サイドストーリー

格納庫の傭兵 V〜記憶と追憶〜
「とりあえずそのレイヴンの詳細を探してみるか。」
ロストとトーメントは格納庫襲撃事件のACに乗っていたレイヴンの正体をつかもうとしていた。
色々と調べてみたが結局何もわからないままだった・・・。
格納庫を建て直すのには時間がかかるらしくて俺達はミラージュ本社の格納庫で働くことになった。

「もう休憩時間が終わりそうだから戻らないか?」
トーメントの言う通りもう休憩時間は残りわずかになっていた。

トロードさんはもう意識を取り戻して歩けるくらいまでよくなっていた。だが両眼失明という障害は背負ったままだった・・・。

「あれ、B・C・Gか?」
格納庫に戻ってみたらB・C・Gの面々がいた。

「あ、ロストさん・・格納庫のことは非常に残念でした。あとトロードさんのことも・・。」

「わざわざすまないコール。」
もしかしたらと思い、俺とトーメントはB・C・Gに格納庫を襲撃したACの特徴を話してみた。
するととんでもない答えが返ってきた。

「デュアルキャノンの重装備のAC・・・まさか。」
ゲドはそう言うと今日の新聞を開いて何かの記事を探し始めた。

「これは・・4人のレイヴンが失踪?」
その記事には≪4人のレイヴンが失踪!?≫とでかでかと掲載されていた。

「問題はこれだ。ここに4人のレイヴンが乗ってたとされているACの特徴が載っている、見てみてくれ。」
ひとつづつ見渡してみると格納庫で見たACに特徴がほぼ一緒のACが載っていた。

「間違いない・・・。このACだ!な、ロスト?」
たしかにトーメントが指してるこのACは俺が格納庫で見たACとほぼ同じであった。

「このACの搭乗者は誰なんだ?教えてくれ。」
さらに記事を見渡すと信じられない記事が載っていた。そのACの搭乗者の名前はアサイラムというのが俺はこいつを知っていた。

襲撃前に格納庫でトラブルを起こして俺が仲裁に入った中にこいつがいたのだ・・・。

「あ!こいつ、そういえば前に格納庫で・・・。」
その時一緒にいたB・C・Gのブラスも記事を見て思い出した。

これで格納庫襲撃の真相が明らかになりつつあった。おそらくアサイラムは笑い者にされた腹いせに格納庫を襲撃したのだろう。

しかし・・ただそれだけで・・なぜそこまでするのか。

そんな理由で重傷を負った、障害を背負ったトロードさんのことを思うと虚しさと憤りを感じ始めた・・。

「しかも厄介だな・・。裏で手を引いてる奴がいるかもしれない・・。」
B・C・Gがある極秘任務で対峙している≪アスタリスク≫という組織に引き込まれたらしい。

「・・・もしよかったら俺達も参加させてくれませんか?」
俺は無理を承知でB・C・Gに頼んでみた。

「・・ん?ちょっと待て!俺達ってまさか俺も?」

「当たり前だろ?トロードさんの仇をとるんだ・・。」
参加には快く賛成してくれた。しかし問題が一つ浮上してきた・・。それはACを操作することであった。
俺とトーメントはレイヴンの資格はあるが実際、試験以来1、2度しかACには乗っていない・・。正直不安だ。






「なら私が君達二人をテストしてみよう。」
一人の男の人が声をかけてきた。その人はB・C・Gを支援しているアステカさんという人であった。
アステカさんはミラージュの社員(エリートクラス)なのでMT部隊の訓練所を自由に使っていいと言ってくれた。
今、気づいたら俺とトーメントの持ってるACはほとんど初期装備のままであった・・。
だけどアステカさんが自由にパーツを作業員に付け替えさせるとまで言ってくれた。
















「久しぶりのACの乗り心地はどうだい?」

「なんかすごく揺れますね・・・。酔いそう・・。」
トーメントの言葉に一緒にいたB・C・Gも笑っていた。

「ロストマンはどうだい?」

「久しぶりだと身体が鈍ってますね・・。」
ACの揺れは特に問題ないが、いざ実戦となるとすぐやられるかもしれない・・。とりあえず基本動作を身体に染み付けないと・・。


「じゃあ基本動作も大体行ったから、まずは的射撃でもしてみようか。」
スタートの合図と同時に俺は的を狙ってためしに撃ってみた、しかし外れてしまった。
俺は視力があまりよくないからきつい・・。まあそんなこと言ってたら何もできないな。

隣ではトーメントが狙いを定めていた。

トーメントが撃ったハンドガンの弾は見事に的に当たった。的は黒く焦げていた。
そういえばトーメントは前に「俺は眼が良いからなんでも見えるぜ!」とか言ってた気がする。まさか本当だとは・・。
その後も俺は的に当たることはほとんどなかった・・。

