サイドストーリー

Rain of silent line ― 第2話 ナインボール破壊作戦
ここは空母内の俺の部屋だ。この部屋でミッションの報告を待っていた。電子音と共にメールが到着した。
しかし、メールが来た途端に電話が来た。メールは後で開くことにして受話器をとる。
「祐一か。ロイドだ。」
ロイド・シアーズ。エマの父親でこの空母の艦長だ。エマに通信技術を叩き込んだのもロイドだ。
「あぁ、艦長ですか。どうしたのですか?」
「うむ。実はユニオン本社から緊急の依頼が来たのだ。」
「緊急の依頼・・・?」
「ミラージュがジューコフ兵器開発工場で新型ACを開発したらしい。
なんでもあの「ナインボール・セラフ」に酷似した機体を遺跡から掘り出し最新技術で改良しているらしい。」
俺は耳を疑った。ナインボール=セラフ・・・。俺でも名前だけなら聞いたことがある。
最強のACとして名高く火力、装甲、機動力。どれをとっても現代のACを大きく陵駕しているといわれている。
しかし、大昔に破壊されたと聞いたが・・・。
「そのナインボール=セラフを破壊してほしいと頼まれたのだ。これよりジューコフ兵器開発工場へ向かう。格納庫へ行ってくれ。」
「了解。」
久しぶりに心臓がドキドキしてきやがった。あの最強ACと戦えるかもしれないのだ。俺はまっすぐ格納庫へ走っていった。
しかし、俺は重要なことを忘れて出て行ってしまった。
届いた電子メールの題名はこうだった。「クリムゾン・ネイル改造計画」と。

格納庫ではメカニックたちが忙しく動き回っている。俺はクリムゾン・ネイルを見上げているとコウが来た。
「なんかドキドキすんな!祐一!」
「あぁ、なんてったってあの「ナインボール=セラフ」と対決するんだからな。」
空母は一路ジューコフ兵器開発工場へ向かう。

