サイドストーリー

意外な関係
「・・・疲れた。」
俺はがらになく部屋でボケーっとしていた。
サイレントラインの一件、そして、その後の遺跡での遭遇。
ったく、最近は疲れる事が多すぎる。レイヴンてのはこんな仕事なのかねぇ。
ふと、パソコンを起動すると、そこにはクレストからのメールが入っていた。
”レイヴン、昨日の依頼、どうやら我々の想像以上に困難な任務だったようだな。ご苦労だった。
 君が見つけた旧世代のACパーツについてだが、君に進呈するつもりだ。追加報酬だと考えてくれ。
 だが、MWG-KARASAWAの原形と聞いては我々も放置するわけにはいかない。
 君の所に我々の技術班を向かわした。彼らに協力してくれること願っている。以上だ。”
「・・・そうか、KARASAWAは俺に使わしてくれるのか。」
意外なクレストの反応に俺は驚いた。てっきり持ってかれると思っていたのだ。
まあ、クレストの方も技術研究くらいは行なうつもりらしいし、矛盾した事ではないな。
「行ってみるか。」
俺は格納庫に行ってみることにした。服を着がえ、ドアを開ける。
今日の降水確率は80%。街には昔、決して降ることの無かった自然の雨が淡々と降り注いでいた・・・

「誰もいないじゃないか・・・、不用心だな。」
第12施設に着いた俺は傘を折りたたみ、受付の方を見渡した。
本来、そこにいるはずの受付担当の・・・確かミーナだったな。の姿はそこには無かった。
雨の音が響く薄暗い通路を歩き、俺は格納庫の方へ向かった。
ふと、格納庫の前で足を止めた。中から誰かの声がするのだ。
人数は・・・おそらく三人以上。結構、大きな声で話しているらしい。
おおかた、クレストのよこした技術班だろう。こんなに早く・・・まじめなことだな。
俺は入り口の横のカードリーダーにIDカードを通し、格納庫の中へと向かった。
俺はそこで世界の狭さを実感することになった・・・

「あ!リック。来たの?」
俺のACの前に座りこんでいた3人のうち1人、レナが俺の存在に気付いたようだ。
もう一人は知らない顔だったが、もう別の一人は・・・受付のミーナだ。
「リックさん、おはようございます。」
ミーナの挨拶に付いてくるようにもう一人が深々と頭を下げる。
「始めまして、リックさん。クレストから派遣された技術班々長のシーナ=グローリアです。」
「グローリア・・・?、って、確かミーナも・・・。」
「ええ、私の双子の姉ですよ。驚きましたか?」
「いやいや、世界は狭いものねぇ。」
横槍的なレナの発言に俺も思わず首を縦に振るしかなかった。
「・・・確かに、おどろいたな。しかし・・・」
「ホワイトランスさん!」
俺が話しはじめようとするのを横から大きな声で止めた奴がいた。
どうやら、俺の機体の右手付近で何か作業を行なっていたようだ。彼もクレストの人間だろう。
足元においてあった手帳を拾い、胸のポケットに収め、俺の元へとやって来る。
「お久しぶりです、ホワイトランスさん。アズマ=ケイです。」
「・・・アズマ?すまないがお前は?」
「あ、そうでしたね。まだ本名を名乗ったことはありませんでした。カールテンといえばわかりますか?」
「・・・カールテン!?本当にお前か?」
「ええ、あの頃はお世話になりました。」
「リック、この人知ってるの?」
俺がレナの質問に返答しようとするのをアズマは手を上げて制した。
「ええ、ホワイトランスさんが僕にACの基本操作を仕込んでくれたんです。」
「直接会ったことは無かったがな。カールテン。いや、アズマ。あれからどうだ?」
「そういえばケイはレイヴン試験この前合格したって言ってたわね。」
「ええ、班長。それもこれも彼のおかげです。」
「・・・本音を言えば、俺の年をばらされたくなかっただけなんだがな。」
「へ?どういうこと、リック?」
「こいつはな、レナ。メールの文面だけで俺の年を当てやがったんだよ。」
「初歩的なことです。ホワイトランスさんは他の人とは世代差のある文章を使ってましたから。」
「初歩的ねぇ、俺は一体何が初歩的なのかをご教授願いたいね。」
それを聞いたアズマの顔には満足げな笑みが浮かんだ・・・

「で、KARASAWAは自由に使えるのか?」
KARASAWAの解析に戻ったアズマを後目に俺はシーナに尋ねた。
「だめだよリック。」
意外な所から飛んできた使用拒否のメッセージに俺は目を丸くする。
「レナ、どういうことだ?」
「交換パーツが無いんだよね。壊れちゃえばそれでおしまい。だからだめ。」
「お前なぁ、小さくてもメカニックだろ?何とかならんのか?」
俺の問いにレナは珍しくしゅんとなった。本人も結構気にしているらしい。
「・・・んなこと言われても。しかたないじゃん。」
「ホワイトランスさん、我々もこのパーツを解析し、何とかするつもりです。それまで待ってくれませんか?」
「シーナさん、援護感謝。ね、リック。お願い。」
「・・・仕方ないな。レナ、ユニオンにMG-750注文したんだろ?それでいかしてもらうよ。」
レナの顔に再び笑顔が戻った。それと同時に商売人の顔になったのも事実だが。
「お、ちゃんと覚えてたんだぁ。OK、今から資料を見せるから。」
レナはどこからともなくファイルをを出し、俺に手渡した。
”UWG-MG/750・・・ARMUNIT R、WITH BACKUNIT R、
  WEIGHT 792、ENERGYDRAIN 42、ATTACKPOWER 210、RELORDTIME 8、NUNBEROFARMS 750、”
簡略された性能表と一緒にパーツの写真が同封されていた。
機構は肩に弾薬庫を担ぎ、右腕の機関砲で攻撃を行なうという代物のようだ。
「なるほどな、一発の威力を高めて消費する弾薬を減らそうという案か。」
「そういうこと。まあ、弾薬はRF-200の使いまわしなんだけれどね。」
「そんな事をしているのか。・・・相当のやり手だな。」
「誉めてくれてありがと。私もこれを進めた甲斐があったわ。」
「実際に使ってみなければわからないが、いけそうだな。次の仕事までに積んでおいてくれ。」
「オーケー、それじゃあKARASAWAはシーナさん達に預けておくから。」
「わかった。任せるぞ、レナ。」
「ホワイトランス!ここにおるんかぁ?」
その時、聞き覚えのある独特の口調が格納庫の入り口から響いた・・・

今日、俺はついに”彼”との遭遇を果した。だがそれは危険な遭遇だった・・・
作者:ストライカーさん