サイドストーリー

第7話 それぞれの道(前編)
 病院から努達が退院してからそろそろ一ヶ月が過ぎようとしている…
 退院する直前に全員で話し合った結果、今回の件で全員力不足を感じていた…
 そこで、一ヶ月という期限をつけてそれぞれ自分の能力を高めようと言う事に
 話がまとまり…そして、退院したらすぐにそれぞれの帰路についていた
 お互いの再開を約束して…
 今回はその一ヶ月間…みんながどのように過ごしたかをみて見たいと思う

 努、咲耶の場合…
努「あと二日で一ヶ月か…みんな、どれだけ強くなっただろう…」
咲「兄さ〜ん、速く速く〜」
努「あぁ、今行くよ、咲耶」
 努はこの一ヶ月間、例のACシミュレーターのあるゲームセンターに通っていた
努「しかし、ここまでアレが役に立つとはな…」
 ACシミュレーターは、予想以上に高性能で、パーツデータは最新のデータであり
 操作感覚も普通のACと大して変わらなく、いろいろなセッティングが試せたのである
咲「へっへ〜ん♪兄さん、今日こそは絶対に落として見せるからね」
努「まだ、お前には無理さ…せめて、メビウスリングの戦闘データを倒せるくらい
  にならないと相手俺のにはならないよ」
咲「そんなこと無いもん!絶対に今日こそ落として見せるんだから!」
 約束どおり、咲耶に特訓をしてやったら予想以上にセンスがよく、たった5回ほど
 教えただけですでに並のランカーなら倒せるほどに成長していた
努「まぁ、練習相手としては今はお前しか考えれないがな…おっ、ついたついた」
 そんなやり取りをしている間に、いつの間にか目的地についていた
咲「さっ、行きましょう兄さん…絶対に落としてあげるから」
努「さっきからそればっかりじゃないか」
 そう言いつつゲームセンターの中に二人は入っていった

 努達はシミュレーターの中に早速座ってセッティングをおこなっていた
努「さてと、今日は今までの最終チェックにしておくか…」
咲「兄さん、準備はいい?」
努「あぁ、もう少し待ってくれ…すぐに終わる、スタンバイしていてくれ」
咲「は〜い、それじゃあ、また後でね♪」
 咲耶からの通信が切れる
努「咲耶のやつ、戦いたくてたまらないって感じだな…そろそろクギ打っとかないとな…」
 今、咲耶は上手くなるのが楽しくてしょうがない状態だ…しかし、これ以上に調子が
 のってくると咲耶のことだから「レイヴンになる!」とでも言いかねないことを
 努は理解していた…
努「よしっ、セット完了!…咲耶、行くぞ!」
咲「OK、兄さん!」

