サイドストーリー

番外編 戦う理由…その2 辰也、鞠絵…300年越しの強き“絆”
※今回はAC2が主な舞台です
 現在、居住区のほとんどが地下世界レイヤードにある。
 だが、その数百年前…まだ、惑星規模の大災害が起きる前の話…
 そのころは居住区のほとんどがまだ地上や火星にあった。 
 そこで行われていたのは今と何ら変わり無い生活…そしてACも別ではなかった…
 
実況「さぁ、戦闘開始はや3分…攻勢は圧倒的にチャンピオン・アレスのペースだッ!」
 2機のACがアリーナ内を縦横無尽に駆け巡っている…
 その内の1機は無傷で悠然と…もう1機の方はすでに装甲がボロボロになっていた
「ぐぅ!こ、こんなはずでは…」
???「自分の実力を過信しすぎたようだな。雑魚が…オレの前から消えうせろ!」
 真紅の機体が高威力エネルギーライフルからブレードへのコンボを決めると
 対戦相手の機体は見るも無残な鉄くずとなり機能を停止させる…
実況「決まったーー!!チャンピオン・アレス、圧倒的な強さを見せ付け挑戦者を
   完膚なきまでに叩きのめしましたーーー!!!」
 この戦闘の勝者はアリーナではほぼ全戦全勝、向かうところ敵無しの彼の名は
 レイヴンネーム・アレス、本名は「総持寺 辰人」と言う
辰「まったく…最近はつまらん試合ばかりだ」
???「辰人さん、お疲れ様です」
辰「なぁ、織絵…後で少し食事にでも付き合ってくれないか?」
織「あっ、はい。かまいませんよ」
 今、辰人と話している女性は彼の専属オペレーターである本名は「志藤 織絵」
 オペレーターネーム・メルディである
辰「それと、この後のインタビューや記者達には会いたくない。あんなのは
  疲れるだけだし、何よりオレが誘ったんだから織絵を待たせたくないからな」
織「ふふっ、ありがとうございます。では、今回はこの抜け道をとおって裏口に…」
 辰人のコックピットにアリーナ内の地図が現れ、赤い線でルートが浮かび上がる
辰「おい、こんな所…」
織「とおれますから安心してください」
 辰人が文句を言おうとするが笑顔の織絵にさえぎられた
辰「…10分でつく。少しほこりまみれでも文句言うなよ」
織「何ならホテルの用意もしましょうか?」
 と、織絵が冗談混じりに言う
辰「…やめておいてくれ」
織「はい。では、わたしは先にお待ちしておりますので」
 
辰「ケホッ…まったく…なんでこんな道見つけてこれるんだか…」
 織絵が用意した道は…通気口をとおった道でよほど野性的なカンの持ち主で無い限り
 絶対に見つからない。ただ、普段から掃除はされていないらしくほこりだらけだが…
辰「これをはずして…よっと」
織「あっ、時間ぴったりですね、辰人さん」
 辰人が通気口から出るとそこにある裏口の扉の前に織絵が立っていた
辰「まあな。…さて、それじゃあ行こうか」
 服についたほこりを払い落としながら辰人が織絵に近づいていく
織「…えいっ!」
 と、急に織絵が辰人と腕を組む
辰「おっと、どうしたんだ?」
 それに辰人はまったく動じる様子は無い。むしろ、それを受け入れていた
織「せっかく仕事が終わったんですし、ここからはプライベートですから…」
辰「あぁ、わかってる。じゃ、あの店で食事でもしながらゆっくりと…それでいいだろ?」
織「はい…。わたしは辰人さんに付いていきますよ…どこまでも…」
 そう、ここまでくれば察しがつくが…この2人は誰もが認める公認の仲である
 こうして2人は記者達の目をかいくぐり街へと出ていった
 
