サイドストーリー

Underground Party 1話 〜第13AC小隊〜
Title:中央研究所防衛
ルグレン研究所――我が社の中央研究所だ。
そのルグレン研究所にかなりの数の部隊が接近中であることが確認された。
無論、研究所には警備部隊が配備されているが、確認された部隊の規模からして、現有の警備部隊のみでは抗し得ないと判断された。
そこで、諸君ら第13AC小隊――"Lust Supper"第13小隊にこれを迎撃してもらう。
現地の警備部隊及び、雇ったレイヴン2名と協力して敵部隊を殲滅せよ。

「というわけで、我が第13小隊に出撃命令が下った」
揺れる輸送機内のブリーフィングルームで、資料の留められたクリップボードを放りつつ、小隊長が言う。
「・・・にしても小隊長、戦闘は軽規模だったとはいえ、こっちは一仕事終えた後ですよ?」
若い男が不満気にぼやく。
それももっともな話、彼らは今朝早くから出撃し、約6時間に渡って、座礁したミラージュの軍事研究船内の探索活動を行っていたのだ。
「カーティス、気持ちは分かるが俺達は自由なレイヴンじゃない。本社の命令であちこち飛び回る働き蜂なのさ」
小隊長の言葉に、カーティスと呼ばれた青年が顔をしかめる。
「にしても・・・大体、ルグレンなら1個大隊級の防衛部隊があるでしょう?資料にゃレイヴンも2人雇ったってあるし・・・」
カーティスの言いたいことはこうだ。
レイヴン2名を含む部隊があるのに、わざわざ自分達が出る必要があるのか、と。
「万全を、ということだろう。それに、何処の部隊か知らんが、かなりの量を注ぎ込んでるようだからな」
横合いから、この部屋にいる中では一番の年長の男が口を挟んだ。
「そりゃそうですが・・・AC6機も必要とは思えませんよ、ウラノスさんだって本当はそう思ってるでしょう?」
逆に聞き返された男――ウラノスは、苦笑して肩をすくめる。
「カーティス、諦めろ。ルグレンに一番近かった小隊が我々だったのが運の尽き、だ。ほれ、コレで機嫌を直せ」
小隊長も笑いを浮かべながら、カーティスにタバコを投げる。
それを上手にキャッチして、ライターを取り出す。
「と・・・ラスティアちゃん、吸ってもいいかい?」
タバコを口に咥えたところで思い当たり、横に座る少女に声を掛けるカーティス。
このような場所には相応しくないような、可愛い少女だ。
ちなみにカーティスは、将来は確実に美人になるだろうと踏んでいる。
「・・・あ、はい。どうぞ」
ラスティアが、顔を上げずに答える。
俯いたその可憐な双眸には、疲労が陰を落としている。
無理も無い、ラスティアは今朝の任務が初出撃だったのだ。
初の実戦に、精神的にも肉体的にも消耗しているのだろう。
その様子を心配して、小隊長が声を掛ける。
「・・・大丈夫か?疲れてるようなら、休んでても構わんぞ」
「いえ、大丈夫です・・・ただ、怖くて・・・」
消え入るような声で呟くラスティア。
ミラージュの研究船に配備されていたガードメカとは違い、進攻中の敵は恐らくMT部隊――次こそ、人を殺すことになるだろう。
その恐怖が、まだ16歳のラスティアに重く圧し掛かっているのだ。
カーティスは、自分の初陣の時を思い返し、良い言葉を探すが、思い浮かばない。
「・・・戦場に出た者は、皆死ぬ可能性がある。お前も俺も、幾多のレイヴンもそれを覚悟でACに乗っている」
と、ウラノスの低い声が部屋に響いた。
「乗っている機がMTであろうと航空機であろうと、それは変わらん。彼らは自機が性能でACに劣るのを承知で戦場に出る」
ラスティアは、黙ってそれを聞いている。
「彼らは自らの弱いカードに全てを賭けて戦う。単に、俺達のカードの方が強いから、彼らは死ぬ――それだけだ」
少しの沈黙の後、ラスティアが口を開く。
「・・・判ってはいるんです・・・だけど・・・私がトリガーを引くだけで、1人の命が亡くなると思うと・・・」
俯いたまま喋るラスティアに、横に座っていたカーティスが肩に手を乗せて軽く叩く。
「それは正しい感情だよ、ラスティアちゃん。その気持ちは忘れない方がいい」
「・・・?」
カーティスの言葉に、不思議そうに顔を上げてカーティスに瞳を向ける。
下から覗き込むようなその瞳に、カーティスの血流量がハネ上がった。
「まあ、そのうち判るさ。・・・ああ、不安になったら俺の部屋に来ればいつでも慰めてあげ・・・ッ?」
ガツ、と乾いた音を立てて、資料を留めていたクリップボードの角がカーティスの頭頂部に突き刺さった。
「くぁ・・・冗談に決まってるでしょ!痛っー・・・ちったぁ手加減して下さいよ・・・」
小隊長が手首のスナップを利かせて、キツい突っ込みをお見舞いしたのだ。
脳天を割るような一撃に、カーティスはまだ悶えている。
「・・・ラスティア、カーティスには別の意味で気を付けろ」
ウラノスの呆れたような言葉に、ラスティアは目を丸くし、次の瞬間には口元に手を当てて、クスクスと笑いをこぼした。
早朝からの緊張が解けたのか、その自然な笑みは、とても美しかった。