「ふむ・・ロストマンが68発中13発命中で、トーメントが62発中59発命中か。」

「射撃はロストさんよりトーメントさんのほうが上手いですね。」
B・C・Gのコールは電子メモ帳に書き込んでいた。



「よし次は格闘戦の練習をしてみよう。我が社のMTギボンが逃げ回ってるのでそのギボンを狙ってブレードを使ってみよう。」

ブーストを使って移動するとけっこう揺れるな。こりゃトーメントは絶対酔うかもな。
「・・・頭が痛くなってきたかも・・・。」

「トーメント、そのうちしたら慣れていくから我慢するんだ。」

案の定トーメントは酔いはじめた。

とりあえず逃げ回るギボンの後ろを追いかけてみたが、振り切ろうとするギボンに食らいつくので精一杯だった。

「・・・こうなりゃ回りこむしかないな・・。」
逃げるギボンの進む方向をしぼってみて俺はオーバードブーストのスイッチを押した。
押した瞬間、勢いおく機体が吹っ飛んだ。通常時とGのかかりが明らかに違かった。身体を鍛えといて助かった・・。
ちょうど機体はギボンの前で止まった。俺はすかさずブレードを振りかぶった。
ギボンは避けようとしたが避け切れずブレードは見事に当たった。
ギボンはその衝撃で吹っ飛んで壁に激突していた。

「!?・・速いな、開始から21秒37・・・。もしかしてゲド達より速いんじゃないのか?」
ロストの開始から終了までの時間が速いのにアステカは驚いていた。

「もしかしたら俺達より速いかもな。もしくは俺と同じくらいか・・。」
B・C・Gのゲドも驚いていた。

一方のトーメントは、「MTと戦ってる」というよりも「ACの激しい揺れと戦ってる」といったほうが合ってるかもしれない・・。





「やっと終わったか・・。ロストマンは21秒37、トーメントは・・・8分53秒62、ほぼ9分だな。」
格闘に関しては俺のほうが上手だった。トーメントはまだ気持ち悪いのか顔が青くなっていた。

「ロストさんは本当にACの揺れに強いですね。あのオーバードブーストを普通にこなすなんて・・。」

「おそらくトーメントは揺れに慣れれば4分くらいまでタイムを縮めることができるだろう。」






「じゃあこれが最後の訓練だ!さっきの射撃と格闘を活かして実戦をしてみるぞ!」
遂に実戦訓練がはじまろうとしていた。相手はもちろんトーメント・・。
実弾は使わずペイント弾を使っての演習だ。
ルールはペイント弾5発以上またはブレード一発による攻撃が命中したらその場で終了。

「じゃ、はじめるぞ・・・・開始!!」
開始と同時にトーメントはハンドガンを撃ってきた。旋回して避けようとしたがさっそく1発当たってしまった・・。

「酔いもなくなってきたぞ!よし、このまま射撃で決めてやる。」
まずい・・・。トーメントが揺れに慣れてきた。とりあえず俺はハンドガンで牽制し少しづつ距離を詰めていった。


「ロストが3発被弾で、トーメントは0か。このままだとトーメントが勝つな。」


「このままだとまずい・・・。こうなりゃ一か八か・・・。」
俺はオーバードブーストのボタンをすかさず押した。

「ロストさんがオーバードブーストをした!」


「もうロストの手はわかってるぜ!オーバードブーストで回り込むつもりだろ!」
B・C・Gの三人はトーメントには通用しないと諦めていた。

「いや・・違うね!!」
俺はそのままトーメントの機体に突っ込んでいった。その衝撃はかなり身体に負担がかかりそうだった。

「!?・・げっ。・・う・・揺れが・・。」
トーメントは今の衝撃でまた気分を悪くしかけてた。今しかチャンスは無かった。
俺は迷わずブレードを出そうとした・・・。

「・・・それまでだ!!!」
いきなりのアステカさんの声に驚いて俺はボタンを押す手前で止まった。


「この勝負は引き分けだ。」



「え!?この勝負はブレードを出そうとした、ロストさんの勝ちでは・・・!?」
予想もしていなかった勝敗の判定にコールが割り込んできた。


「よく考えてみろ、たしかに今のブレードを使えばトーメントは致命傷を負っていたがその前までロストはペイント弾が四発命中している。
 もしペイント弾じゃなくてハンドガン・・いやもしバズーカやグレネードだったら明らかにトーメントの勝ちだろう・・。
 アステカはそれを考えて引き分けという判定を下した。俺だって同じ判定を出していたはずだ。」
なるほど・・・ただ先に当てれば勝ちというわけではなかったのか。
実際の使ってる武器を想定して勝敗を下すなんて素人にはできない・・・。


「さすがですね〜ゲドさんとアステカさんは・・。それに比べてコールは・・。」
ブラスが笑いながら喋っていた、それを聞いたコールは怒っていた。ブラスは「冗談だ」と言ってまた笑っていた。

「この訓練を毎日行う!そして自分の身体を鍛えることも大事だ。」



まだACに慣れていないがそのうちしたら・・・。







「・・・トロードさん・・。かならず仇はとります・・・。」
なんとかしてACを乗りこなさなければ・・・。

「俺だって揺れに完全に慣れれば・・・。」
トーメントも今の訓練で自身を持ちはじめた。






















その日から俺達は自分自身に厳しくして訓練を始めることにした・・・。
作者:RYOSUKEさん