空母は工場の警戒網にひらないよう近くの密林に俺たちを投下した。着地するとエマから通信が入った。
「敵の戦力はアローポーターが主力のようね。敵に見つからないように慎重に進んで。」
「了解。」
今度はコウから通信が入った。
「おい祐一。撃破数を競争しないか?」
「まぁ、乗り気はしないがいいぜ。」
「よっしゃ。俺はこっちから進むから工場で落ち合おうぜ。」
「わかった。」
俺が数キロ進むとさっそくアローポーターの小隊と戦闘した。もちろん軽く撃破する。これで3機。
工場に近づくほど敵機数は多くなっていく。ここまでの撃破数16機。しばらく進むと工場らしき建物が見えてきた。
木々を掻き分け工場の方角へ進むと、突然上空から熱反応が現れた。
「なに!!」
空中から奇襲のリニアキャノンが飛んできた。間一髪で避けることができた。地面に巨大なクレーターができる。
「恐ろしい威力だな。危なかったぜ。」
敵が煙の中から出てきた。黒い塗装が施してあり肩にはさっきのリニアキャノン。右腕にはバズーカを装備してある。
見たところ自立起動ACのようだ。エマから通信が入った。
「ミラージュの自立起動ACね。撃破して!」
「了解!」
俺はブースターを吹かしてすばやく飛び上がると空中からカラサワを連射する。敵はリニアキャノンを連射してきた。
「リニアキャノンをあの速度で発射できるとは・・・。」
回避するのもやっとの状態だった。俺は、グレネードを発射して牽制する。敵はバズーカも織り交ぜてきた。
バズーカが一発被弾する。
「クソッ!キツイな・・・。」
しかし、俺にはある切り札があったのを思い出した。肩に内蔵されているロケットだ。こいつを使えば・・・。
「工場に引き込めばダメージは期待できるな。」
俺はオーバードブーストを使い工場に突撃する。
「こっちだ!!」
そのとき、工場の近くで奮戦するコウを見かけた。俺はコウに通信を送った。
「コウ!工場から離れていろ!」
「えっ!?わ、わかった。」
俺は工場の扉を開けると(本当は蹴破ったのだが)燃料保管庫を探す。
「燃料保管庫・・・燃料保管庫・・・あった!!」
燃料保管庫に突入すると敵ACも運良く保管庫に入ってきた。
「残念だったな。ジ・エンドだ!!」
肩からロケットを射出する。正直このロケットを念のため持ってきてよかったと思った。
そして、ロケットを燃料に投げつけた。燃料は大爆発を起こし保管庫周辺を吹き飛ばした。
このロケットはナパームロケットだったのだ。もうもうとした煙が払われるとそこには、フレームがむき出しのAI機体があった。
「か、勝った・・・!」
後ろから扉を開いてガトリングムーンが入ってきた。
「祐一!大丈夫か!?」
「あぁ・・・。なんとか・・・。」
さて、ナインボールを捜さなければいけないな。俺たちは工場を奥に進んでいった。
そして、それらしきエレベーターを発見した。エレベーターを降りると巨大な扉を発見した。
「コウ、この奥が・・・。」
「ナインボールがいる部屋だな。間違いなく。」
お互いの得物を構えて扉の開閉スイッチを押した。俺たちは部屋に入るなり得物を振り上げる。
しかし、ナインボールの姿はそこにはなかった。
「おい。どういうことだ?」
「わからない。だが、気をつけろ。」
だが、俺たちは完全に油断してしまった。天井に赤い光があるのを知らずに・・・。その光が急降下してくる。
「な・・・!?」
その機体はまさしく恐怖の象徴だった。
白い塗装がしてあり武装は見たこともないライフルにレールキャノンらしきものが肩に乗っている。
翼を広げたようなパーツが背中についていて赤いモノアイが恐怖を増長させる。
「これが・・・、ナインボール=セラフ・・・。」
「・・・。クソッ!!ここまでくればやるっきゃねぇぞ!!」
俺がカラサワを発射しコウがチェインガンを連射する。実弾とレーザー弾の光芒がナインボールを包む。
「これならあいつでも・・・。」
しかし、期待は完全に裏切られた。ナインボールは装甲に傷すらついていない。
「こいつ・・・。なんて装甲だ。」
今度はナインボールがライフルを構える。轟音がして黒いレーザーが発射された。レーザーが腕に直撃する。
左腕が肩から先にかけて無くなっている。俺が反撃しようとするとナインボールがいない。後ろに回りこまれているではないか。
ナインボールの左腕から白いレーザーブレードが伸びてきた。コウのガトリングムーンの装甲を切り裂く。
「こいつ・・・・。化け物か・・・・!!」
俺たちの脳裏にひとつの言葉が出てきた。
(勝てない・・・・・・。)
いくらなんでも馬鹿げている。こんなAC離れした強さのACに勝てるわけがない。
カラサワとチェインガンの猛攻が効かない。火力は桁外れで機動力はロックサイトにも入れられない。
だが、絶望的な状況の俺たちに救いの手が差し伸べされた。部屋に一機の赤いACが入ってきた。
「お前たち!ここは俺に任せろ!!」
「あのACは・・・。ゼロ!?」
ゼロとはA−2ランクの凄腕レイヴン。
逆関節脚のACで高機動を実現し空中から強力な武装のラッシュをかけるスタイルで任務を達成してきた男だ。
「いくらあんたでもあのACは無理だ!俺たちも協力する!」
「お前たちの機体はボロボロだ。すぐに撤退しろ!」
「わ、わかった・・・。」
部屋をすばやく出ると工場の出口を目指した。工場を出ると数秒後、工場が謎の大爆発を起こした。
「な、なんだ・・・?」
その爆発からなんと、ナインボールが出てきたではないか!
「そんな・・・。ゼロまでやられたのか・・・?」
俺たちの頭の中にはさまざまな疑問が浮かんでいた。なぜナインボールがパイロット無しで動いていたのか?
AIだということも考えたがAIとは思えないすさまじい動きだった。なぜゼロがこの任務のことを知っていたのか?
あの任務は俺たちだけ知っているはずなのだ。しかし、今はこのことを艦長に知らせなければいけない。
ひとまず俺たちは空母を目指した。


第3話に続く

あとがき

いやぁ、ゼロ出しちゃいましたよ。ゼロ(^^)
謎的なレイヴンっていないかなぁと思ってネームレスのことを思い浮かべたんですけど、
いかにも普通な感じ(そうか?)がしたので自分的に強い(そんなこと思っているのお前だけどよ)、
かっこいい(自分の妄想)謎(お前がだ!)の3拍子がそろっていたので出してみました。
最後のほうの謎は3話で明らかになります。それでは3話をお楽しみに・・・。
作者:グレンさん