「バックファイアより全機へ、準備はいいな?」
小隊長の通信が、各機のコクピットに響く。
「ウーラン、異常なし」
「カース・オブ・カオス、いつでも行けます」
「リディア、大丈夫です」
3人の返答を確認すると、小隊長は満足げに微笑む。
「よし、確認する。降下後は打ち合わせ通り。敵にACは確認されていないが、発見した場合は最優先で攻撃」
「我々の降下後20分で、増援のレイヴンが到着する。誤認して攻撃しないよう注意しろ」
了解、と3人の声が響く。
「こちらは機長だ、これよりハッチを開く。では、幸運を祈る」
通信と共に、目の前のハッチがゆっくりと開いた。
「では、第13小隊・・・行くぞ!」


「くそっ・・・!外は何をやってるんだ!!」
施設内に侵入してきた敵MTに機体前部のライフルを連射しながら、逆脚MT"モア"のパイロット、コールハートが毒づいた。
先程からコールハートの耳に入る通信は、防衛線に展開した部隊の苦戦を示すものばかりだ。
「畜生・・・!本社からのACは・・・"Last Supper"はまだか!?・・・うぁぁっ!!」
「もう保たな・・・ッ!?」
次々と響く断末魔の通信に、コールハートは研究所の直衛に回されたことを神に感謝した。
「レイヴンが2人も居てこれか・・・全く・・・」
そう、クレスト本社は、レイヴンを2名・・・いや、先程の通信によれば3人目も雇ったらしい。
それを防衛線に配備すれば戦況はまた違ったものになっていたのだろうが・・・。
研究所の科学者達の我侭により、ACは2機とも研究所内で待機し侵入した敵機を迎撃するという任務を回されていた。
「これだからお偉方は・・・」
そうは言いつつも、レイヴンの近くで戦闘するというのは非常に落ち着いて戦える。
現に、安物の"モア"で構成された自分の小隊を見ても、3機の部下のいずれもが未だ健在だ。
自分の小隊と共に、このA棟の防衛をしているのがD-7フラジャイルのナイトフライヤー。
B棟では、D-14チェーンインパクトのヴァリアントが侵入した敵MTを迎撃しているはずだ。
「・・・にしても、今週末で退社だっていうのに、隊長も運がありませんねぇ」
部下の1機から通信が入る。
そう、今週限りでコールハートはクレスト社を退社する。
暫く前に受けた、コーデックスのレイヴン試験の筆記テストに受かったのだ。
あとは、ACでの実戦試験に受かれば、晴れてコールハートはレイヴンとなる。
「まあ・・・この分なら保つだろう。機体は大丈夫か、レイヴン?」
「全く問題ない、ほぼ無傷だ」
コールハートの問いに、フラジャイルが答える。
確かに、高機動の軽四脚のナイトフライヤーにとって、この球状の未確認型浮遊MTは、動きの鈍い的でしかないようだった。
ナイトフライヤーに攻撃が集中する為、コールハート以下のMT隊に被害は出ていなかった。
「おっと、また来たな。頼むぞ、レイヴン!」

