サイドストーリー

正体不明部隊排除(後半)
「こいつは・・・」
「AC・・・?」
俺達の目の前に現れたのは機能を停止していた兵器だった。
天井から外の光が差し込み、その兵器の輪郭をはっきり映す。
それは俺にはなじみのある姿だった。そう、こいつは・・・
「驚いたな・・・こいつはACだ。・・・間違いない。」
「AC・・・大災害以前にも存在していたのか?」
エクレールの驚嘆を含んだ問いに俺は冷静に応じる。
「そうだろうな・・・、俺達が地下に移った以前の記録は全て消去されている、ありえない話ではない。」
「・・・」
「・・・管理者の提案したACという発想が前唾もんだったとはな。」
当然だが、そのACは見た事もないパーツで構成されていた。どれも大災害以前のものだろう。
だが、右腕に装備している物に見覚えがあった。いや、よく似ているといった方が正しいだろう。
「使えるかもな。」
そう呟いた俺はそのACの右腕から武器を取り外し、腕に装着する。
「ホワイトランス、大丈夫なのか?」
「ああ、勝手に爆発したりはしないさ。」
武器と腕部パーツのリンクを確認した俺は点検プログラムを起動した。
「エネルギー供給機構・・・クリア。エネルギー収束機構・・・クリア。FCSリンク・・・クリア。」
ディスプレイに緑色の光が表示されていく。この調子なら使えそうだ。
「重量・・・1120。残弾・・・50発中47発。武器名称コードを確認・・・」
数秒してその武器の名称コードがディスプレイに表示された。
< W G − 1 − K A R A S A W A >
「KARASAWA・・・似ているとは思ったがな。」
それはエネルギーライフルの代名詞であるMWG-KARASAWAと同じ名前を持っていた。
「ホワイトランス・・・それは?」
「エクレール、どうやらミラージュのKARASAWAも前唾もんだったらしい。」
「それは一体・・・」
「さあな、俺にも想像がつかない。だが、こいつはいける。エクレール、戻るぞ。」
「了解した。だが、使えるのかもわからない武器を使って大丈夫なのか?」
「・・・やってみなきゃわからないさ。試運転にはちょうどいい。」
俺は再び先程の広場へと向かった。右手に過去の遺産を従えながら・・・

「こいつはすげぇ・・・」
戦局は一丁の銃により好転しはじめていた。
KARASAWAは圧倒的な威力と弾速で次々とMTを破壊していく。
エクレールの協力もあって、MTの勢いが衰えはじめている。もう少しだ。
「たいした威力だな、ホワイトランス。」
「ああ、予想以上だ。いい物を拾ったぜ。」
その時、入り口の方から2機のACが広場に入ってきた。
「ホワイト!死んじゃいねぇだろうな!」
その声には聞き覚えがあった。晩飯を一緒に食ったこともある仲だ、当然だろう。
「マインズか!」
マインズの機体は始めて見たが、肩の大型グレネードが印象的な灰色の重量二脚だ。
右腕には対AC用ライフル、左腕には実体系シールドを装備している。
「マインズ、いい機体を使っているな。俺より金がかかってる。」
「へん、おめぇと違って俺には蓄えってもんがあるんでね。」
「その機体の名前は?」
「ソウルハンマー・・・いい感じだろ?」
「俺に文句を言う資格はないよ。まあ、それでもいいんじゃないか?」
「マインズ、無駄話している暇ないでぇ。」
「おお、ブレイブ。そうだったな。」
もう一つの機体もかなり特徴的な青と白の機体だった。
両肩に見た事もないパーツを付けている。どうも、攻撃用のパーツではなさそうだ。
右手にはハンドガン、左手にはスナイパーライフル、脚部は俺と同じ066だ。
「お前は?」
「わいか?わいはブレイブ、こいつはエターナル。以後よろしゅうたのんますわ。」
「あ、ああ。わかった・・・」
かなり癖のある口調だな。一体どこの育ちだか・・・
「ホワイト、さっさと終わらせちまうぞ。こっちは連続の仕事で疲れてるからな。」
「わかった、マインズ。今はある程度優位に立っている。一気に押し切るぞ。」
「そうか。じゃあ、派手にやろうか!」
マインズの肩から放たれたグレネードが俺達の一斉攻撃の合図となった・・・

「随分てこずっちまったな・・・」
最後のMTをライフルで撃破したマインズはそう呟いた。
「ほんまや、ロックオンできんなんて聞いてへんでぇ。」
(ブレイブさん、敵情報が遅れてしまいました。・・・すいません。)
「まあ、美人のミスや。多めに見といたる。」
「しかし、無事に終わってよかった・・・」
「本当だな、エクレール。俺もこいつがなければやばかった・・・」
俺は自分の機体の右手に目を向けた。WG-1-KARASAWA・・・同じ名前の兵器・・・
人間は過ちを侵して自ら地下へ潜った。その過ちを俺達は繰り返しているのだろうか・・・
もし、俺達の行動がどう未来につながるかわかれば・・・それさえわかれば・・・
「変えれるかもしれない・・・、か。」
「ホワイト、さっさと帰ろうぜ。」
マインズの言葉で俺は考えを中断した。まあ、そんな事はいずれゆっくり考えるか。
「・・・そうだな。こちら、ホワイトランス。これより帰還する。」
(こちらエマ、了解しました。皆さんお気を付けて。)

俺達は地上へと向かった。背に過去の遺産を残して・・・
作者:ストライカーさん