サイドストーリー

格納庫の傭兵 II〜悲哀の十字架〜
「ふー、やっぱここのコーヒーは心が落ち着くぜ。」
まだ詳しく紹介していなかったが、こいつの名前はトーメント。
本名はトーメント・ブロウ、俺と同じ格納庫の仕事をしている。もちろんレイヴン試験も合格している。
トーメントは無類のコーヒー好きで、いつも部屋にこもって自分でブレンドしてみたり自分の足で美味いコーヒーの店を探すのが趣味らしい。
それでここの店に辿り着き、ついでにここの近くの格納庫で働くことにしたらしい。
しかも都合よく面接では採用されレイヴン試験も見事合格、まさに幸運の持ち主と言ってもいいだろう。
もうかれこれこいつとの付き合いは2年にくらいになる。
「今日は俺、仕事休みだったけどまたトラブルでもあったでしょ?」

「ああ、あったよ。なんか大柄な男が俺らと同じくらいのやつを脅しててな。」
トーメントは「やっぱりか」という感じの顔をしていた。

「あと今日はたしか給料日だったよな?どうだった?」
2年くらい一緒の仕事にいると大体こいつの性格がわかってくる。まず質問は全部してくる・・。
それに答えなきゃいけないのが面倒だが仕方ない。前に質問を質問で返したら頭をかかえて困り果てていた・・・。
「ああ、なんかまた上がったよ。なんでだろうなぁ、俺はみんなと変わらず仕事してる気がするんだが・・。」

「お前はそう思ってるかも知れないけど、他の奴から見たらお前は・・なんていうか・・なんか違う感じがするんだよ。」
トーメントはいきなり変なことを言い出した。俺がみんなと違う?
「・・・俺はなんかみんなと違うか?」

「ん、なんというか・・・あ!はやくスパゲッティ食わないと冷めちまうぞ。」
出た・・・。トーメントお得意の話の切り替え・・・。しかもその切り替えた話が意外と重要だから困る。
俺は慌ててミートソーススパゲッティを口に運んだがトーメントの言う通り冷めてしまっていた。

「・・・・・・・・・。」
俺はとりあえずスパゲッティを先に食ってからトーメントと話すことにした。

「・・・ふう。でさっきの話に戻るけどなんでみんなと違うんだ・・・?」


























「よし、施錠は完璧だな。さて帰りに一人で一杯やろうかな。」
ちょうどトロードは格納庫の施錠を確認してたところだった。まだ迫ってくる憎悪には気づいてなかった。





















「おーい、どう違うんだよ・・。」

「いや・・だから・・説明しにくいんだよ。勘弁してくれよ・・・。」
ロストの質問はもう尋問に変わりつつあった。トーメントの顔は真っ青になっていた。

「このままじゃお前帰さな・・・。」














ドゥゴゴゴォォォォォンンン!!!!!!!















いきなりの衝撃音にロストとトーメントは耳を塞いだ。
「っ・・一体なんだ?」
辺りはざわついて悲鳴も聞こえた。とりあえず外に出て様子を見ることにした。

「おい・・あの煙・・格納庫からじゃないのか・・?」
トーメントの指す方向はたしかに格納庫からだった。黒い煙と同時に衝撃音が次々とでていた。
慌てて逃げる人に何があったか聞いてみた。
「一体何があったんです?」

「いきなりあそこの格納庫目掛けてACが襲撃してきたんだよ!まさかあそこの格納庫も狙われるなんて・・。」
そう言うとまた走り去ってしまった。格納庫にはまだ施錠の確認をしているトロードさんがいるかもしれない。
俺は急いで格納庫に向かって走っていった。
「あ、おい待てよぉー!ロスト!」
それを見て慌ててトーメントも追っていった。




















「がははは!!!燃えろ燃えろぉぉ!!このまま塵にしてやるぜぇぇ!!」
アサイラムは自分のACギガントスで格納庫を破壊していた。燃えさかる炎の中で・・。
「ふはは・・。よしこれくらいでいいか!どうせ生きてる奴はいねぇな!!はははは!!!!」

































俺達が着いたころにはもう格納庫は灰と化していた・・。俺は炎の中で暴れてたACを見た・・。
両手がデュアルキャノンになっている重装備のAC・・・。
その姿はもう俺の頭の中に焼きついてしまった。
そのACは何事も無かったかのように去っていった・・・。
その数分後にACの消火部隊がきて火はすぐに鎮火した。
その後、中に人がいたか捜索をしていた。俺はトロードさんの携帯に電話したが繋がらなかった。
「・・だ、大丈夫だよロスト。トロードさんは生きてるって・・。」
トーメントも正直ダメだと思っていた。








「おーい見つけたぞ、人がいる!!誰か手伝ってくれー!」
捜索部隊の一人が残骸の中で埋もれてる人を見つけた。それはまぎれもないトロードさんだった。
「トロードさん大丈夫ですか!!??トロードさん!!」
俺は必死に聞こえるように声をかけたがトロードさんはピクリとも反応しない。
救急隊員の一人がトロードさんの鼓動を確かめていた。
「まだ生きてるぞ!!わずかだが鼓動がある、すぐに搬送するぞ!!」



医療施設に着いたと同時に人工皮膚移植手術が始まった。俺とトーメントは無事を祈るだけだった。













3時間ほど経ってようやく手術が終わって手術室から出てきた。しかし様子が少し違っていた。
「君達は・・この人の付き添いの方々でしたね・・?実は・・。」
医師の話によると爆風に巻き込まれ重度の火傷と手足を骨折していて危険な状態だったらしいが一命は取り留めた。
だが問題は両眼失明という大きな障害を持つことになってしまった。目の組織が炎の塵により完全に死んでしまったらしい。
こればかりは手術でも治せないと言っていた。






俺とトーメントは動かないトロードさんを見つめていた。
「でも命だけは助かってよかったよな・・。」
トーメントの言うことに俺はただうなずくだけだった・・・。






















俺はこの日から誓った・・。

格納庫を破壊し、トロードさんを死の直前まで追いやったあのACを・・・。そしてそのACに乗ってるレイヴンを・・・。
作者:RYOSUKEさん