「・・・輸送機の飛来を確認!"Last Supper"だ!!」
通信機から、生き残っていた防衛部隊のパイロットの歓声が流れた。
全部隊が待ち兼ねていた援軍が、やってきたのだ。
そして、彼らは舞い降りた。

「待たせたな!第13小隊、これより作戦領域に突入する!!」

作戦領域の端に降下した第13小隊の各機は、着地寸前にOBを起動、一気に敵部隊へと突進する。
OBの急激な加速状態のなか、ウーランが連動ミサイルと共に左肩の多段分裂式ミサイルを放ち、即パージする。
その2つをパージしたことにより、ウーランの速度が上がり、自機の発射したミサイルをも追い越して突き進む。
それが合図かのように、リディアがOBを解除して着地する。
ウーランの斜め後ろを突進するカース・オブ・カオスの両腕から吐き出された銃弾の嵐が、進路上の敵MTを次々に墜としていく。
と、後方でリディアの放ったグレネードが、2機の合間を抜けて、敵部隊の中央で炸裂した。
直撃を受けたMTは無論消し炭に。周囲のMTも、浮遊型の為、爆風の影響をモロに受けて陣形が大きく乱れる。
そこに、未だOBを解除していなかったウーランが斬り込み、数機を両断し、そのままOBの慣性で敵部隊の中央を突破する。
背後を向けたウーランを攻撃しようと、球状のMTが装甲を開いて射撃態勢に入った。
しかし、先程ウーランの放ったミサイルと、遅れて到着したバックファイアの爆雷投下式ミサイルが雨のように敵部隊に降り注ぐ。
装甲を開いていたMTは被弾するなり炎上し、次々に地面へと墜ちた。
「・・・凄い!!」
生き残っている警備部隊のパイロットが驚嘆の声を発する。
驚くのも無理は無い、第13小隊は、突入後の最初の一撃で、20機近い敵機を一気に撃破したのだ。
彼らを含め、クレストの誇るAC部隊"Last Supper"のパイロットは、単機でもD〜C級のランカー程度の実力を持つ。
更に、小隊内での緊密な連携行動により、Bランカーとも渡り合えるだけの戦闘力を持っているのだ。
しかも、第13小隊は他の12個小隊とは違い、かなり編成にクセがある。
動く棺桶と呼ばれる、偵察・潜入用の最軽量の逆間接機をベースに、積載量ギリギリまでの重武装を施してあるのだ。
限られた重量内で高火力を確保する為、新しく補充されたラスティアを除き、全員が武器腕を装備している。
第13小隊は、機動力と火力の双方を要求される、強襲・殲滅作戦を主に受け持っているのだ。
今朝のような探索任務などは、本来は第13小隊がするべき任務ではないのだが、ラスティアの実戦訓練も兼ねて、ということだ。
「しかし・・・妙だな」
手近な敵MTを、スイカ割りのように両断しつつ、ウラノスが呟いた。
「何がだ?」
小隊長が、放たれたラインビームを回避して聞き返す。
「いや、この連中・・・これだけやっても全く動揺が無い・・・まさか無人機では?」
「・・・ミラージュもキサラギもそんなものを開発したという話は聞かないな・・・」
沈黙が生まれる。
「・・・まあいい、今は関係ない話だ。殲滅してから考えるぞ」
「了解」


