サイドストーリー

刹那
ホズミは純和食の朝食をとっていた。彼はもう年老いたため体に負担のかかるレイヴンの仕事を引退して1年になる。
インターホンがなる。朝から人に会いに来る奴がおる。まったく、今何時だと思っているんだ(a.m8:30)
「何のようだ」
ドアを開けると1人の青年がいた。彼は開口一番こんなことを言った。
「弟子にしてください!」
しばしの沈黙…。そしてまた同じ台詞
「弟子にしてください!」
「帰りなさい。わたしはもう弟子を取る気はない。」
「そこを何とか!」
明らかに青年は動揺している。
「とにかく帰りなさい」
そう言ってドアを閉めた。
 
午後になりいつも師として通っている剣術教室に行こうとドアを開けると彼はまだいた。
「弟子にしてください!」
私は彼を無視して教室へ向かった。
 
そこの生徒にはシェリルーユーン、邪聖(よこしま・ひじり)というものやエクレールなどAC、またはMTに乗っているものも多かった。
彼らと稽古をしているとあの青年が目に入った。今度はここの制服とも言うべき和服を着ていた。
みた所さっき入会したのだろう、他の師から指導を受けている。
聖との模擬試合が始まった。じりじりと間が詰まる。一瞬で勝負はついた。
聖の刀を飛ばした。
「まだ、心に迷いがある。女に現を抜かしていないで集中せよ」
「わ、解りました」
 
稽古が終わり帰ろうとしたときまた彼が来た。あまりにもしつこいので話を聞くとこんなことを言った。
『僕はACの操作を毎日練習を重ねてきました…でもいざ実戦となると手足が震えるんです…』
それがなんとなく昔の自分と重なるため弟子になることを許してしまった。
彼…いやツクヨという名の青年は居住地へ消えていった。
 
2日後指導は始まった。シュミレーションのACの操縦技術は全く問題が無いが実戦で手足が震えるというのはまだ問題がある。
実戦に慣れさせるために私との模擬戦を行う。
ACに乗るのは何年ぶりか・・・。幸いコクピットは埃が積もっていただけだ。
昔の感覚がよみがえる。フロートの反重力装置が作動し始め機体が浮遊する。
 
思った以上に時間がかかった。装甲の高さと自分のブランクもあるが彼はかなりの腕があった。
とても手足が震えて出来るような動きではなかった。
 
そこで私は彼に実戦…というよりアリーナタッグマッチを薦めた。僚機はもちろん私だ。
相手はシェリル=ユーン、邪・聖チームである。二人とも私が指導したことのある。二人ともブレード中心のアセンブルである。
この試合だがもちろんエキシビジョンである。
 
「じゃ、本気で行っていいんですね?」と聖
「…私は…過去を取り戻す!」と1人ぼそぼそとシェリル
「お、お手柔らかに…」すでに弱気なツクヨ
「かまわん本気で来なさい」
「「…」」
『これよりシェリル、聖チーム対ホズミ、ツクヨチームによるエキシビジョンマッチであります!
 今回の注目は元トップクラスランカーで引退していたホズミがアリーナに再登録、エクストラアリーナに参加であります!』
『それでは試合開始!』
 
まずは全員間合いを詰める。ツクヨはタンク型であるため、必要以上に詰めすぎない。
聖の機体より、閃光が発せられる。私を狙っているようだが、切れがない。
「本気で来なさいと言っただろ!」
「…わかりましたよぅ…」
二人がいまいち本気になれないのもわかる。私はともかく、アリーナに入ったばかりのツクヨにどこまで本気になれるかといった所か…
 
シェリルが動いた。OBを起動させ、一気にツクヨに迫る。が、私もOBを起動させ、進路上に先回りする。
一筋の閃光が眼前を駆け抜ける。それにより、シェリルの動きが鈍る。
「貴様っ!ジャマをするな!」
「へっ、悪かったな!」
この二人、腕はあれどもチームワークが余りいいとは言えない。
「先生どいてください!撃ちます!」
ツクヨがグレネードを発射し聖の機体を掠める。
「てめぇ、うざいんだよ!」
聖はレーザーキャノンをツクヨに向けて発射した。タンクの機動力でこのレーザーキャノンを回避することはほぼ不可能である。
避けることが出来ず、被弾する。
「まだまだぁ!」
グレネードでシェリルを狙い、ハンドロケットと拡散投擲銃で聖を狙う。
「「「何だと!?」」」思いもよらぬ行動に1人を除き、困惑する。
すぐに聖の機体反応がレーダーから消えた。
撃破されたわけではあるまい…ステルス…。
私はOBで細かく動きながら小型ロケットを撃ち撹乱する。
体に負荷のかかるOBの多用は危険だな…すぐにけりをつけなければ。
シェリルが再びOBを起動、ツクヨに突撃をかける。彼は『紅い神槍』の異名をもつ。懐に入り込まれると危険だ。
「タンクで避けられると思うな!」
紅い光は左腕に集中して今にも高速の突きを繰り出さんとする。
が、そのときツクヨはグレネードを足元に撃ちその爆風でシェリルの突きを回避する。
「何!?」
爆風の中に突っ込んだためシェリルのバランスが崩れる。そこへ右手のハンドロケット、左手の拡散投擲銃が咆哮をあげる。
避けることが出来ずシェリルは被弾してしまった。
そんなこんなしているうちにレーダーに反応。自分のほぼ真上だ。
いくらステルスとはいえ気づかなかった自分を呪った。
聖がEOを乱射し上段の構えでブレードを振り下ろそうとしている。
「食らえ!」
赤い光が振り下ろされる。回避など出来る距離ではない。
私は機体を右にずらすと射突式ブレードを構える。ブレードが左肩を切断したとき、に炸薬が爆発、刀身を打ち出す。
狙いたがわずコアをえぐる形になったがまだ起動可能な状態だ。
「ちっ!?」
左腕を失ったものの聖に手痛い反撃を与える。聖は距離をとる
「先生!」
ツクヨのグレネードの後ろをOBで追いかけながら聖に突っ込む。グレネードが爆発、聖に右手のブレードを打ち込もうとしたそのとき、
その脇に身構えているシェリルがいた。左手には赤いひかり。
直撃。まだ動くことは出来たが、戦闘はほぼ不可能。
そのときツクヨが私の前に出てきた。
「先生は下がってください!後は僕が!」
 
 
試合終了
 
 
弟子になる前は小さく、弱かったツクヨが今大きく見える。こんな弟子を持って本当によかった…。
 
ーあとがきーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
また後味の悪い終わり方ですがどうか見捨てないでください(爆
何故、ツクヨが2人に向けて複射出来たかというと彼はINTENSIFYつけてるってことで。弟子にしてもらった直後に埋め込んでます。
勝敗は読者の方の想像しだいです。
最後ですがゲストキャラのお二方の出演が少なくなってしまいましてお詫び申し上げます。
作者:ZEROさん