 シミュレーター内で、二機のACがアリーナで激しい戦闘が行われていた
 戦闘フィールドはいたって普通なアリーナに設定されてある
努「どうした、さっきまで自信はどうなったんだ!」
咲「うそ、今までとは…全然動きが違う!?」
 努と咲耶の機体は似ているようだが武装や機体色が違うので違いがよく解かる
咲「くっ、攻撃が…当たらない!?」
 咲耶が両手に持ったライフルを乱射するが、それをすべて努は回避し…
努「狙いがまだまだ甘い…今度はこっちから行くぞ!」
 オーバーブーストで一気に接近し容赦無くライフルを放つ
咲「う、わぁぁぁ!そんな…き、緊急回避!」
 たまらずオーバーブーストで逃げる咲耶
努「逃がしはしない!ロック・オン…ミサイル発射!行っけぇ!」
 しかし努はそこに高機動型ミサイルを連動ミサイルと共に発射する…
 その行動に躊躇はなかった
咲「し、しまった!避けきれな…キャアァァ!」
 ミサイルの直撃を受け、咲耶の機体から煙りが吹き出る…熱暴走した証拠だ
努「まだまだ、いくぞ!」
 熱暴走で動きが鈍っている咲耶を追撃していった
咲「くっ、まだ負けたわけじゃない…ミサイルロック…」
努「遅い!標準セット、目標はミサイル…ファイア!」
 ミサイルをロックし終わる前にライフルを叩きこみ咲耶のミサイルを破壊する
咲「そ、そんな!」
 決め手を失い咲耶は呆然とする
努「どうした!足元ががら空きだぞ!」
 そう言うと脚部に集中的に攻撃をかけ始めた
咲「くうっ、…へっ?あぁ!?」
 脚部に攻撃を受け過ぎた機体がバランスを崩しその場に倒れこむ…
努「咲耶…チェック・メイト…」
咲「そんな…まだ、…あっ」
 起き上がろうとした咲耶の頭部にいつのまにか銃口が付きつけられていた
努「終わりだ…」
 そう言い放ちライフルでその頭部を容赦無く撃ちぬいた
 努の画面にWINの文字が上がり、咲耶の画面にLOSEの文字が上がる
咲「あ〜もう!…こんなはずじゃ…」
 そうぼやきながら咲耶がシミュレーターから出てくる
努「これがお前の実力だ…わかったか」
咲「なっ、今回はたまたま調子が悪かっただけ!…本調子だったら並のレイヴンなんて…」
努「甘ったれた事言うな!」
 咲耶がそんな事言っていると努が珍しく怒鳴り声を上げる
咲「ど、怒鳴ること…」
努「いいか咲耶、これが実戦だったら…今ごろお前はどうなっている?」
咲「そ、それは…」
 いたい所をつかれて咲耶は黙りこんでしまう
努「正直お前は今、上手くなるのが楽しくて仕方ないはずだ…そしてお前は
  俺が予想していた以上の操縦センスを持っていて、たかが数回教えただけで
  並のレイヴンなら簡単に倒せるまでに成長した…」
咲「…そう、だから前から言おうと思っていた…」
 努が一気にまくし立てると…そこに咲耶が口を挟む
努「お前の言いたいことは解かっている…レイヴンになりたい…だろ?」
咲「えっ?」
 意表をつかれ咲耶は唖然とする 
咲「兄さん…!解かってるなら…」
努「ダメだ!お前はレイヴンになるな…いや、なっちゃいけない」
咲「どうして!?実力なら十分にある…それにもう、これ以上兄さんだけに危険な目に
  合って欲しくないんだよ!…いつも、心配してるだけなんて…もう、嫌だから…」
 咲耶が泣きながら叫ぶ
努「…咲耶、レイヴンの仕事はどうゆうものか知ってるか?」
咲「そんなの、兄さんのオペレーターをしてたから…」
努「実際に戦場に立つ危険さも理解しているのか?」
咲「それは…」
努「それに…それに自分の手でどれだけの人を殺すと思っているんだ…」
咲「――!」
努「たしかにお前は強くなった…しかし、シミュレーターと現実では…勝手が違う…
  今回みたいな事になれば…お前は死ぬんだ…そんな事、俺は…俺は!」
 努は握りこぶしを硬く、手から血がにじみ出るくらい硬く握り締める…
咲「兄さん…ごめん…なさい…ちょっと私、調子に乗りすぎてた…」
 兄の気持ちを理解した咲耶が正直な気持ちで謝る
努「解かってくれればいいんだ…お前は俺のこの手のように、血で汚す事は無いんだ…」
咲「はい…じゃあ、今までどうり、私はオペレーターに専念するね♪」
努「…よし!じゃ、今日はもう帰ろう…ん?あっちはなんか盛り上がってるな」
 むこう側にあるもう一台のシミュレーターは異様なほど盛り上がっている
咲「あれってたしか…雛子ちゃん!?」
努「お前…よく見えるな」
 シュミレーターの席に座っていたのは裕紀の妹…雛子だった
努「なんでこんな所…って、ちょっとまて!あの、勝ちぬき数は…」
咲「勝ち抜き数?…うそっ!?23人ってどうゆう事!?」
 電光掲示板に出ている数は確かに23人を示している…
(ちなみに、本気を出した努は41人、咲耶は18人である)
努「ど、どうなってるんだ…いったい…」
咲「あ、あんな子供に負けた…」
 その数を見て呆気に取られる二人…特に咲耶の方はかなりショックを受けていたようだ
 その帰り道で裕紀と千影が二人で歩いてるところを目撃する事になるとはまだ知らない