「さて、大方片付いたかな?」
2つめの追加弾倉をパージしながら、カーティスが呟いた。
10数分が経過していたが、既に辺りには殆ど敵MTの姿は無かった。
「そうだな、残っているのは施設内部に侵入したのくらいだろう」
カース・オブ・カオスの横に着地したウーランから通信が入る。
見れば、カース・オブ・カオス同様に、武器腕以外の全ての装備は既にパージしている。
2機とも、この状態ならば500km/h以上での高速戦闘が可能だ。
「これじゃもう1人のレイヴンは無駄足・・・」
と、それを遮ってラスティアの声が響く。
「待ってください!敵増援と思われる反応、2機!」
それを聞いて、小隊長が即座に反応する。
「数からしてACだ、迎撃するぞ!MT部隊は後方より支援に専念!」
「了解!そう来なくっちゃな!!」
叫び、カーティスが急速接近する敵反応へと機体を向かわせた。
ウラノス・バックファイア・リディアの各機もそれに続いた。
――が。

「何なんだ、こいつはっ!!」
カーティスが苛立って叫ぶ。
500km/hを超える高速から繰り出される、ウーランとカース・オブ・カオスの波状攻撃。
それに加え、リディアとバックファイアからの十字砲火も加わっているというのに。
その2機の未確認ACは、強靭な装甲と高い機動性を両立させており、未だに大きな損傷を与えることが出来ていない。
「コーデックスに登録されてない機だ、大方どっかのカスタム機だろう!!」
ウラノスが、気合とともに右腕を振りぬく。
が、未確認ACはそれを容易く回避する。
「かかったな!」
叫び、ウラノスは本命の左腕で突きを放つ。
咄嗟に敵ACが飛び上がった為、当たりは浅かったが、その一撃は敵ACに十分な隙を作った。
飛び上がった所に、バックファイアからの小型ミサイルが命中し、右腕の装甲が弾け飛んだ。
「そこっ!」
ミサイルの命中で態勢を崩した敵ACに、リディアが構えたレーザーキャノンを発射する。
狙い済ました一撃は内部構造の露出した右腕に命中し、エネルギーライフルごと右腕を吹き飛ばした。
が、その構え体勢を取っていたリディアに向けて、そのACがグレネードを発射した。
「なっ!?」
構えも取らず、2脚型ACが空中からキャノンを発射する。
その異常な光景に、ラスティアの思考が一瞬停止する。
「ラスティア!!避けろ!!」
ウラノスが叫び、ラスティアは我に返る。
慌てて立ち上がり回避しようとするも、その一瞬が命取りだった。
「きゃぁぁぁっ!?」
軽装甲の脚部はグレネードの直撃に耐え切れず、リディアの上半身が地面にと倒れこんだ。
「ラスティアちゃん!?大丈夫か!?返事しろ!!」
しかし、返ってきたのは呻き声のみ。
被弾と転倒の衝撃で何処か怪我でもしたのだろうか。
しかし、生きてはいる。カーティスはカース・オブ・カオスをリディアの前に立たせ、敵がトドメを刺そうとするのを防ごうとした。
だが、リディアが撃破されて動揺する第13小隊を無視し、敵AC2機はOBを起動した。
右腕を失って撤退か、と小隊長が思ったのも束の間。
敵は2手に別れ、研究所の方に突進していく。
「チッ!ウラノス、俺と来い!B棟だ!カーティス、お前はここで残敵掃討!増援のレイヴンが到着したらA棟に向かわせろ!」
そう言って、小隊長はOBを起動させ、バックファイアをB棟へと向けて加速させる。
「待ッ・・・!俺も行きます!」
と、ウーランがカオス・オブ・カースの前に立ち、B棟への進路を塞ぐ。
「お前はもう弾が少ないだろう、それじゃあのACの相手は厳しいだろ」
ウラノスの言葉に、カーティスが反論する。
「4機がかりであれだけ苦戦したのに、小隊長とウラノスさんだけじゃ!」
「向こうも1機だ。・・・それに、お前まで来たら誰がラスティアを守るんだ?敵さんは加減しちゃくれんぞ」
「くっ・・・!」
カーティスが押し黙ったので、ウラノスはOBを起動して急いでバックファイアを追う。
「死ぬのはベテランの役目だぜ・・・!」
その独り言は、通信機には流れず、800km/hでの移動に紛れて消えた。


