サイドストーリー

One Raven’s Chronicle No.6 策謀
陽が昇り、また朝が来た。朝が来たので目を覚ます。別段変わったことではない。
オレもその例に漏れず、目を覚ました。いつもと違うのは、そこが自宅ではなく、病院の一室であったことだ。
 
ウェイン「う…む…、あれ…?オレの部屋ってこんなに白かったっけ…?」
 
ユリカ「あっ、お兄ちゃん気がついたのね!」
 
ウェイン「明らかにオレの部屋じゃねぇ。てことは病院か?あの時は…確かアリーナでACが…。」
 
「そう、その後あなたは試合中に乱入してきたAC二機をカロンブライブとともに撃退しました。
で、その直後にあなたは気を失ったのでここに運ばれたんです。心配したんですよ…?」
 
別の声がそのときの状況を説明してくれた。徹夜でもしたのか、その目はかすかに赤い。
よく見ると目頭に涙が溜まっていた。
 
ユリカ「あ…メリルさん。」
 
ウェイン「来てたのか。で、あの後どうなったんだ?ギムレットの野郎は生きちゃいないだろうけど、
あの正体不明機とか、試合はどうなったか、とか気になるんだ。」
 
三日も泥のように眠っていたオレは、それらが一番気になっていた。
 
メリル「それらの質問に答える前に、この三日間のうちにあったことを説明しなければなりません。」
 
ウェイン「何か変わったことでもあったのか?」
 
メリル「AI研究者たちが相次いで姿をくらませています。
それと…、地球の衛星軌道上にこれまで観測されていない『何か』が接近しつつある、という報告があり、
それは研究者たちが失踪した時期一致しています。悪い予感がします…。
正体不明機と言い、最近の事件と言い、一体何が起きているのでしょうか?」
 
ウェイン「オレが寝ている間にそんなことがあったのか…。難しいことは良くわからんが、何かが起きていることは確かだな。
そうだ、で、あのあとは?」
 
メリル「残念ながら試合は無効、ギムレットは死亡が確認されています。正体不明機は我々の追撃を振り切り、行方を眩ませています。
事態を重く見た我々は、正体不明機をエンブレムからナインボールと呼称、懸賞金を用意して情報を集めています。
野放しにすることは我々の信用問題ですから。」
 
グローバルコーテックスはレイヴンへ依頼を斡旋したり、アリーナを運営したりして利益をあげている団体だ。
そんな彼らにとって、今回の一件はコーテックスへの挑戦であると言っていい。
このまま乱入の首謀者とされるナインボールとやらを野放しにしてしまうことは、権威の失墜を意味する。
上層部はこれを恐れたのだろう。権威が失墜すれば仲介料を得ることができなくなり、
信頼を失えばアリーナの運営もままならなくなる。そうなれば消滅は火を見るより明らかだ。
現に、あの事件以降、アリーナの観客動員数は減少傾向にあるという。そして、コーテックスが消滅すれば、レイヴンは皆失業だ。
中には企業専属のレイヴンとなる者もいるだろう。しかし、それはごくごく一握り。
A、Bランクの、いわゆる上位ランカーか、よほど強いコネがない限り無理と言うものだ。
巨大企業とはいえ、ACという巨大な金食い虫を何匹も飼うような余裕はない。
これらのことから、コーテックスの存亡はオレを含めたレイヴン達にとって死活問題なのである。
 
ウェイン「ナインボールか…。そういえば我々、なんて言ってたな。他に仲間がいたりして。それはさておき、何か仕事入ってない?」
 
メリル「もしかするとギムレットのように彼に同調したレイヴンがいるのかもしれませんね。
仕事はクレストから特別輸送機護衛の依頼が入ってますよ。」
 
ウェイン「じゃ、それ受けるかな。念のため僚機を……彼にするか。」
 
メリル「彼ですね。わかりました。ではその旨を伝えておきます。」
 
ウェイン「あ、あのさ…。」
 
メリル「はい?」
 
ウェイン「ありがとな。その…、いろいろ面倒かけて。」
 
メリル「…気にしないで下さい。あなたが無事で何よりでしたから。」
 
そして彼女は手続きにかかると言い残し、病室を後にした。すると、先ほどから黙っていたユリカがもじもじしながら口を開いた。
 
ユリカ「お、お兄ちゃん…。あ、あの…。」
 
ウェイン「ん?どうした?」
 
ユリカ「実は…レイヴンになったの。」
 
ウェイン「は!?どうしてまた急に!?」
 
ユリカ「実は先週ぐらいから決めてたの…。行方不明になったお兄ちゃんを捜すにはこれしかないって。
あたしは自分の目で真相を確かめたいのよ!!」
 
ウェイン「で、オレが寝てる間に実地試験を終わらせた、と。いつかそうするだろうと思っていたが、
いきなり試験を受けて合格してたなんてなぁ。一言言ってくれればアドバイスもできたのに。」
 
ユリカは予想外の反応に驚いたようだった。オレだってバカじゃない。
彼女がシュウを捜すためにレイヴンになろうとしていたことくらいお見通しだ。ただ、そのときあえて何も問わなかった。
それがなぜかはわからないが、あいつが同じ立場だったらきっとこうするだろう。
 
