サイドストーリー

Rain of silent line ― 第3話 空駆ける戦乙女
空母に向かう俺たちの目の前に突然、MTの大軍勢が目の前をふさいだ。
「止まれ!!武器をすべて廃棄しろ!!」
敵の数約30機。今の状態では勝てない。俺たちは素直に武器をすべて捨てた。
「お前たちはミラージュの軍機に触れたため本社に強制送還する。ACを降りて来い!」
ACから降りて手を上げた。
「俺たちどうなっちまうんだろうな?」
「さぁ。拷問は免れないな。」
俺は自分がえらく冷静なのに気づいた。あきらめがついているのだろう。俺たちはヘリに乗せられた。
どうやらミラージュの本社へ行くようだ。

しばらくしてヘリが着地した。ヘリから降りると、そこには巨大なビルが建っていた。これが3大企業最大の企業の総本山。
なにか荘厳な感じがした。そして、目隠しをされ、どこかひんやりした場所に入れられた。
「数時間後に拷問を始める。おとなしくていろよ。」
しばらく、俺たちは黙り込んでいるとコウが話しかけてきた。
「あのナインボール・・・。化け物じみた強さだったな・・・。」
「あぁ。」
その会話を最後に再び沈黙が続いた。数時間後・・・。
「拷問を始める。出て来い。」
俺たちは
また目隠しをされ、つぎに視界が開けると、そこには司令官らしき男が立っていた。コウは別室のようだ。
「椎名祐一君か・・・。」
「そうだ。」
「どうだ。取引をしようじゃないか。君の味わう痛みと栄光と。わが社に入れば今すぐにその拷問台から開放してあげよう。」
俺は吐き捨てるように言いのけた
「誰がテメェみてぇなクズのいる会社に入るかよ。テメェは戦場以外で何人殺してきた?!」
哀れむような口調で俺は叫んだ。
「戦場以外?何を言っている。私は戦場以外では一人も殺しておらぬぞ?」
「嘘だ!!エマの母親を殺した軍勢を引き連れたのはお前だろう!?テメェの名前は言ってやろうか?ジェームス・エイケン・・・。
それがあんたの名前だ!!」
「ほう・・・。」
「テメェのことはいろいろと調べたぜ。ただ単に殺しがしたいだけでエマの住んでいた町を襲い、略奪、殺人・・・。ヘドが出るぜ!!」
「フン!!では、わが社には入らないと?」
「そうだ!」
「残念だよ・・・。やれ!!」
拷問台が熱を持ち始める。
「そのまま、焼かれるがいい!!」
強烈な熱が俺を襲った。
「くっ・・・・。」
「ほう・・・。音も出さないとは見上げた根性だ。もっと熱を上げてやれ!!」
さらに熱量が上がり背中から煙が出始める。
「うわああああああ!!」
「はっはっは!!いいぞ!!泣き叫べ!!」
しかし、降参するわけにはいかない。降参することは俺が仲間たちを裏切ることになる。そんなことは絶対にしたくない。
「よし、今日はここまで!」
拷問台から放された。
「明日の拷問は厳しさを増すぞ。覚悟しておけ。」
「最後に聞きたい。俺のACはどうした?」
「あぁ、あれか。お前の相棒のAC共々爆破しておいたよ。」
完全に希望が絶たれた。俺は警備員に引きずられながら部屋に戻された。