 辰也、鞠絵、義大、守の場合…
 ここは公式レイヴン訓練場…その中で4人は特訓に励んでいた
鞠「そこ!右です!」
辰「よっしゃあ!」
 鞠絵と辰也は特別訓練場でMT相手に機体の最終チェックを行っている真っ最中だ
鞠「上から来ます!…そのまま後ろに30メートル後退して敵機を迎撃してください」
辰「わかった!いくぞ!」
 鞠絵の的確な判断もさる事ながら、辰也の腕もかなり上昇していた
辰「ふぅ…さてと鞠絵、残り戦力は?」
鞠「…今ので最後です。お疲れ様、辰也さん」
 一瞬にしてアリーナ内のMTを全滅させる…一度努がやってのけた技に酷似している
辰「しっかし、この機体は動きやすいな〜(…どんだけいじったんだよ…鞠絵…)」
鞠「そうでしょう?余分な装備をはぶいて一つの武装にして戦法を絞る事により
  迷いの無い攻撃が取れるようになったから…(以下省略)」
辰「…簡単に言えば軽量かつ、高火力を持った機体にしあがったって訳か」
鞠「簡単に言えばそうですね」
辰「説明長いよ…」
鞠「…何か言いましたか?」
辰「い、いえ…何も…」
 辰也と鞠絵が痴話喧嘩をしてるかたわらで義大と守のシングルバトルが行われていた
義「ハァ…ハァ…も、もう一本頼む…守ちゃん」
守「源さん、ちょっと無理し過ぎだよ…」
義「そんなことはない…大丈夫だ…さぁ、全力できてくれ」
守「う、うん…じゃあ、いくよ!」
 二人の機体は少しずつではあるが改良が加えられている…
 守の機体は射突ブレードをマシンガンに変え通常戦闘能力を上げてある
 義大の機体は二基ついていたビット一つ排除し変わりに小型のロケットを搭載
 スナイパーライフルからロングレンジライフルに変え、
 こちらも通常戦闘能力の底上げを図っている。ちなみに両方とも鞠絵の提案だった
義「そこだ…いけ…ビットォ!」
 義大の機体からビットが発射されるが…
守「あまいよ!ビットの動きはすでに見切った!」
 守はビットの攻撃を例のごとく次々とかわしている
義「さすが…次は、これだ!」
守「うっ!…だけど、この程度の火力じゃ!」
 ビットの回避に専念している守にライフルによる波状攻撃が加えられる…だが
義「くそっ、やはり火力が足りないのか…?」
守「今度はこっちからいくよ!くらえ!」
 ライフルにもひるまずマシンガンによる弾幕を張りながら守は義大に接近していく
義「くっ!この距離なら…いくぞ!」
 その攻撃をシールドで受け流しつつ、ロケットを発射する
守「うわっ!くぅぅぅ!」
 小型とは言えロケット弾を連続でくらえば熱暴走も起きるし火力もそこそこになる
義「動きが鈍ったか…いけ!ビットォ!」
守「あっ、あっ!く…うわぁぁぁ!」
 ライフルとビットが守の機体の装甲を貫く…勝敗は決した
義「守ちゃん!だ、大丈夫?」
守「えっ?あ、うん…ちょっとビックリしただけ…でもやったね♪マシンガンついに克服」
義「むっ、そう言えば…よし、これで…」
守「今日はもう終わらない?さっきからずっと戦闘しっぱなしでボク疲れちゃったよ…」
義「ご、ごめん…そうだ!今日付き合ってくれたお礼に夕飯、おごるよ」
守「そんな、悪いよ…ボクだって新しい装備試したかったし…」
義「いいよ、気にしないで…一緒に…食事したい…だけだから…」
守「えっ!あ、うん…じゃ、じゃあ、兄さんに連絡入れてから…行こうか」
義「それじゃあ!」
 相変わらずラヴコメ全開の二人を見てるもう二人組がいた…
辰「おい、言っておくが、オレは飯はおごらないぞ…?」
鞠「そんなこと初めから期待してません!…でも、いっしょに…食事くらいしませんか?」
 鞠絵が頬を赤らめながらそう言う…しかし、画面は相手に見えない
辰「う〜ん、わかった…じゃあ、どこに食べに行く?」
鞠「じゃあですね…」
 そのあと辰也と鞠絵がどこに食べに行くかでもめた事は言うまでもないことだった
 その間に、義大と守はさっさと目的地を決めて出発していた…
 
