サイドストーリー

One Raven’s Chronicle No.8 管理者からの招待状
あのあと、オレはコーテックスの整備施設にACを預け、屋台でかなり遅い夕食をとり、帰宅した頃は
もう夜の11時を過ぎていた。
 
ウェイン「ただいま…っと。ユリカはもう寝たんだな。じゃ、オレもとっとと寝るかぁ。」
 
オレはこのとき気づくべきだった。玄関の靴が一足多かったことを。そして翌朝―。
 
ウェイン「ふあぁぁ…。あ〜よく寝た。」
 
オレはおそらく、寝起きがいい人間だ。冬場は除くが。ベッドから出ると、とりあえず着替えて、居間に
向かう。何ら変わることのない、ウェイン=レッドハット21歳のごくごく平凡な朝…。のはずだった―。
 
ユリカ「あ、おはよ〜。お兄ちゃん。」
 
「あ、おはようございます。」
 
ウェイン「あぁ、おはよう…!!?」
 
ユリカが先に起きていた…。ということはよくある。二人暮しではまず起こりえない現象が起こっている。
オレはおそるおそるドアノブに手をかけ、ドアをあけた。そこには…。
 
「お、おじゃましてます。」
 
そこにはユリカと…見知らぬ男がいた。その光景に、わずかに残っていた眠気が完全に消える。
 
ウェイン(な、な、なんてこった…。ユリカが、あろうことか男を連れ込んでるなんて…!!レイヴンになっただけなら
まだしも、これじゃキョウに申し訳がたたねぇ!!…待てよ?コイツまさかユリカと同じ部屋で寝てねぇよな?もし、
もしそうだとして、間違いが起ころうものなら…!?いや待て、落ち着け、落ち着けよオレ。もしかしたら…だ。コイツ
ここで寝てたのかも!!そうだ!そうに違いない!!と、とりあえず聞いてみるか。)
 
ユリカ「…どうしたの?」
 
ウェイン(ふぅ〜、落ち着け…。感情に流されるな…。)
 
そう自分に言い聞かせ、精一杯ご機嫌な顔でたずねる。が、自然と顔が引きつってしまう。
 
ウェイン「あ〜…、なんだその、お前…誰だ?」
 
「あ、すいません。僕はフレッド=マクスウェルと申します。ユリカさんとは試験で一緒になったんです。」
 
ウェイン「ほほぅ、フレッド君か。で、君は昨日どこで寝たのかな?」
 
ユリカ「フレッドはあたしと寝たんだよねー!おとなしそうなのに、意外と激しくてびっくりしちゃった♪」
 
プチーンという音とともに何かが切れた感じがした。俗に言う、堪忍袋の緒というものらしい。
 
ウェイン(のおおおぉぉぉ!!ユ、ユ、ユリカがそんなふしだらな…!否!!コイツがユリカをたぶらかしたに違いない!
かくなるうえはコイツを叩っ斬ってさらし首にしてやる!!)
 
