未踏査地区調査(前半)
「・・・システム、オールグリーン。」
コックピットの中で俺はACの点検を行なっていた。
今、俺達は中央区よりはるか東の、ミラージュがサイレントラインと呼んでいる地域へと向かっている。
”発信元・・・ミラージュ、報酬・・・58000Cr、
レイヴン、今回は我々がサイレントラインと呼んでいる地域の調査を依頼します。
この前にお伝えした通り、同地域に向かった調査部隊のその全てが消息不明となり、
一体、何が起こっているのか皆目見当がつかない状態です。
レイヴン、あらゆる状況でも対応できる準備をお勧めします。気をつけて。”
俺達、というのは、今回の作戦でも共闘するパートナーが存在するからだ。
AC名、ラグナロク、レイヴンコード、ゼロ・・・
ゼロと言っても。現在Aランカーレイヴンのゼロとは別人の様だ。
ランカーのゼロとはシュミレーターで対戦した事があるが、ここまで寝起きの悪い奴ではなかった。
最近、ミラージュが発表した新型OBコアを積み、機体食は黒を基調としている。
右手にはショットガン、左手にはムーンライトを積んでいる。
近接戦闘を重視した高機動機体か・・・俺もそんな機体を扱ってみたいものだ・・・資金不足だな。
まあ、レイヴンになって仕事をこなした回数がたった一回じゃ、仕方がないか。
「・・・ホワイトランス。」
突然のゼロからの通信に俺はこれからの資金繰りへの考えを中断した。
「どうした?」
「・・・危険な仕事だぞ。」
「そうらしいな。今まで何人ものレイヴンが行方不明になってるらしい。」
「・・・わかっているならいい。」
「忠告、感・・・!」
突然、背中に強烈な悪感が走った。
同時に俺達の乗るこの輸送機が落ちる映像が頭に浮かぶ。・・・不気味なほど鮮明に。
俺はその悪寒に突き動かされるかのように声を上げた。
「・・・ゼロっ!」
「・・・?」
「今すぐに戦闘モードを起動しろ!」
「・・・何?」
「いいから!」
ゼロの機体のモノアイが輝やくのを確認する。どうやら、信用してくれたらしい。
それと同時に輸送機全体に強烈な振動が走った。・・・この輸送機は・・・間違いなく落ちる。
(レイ・・・ン!攻撃を受け・・・いる!至急・・・)
操縦席からの通信が途絶える・・・やられたか。
「・・・一体?」
「脱出するぞ!」
俺は右手のマシンガンで輸送機の出口を吹き飛ばし、機体を空中に躍らせる。
朝日に照らされて、滅びた過去の町並みが眼下に広がった・・・
「輸送機が・・・」
地面に降りた俺が見たものは、動力部を吹き飛ばされ、落ちていく輸送機だった。
「・・・まいったな。」
その声に俺は胸をなで下ろす。どうやら、ゼロも無事らしい。
「ゼロ、無事か?」
「・・・ああ。」
「そうか。しかし、一体今のは・・・」
「・・・こうなることをわかっていたのか?」
「いや、俺の勘さ。どうやら、危機を無事に回避・・・」
俺とゼロの機体から少し離れた地点に、赤い光が上空から突き刺さった。
「・・・?」
突然、轟音とともにその地点を青い光が覆い、光が消えた後には巨大なクレーターが完成していた・・・
「・・・何?」
「ゼロっ!散るぞっ!」
俺達が散るのと同時に、今まで、俺達がいたところに赤い光が突き刺さった。
少し間を置いて突き刺ささる青い光、それとともに発生した強烈な風圧でバランスを取られる。
「くそっ!」
なんとか機体を立て直し、その場を離れようとブーストをふかす。
まるで、俺達の動きが読めるかのように、赤い光が正確に照射されていく・・・
レーダーにも、視界にも何も映らない。想像を絶する遠距離からの狙撃のようだ。
さっきから、エマに連絡を取ろうとしているのだが、いっこうにつながる気配がない。
まるで、誰かに妨害されているような雰囲気だ。
「ちっ、通信機も駄目か!」
朝日が当たりはじめた廃虚の間で、俺とゼロの機体はネズミのように動き続ける。
「ゼロっ!」
「・・無事か?」
どうやら、ゼロとの通信はまだつながるらしい。俺の顔に余裕が生まれる。
「そっちの損害は?」
「・・・皆無だ。・・・この機体の機動力なら回避はたやすい。」
「それを聞いて安心したぜ。」
「・・・そちらは?」
「こちらも大丈夫だ。コツがつかめてきた。」
事実、俺は次の照射ポイントを正確に読めるようになってきた。
寸分の狂い無い読みに、やってる自分も気味が悪くなってくる。
機体を的確に操作し、被害の無いところへ機体を持っていく・・・それだけだ。
それを繰り返していると、不意に赤い光の照射が止まった。・・・終わったのか?
「ゼロ、攻撃が止まった。」
「・・・こちらもだ。」
「終わったと思うか?」
「・・・それは無いな、・・・何か来るぞ。」
俺達の視界の前に数分もたたずにそれは現れた。まるでそれは過去の亡霊のようだった・・・
作者:ストライカーさん
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