 裕紀と千影の場合…(おまけで雛子も)
 ある公園で…
裕「…遅いな、千影のやつ」
 裕紀はその公園の中にあるベンチに座って千影を待っているようだ
雛「そんな事ないよ兄貴、ほら、約束の時間まであと…40分もあるよ」
 その隣に座っている雛子がツッコミを入れる
裕「うっ、そういえば…そうだな…」
 ちなみに約束の時間は3時なのに裕紀は2時に家を出発していた
雛「ったく、兄貴ってばはりきりすぎだよ」
裕「そ、そんなことないぞ!あぁ、断じて…」
ちか「やぁ、はやいね…二人とも」
 いきなり背後から千影が話しかける
裕「うおっ!ち、千影…なんでこんなにはやく…?」
ちか「それは…君こそなんでこんなにはやくに?」
雛「兄貴ったら今日は千影姉ちゃんとデ…むぐぅ!」
 珍しく慌てた様子で裕紀が雛子の口を手でふさぐ
裕「な、なんでもない!そうだ!はやく集まったからこのままゲームセンター行こう!?」
ちか「あ、あぁ…別にかまわないが…」
 千影がチラッと雛子を見ると…
雛「むー!むぐぅー!」
 雛子が顔を真っ赤にしてうめき声をあげている
裕「あっ!す、すまん、雛子」
 やっとそれに気づいて裕紀は手を離す
雛「ぷはっ!はぁ…はぁ…ア〜ニ〜キ〜」
裕「だ〜!そんなに睨むなって…悪かった……わかった、今日こそはちゃんと教えるから」
雛「ならよし♪」
ちか「ふふっ、さすがの君も…妹には頭が上がらないようだね」
裕「そんなこと…」
雛「ほらほら!兄貴♪早く行こう♪」
裕「はいはい、わかった…わかったから…」
ちか「ほらね…」
裕「うっ!…まぁいいじゃないか、そんなこと…行こう置いてかれちまう」
ちか「そうだね、じゃあ行こうか…」
 そんなこんなでゲームセンターに向かう事になった裕紀達一行であった

 ゲームセンターについた3人はとりあえずあいてる台を探していた
裕「さてと、…う〜んあっちの台は今使用中か、あっちは…おっ、あいてるな」
雛「あ、ほんとだ!じゃあ早速…」
ちか「あっ、雛子ちゃん…悪いんだが…先にやらしてくれないか?」
雛「えっ!?う〜ん…別にいいよ♪」
ちか「すまないね…じゃあ、裕紀…一回勝負してくれないか?」
裕「わかった…この一ヶ月でお互いどれくらい成長したか試そうじゃないか」
 二人はそう言ってシミュレーターの中に入っていった
雛「くふふ〜♪これは、参考になるね…チェックチェック♪」
 雛子は楽しそうに二人を見送った