ウェイン「貴様…!!よくも嫁入り前のユリカの体を傷モノにしてくれたな!!そこになおれ!!叩っ斬ってくれる!!」
 
フレッド「え?え?ええっ!?ち、ちょっと、う、うわぁ〜!!」
 
オレはナイフ片手にフレッドに襲い掛かった。が、奴は全て紙一重でかわしていく。そして、激しい攻防が五分ほど続いた。
 
フレッド「ご、誤解です!僕は傷モノになんてしてません!!」
 
ウェイン「問答無用!!親友の忘れ形見を傷モノにした罪、死んで償え!!」
 
ユリカ「いい加減にしろぉ〜!!!」
 
ユリカの怒号に、一瞬時が止まる。
 
ユリカ「さっきから傷モノ傷モノって、ご近所に迷惑でしょ!変な噂が立ったらどうすんのよ!!」
 
ウェイン「だってお前…激しかったって…。」
 
ユリカ「あれは寝相の話!確かに同じ部屋で寝たけど、変なことなんてないわよ!!」
 
激しい剣幕でまくし立てるユリカの前に、オレは成す術なく論破されてしまった。すると、打ちのめされたオレに、表情を
180度変えた彼女はこんな提案をしてきた。
 
ユリカ「そうねぇ…。いまからガレージに行くんだけど、アレを認めてくれたらこのことはもういいよ♪」
 
 
そしてガレージ。
 
カーク「お、来た来た。お〜い、もうできてるぞ〜。」
 
フレッド「わぁぁ…!」
 
そこのあったのは、見慣れたオレのAC、と見慣れぬ二機のAC。爽やかな青系の色で塗られたフロートACと、
白やピンクといった、いわゆる歯が浮くような色で塗られたタンクACが並んでいた。
また、二機の装備は対照的だった。タンクACはその積載量に物を言わせ、なにやらゴテゴテついているのに
対し、フロートACはマシンガンにブレード、そしてレーダーのみと、簡潔にまとめられていた。
 
ユリカ「すっご〜い…。やっぱ実物は違うなぁ…。」
 
オレもまた、感心しながら見ていた。もっとも、二人とは少々ニュアンスが違うが。
 
ウェイン「すごーい。で、このパーツはどこから持ってきたのかなぁ〜?」
 
フレッド「え…えっと、それは…。」
 
カーク「おう、お前さんずいぶんと気前がいいじゃねぇか。見直したぜ。」
 
ウェイン「気前がいい?なんのことだ?」
 
カークの言ったことの意味がわからず、思わず聞き返す。」
 
カーク「? お前さんこの二人にタダでパーツ分けてやるんだろ?いや〜江戸っ子だねぇ。」
 
ウェイン「ななな、何ぃッ!?そんなの聞いてねぇぞ!!」
 
ユリカ「お願い!あたし早くお兄ちゃんの力になりたいの!」
 
ウェイン「ダ〜メ〜だ〜!装備だけよくても腕が伴わないんなら意味ねぇだろうが!!」
 
一般にタンク、四脚、フロートは扱いが難しいとされている。おそろしく燃費の悪い四脚は言うまでもない。
一見タンクは扱いやすいと思われる。確かに堅牢な装甲を持ち、またかなりの攻撃力を持てるため、一度は手を
出したくなる。が、極端に機動力が低いという落とし穴があるため、まとわりつかれると目も当てられない。
フロートは地上での機動戦闘を主眼に置いた脚部だが、一般的に脆く、空中戦にもあまり適していない。また、
このACの脚部は、PETALに次ぐ速度を誇り、昨日今日なったような新人がおいそれと扱えるものではない。
 
カーク「まぁまぁ、いいじゃねぇか。どうせ使ってねぇんだしよ。このまま倉庫の肥やしにするよか、たとえ未熟でも
使ってやったほうがパーツも喜ぶってもんだろ?せっかくのKARASAWAやムーンライトが泣いてるぜ?な、みんな!」
 
整備員一同「そーだそーだ!!おやっさんの言うとおりだー!」
 
整備員は口々に、「フレッドはいいからユリカにはゆずれ」だの、「使ってねぇんだからいいじゃねぇか」だの、
挙げ句の果てには「ユリカちゃんを嫁にくれ!」だのと、好き勝手抜かす始末だ。奴らの言い分は勝手なこと
この上ないが、断れば生きてここから出られそうにない。
 
ウェイン「汚ねぇ!数の暴力だ!!だぁぁぁ、わかったわかった、ゆずりゃいいんだろゆずりゃぁ!!」
 
フレッド「あ、ありがとうございます!」
 
しかし、ゆずるとは言ったものの、タダでやるのはなんとなく癪だ。特にこの小僧には。そこで今後舐められないように、
また、癖になっては困るので、ひとつ意地悪をすることにした。
 