辰「…と、こんなところでは無粋だと思うが…少し、アリーナについて話したいんだ」
 辰人達はレストランのテーブル席にすわり注文を済ますと、辰人が話を切り出す
織「そんなに気を使わなくてもいいです。そうくると思いまして…はい、これ資料ですよ」
辰「こういうカンはよく働くんだったな。…いつも感謝しているよ。ありがとうな」
 辰人はACに乗っているときやテレビの放送では決して見せない笑顔で織絵を見る
織「い、いえ…わたしが出来る事はこれくらいですから…」
辰「いいや、他にも…お前がいてくれるだけでオレには充分すぎるんだよ」
織「そう言ってもらえると…わたし、うれしいです」
 辰人の答えに織絵は満面の笑みで答える
辰「んで、本題なんだけどな…最近、ランカーの弱体化が目立つように
  なってきたと思うんだが、織絵はどう思う?」
織「ランカー…ですか。そうですね、最近は“高速戦闘の長”D.セバスチャンの引退、
  重量級AC使いストラングル、アニマドもそれぞれアリーナを引退し教官になり…
  そして最後に…トップランカーの所在不明が主な原因ですかね…」
辰「…今はオレがくり上げでこの地位にいるが…実際オレは奴に勝ってはいない」
織「たしか名前は…“ヘル”でしたっけ」
辰「あぁ、オレに初めて敗北を与え…たった3ヶ月で消えていった。もう都市伝説に
  なりかけている奴だが…オレは」
織「“奴がまだ生きていると信じてる。そして奴を倒すのはオレの目標だ”ですね」
辰「あっ、すまん…最近こればっかりだったな」
織「それで、今現在辰人さんの相手がつとまるのは今のところ囚人番号B−24175、
  ライオンハート位でしょうか?他にめぼしい人材は…」
店員「あ、あの…ご注文の方お持ちしました…けど」
 辰人、織絵が資料をテーブルいっぱいに広げているのを見て店員が困った声を上げる
織「あっ、すいません。今、片付けますから…」
 それを聞いて織絵が急いで片付けをはじめる
店員「…ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
辰「あぁ、大丈夫だ」
店員「では、ごゆっくりどうぞ〜」
 
 食事をすませ、辰人と織絵が街灯の少ない道を歩いていた
 そして、1軒の家の前で2人は足を止める
織「わざわざ家まで送ってくれなくても…」
辰「いや、何か“いやな予感がした”んでな」
 織絵の口癖に近い“いやな予感がした”の部分を強調して辰人がからかう様に言い放つ
織「もう…しりません」
 それを聞いて織絵は怒った風にそっぽを向く
辰「織絵…ちょと」
織「なん――!」
 辰人によばれた織絵が振り向いた瞬間…辰人が唇を織絵の口をふさいだ
辰「それじゃあ、また明日な」
織「あっ…はい…また明日…です」
 その不意打ちに織絵は目を丸くし…そして顔が真紅に染まっていった
 
辰「弱い…弱い弱いッ!」
 今日も辰人はアリーナでランキング戦を行っている
 昨日倒したランカーは再起不能になったらしく繰り上がったランカーが
 チャンピオンという名声を求め挑戦してきたのである
辰「まったく、ライオンハートの奴わざとランク下げやがって…おかげで弱い奴が
  無駄に自信をつけてやってくるだろ…それの処理をするのはオレだっていうのに…
  まったく、あいつ性格かわったかな」
「なんだと…貴様!おれを侮辱してるのか!?おれは実力で…」
 それを聞いていたのか相手ランカーが必死になって否定をする
辰「少しは目上の者に対しての口の聞き方をおぼえてからまたくるんだ…雑魚が!!」
 辰人の機体…“プロビデンス”の肩に搭載されたレーザーキャノンが相手の機体の
 頭部を撃ちぬく。そして相手側の機体は膝を崩しその場に倒れこんだ
辰「囚人番号も最近は手続きやら何やらでアリーナ登録外だし…ちっ、相手にならん」
織「そうですね…最近やたらに…ちょっと言いにくいのですが弱いランカーの挑戦が
  増えてきていますね」
辰「はぁ…織絵、今日の午後8時にホテルの予約を頼む。たまには家とは別の環境で
  ゆっくりしたい」
織「了解しました」
辰「あっ、あとお前の分もな」
織「はい。わかりまし…え?そ、それって…」
 辰人の提案に織絵は一瞬、言葉を詰まらせる
織「べ、別々の部屋でよろしい…のですね?」
辰「何を言っている?…同じ部屋で頼む…」
織「――!!!」
 その後織絵は無言で予約をした…もちろん、辰人の要望どおり2人一緒の部屋で…
 
 今の時間は6時…ちょうど日が落ちかけてくる時間帯だ
織「あの…チェックインまでまだ時間がありますけど…どうしましょうか?」
辰「なんだ、その…少し公園で時間でも潰すか」
 タイミングよく人気のなさそうな公園にさしかかる
織「は、はい。では行きましょう」
 この時、2人の運命を大きく変える事になる人物が後をつけていた事を
 緊張のあまり気づいていなかった…
 
