サイドストーリー

L・O・V・E SHOTGUN!!―序章―
それは、侵してはならない「領域」―。
誰も超えたことの無い領域。
巨大な軍事力を持つ企業でさえ、その領域を越えることは無く、
そこはやがて〈サイレントライン〉と呼ばれるようになる。
その存在は新たな争いの火種を生み出し、かつて無い激戦区と化す。
企業の〈サイレントライン〉への関心は高まり、やがてレイヴンの力が戦況を左右していく―。
 
………え?その序章じゃない?こっち?↓
 
いつの頃だったか…、アレに心を奪われたのは。そうだ。新人の頃に一度使ってみたんだっけな。
当時は何もかもが新鮮だった…。様々なものを使ってみた。アレを試したのは五番目、ハンドロケットの次だったような気がする。
もっとも、そのときはすぐに飽きて、パイルバンカーでゲドに挑んでエライ目にあったんだよな…。
そんな俺に転機が訪れた。それなりに実戦をこなし、アリーナでも連戦連勝とは行かずとも、まぁ順調に勝ち星を重ねていた、そんな頃だ。
こんな依頼が舞い込んできたんだ。
 
『これは少々特殊な依頼だ。これから半年間、こちらが指定する武器を使ってミッション、及びアリーナ
で戦って欲しい。要するに宣伝だ。報酬は54000C。月9000Cづつ振り込む。この他に、売り上げの何割かをリークしよう。
ただし、手抜きを避けるため、売り上げが依頼前の水準を下回った時点で打ち切りとさせてもらう。
契約内容さえ守ってくれれば、後は好きにして構わない。そちらが請け負う仕事に関しても一切干渉しない。
決して悪い条件ではないはずだ。くれぐれも真剣に頼む。』
 
この依頼が無かったら、今の俺は無かったね。そのくらい重大な出来事だった。当時はそんなこと、知る由も無かったけどな。
で、そのときは割りがいいって理由だけで契約したワケだ。
何しろその武器とやらを使ってるだけで月9000C+αがもらえるんがからな、少なくとも。
ここで寒波襲来…じゃねぇ閑話休題だ。連中なにを送ってきたと思う?勘のいい人はもうわかったかも知れねぇが、
そうでない人の楽しみ(?)を奪わねぇためにもまだ伏せとくな。
ある試合でそれを初めて持っていった。いや、新人の頃も一度持っていったはずだから、二度目か。
当時も、相変わらず日によって武器を変えてた。違うのは、どれもしっくりこねぇって思ってたあたりかな?あん
まりコロコロ変えるもんだから、「武器マニア」とか言われてたっけ。…って、また脱線しちまった。
 
「さぁ今日の対戦カードは、フレアとご存知「武器マニア」です!」
 
ひねりもなにもない、直球ど真ん中なあだ名だ。そんな名前で登録してないんだが…。ま、いっか。
 
「昨日はバズーカでした。本日は何を持ってくるのでしょうか?予想ではプラズマライフルのようですが…。
あっ、今入場してきました!右手には…ん?ショットガンですね…。今日はショットガンを使うようです!」
 
あ!口が滑っちまった。許せ。そう、奴らはショットガンを送りつけてきたんだ。確かあんときの装備はショットガンに投擲銃。
散らばるやつな。両肩はなんだったけな。あぁ〜、思い出せねぇ。と、とにかくだ。
フレアと試合したんだよ。ミサイル一筋の一本気な奴でな、俺とは正反対だった。
結果から言うとだな、負けちまった。なかなか惜しいとこまでいけたんだがな。けど、それが俺の魂に火をつけちまったワケよ。
必ずこいつをモノにしてやるってな!んでもって、いつかもう一度戦いたかった…。
だが、運命は時に厳しい。フレアの奴、再戦が決まった翌日にリツデンで死んじまった…。
コラ待て待て!!話がどんどん暗くなってくじゃねぇか!今回は明るいお話なんだぞ!少しは考えやがれ!
あ…、申し訳ない。筆者が暗いと話まで暗くなっていきやがる。やっぱ明るくいかないとな。うん。
話を戻すぞ。俺の契約が終了した翌日、管理者が破壊されたの何だので大騒ぎになったんだ。
しかも、いつの間にやら地上がすっかり元通りなってたとかで、ますます大騒ぎだ。ある程度落ち着いたところで、
地上の再開発が始まった。俺もいつまでもレイヤードに居たんじゃ商売上がったり、なんで地上に出たんだよ。
泣けたね、不覚にも。感極まったってとこかな。本物の「空」を見たときの感動は、今でもはっきり覚えている。
そうそう、半年の宣伝の効果だがな、大ブームを引き起こした、とまではいかなかったが、少なくとも意識改革にはなったようだった。
依頼主もきっと納得しただろう。きっと…。
 