ウェイン「ただし、だ。小僧、てめぇからは金取るからな。全額払えよ。」
 
ユリカ「ちょっとお兄ちゃん!?」
 
ウェイン「人の話は最後まで聞け。今すぐなんて言ってないだろう。…出世払いで許してやる。出世できれば
の話だがな。まぁ望み薄だろうから、タダでやるのと大差ないか。はっはっは」
 
今の一言にフレッドの表情が一瞬曇ったが、見なかったことにした。
 
カーク「ガハハハハ!!よかったなぁ二人とも!おし、装備について説明するから…。ん?悪ィな、少し待っててくれ。」
 
オレはカークを手招きで呼んだ。言いたいことが二つほどあったのだ。
 
ウェイン「…大丈夫だとは思うが、一応な。ユリカに変なことするなよ?」
 
カーク「あのなぁ…。俺は妻も子もいる身だぞ?あいつらだって、ああは言ってるがその辺わきまえてるさ。それに
あの子には未熟ながらもちゃんと守ってくれるナイトがいるじゃないか。」
 
ウェイン「…確かに史上初のアーカイブでの合格者だ、新人の中では一歩ぬきんでた実力を持っていることは認める。
だが、それだけでは長く続けられない仕事なんだ、レイヴンというのは。パーツあげときながら言うのもアレだが、あまり
二人を甘やかさないでくれ。」
 
カーク「あぁ。お前さん結構妹思いなんだな。意外だったぜ。」
 
ウェイン「親友との誓いがあるからな…。あいつを死なせるわけにはいかない。だがあれでは…。苦労を知らない
今の状態じゃ、いずれ足元をすくわれるな。」
 
カーク「苦労なんて今から嫌と言うほど味わうさ。お前さんだってそうだっただろ?あの二人、きっと化けるぞ。特に
紅い目をした色白のボウヤからのただならぬ気配、お前さんにも伝わってるんだろ?」
 
ウェイン「まあな。オレが言いたかったのはそれだけだ。長くなって悪かったな。」
 
「気にしないでくれ」そう言い残し、カークは二人のもとへ戻っていった。オレは、一抹の不安をぬぐえずにいた。
 
ウェイン「ただならぬ気配…か。はてさて、吉と出るか凶と出るか…。」
 
 
カーク「待たせたな!まずお譲ちゃんのACからだ。要望どおり攻め、守りのどちらにおいても最強を目指したACに
仕上がってるぞ。まずこの黒光りするチェインガン!!対空用に!対MT用に!もちろん対ACにも!右手に輝くは
レーザーライフルの定番!KARASAWA!経費を抑えたいアナタの強い味方だ!!
そして!!右肩にそびえるはタンクの象徴であり代名詞!グレネードランチャーだッ!!長射程!高熱量!高威力!!
砲煙と爆風がキミを待っている!!さらにさらに………」
 
カークが、ACのスペックを熱く熱く語りまくっている。ここまで生き生きとした人間の表情はなかなか見られるもので
はない。反面、フロートACの説明に入るやいなや、その語り口は一変、型番と大まかな説明を読経の如く棒読み
していく。聞いてるとこっちまで眠くなってくる。現にユリカは寝ている。フレッドも辛そうだ。
 
メリル「あ〜、こんなトコにいた〜!お〜い♪ウェイ〜ン♪」
 
あの口調はメリルだ。相変わらず仕事中との差が激しい。そういえば、あの二人のオペレーターを一時的にやった
らしいな。レイヴン試験のオペレーターはおそらく彼女が一人目だろう。
 
メリル「家にかけてもいなかったから、もしかしたらと思ったんだけど、ここにいたのね。それでさ、ズバリ今日ヒマ?」
 
ウェイン「ああ。思いっきりヒマだ。」
 
メリル「じゃあさ、買い物に付き合ってよ♪最近話題のスポットにっ♪」
 
ウェイン「そうだな、ここにいても仕方ないしなぁ。よし、行くか!」
 
 
オレたちが出かけたのは、ここ最近完成したショッピングモールだった。クレスト系の企業が出資しているここは、
各種商店から飲食店、映画館をはじめとした娯楽施設が充実しており、一日中いても退屈しない。
 