辰「迷惑…だったか?」
 誰もいない公園にあるベンチに座り…そして辰人が先に口を開く
織「い、いえ…迷惑だなんて…そんな事…思っていません」
 この時点で織絵の顔は真っ赤に染まっていた
辰「急だったからな…別に断っても「わたしは」
 辰人が話していると織絵が口を挟む
織「わたしは…辰人さんについていくと言いました…この言葉に嘘偽りはありません…
  ですから、わたしは…」
 そこまで言うと織絵はすくっとベンチから立ち上がる
織「…ちょっと飲み物でも買ってきますね」
辰「すまないな、織絵」
 この公園には自販機は見当たらない…織絵はわざわざ公園を出て少し歩いた所にある
 自販機まで買いに行った
辰「(…やっぱ、唐突すぎたかな。あいつの気持ちを聞く前に誘っちまったけど…)」
「あなたが…アレスですか?」
辰「ん?多分そうだが…誰だ?お前は…」
 下を向いて考え事をしているのが仇になり不審者の接近に辰人は気づかなかった
 そこに立っていた人物はぶ厚いコートに帽子を深く被った声からして女性だろう
「あたしは…2日前にあなたに倒され再起不能になったレイヴンの婚約者…
 とでも言えば理解で来ましょうか?」
辰「……で、その婚約者の方がオレに何かようでも?」
「とぼけないで!」
 急に大声を張り上げ怒りをあらわにするコートの女性
「あんたのおかげで…あの人の夢は完全に断たれたのよ!?あの人は…ACの話しを
 している時が1番うれしそうだった…あたしも、そんな彼のことが好きで…好きで
 たまらなかった…なのにあなたは―――!!!」
辰「はぁ〜、やれやれ…逆恨みもいいところだな」
「なっ――!!」
 ややあきれ気味に辰人が言い放つと案の定、その女性の顔がさらに怒りでゆ歪む
「人1人の人生を奪っておいてその言いぐさは何!?トップランカーのあなたにとっては
 そんな事どうでもいいの!!?答えてッ!!!」
 コートの女性が一気にまくし立てると…ゆっくりと辰人の口が開かれる
辰「…以前、オレに挑戦できたのは上位ランカーと互角…あるいはそれ以上の強さの
  持ち主しか許されていなかった…なぜだかわかるか?」
「そんなもの…わかるはずも無いしわかりたくも無いわ!!」
辰「じゃあ簡潔に説明しよう。つまりだ、あんたのその彼と言うのはあまりに実力が
  無さ過ぎたんだよ。実力の無い奴がオレに挑戦しても…いくらオレが加減しても
  ああゆう結果になるんだ。…わかったか?」
「…あなたが言う…上位ランカーっていったい誰…なの?」
 それを聞いたコートの女性はさっきと打って変わって急におとなしい口調に変わる
辰「今だったら囚人番号と…あとはライオンハート位…だな。だけど最近なんか
  ライオンハートの奴、わざと負けて上位にわざわざ未熟なレイヴンを送りこんで
  来るんだよ…理由はわからんけどな」
「――!…そう…だったの。ふふふ…あははは!!」
 辰人が言い終えるとコートの女性は狂ったように笑い始める
「あなた達の気分1つであの人の人生は奪われたのね…ありがとう…
 おかげであなたを殺す決心がついたわ」
 コートの内ポケットから拳銃を一丁取り出し、銃口を辰人に向ける
辰「ずいぶん物騒な物をもってるんだな」
 だが辰人に動じる様子は無い
「減らず口もそこまで…死んで…死んで彼に償ってよ!!」
 女性が拳銃のトリガーを引こうとした瞬間…
織「辰人さん!!!」
 女性の背後から手にジュースの缶を持った織絵が拳銃を蹴り飛ばす
 どうやら辰人は初めから気がついていたらしい
「何ッ!?」
織「破ァァァッ!」
 そして今度は女性の横っ腹めがけ勢いよく回し蹴りを決める
「がはぁっ!!!」
 わき腹を押さえながら女性はその場に膝をつく。肋骨の2、3本は確実に折れただろう
織「辰人さん!大丈夫ですか!!?」
辰「あぁ、織絵のおかげで怪我1つも無い…助かったよ」
織「よかった…ホントに…よかったです…」
 辰人の無事を確認し織絵の緊張の糸が切れた瞬間に油断がうまれ
 …それが命取りとなった…
 ザクッという鈍い音がしたと思うと大きめのサバイバルナイフが織絵の背中にささる
織「えっ――?」
辰「織絵!?」
 次の瞬間にはもう、織絵は立ってはいなかった…
織「かはっ…。た、辰…人さ…ん」
辰「織絵!しっかりしろ…織絵!!」
 辰人が必死に織絵を抱きかかえ呼びかける…そして織絵は絞り出すような声で答えた
織「ご…めんな…さい…油断…して…しまい…めい…わくを…」
辰「謝らなくてもいい…待ってろ、すぐに救急隊を呼ぶからな」
 腕についた通信機で救急隊を呼ぶと再び織絵の方を向き直る
織「わたし…と…ても…楽しかった…です…あなたと過ごした…この…時間…とても」
 余程刺さり所が悪かったのか…たったナイフ1本で織絵はかなりの致命傷をおっていた
「ゲホッゲホッ!!…あんたも…あんたも大切な人を失う苦しみを…味わうがいいさ」
 ナイフを投げた張本人の女性はそう言うと下劣な笑い声を上げ始めた
辰「…織絵…もう少しの辛抱だからな…」
 そう言って織絵を静かに地面へと下ろすと、蹴り飛ばされた銃を拾い女性に向けた
辰「オレの…織絵に手を出した事をせいぜいあの世で後悔するがいい…消えろ…クズが…」
 辰人達の他に誰もいない公園に銃声が鳴り響いた…
 
