サイドストーリー

第11話 過去の産物…その名は…(前編)
義「ん…く…」
 今、義大はどこかの研究室にいるらしい。なにやらいろいろなコードがついた
 ヘルメットをかぶってイスに座っている
???「最終チェック…異常無し。義大、外してもオッケーだよ」
義「…うんしょ…っと。すいません、いきなり押しかけて…澄子さん」
 この実験を行っているのは…義大の遠縁の親戚にあたりミラージュの新ACパーツ
 開発部門すべてを仕切っている小笠原 澄子という人物だ
 そしてヘルメットを外した義大が立ちあがり澄子の方へ歩いていく
澄「あ〜、いいのいいの。私があんたに試作機の実験を頼んだんだから…この
 『ヴァリアブル・ストライク』…通称、“ヴァース”の実験をかねた実践テストの…
  んでもってコレのメンテは私位にしか出来ないからね」
義「でも、コレは実験機とは思えないくらいいい動きをしてますよ。自分の感情が
  ダイレクトに伝わって…ビットが動きますから」
澄「しっかしあの無人AC事件が終わって退院したすぐの時にあんたがいきなり
  “使えるパーツはないか”って来た時は驚いたよ」
義「あの時は…かなり焦ってたから…強くならなくちゃいけないという気持ちがパーツ
  を頼る気持ちに変わって…そしたら澄子おばさ――ふぐぉ!?」
 ガードをさせる暇のない位の速さで打ち出されるコークスクリューをもろに腹部へと
 決められ、たまらず義大はにごった悲鳴を上げる
澄「は〜い、もう一度…なんだって?」
義「ぐは…す…すみ…澄子…姉さん…」
澄「よろしい♪でも、この実験機を使いこなせるのはあんたの努力のたまものだよ。
  実際に元々のスペックを大きく超えた結果が出てる」
 さっきの実験の結果か何かがいろいろと書かれた紙を見ながら澄子は少し驚いたように
 言い放つ
義「はい…自分は裕紀みたいなACを扱うセンスは無くて…今まではなんとか
  ついていけたんだけど、この前の戦闘でハッキリとしたんだ…自分には力がない…」
 悔しそうにうつむく義大。しかし、そこに澄子が笑いながら話しかけてくる
澄「そ〜んな事言っちゃって、実は守ってやりたい娘でも出来たんでしょ?」
義「えっ!?い、いや…そのぉ…はい」
 最後のほうはほとんど聞き取れないような小さな声であったが2人しかいないこの部屋
 では無意味な事であった
澄「あらら…あんたがそんなになる娘がいるなんてね…大事にしてやりなよ」
義「わかっています。それでは、自分はこれで…ありがとうございました」
 そう言って自分が帰ることを促す義大
澄「こっちこそ。貴重な実践データ提供、サンキュ〜♪」
 
辰「…う〜ん…」
 辰也は珍しく図書館に来ていた。ここは郊外にひっそりと作られている古い図書館で
 見た目どおり、保管されている書物は年代物ばかりだった
 周りには人が見られず辰也1人だけという異様な光景が見られるのもそのせいであろう
辰「はぁ〜。この間の…たしか『ディソーダー』だっけ?な〜んか見たことあるような
  気がするんだよなぁ…くそっ、これにも載ってないか」
 辰也の使っている机の上には、すでに調べた後の書籍が山を作っている
 その高さは人1人位の高さは軽く凌駕していた
辰「さて、次の本は…」
 辰也は立ちあがり不安定な書物の山にまた1つ、基盤をきづいていく
 そして辰也の取った本には『我々の未知の領域 火星編』と書かれていた
辰「なになに…火星にはその昔、文明が栄えていた…んな事はどうでもいいんだよ…」
 一通り目を通して役に立たない事がわかり再び本を積み上げる
辰「…やっぱダメ…ん?『過去300年間歴代ランカー全書』?へぇ、そんなもんまで
  あるのか…」
 気になったのでその本を手にとって中を開いて見ると…1人のランカーが目に止まる
 それは…
辰「300年前の…ランク1位 レイヴン…アレス?アレス??あっ…――!?」
 何か強い衝撃が辰也を襲う。…先ほどまで積みあげていた本の山が思いっきり
 崩れたのだ
辰「い…つつ…くぅ〜、いってぇ〜!」
 頭をさすりながら本の海の中から辰也が出てくる
辰「ちっ…もういいや。調べる気うせたし家、帰ろ…」
 