メリル「映画面白かったね〜。ねぇ、ちょっとそこで休んでこうよ。」
 
彼女はすぐ近くにある喫茶店を指定した。覚悟はしていたが店内は女性客、またはカップルしかいなかった。
もっとも、オレたちも見た目はカップルだが。
 
ウェイン「それにしても意外だったな。もっと大量に物持たされるのかと思ってたよ。」
 
メリル「私は本当に欲しいものか、必要なものしか買いませんから。あ、どんぶりパフェとアイスティーで。」
 
ウェイン「マジ?あっ、お姉さんパフェとアイスコーヒーね!」
 
ウェイトレスはその注文が意外だったのか、伝票を書く手が一瞬止まる。が、すぐにさらさらと書き上げ、厨房
に持っていった。
 
メリル「あなたこそ意外ねぇ〜。」
 
ウェイン「ん?何が?」
 
メリル「ほら、男の人ってこういう店に入りたがらないじゃない?入っても注文しなかったり。」
 
ウェイン「甘いものは好きだからさ。ま、一人で入れってのは勘弁だけど。」
 
そうこうしていると、ウェイトレスが注文の品を持ってくる。オレたちは仕事の話や、世間話をしていた。
 
メリル「…へぇ、ユリカちゃんとフレッド君てもうそこまで進展してるんだ〜。でもウェインもえらいよねぇ〜。
二人のお祝いにパーツたくさんゆずってあげたんだって?なかなかできないよそんなこと。」
 
オレはそのセリフにずっこけそうになった。まったく曲解もいいとこだ。
 
ウェイン「なにをどう聞いたらそんな解釈ができるんだ!?進展も何もあの小僧が勝手に上がりこんで
来ただけだし、パーツだってあいつらが勝手に持っていっただけだ。」
 
メリル「それでもあなたはゆずってあげたじゃない。ユリカちゃんのこと、よほど大切に想ってるのね…。
それに、フレッド君のこと、心の底では認めようとしてるんじゃないの〜?」
 
彼女はいたずらっぽく笑った。どんぶりにうず高くもられたアイスクリームや、これでもかとトッピングされた
フルーツは何時の間にか八割が彼女の胃の中に消えていた。
 
ウェイン「ふぅ…。何をバカなことを…おや、メールが…。」
 
携帯の端末を取り出し、内容を確認する。それを見て、オレは我が目を疑った。
 
メリル「どうしたの?なんだか難しい顔してるけど。」
 
ウェイン「え?そんな顔してたか?いや〜、イタズラメールが来たからどうしてくれようと思ったんだよ。」
 
メリルは黙っていた。こんな下手な言い訳をするとき、彼は決まって隠し事をしている。それが、彼と出会って
からの半年間に学んだことだ。そして、このときにどう問い詰めても口を割らないこともまた、学んでいた。
 
メリル「ねぇ、一つだけ約束して?必ず生きて帰るって。そのメールのことは、話せるときが来てからでいいから…。」
 
ウェイン「…ああ、約束する。」
 
―やはりオレは嘘が下手だな。差出人不明で、『二年前の真相と真意が知りたければ中枢まで来い』か…。そのまま
伝えたら心配すると思ってああ言ったが、どうやら無駄だったな。
二年前…と言えば管理者が暴走していた、そしてキョウがやられた頃か…。その真相ってなんなんだ?あの暴走には
裏があるのか?それに真意とは一体?オレとキョウに関わることか?全ては行けばわかる、ということか…。
さしずめこれは、『管理者からの招待状』、だな。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
あとがき
話もそろそろ後半、さまざまな謎を
次回一気に解決!できればいいんですが。
最近サブタイトルと内容が噛み合ってない…。
何とかしないと…。
途中タンクとか四脚とかがどうこうと書かれて
ますが、私が個人的思ってるだけですので、
どうかご容赦ください。
作者:キリュウさん