MTは消し飛んだ。
この爆発を至近距離で食らったACはたまらない。装甲は吹き飛び、
一気に機体が加熱しPCや回線類が壊れる。機銃の弾倉に残っていた弾に誘爆する。
コクピットにも凄まじい衝撃が走り、パイロットは気絶した。

                       医療室
「あっ、気づきました?」
「ん〜〜、ハンスかぁ?どこだ?ここ?」
「医療室ですよ。MTの大爆発を至近距離で食らって気絶してたんですよ」
周りにカーテンが引いてあり周りの状況はよく分からない。時折誰かの足音とうめき声が聞こえる。
「で、機体は?」
「もちろん大破しましたよ。修理費の半分は部隊が持ってくれるそうですけど・・・・・・
岩本さん、修理費足りませんよ」
「初陣でAC無くすとわなぁ・・・・泣きたくなるよ」
「まぁ、グローバル社に借金でもして、アリーナで返すしかないでしょ」
「それしか無さそうだな」
「とりあえず今は入院しててください。骨折3カ所、裂傷、やけど。五体満足でいられる分ラッキーですよ。」
「そんな酷い壊れ方なのか?」
「前面装甲は全部吹き飛んでますよ。生きていたのだけでもラッキーでしたよ。
とりあえず、医者の話では戦線に復帰するまでには3週間はかかるそうです」
初陣でAC大破、同時に大型MTを撃墜・・・・・・運がいいんだか悪いんだか分かんないなぁ、全く。
 こうして俺の前途多難なレイヴン兼反乱軍団員としての生活が始まった。
無論、こんな戦闘がまだまだ序の口だと言うことも知らずに。


つづく
作者:カクタスさん