次の日、俺たちは本社の工業ブロックで働かされていた。ここでの俺たちの扱いはゴミ当然だった。
罵声を浴び、叩かれながらも働いていた。
「ユニオンのみんなどうしてるかな?」
コウがつぶやいた。
「さぁな。連絡が1日以上来なくて心配しているのはわかるが・・・。」
そのとき、どこかで爆発が起こる。
「なんだ!?」
警備員が集まって来る
「敵襲だ!!ユニオンだ!!」
「ユニオンだって!?」
コウはすぐに外に飛び出す。外にはACが1機。大量のMTと交戦している。
青い軽量2脚のACで武装はなんと「KAW−SAMURAI2」だけ。ブレードだけでMTを切り伏せていく。
「なんだ?あのACは・・・。」
強い・・・。武器腕ブレード1本で挑むのもすごいが動きが尋常じゃない・・・。
敵のロケットを上半身をねじって避ける。MTがあらかた片付くとACから外部通信で俺たちに呼びかけてきた。
「椎名祐一さんと銀狼牙コウさんですね!?助けに来ました!!」
俺たちは耳を疑った。それは、まだあどけない14.5歳の女性の声だったのだ。
「私、ユニオンに新しく入りました。レナ・ロックハートです。はやくこちらへ!」
俺たちはレナのACの肩に乗った。
「このACなんて名前なんだ?」
コウがレナに聞いた。
「エアリアル・ヴァルキュリアって名前なんですよ。それにこのAC。変だと思いませんか?」
たしかにおかしい。ACがあんな回避行動ができるわけないし、第一ブレードの威力が高すぎる。月光をはるかに超えているのだ。
「これはユニオン本社が「プロジェクト・ニュージェネレーション」という計画で製作した
「CAW−SAMURAI3」というパーツです。このエアリアル・ヴァルキュリアもいろんな新パーツを使っているんですよ。」
「プロジェクト・ニュージェネレーション?」
「はい。ユニオンが数年前から進めていた計画です。「新世代のAC」を前提に作られたパーツを作るのがこの計画の最終目標です。」
「へぇ・・・。」
「もちろん祐一さんとコウさんのACも改造の予定ですよ。」
「いやぁ・・・。それが・・・。」
俺はクリムゾン・ネイルとガトリングムーンが破壊されたのをレナに伝えた。
「うそ!?まさかそんなことが!!」
「あぁ。そのまさかだ。」
「じゃあ、せめてパーツの欠片でもありませんか?」
「欠片?あぁ、あれならまだ兵器廃棄所にあるかもしれない。」
「取りに行きましょう。あのACの装甲は形状記憶合金も混ぜてあるから欠片でもあれば・・・。」
「なるほど、じゃあ行くか。」
俺はレナに兵器廃棄所まで案内した。しかし、そこにはACが待っていた。
「あんなAC楽勝ですよ。祐一さんたちは見ていてください。」
俺たちを地面に降ろすとレナはACの方を向く。
「こんな奴「SAMURAI3」を使えば1,2撃で撃破できますよ!」
エアリアル・ヴァルキュリアが空中に飛ぶ。敵ACも空中に飛ぶ。そこで俺たちはとんでもないものを目にした。
エアリアル・ヴァルキュリアの背中から白い噴煙が出る。次の瞬間、エアリアル・ヴァルキュリアは敵ACの後ろを取っていた。
そして、1撃、2撃とブレードを振る。たちまちACの装甲が袈裟懸けからコアにかけて切られていた。
「驚きました?さっきの私のACは幻影なんですよ。」
「幻影?」
「「MEST−MX/CROW/CUSTOM」っていうパーツです。もちろん幻影が出ている間は私のACはレーダーに出ません。」
「すごいパーツだな。」
「さて、邪魔者もいなくなったし・・・。欠片探しをしましょう〜!!」
俺たちは3時間も兵器廃棄庫を探し回った。そして、ついに見つけることができた。空母に戻るとエマが泣きながら俺に抱きついてきた。
「もう!心配したんだから!」
「悪かった。レナのおかげだよ。」
レナが照れながら頭を掻く。
「お役に立てて光栄です。」
「さて、俺たちのACの改造を・・・。」
「そうね。欠片の復元とかで1日かかるからその間に、ジューコフ兵器開発工場での謎を解明した結果を知らせるわ。」
俺たちは固唾を呑んでエマを見る。
「まずはパイロット無しで動いたナインボールのこと。あれはパイロットが乗っていたわ。間違いなく。その証拠もあるわ。」
「なんだ?」
「AIじゃいくら教えても覚えられない「天上張り付き」をやったからよ。」
「なるほど・・・。」
「あの行動は操縦桿をうまく使わなきゃ無理なの。それが根拠。つぎにゼロがなぜあの任務のことを知ったのか。」
「ああ。たしかに謎だな。」
「ユニオンの中央コンピューターにハッキングの後があったわ。しかもゼロのパソコンの形跡があったわ。」
「なぜゼロがあんなことを?」
「それはいま本社でも全力調査中よ。さて、明日には新ACができるわ。明日は早いわよ。」
「じゃ、寝るか。コウ。」
「おう。」
俺たちは寝室に向かった。明日に会う新しい相棒が楽しみで仕方なかったが、拷問の疲れもあってかすぐに眠ってしまった。

第4話に続く

あとがき

いきなり捕まったとおもいや、いきなりAC交換と展開がすさまじい(?)作品ですね。
次回は新ACの紹介とそのACの初戦闘を書きたいと思います。
作者:グレンさん