 救急隊が現場につくとすぐに織絵は都内の病院へ運ばれていった…
 その3日後にこの公園で女性と思われる変死体が林の中から出てきたという…
 
辰「織絵は…助からないんですか…?」
 深刻そうな医者の顔を見て辰人が問い掛ける
医者「いえ…1つだけ方法があります。ちょっと来ていただけますか?」
辰「はい…」
 医者に連れられて病院の地下へ下りていく
辰「これは…?」
 そこにあったのは巨大なポットと見た事も無い大型機械だった
医者「今、研究段階の“ナノマシンユニット”を起動できるポットとそれを生成する
   機械です。…これがあれば多分、彼女は助かるでしょう」
辰「ほ、ホントですか!?では…」
医者「しかし、あくまでこれは研究段階…いったんこのポットに入ればコールドスリープ
   によって300年間の治療が必要ですね…」
辰「――!?」
医者「…これが今の医療技術の限界です。彼女を…織絵さんを…どういたしますか?」
 悔しそうな顔をして医者が選択肢を辰人にだす
辰「オレは…織絵と同じ時を過ごしたい」
医者「そうですか…なら」
辰「だから、オレを…織絵が目を覚ます時までそのコールドスリープをかけてくれ」
医者「え…ほ、本気で言ってるんですか!?トップランカーのあなたが今いなくなれば
   混乱は確実に起きますよ!?」
辰「織絵は…こんなオレにどこまでもついていくと言ってくれた…オレは、それに
  答えなくてはいけない…」
医者「…記憶も…失う事になりますが…いいんですか?」
辰「かまうものか。それと、目を覚ますときにオレはACの中にでも入れておいてくれ。
  病院なんか目覚めが悪いだろ?」
医者「――?彼女と別々でいいんですか?」
辰「記憶が無いんだから…一緒にいても変わらない…だけど、同じ時を過ごして
  いればオレ達はまためぐり合えるだろう」
医者「それに確信があるのですか」
辰「そんなもの…オレと織絵の間には切っても切れない縁がある」
医者「…わかりました。あなたと織絵さんの身の安全は我々が保障します。
   300年間、安心して眠っていてください」
辰「すまないな…迷惑をかける」
医者「あと、さっきは記憶がなくなると言いましたが名前とか簡単なものでしたら
   残しておく事が出来ると思います」
辰「じゃあ…この名前を記憶しておいてくれ」
 2枚の紙を取り出し…そこへ簡単に字を走らす
医者「えっと…「総持寺 辰也」に「志藤 鞠絵」…ですね。わかりました」
辰「あと、住所と口座は…」
医者「大丈夫、我々が責任を持って確保しておきますよ。それではコールドスリープの
   準備をしますので…織絵さんをここに連れてきましょう」
 こうして、辰人は自分が初めて心から愛した女性と同じ時間を過ごすことに決めたのだ
 