 シミュレーター内…そこでは今までに無いくらいの弾薬が飛びかっていた
 戦闘フィールドは砂漠…
裕「くぅ!さすがだな!千影…」
ちか「うぅ!くっ…君も相変わらず…やるね」
 砂煙を上げながら二機のACが地上を滑るように移動している
 この二人の機体も一ヶ月前より様変わりしていた
 千影は両肩のミサイルをはずし追加ブースターに変え…それに伴い攻撃能力の低下を
 防ぐためライフルからマシンガンに変え、ブレードも現在最高峰の性能を
 誇るものに変え瞬間火力を上げてある。
 一方、裕紀の機体はマシンガンによるダブルトリガーをやめ、右腕にマシンガン
 左腕には…まだ不確定だがアサルトライフルかショットガンになっている
 今回はショットガンでプレイしているようだ…
裕「へっ、お前がマシンガンを使うとはな…」
ちか「ふっ、私だってマシンガンを使いこなしてみせるよ」
裕「だがな!こればっかりは譲れないんでね!」
 ビットを発射しつつマシンガンで千影に攻撃を加えてくる
ちか「…これくらい、避けてみせる!」
裕「なにっ!…しかし、これならどうだ!」
 裕紀は予想以上の機動性に驚きつつもマシンガンに加えショットガンも放ってくる
ちか「ショットガン!?くぅぅぅ…ま、まさかこれほどとは…」
裕「どうだ!この組み合わせはかなり相性がいいんだぜ!」
 千影の予想を超えた組み合わせ…マシンガンとショットガンの組み合わせはお互い
 近距離戦の性能を引き出し、この近距離からすべてかわすのはほぼ不可能だ
ちか「ぐっ、これ以上は…すきにはやらせないよ…」
裕「おっ、ステルスか…」
 この攻撃から逃れるため千影は自慢のステルスを起動させる…
 (このステルスはデータに無かったため千影がデータを作って持ってきた物である)
ちか「まずは…足から!」
 千影が背後に現れそう言いながらマシンガンの攻撃を開始する
裕「し、しま…ぐわぁぁ!…な〜んてな、詰が甘いぜ!」
 それを予想していたかのように裕紀は見事に回避する
ちか「よくわかったね…じゃあ次は…」
 そう言って再び姿をくらます
裕「今度はどんな奇襲を見せてくれるんだ…」
 そう言うと自分の周りに精神を集中させる…しかし
ちか「こんどは…ここ!」
 予想に反して上空に千影の機体が姿を表し裕紀に斬りかかってくる
裕「上からだと!?そんなこと…」
ちか「ありえるんだよ…ブレードスイッチ…オン!」
 左腕から高出力のレーザーブレードが伸びる
裕「空中なら動きが鈍くなるはず…ビットよ…撃ち落せ!」
ちか「あまい!」
 ビットが発射されるが驚異的な空中制御能力で次々に斬り落としていく
裕「ばかな!ビットを…しかも空中で斬り落とすだと…しかたない、
  オーバーブースト点火!3…2…1…0!」
ちか「逃がさないよ!」
 千影はオーバーブーストで緊急回避に移る裕紀に一撃を加えようとするが
 裕紀は間一髪で逃げる事に成功する
ちか「しまった、見失ったか…」
 砂に埋もれたブレードを引き抜きスイッチを切る…そして辺りを見渡してみる
ちか「いったいどこに隠れたと…」
裕「油断大敵…だぜ!」
 いきなり砂の中から裕紀の機体が飛び出してくる
ちか「なに!?一瞬でそこに隠れたというのか!?」
裕「ゲリラ戦は得意なんでね…くらえ!」
 そういって裕紀は至近距離でマシンガンとショットガンのラッシュを与える
ちか「し、しま…あうっ!あぁぁ!」
裕「まだまだ!ビット…発射!」
ちか「うぅ…しまった!ステルスに…異常が?こうなったら!」
 なぜか千影は地面に向けてマシンガンを発射する…
裕「自慢のステルスに異常か?しかもどこを狙って…なに!?」
 周りを見ると…大量の砂煙が上がっている
ちか「戦略と言うものだ…ステルス…機動!」
裕「なっ!そうか…今のはおれの視界を封じるために…」
 千影が地面を撃ったのは…裕紀の視界を潰すためだったのだ
裕「と、いうことは…あいつのステルスは姿を消せなくなっている訳か…」
 ステルスの異常…それは動力系統の破損であった。そのため姿を消すまでの出力が
 出なくなったため千影は地面を撃ち砂煙にまぎれたのである
ちか「こんどはこっちの番…いくよ!」
 砂煙のせいで視界が完全に封じられているため…しかも、レーダーにも機影が
 写らないため裕紀は回避するのがやっとだった…
裕「ぐわっ!っとと、よし、後少しで…」
ちか「ん?しまった…仕留めきれなかったか…」
 どうやらステルスの使用限界が近くなってきたようだ…それに、砂煙も晴れてきている
裕「この状況…千影のやつの事だから次の一撃で勝負に出るだろうな…」
ちか「この一撃に…賭ける!」
 千影のブレードが再び出現する
ちか「いくよ…裕紀!」
裕「こい!千影!」
 千影がオーバーブーストで突っ込んでくる…それを、裕紀は全力をもって迎撃する
ちか「ぐぅぅぅぅ!」
裕「うおぉぉぉ!」
 ブレードによる一撃が決まった…だが、両方の機体が撃沈する…千影の機体もあの
 ラッシュに耐えれなかったようだった…つまり引き分けである