部屋の中には、まだ黒煙を上げる逆脚MTの残骸が3機分、健在が1機。球状の敵MTが5機。
そして、壊れたゲートを通ってきた暗い茶のタンク型ACが1機。
「こちらイージスだ、敵部隊を殲滅する」
その機体名に、コールハートは聞き覚えがあった。
「イージス・・・"フォール・ザ・ウォール"か!状況はかなり悪い!!」
C-14フォール、最硬クラスの防御力を持つ彼と、グレネードでの力押しで攻めるバーチェッタとの死闘は記憶に新しい。
「問題ない、すぐにカタを付ける」
と、轟音を立て、イージスの肩から、モニタ上で橙色に視覚化されたレーザーキャノンが発射される。
次々にその高出力レーザーキャノンで吹き飛ばされる敵MT。
「・・・俺だって、チャンスはあるんだ・・・こんなところで死んでたまるか!」
叫び、ロケットを敵MTに叩き込み沈黙させるコールハート。
「よし、こっちは片付いたな。奥のACの救援に向かう!」

2機が奥の部屋に向かうと、そこでは激戦が繰り広げられていた。
「味方か!?こちらはナイトフライヤーだ!援護を頼む!!」
「イージスだ。攻撃はなるべく俺が引き受けよう」
言い終わるか終わらないかのうちに、イージスに空中からのグレネードが命中した。
「なっ!?」
フォールの驚愕の声に、フラジャイルが注意する。
「気をつけろ!こいつ、ただのACなんかじゃない!!」
空中からキャノンを放ち、重量級の装甲とそれに似合わぬ機動性。
そしてかなりの量のエネルギー兵器を放ち、ブーストを続けているにも関わらず、一向にエネルギーが切れる気配を見せない。
しかし、その機体には右腕が既に無く、コア前面にも亀裂が入っていた。
「あの損傷に叩き込めれば・・・」
マシンガンで牽制しながら、肩のキャノンを撃ち込む隙を探すフォール。
と、敵ACがオービットを放出した。
「チッ!」
それをマシンガンで叩き落すが、その隙に再びグレネードの直撃を受ける。
「レイヴン、大丈夫か!!」
コールハートが乱射したロケットがまぐれ当たりし、体勢を崩す敵機。
「貰ったっ!!」
その隙を逃さず、ナイトフライヤーがパルスキャノンを連続して叩き込む。
更に、そこにイージスのレーザーキャノンが直撃し、ついに敵ACは炎上し爆発して四散した。
「何だったんだ、あのACは・・・」
誰の口からともなく、そんな言葉が漏れた。

だが、戦いはまだ終わってはいない――


「左腕貰ったぁ!!」
ザン、と音を立てて未確認ACの左腕が地面に落ちる。
だが、状況にはあまり変化はない。
その報復とばかりに、ブレードを振りぬいて硬直しているウーランにグレネードが発射される。
咄嗟に横に跳んだものの、近接信管によって至近距離での爆発を受け、モニタがブラックアウトした。
「くっ・・・」
ウラノスが機体状況を確認すると、今の至近弾の破片が当たったのか、カメラアイが損傷していた。
「こちらウーラン、カメラアイ損傷・・・!」
乱入してきたACに奇襲され既に中破しているヴァリアントと、天井が低い為爆雷投下ミサイルの使えないバックファイア。
そして、視界0のウーラン。
「チッ・・・!」
どうにも攻めあぐねていると、チェーンインパクトから通信が入った。
「"Lust Supper"の御2人さん、悪いが俺の仕事はここまでだ。移送部隊は無事離脱に成功したそうでな」
両腕のマシンガンを乱射するとさっさと反転し、OBで離脱するヴァリアント。
「あばよ!さっさと逃げたほうが身の為だぜ!」
そう言い残して、レーダーの探知範囲外に消える。
舌打ちして、小隊長が毒づく。
「所詮は傭兵かっ!クソがっ!」
その間にも、敵ACのグレネードが雨のように降り注ぐ。
視界が0の為、機体を振って回避するのみのウーランを見て、小隊長は覚悟を決めた。
「ウラノス、お前は撤退しろ。・・・ここは俺が何とかする」
「・・・小隊長、どうする気ですか?」
皮肉気な笑みを浮かべて、小隊長が答える。
「指揮官は最後まで残るものと相場が決まってるのさ」
その笑いを、ウラノスは知っていた。
長い戦場での年月で、何度も見た笑いだった。
既に死を覚悟したものの、乾いた笑い。
それを見て、ウラノスは全てを悟った。
「・・・小隊長、御武運を!」
そう叫ぶと、マッピングされた情報を頼りに、ウーランは高速でその場を離脱した。