 
 
地上での生活にすっかり馴染んだある日、いつものように朝8時に起床し、パソコンを立ち上げた。
これはすでに朝の行動の一つとしてすっかり定着している。顔を洗って歯を磨くようなものだ。
 
「なになに…、ほほう、これはまた…。やれやれ…。」
 
俺のパソコンは二世代前の旧式の部類に入りつつあるものだが、まだまだ現役でも通用する。
古いとはいえ、必要な機能は全て揃ってるし、処理速度も十分だ。あ、メールにはこうあった。
 
『レイヤードでの君の働きは見事だった。おかげで我々は窮地を乗り切ることができた。
だが、地上においてのショットガンの売り上げはあまり芳しくない。そこで、再度君に活躍してもらいたい。
内容は前回とほぼ同じだが、今回は複数のレイヴンと契約して大々的なキャンペーンを展開するつもりだ。よろしく頼む。』
 
差出人はレイヤードで依頼してきた連中だ。奴らも地上にきてたんだな。
どういうことか、終わりのほうにこの時間までに指定した場所に来い、と書かれていた。
打ち合わせらしいが、わざわざ呼び出さなくても。
結局、胡散臭いと思いつつも出向くことにした。いきなり撃たれることは、多分ない…と思う。
 
「ふぅん、意外に庶民的なところに住んでんだな。」
 
某所にあるマンションの一室。それこそ俺が呼び出された場所だ。可も不可もないといった感じだ。
フリーターにこの家賃は厳しいかもしれないが、就職している奴ならどうということはないだろう。
 
「よくきてくれた。君なら必ずきてくれると信じていた。」
 
俺は三人のスーツ姿の男たちと簡単な自己紹介を済ませ、打ち合わせを始めた。
連中の正体はそれぞれ企業の兵器開発部の関係者で、特にショットガンの開発、営業を任されているそうだ。
曰く、あの時俺がいなかったらリストラされてたって話だ。どうやら今回の件もやつらの首がかかっているらしい。
 
「…と、こういった計画なのだが、前回の功労者である君はどう思うかね?」
 
連中の算段は、要するに以前俺がやったことを複数でやるだけだ。まるで面白みがない。
 
「なるほど。だが芸がない。いっそ徒党を組んだほうがいいんじゃねぇのか?」
「そのあたりは特に指図はしない。だがアクの強いレイヴンばかりだ。うまくまとまるかどうか。
まぁ、君がどうしてもというのならばやってみたまえ。あぁ、依頼はコーテックスから入ってくるからな。」
「任せてくれ。ショットガンのなんたるかを世に広めるべく、俺が一つやってやるぜ!!」
 
 
 
 
次回予告
そんなこんなで発足した散弾銃普及委員会!!本来なら委員のスカウトやらなんやらといろいろと書かにゃいかんのだが、
筆者の都合でいきなり半年後!しかも次回で最終回だ!!(えぇ〜!?
次回、L・O・V・E SHOTGUN!!最終回「そして更なる高みへ…。」に請うご期待!!
このサブタイトル意味あるの?それは聞かない約束だぜベイビー♪
 
 
 
 
 
 
 
 
あとがき
全2話で終わる、というか終わらせる短編です。
One Raven’s Chronicleとは全くの別物です。
明るくおバカなノリで行きたかったのですが、どうにも中途半端になっちまいました。
作者:キリュウさん