ユリカ「ご、ごめんなさい。きっと反対するとおもって…。」
 
ウェイン「お前もいい年だしな。お前が決めたことにいちいち口出しはせんよ。だからお前はただ、前に進めばいい。」
 
ユリカ「う、うん。」
 
ウェイン(いやぁ〜、オレもたまにはいいこと言うなぁ〜。我ながらびっくりだ。)
 
こうして、この日は終わった。
 
 
 
翌日 午後6時頃
 
「あんたがウェインか?」
 
ウェイン「ああ。よろしくな、フドー。」
 
オレたちはあいにくの天気の中、バルガス空港にて輸送機の到着を待っていた。
最近他企業からの襲撃が相次いでいるため、重要物資の移送の際は、レイヴンを雇って警備に当たらせているらしい。
 
ウェイン「お〜し、ミラージュのタコ共め!どっからでもかかってきやがれってんだ!!」
 
メリル「あのときとは打って変わってえらくやる気ですね…。」
 
ウェイン「当然!輸送機はオレたちでバッチリ守るさ!!」
 
管制官「こちらのレーダーが敵部隊を捕捉しました。迎撃準備に入ってください。」
 
フドー「丁度いい時に来たな。…足手まといになるなよ。」
 
ウェイン「任せろ。失望はさせねえさ。」
 
降りしきる雨の中、敵部隊が接近しているのがこちらのレーダーでも確認できた。数は3。光点が青いことから戦闘機と思われる。
それ以外に反応はない。
 
αリーダー「αリーダーより各機へ。輸送機への攻撃を最優先とする。護衛への攻撃は各判断に任せる。」
 
隊員「了解。」
 
オレたちはブースターを吹かしながら敵部隊に迫る。ACと比較すれば、戦闘機というのは確かに弱い。
だが、これが大部隊となると、その立場が一変する。地上部隊と連携すればACを撃破することも不可能ではない。
実際そうやって撃破されたレイヴンがいるという事実が、これを裏付けている。そう考えると敵の戦術は稚拙としか言いようがなかった。
 
フドー「なんなんだコイツらは?小部隊がいくつも…。連中は指揮官には恵まれなかったようだな。」
 
ウェイン「…だな。これじゃ各個撃破されてお終いだ。ま、お金持ちにはお金持ちなりの戦い方があるだろうさ。」
 
敵は三機編成の小隊を一つずつ送り込んできている。これではトータルの火力も弱いし、なにより脆い。
オレたちが稚拙と思ったのはこのあたりだ。
 
メリル「あと一分ほどで輸送機が到着するそうです。」
 
フドー「あと一分か。この分なら余裕だ。」
 
ウェイン「ち、また来たか。悪いが恨むなよ…。恨むんならお前らの指揮官の無知を恨んでくれ。」
 
敵はひっきりなしに飛来する。が、二機のACの前にことごとく落とされる。それを見ていると、なんだか彼らが哀れに見えてくる。
 
ウェイン「フドー、管制塔側からも来たぞ!」
 
フドー「任せろ。」
 
フドーのAC、スレイヤーが吐き出す銃弾が、戦闘機を残らず蜂の巣に変える。
ミサイルをかわしながらのその攻撃は、見事の一言だった。
 
 
「彼らの様子は?」
 
「圧倒的です。まるで相手になっていません。」
 
「フ、当然だな。」
 
「それよりもアナタたち、アタシはいつ出ればいいのよ?」
 
空港から少し離れた丘にACが三機。一機は白地に薄紫、もう一機は同じく白地で、こちらは緑。
最後の一機は悪趣味としか言いようのないくらい毒々しい紫系の色のみで彩られていた。
それぞれに、落ち着いた口調の男、きつめの口調の女、女性的な口調の男が搭乗している。
 
「もうじき輸送機が到着する。それが最離陸して離脱し次第、彼女とともにあの二機を叩いてくれ。」
 
「わかったわ。…にしてもアナタ、アタシが誰だか忘れたわけじゃないでしょ。後ろから撃つつもりじゃないでしょうね?」
 
「貴様!無礼だぞ!!」
 
その発言に、きつめの口調の女が噛み付く。その疑念に落ち着いた口調の男はこう答えた。
 
「…君の疑念はもっともだ。だが、私はいまさら過去の因縁を持ち出す気は毛頭ない。彼は我々が信奉する管理者を破壊した罪人だ。
罪人を討つためならば、敵と手を組むこともいとわぬよ。」
 
「………。」
 
「それをアナタのお友達が知ったらどう思うかねぇ。ま、アタシにとっちゃ管理者もアナタたちの目的も知ったことじゃないわ。
アタシが儲かりさえすればいいの。」
 
(さあ、これが我々が課す最後の試練だ…。必ず乗り越えてくれ。願わくは自らの力で…。)
 
雨の中、落ち着いた口調の男は心の中でそう呟いた。







あとがき
というわけで(どういうわけだ?)
早くも(やっと、だろ。)
No.6だぁ。(ごくろさまな)
戦闘描写ってムズい…。(そこだけじゃねえだろ。)
作者:キリュウさん