ちか「ふぅ…さすがだね…」
 シミュレーターから千影と裕紀が出てくる
裕「へへっ、…今回のでお前だけは敵に回しちゃいけないと言う事がよ〜くわかったぞ…」
ちか「ふふっ、そうかい…」
雛「すっご〜い!さすが、兄貴と千影姉ちゃん!さすがだよ〜!」
裕「まっ、こんなもんだろ」
雛「じゃ、次はあたしね♪兄貴、今日こそはちゃんと教えてよ」
 そう言って雛子はシミュレーターに飛び乗る
裕「へいへい、じゃあ、簡単な操作説明からいくぞ」
 それからものの30分たらずで雛子は操作を完璧にマスターしてしまった
裕「う、うそ…」
ちか「ここまでくると…才能としか言い様がないな…」
 二人ともその事実に驚きが隠せない
雛「へっへ〜ん♪まっ、こんなもんかな」
 今相手にしてるのは…ランクCクラスのランカーである
裕「初めてでここまでやるとは…」
ちか「あっ、裕紀…すまないが…今日、このまま買い物に付き合ってくれないか…」
裕「へ?べ、別に構わないけど…」
ちか「でも雛子ちゃんが…」
裕「雛子?あっ、そう言えば…じゃあ、お〜い雛子!」
雛「ん?なに、兄貴?」
裕「おれ達ちょっと買い物に出かけるから…これは軍資金だ」
 そう言って雛子にカードを1枚手渡す
雛「は〜い、了解しました♪…で、いくらぐらい入ってるの?」
 早速カードの残高を調べ始める
裕「それなりに遊べるくらいは入っている…じゃ、おとなしく待ってるんだぞ」
ちか「すまないね、雛子ちゃん…」
雛「あっ、千影姉ちゃんなら全然かまわないよ。…それよりよかったね〜兄貴♪」
裕「ば、バカな事を言うな!…もし帰りが遅くなったら一人で帰れるな?」
雛「…くふふ、そうゆう状況ってま・さ・か…」
裕「な、何を言ってるんだ…行こう千影」
ちか「あ、あぁ…それじゃあ、また…」
 こんなやり取りをして、裕紀と千影は雛子に見送られてゲームセンターをあとにした…
 このあと雛子が23人抜きの記録を作ったことを二人は知らない…