「さあ、遊ぼうぜクソ野郎!!」
雄叫びを上げて、突撃するバックファイア。
無論敵ACも黙っておらず、エネルギーライフルと後部のEOで光線の雨を降らせる。
小型ミサイルの残弾を、一気に発射するが、コアの迎撃装置とEOのエネルギー弾で全て撃墜される。
「チッ・・・これでどうだ!」
グレネードを跳躍して回避し、敵の頭上で使い道のない爆雷投下式ミサイルをパージする。
そのコンテナに反応して、EOがそれを撃ち抜き、数十発の残弾に引火し、大爆発が起こる。
EOは無論、爆発によって敵ACの左半分の装甲がほぼ吹き飛ぶ。
その爆発で視界がほぼ0になった一瞬、バックファイアは敵ACの目前に回りこんでいた。
そして、唯一残った兵装――TITAN4を展開する。
無論、ロックしている暇などない。
だが、ノーロックだろうがなんだろうが、密着して放てば当たらない道理は無い。
「地獄の底まで付き合って貰うぞ!!」
ゴウン、と巨大な爆発音が響いた。
ノーロックで撃ち出された4発のTITANが炸裂すると同時に、展開したままの両腕の残弾に引火。
合計8発分のTITANと、敵ACのグレネードの残弾が同時に爆発したのだ。
その爆発が収まった後、そこに2機のACが存在したという痕跡は、床に僅かに散らばる熔けた金属の塊くらいのものであった。


3発の弔銃が響き、葬送ラッパが物悲しい音を吹き鳴らす。
そして、神父様の祈りの言葉が終わる。
棺に掛けられたクレストの社旗を、第1小隊長――"Lust Supper"司令が折りたたみ、小隊長の奥さんに手渡した。
「貴女の亡き人の、職務に殉じた記念として、我が社よりこの旗が送られます」

そうして、小隊長の葬儀は終わった。
あの時、私が撃破されていなければ、小隊長は助かったのだろうか。
そんな思いが何度も頭を掠めた。
私は転倒した衝撃で頭を強く打ち、脳震盪で気絶していたからその後どうなったのか、詳しいことは知らない。
ただ、これだけははっきりと言える。
あの謎のACと共に爆死したという小隊長のことを、私はこの先忘れる事はないだろう。
それが、生き残った私に出来る、唯一の死者への手向け――









どうも、前条です。
SLを舞台にした話で活躍する(予定)のクレスト第13AC小隊の1人、ラスティアの初陣のお話です。
ベースは『中央研究所防衛』です。
フラジャイルが生存しているパターンなのは趣味です。意外とカレ好きです、はい。



キャラクター・AC設定

小隊長 (Platoon Leader) 26歳
我輩は小隊長である。名前は、まだ無い。(何
元はMT部隊の隊長だったが、状況判断能力と操作技術を買われてACに転向。
元々適正は有ったため、数年でエリート部隊"Lust Supper"の第13小隊長へと就任した。

