サイドストーリー

報告「セクション513」
差出人:レイン・マイヤード


お久しぶりですね、レイヴン。

いえ、あなたはもうレイヴンではないんですよね。

あなたが地上への扉を開き、レイヴンをやめてから1年…。

あなたは「レイヴンに嫌気がさした」と言っていましたね。

私のことは覚えていますか?



さて、本題に入りましょう。

私は封鎖された、未だに謎の多い「セクション513」の事を

個人的に、興味本位で調べてみました。

すると、面白い事が次々と出て来ました。

あなたに送られた依頼は、クレストから来た依頼のはず。

ですがこれを調査してみると、面白い事に

管理者からの依頼だった事がわかったのです。

もちろんその後のクレストからの感謝状も

管理者からのものでした。



…不思議だと思いませんか?

なぜ管理者がこんなに手の込んだ事をわざわざやらなければならなかったのか?

さらにあの依頼の文章は嘘だらけでした。

地殻変動のことはもちろん、警備部隊など配置されてはおらず、

そこで被害が起きても、周辺に損害が出るはずもありません。

私はさらに、セクション513について調べました。

管理者がいない今、この世界は確実に壊れています。

まあ私としては動きやすかったですが。

セクション513に偵察型のMTで侵入し、直接調査してみました。

すると、なんと一人の若い男性が発見されました。

私たちグローバルコーテックスは彼を保護しました。

その男性は身体、精神どこにも異常はなく、

念の為かなり念入りな身体検査を行っても、

正常な人間と何ら変わりはありませんでした。

私たちは彼を休憩室のベッドに寝かし、最後の検査、

記憶の検査をしようと彼に名前を質問すると、

「名前などいいから、何かメールを送れる機械はないか?」

と言ってきました。

私たちはすぐにメールを送受信できる小型機械を渡してみると、

私たちの全く知らないアドレスを打ち込み、

文を書き始めました。

私たちは、しばらく彼がメールを送信するのを待ちました。

そして、彼がメールを送信した後、私たちは記憶の検査を続行しました。



彼の記憶はとても興味のあるものでした。

彼は地下世界の酸素、電力供給がストップした事を知らず、

かなり快適な環境で過ごしていたと言います。

セクション513が立ち入り禁止区域だと言う事は知っていたようですが、

理由が地殻変動だと言う事は全く知らないという事です。

このことについては、私たちはこう考えました。

つまり彼のいた区域は、電力及び酸素の供給がストップしていない、という事です。

ただし理由は不明です。



…彼に悪いとは思いましたが、私たちは無断でセクション513の

彼の部屋の調査に向かいました。

その調査は、私も同行しました。

部屋自体は特に派手でもなく、どちらかと言うと地味な、殺風景な部屋でした。

私たちは更なる調査の為、パソコンに電源を入れました。

……その画面の向こうは、まさに宝の山でした。

メールの数が莫大にあり、物凄い量でした。

ただし、送受信箱ともにすべて一人の人物でした。

その名は「エイミー」。私たちも全く知らない名前に、全く知らないアドレスでした。

私たちはさらに古いメール履歴を見てみると、そこにはなんと「管理者」からのメッセージがあったのです。

それはある一部分を境に、全て「管理者」と「エイミー」でした。

私たちはその境の「管理者」と「エイミー」この二つのメールを開いてみました。



「管理者」の方は、

「あなたは名前があっていいわね、私はただの機械だから、名前なんてないのよ。

 ねぇ、何かいい名前ないかしら?」



「エイミー」の方は、

「エイミー…いい名前だわ!早速使わせてもらう!でも悪いわね…本当に。

 あなたを監禁同然の扱いにしてしまって…。でも、だからあなたみたいな人と話せる。

 私のわがままを許して…。」



私たちの目からは、自然と涙がこぼれていました。

なんだかとても悲しくて、切なくて、どうしようもありませんでした。

私たちが今まで見てきた管理者は、本当はごく普通の「女性」ではなかったのかと。

誰かと恋をして、平和な生活を望む「女の子」だったのではないかと。

電力も酸素もここにずっと供給されていたのも、一人の男性を思う気持ちだったのではないか?

私たちはその後もメールの調査をしました。

文を見ていると、私たちが保護した男性は「管理者」が破壊された事を知らないようです。

私は本部に連絡し、彼に管理者が破壊された事を伝えるよう命じ、

私たちは撤退しました。



その後その男性は、秩序も統率するものも何もないこの世界で

通り魔に殺害されたそうです。

レイヴン、あなたは間違った事をしたなどとは言いません。

ただ…私たちは、これでよかったのでしょうか?



P.S.彼のパソコンに、何故か開いていない一通のメールがありました。

彼に見せたかったのですが、彼の死はあまりに急で、悲しいものでした。

私たちには、このメールを開く勇気がありませんでした。

一応、このメールにそれを貼り付けておきました。

開くか開かないかは、あなたの判断です。


未開封一件

作者:アーヴァニックさん