 パーツショップ前で…
 二人は買い物を終えて今まさに帰ろうとしている所だった…
裕「お前…パーツが無いのにあんなセッティング試していたのかよ…」
ちか「膳は急げ…って言うものだろう?」
裕「なんか違うような…しかし、よくこんな店に両肩ブースターがあったものだな」
ちか「ふふっ、そんなこと無いよ…以外とこうゆう店に掘り出し物はあるものなんだ…」
 裕紀が驚くわけは…明かに外見はつぶれる一歩手前…内装もそんなによろしくない店
 なのに取り扱っているパーツは最新の物からレアな物まで取り揃えてあったからである
裕「へぇ、じゃあ今度また覗きに来ようかな…」
ちか「今日は…わざわざ付き合ってもらって…すまなかったな…」
裕「そんなこないって、これくらいならいつでも付き合うよ」
ちか「それじゃあ、裕紀…また…」
裕「あっ、帰り道くらい送ってくぜ」
ちか「そんな…気持ちは嬉しいのだが…雛子ちゃんは…」
裕「あいつの事なら大丈夫だって、ほいじゃ行こうか」
 そう言って二人は歩き始めた

裕「あと二日で一ヶ月か…」
 薄暗い道を歩きながら裕紀は千影に話しかける
ちか「うん、努や他のみんなはどれくらい強くなっているだろう…あっ」
 不意に小石に千影がつまずく
裕「おっと、足元に気を付けな」
 前のめりに倒れそうになる千影を裕紀が受け止める
ちか「すまない…今度から気をつけ…」
 そう言いかけると千影は目を見開いて裕紀の方をじっと見つめる

 丁度その反対側で買い物帰りの努と咲耶が歩いていた…
努「おい、いい加減に元気だせよ」
咲「あんな子供に…あんな…」
 ゲームセンターの雛子の記録を見た後咲耶は魂が抜けたような状態である…
努「まったく…ん?あそこにいるのは…」
 電灯による逆光でよく見えないがあそこにいるのは…
咲「あそこにいるのは…裕紀さんと…千影さんだね」
 いつのまにか復活した咲耶が努の代わりに答える
努「だからなんでそんなに見えるんだ…で、あいつらこんな時間に何してるんだ?」
咲「それは…う〜ん、明かりでよく見えないや…」
 そんなことをやっている内に徐々に二つの影が近づいていき…
努・咲「「!?!?」」
 完全に重なっていった…
努「…咲耶!行くぞ…」
咲「うわぁ…すごいところ見ちゃった…」
 その場から二人はそそくさと退散していった…
 裕紀と千影の事実…
 千影が裕紀に受け止められている…
ちか「裕紀…ストップ…」
裕「へ?なんで…」
ちか「いいから…」
 そう言っておもむろに軍手を取りだし自分の手につける
裕「な、なんで軍手なんか付けてるんだ…」
 何も言わずに千影が裕紀の首に手を回し…
裕「!?」
 はたから見たら抱きついたような状態になる
ちか「…はい、取れたよ…毛虫」
 千影の手には…なんで気がつかなかったのかが不思議なくらい巨大な毛虫が乗っていた
裕「あぁ、毛虫ね…毛虫?…毛虫!?あァああああアアアアあ!?!!!?」
 毛虫を見たとたんに裕紀が奇声を発し始めた
ちか「ど、どうした?」
裕「け、けむ!そ、それ!はや…はやく!捨ててくれ!!!!」
ちか「わ、わかった」
 そう言って毛虫を投げ捨てる
裕「はぁ…はぁ…すまん…取り乱して…」
 だが裕紀の目にはいつもの気力は見えなかった
ちか「こ、ここまででいいよ…送ってくれありがとう」
裕「あぁ…それじゃ、また二日後…」
 そう言って裕紀と千影はわかれていった…
 二日後に裕紀が義大によってからかわれた事はこの時点で想像がつくだろう

                           第7話(後編)に続く…
作者:キョウスケさん