AC :バックファイア (Backfire)
頭:CHD-09-OXI
コア:CCL-01-NER
腕部:CAW-TITAN4
脚部:CLB-SOLID
ブースター:CBT-FLEET
FCS:VREX-ST-12
ジェネレータ:CGP-ROZ
ラジエータ:RIX-CR10
インサイド:None
エクステンション:CWEM-R10
右肩武器:CWM-S60-10
左肩武器:CWM-BM60-1
右手武器:None
左手武器:None
オプション:
 S-SCR  E/SCR  S/STAB  L-AXL  LFCS++  CLPU
ASMコード:WHiuKPWW4WoO03c042


ウラノス=バークレイ (Uranus=Barkley) 28歳
元はMT"ギボン"に搭乗していた。少年期から幾つもの戦闘に参加してきた、叩き上げの軍人。
ACに乗り換えてからは、"双龍の剣鬼"の異名を取るまでに到った。
第13小隊の中では一番の手練。左肩のミサイルとEX連動は即パージが前提。

AC:ウーラン (Uhlan:槍騎兵の意)
頭:CHD-09-OXI
コア:CCL-01-NER
腕部:KAW-SAMURAI2
脚部:CLB-SOLID
ブースター:CBT-FLEET
FCS:VREX-WS-1
ジェネレータ:CGP-ROZ
ラジエータ:RIX-CR10
インサイド:None
エクステンション:CWEM-R20
右肩武器:CWR-S50
左肩武器:MWM-MDM2/1
右手武器:None
左手武器:None
オプション:
 S-SCR  E/SCR  S/STAB  L/TRN  E-LAP
ASMコード:WHOuKXWW3c1W03We01


カーティス=アンダーソン (Curtis=Anderson) 21歳
MT"エピオルニス"上がりのパイロット。
以前の愛機を模した機体を操り、確実に戦果を上げる。
まだ若く、感情的になるところもあるが腕は確か。

AC:カース・オブ・カオス (Curse of Chaos)
頭:CHD-09-OXI
コア:CCL-01-NER
腕部:CAW-DMG-0204
脚部:CLB-SOLID
ブースター:CBT-FLEET
FCS:VREX-WS-1
ジェネレータ:CGP-ROZ
ラジエータ:RIX-CR10
インサイド:MWI-DD/10
エクステンション:None
右肩武器:KM-AD30
左肩武器:KM-AD30
右手武器:None
左手武器:None
オプション:
 S-SCR  E/SCR  S/STAB  LFCS++  L/TRN
ASMコード:WHSuKXWcWEtO03YW02


ラスティア=リールベルト (Lastia=Reelbelt) 16歳
第13小隊の補充兵。訓練施設を出たばかりで、実戦経験は今回が初めて。
精密射撃能力に秀で、長距離支援用のアセン。狙撃戦にも対応。

AC:リディア (Lydia)
頭:CHD-09-OXI
コア:CCL-01-NER
腕部:CAL-44-EAS
脚部:CLB-SOLID
ブースター:CBT-FLEET
FCS:VREX-ND-2
ジェネレータ:CGP-ROZ
ラジエータ:RIX-CR10
インサイド:None
エクステンション:None
右肩武器:MWC-LQ/15
左肩武器:CWC-GNL-15
右手武器:CWG-SRF-80
左手武器:CES-ES-0101
オプション:
 S-SCR    E/SCR    LFCS++   R/INIA   TQ/ESE   
ASMコード:WGauKvWW0CbecJ2093


フォール
本名:フォルス=シンクレア (Pholus=Sinclair) 26歳
最硬ランクのタンクACを操り、"フォール・ザ・ウォール"の異名を取る。ランキングC-14。

AC:イージス (Aegis)
頭:MHD-MX/BEE
コア:CCH-OV-IKS
腕部:MAH-SS/CASK
脚部:CLC-D3TA
ブースター:None
FCS:PLS-SRA02
ジェネレータ:CGP-ROZ
ラジエータ:RGI-KD99
インサイド:CWI-DD-30
エクステンション:MWEM-A/50
右肩武器:MWC-LQ/80
左肩武器:MWC-LIC/40
右手武器:CWG-MG-300
左手武器:KSS-SS/707A
オプション:
 S-SCR    E/SCR    LFCS++   
ASMコード:SXDS1XZddCLHMd2000
作者:前条さん