義「さてと、メールチェックでもしておくか」
 家に着いた義大は荷物を部屋の隅に置くと早速パソコンの前に腰を下ろす
義「…ミラージュから?…ふぅ、これで何度目だよ…多分裕紀のほうにも来てるんだよな」
 メールボックスの1番上にあるメールの内容は…専属レイヴンに戻らないかといった
 内容のものだ。あの日…かなり前になるが努達と1戦を交えたときにこの2人は専属を
 取り消していた。この2人失う事はミラージュの戦力にかなりの痛手を負わせたらしく
 ここ2週間、毎日こんなメールが来ていた
義「自分は…専属に縛られて仕事をしてる余裕は無いんだ…守ちゃんとの…まぁいいや。
  次は…へぇ、この新パーツが安く――なんだよ…ミラージュ専属用か」
 次々にメールをチェックしていく。仕事の依頼やらいたずらメールなども
 あったが今のところは無視しておいて意外と多いメールを処理していく
義「最後は…あれ?差出人不明?怪しいな…でも、なんか」
 少しの不安があるものの思いきって内容を開いてみると…
義「…なっ――!!!」
 その内容を見た義大は一言声を上げただけでもうすでに玄関へと走っていた
守「義大さ〜ん、もう、ご飯食べまし…」
 すると、守が義大の家にやってきた。手には料理の材料らしき物をもって…
義「…ゴメン…今ちょっと急いでるから…」
 玄関先で2人ははちあわせた
守「へっ?ど…どうしたの…?」
 いつもと違う迫力の義大に多少押される守
義「すまない…自分は…なによりも重要な用ができた…また今度…」
守「え…ボクより…大切な用…なの…」
義「…ごめん…」
 そう言い残し義大は守を残し家を後にした
守「ボクより…大切な用事なんだ。あはは…そう…だよね…ボクなんかより」
 義大のセリフを聞いた守は思わずその場に座り込んでしまう…
守「あ、あれ?なんだろ…なんか…嫌な予感がする…追いかけなくちゃ…いけない」
???「ありゃ?どうしたんだ?守ちゃん、こんな所で…って、何泣いてんだよ!?」
 そこに裕紀もやってきたらしい。手に土産か何かであろう、お菓子の入った袋を持って
守「え…あっ、な、何でもないよ。それより裕紀さん!みんなを呼んで!!義大さんが…
  なんか嫌な予感が!!!」
 目を赤くした守を見て裕紀が驚くが、守はすぐに話題を変えた
裕「落ち着けよ!まったく…なにがあったんだ?」
 