 2つあるポットの中に辰人、織絵がそれぞれねかされている
医者「それでは…おやすみなさい。アレス…いや、辰人さん」
 ゆっくりポットのふたが閉められ…その中にガスが充満していく
辰「(これで…いいんだ…オレと…お前…は)」
 薄れゆく意識の中…辰人は最後の最後まで織絵のことを考えていた…
 
 ……そして……
 
???「う…うん…ここは…どこだ?」
 1人の青年がある場所で目を覚ます…周りを見るといろいろな計器類が並んでいて
 ACのコックピットであることがわかった
???「えっ…と。オレの名前は…「総持寺 辰也」だったけな。他には…
    あ、あれ?なんも…思い出せね…しゃあない…これ、動くかな?」
 だが、ACの動かし方は体が覚えていたらしく何も考えずにACは難なく動かせた
辰「んじゃ、家に…あっ、よかった…家は覚えてたっと。帰るか…」
 真紅のACが1機、ブースターを起動させ飛んでいく…
 
???「ん…」
 ある病室で女性が1人、目を覚ました
???「ここは…いったい?それにわたしは…」
 身を起こし少し考え込んでいると…
医者「あなたの名前は「志藤 鞠絵」ですよ」
 そう年老いた老人の声がした
鞠「あなたは?」
医者「なぁに、わたしはここで働いているただの年老いた医者ですよ。…これを」
 老人が1つ、紙切れを鞠絵に差し出す
鞠「これは…いったい…」
医者「多分、記憶を失っているとお思いますから、あなたの住所やら口座やらを
   書きとめたものです」
鞠「いったい誰がこのようなものをわたしに?」
医者「はて…なにぶん年をとったもので物忘れが激しくなってな…おぼえていないな…」
鞠「そう…ですか」
 少し鞠絵の顔が曇る…それもそのはずである…自分の過去を唯一知っている人物が
 分かったかも知れなかったのだから…
医者「意識が戻ったのが回復した証拠だと聞いていますので…もう、退院の準備は
   出来てますから…」
 医者の言うとおり、部屋の隅には鞠絵の荷物らしきものがまとめられている
 そして鞠絵はベッドから起き上がると荷物を持ち、一礼して病室を出ていった…
医者「アレス…いや、辰人さん…あなたが世界で唯一愛した女性は助かりました…
   これで…わたしの役目は…終わりです…この300年…結構、長かったですよ…」
 そう言い残すと…病室にいた“はず”だった人物は跡形も無く消えていた…
 
 こうしてまた、2年が過ぎる……
 
辰「なんだよ!鞠絵ッ!!」
鞠「辰也さん!文句を言われたくないのならちゃんと話を聴いてください!!」
 相変わらずの2人…辰也、鞠絵は口ゲンカが絶えない
努「まったく…あいつらいつでもどこでも喧嘩するな…」
咲「ホント…まさに“喧嘩するほど仲がいい”だね」
 それを遠巻きに努と咲耶が見ている…が、あきれてすぐに他の場所へ行ってしまった
 努達がいなくなってから2人の喧嘩が一段落すると…
辰「…すまん…鞠絵」
 かなり疲れた様子で辰也が謝り出す…
鞠「いえ…わたしも少し、言いすぎました…」
 鞠絵も同じように謝り出す…どうやら今回は引き分けだったようだ
辰「…んじゃ、飯でも食いに行くか。ちょうどいい時間だし」
鞠「今日のお店は辰也さんにお任せします。おいしい所に連れていってくださいね」
 いつのまにか2人は笑顔になって、その場から去っていった…
 まだ誰も気づく事は無いだろう…この2人は誰にも邪魔できない
 強い、強い“絆”で結ばれている事を…まだ…
                   戦う理由…その2 辰也、鞠絵編 FIN…         

あとがき
 
えっと…初めてあとがきというものを書きます。
AC以外にいろいろ物書きしてますキョウスケです。
この番外編シリーズ…結構本編にかかわってきますから
できるだけ読んでいただいてもらえれば幸いです。
これまで自分の小説読んでいただいてもらっていればわかると思いますが
ACとは全然関係ないラヴコメ全快の展開がちょくちょく見られますが
長い目で見ていってください(笑)。
これから、番外編も本編も全身全霊をかけて(言い過ぎかな?)
書いていきますからよろしくお願いします。
それでは、また…
作者:キョウスケさん