義「(…何を考えているのだ…あのエースという奴は…あんなメール、嘘に決まっている)」
 この前戦闘があった旧市街地ドームの中でACを走らせながら義大は考え事をしている
義「藍華と…麗華が生きているはずがない…2人とも…自分の目の前で…」
???「やっと来たか…しかも律義に1人だけとはな」
義「来るように仕向けたのは貴様であろう。エースッ!」
エ「ずいぶんな言い方だな。せっかく…兄妹を再会させてやろうというのに」
義「そのような戯言に付き合ってる暇はない!本当だと言うなら今すぐにでも
  会わせてもらおうじゃないか!!」
 先ほど、義大が見たメールの内容は…
『お前の義妹である藍華と麗華は生きている。会いたければ今すぐここに来い…エース』
エ「ふっ…そう焦ることもなかろう。もう、すぐそこにいるではないか」
義「何ッ!?」
 エースの機体の後ろから2機のACが姿をあらわす
藍「……」
麗「……」
義「なっ!そんな…嘘…だろ」
 そして、通信画面に映し出された顔は…義大の驚きようを見てわかると思うが
 義大の義妹である藍華と麗華の顔であった(※番外編その3参照
エ「これを見てもまだ嘘だと思うか?」
義「本…物だよ。これは…2人とも…生きていたのか」
エ「ふっ…我があのデパートを破壊しなければこうにはならなかっただろうがな」
義「――!?今…なんと申した…?」
 2人の堅苦しい言葉が飛び交う
エ「あの時、市街地戦を展開したのは我と…試験生だったかな…その時“たまたま”
  外れた攻撃が…」
義「そう…だったのか。…やっと見つけたぞ…自分の…いや、自分達の殺るべき相手を!」
 義大はそう言い放つと両手に装備されたライフルをエースに向ける
エ「ふん、勘違いするな。貴様の相手はこの2人だ」
 藍華と麗華の機体がエースを守るように立ちはだかった
義「なっ――!あの時美奈殿が言っていた2人とは…まさか!!」
エ「美奈め…余計な事を…。どう言ったかは知らんがこの2人は我の忠実な部下だ」
義「…自分に藍華と麗華と戦えというのか!?」
 底から押し上げるように殺気をおびた声を上げる義大
エ「貴様の持つその特殊な装備…ビットを自在に操るその技術はお前達には行き過ぎた
  力だ。だから排除する」
義「ふざけるなよ!この…くされ外道が!!」
 このエースの態度にいつも以上に荒い口調になる義大
エ「戦いたくないのなら黙って殺られるのもまた選択肢の1つだ。精々悩むがいい。
  ヘルウィンダー、ヘルクウォーカー。やつを…壊せ」
藍「…はい…」
麗「…了解…です…」
 2人の声に生気はみられない…冷たい、無機質な声だった
エ「後は任すぞ」
 エースが機体を義大とは反対方向に向け、オーバーブーストを起動させる
義「まてッ!」
 義大が声を張り上げるが止まるはずもなくエースは早々と戦線を離脱していった
藍「わたしは…エース様の敵を…排除する…」
 藍華の機体が両手のマシンガンを構える
義「藍華…麗華…せっかく会えたのに…」
麗「あなたは…エース様の敵…だから…排除する…です」
 麗華の機体が実シールドを構えながら肩に装備されているチェインガンを構える
藍「いく…よ」
義「くそっ…自分は…どうしたら…」
???「そんなもん…助けるに決まってんだろ!義大!!」
???「そうだよ、絶対に…絶対に助けないと!義大さん!!」
義「な…裕紀に…守ちゃん!?どうして…」
裕「いや、おれ達だけじゃねぇ」
義「へっ?」
ちか「そうとも…義大…」
辰「あぁ、今の聞いて…」
努「俺達が口出しできる立場ではないと思うが…」
咲「でも、わたし達…仲間でしょ?」
鞠「困った時は…」
春「お互い様と申しますし…」
 聞き覚えのある声が次々と聞こえてくる
義「みんな…うぐぁっ!?」
 気がそれた一瞬の内に藍華の機体が義大に先制の一撃を加える
 この攻撃を受け、努達は全員散開する
藍「これ…みんな…敵?敵は…排除する…」
麗「エース様…の…敵…すべて排除…です」
 どうやらこの2人はここにいる全員を相手にする自信がある…と言うよりは
 何も感じていないらしい
義「…気持ちはありがたい…だが、努殿達はエースの後を追ってくれ。まだそう遠くには
  行ってないはずだから」
努「いや…やつを追う事も大切だが…」
義「いいから!…藍華と…麗華は自分が救い出す…大丈夫だ、殺られるつもりはない」
 何かを言いかける努を制して義大が追いかけるように言う
努「…わかった。みんな、行くぞ!」
 努達の機体がエースの後を追って飛んで行った…が、
義「すまない…これだけは自分で決着を…」
裕「な〜に言ってんだか。義大」
ちか「相手は…2人とも強化人間か…厄介だね…」
 裕紀と千影…そしてもう1人、その場に残っていた
義「裕紀に千影…それに…」
守「義大さん…ボク…心配で…裕紀さんにみんなを呼んでもらったんだ…」
 守は今にも泣きそうな声で話している
義「守ちゃん…3人とも…ありがとう…」
裕「おれ達が3人で動力系統を破壊する。義大…お前はそれまで待機してろ」
ちか「動きが止まったら…コックピットをこじ開けて…」
守「義大さんが中の2人を救出して!」
 この会話を最後に救出戦が始まった
 
藍「敵…排除…すべて…壊す」
 藍華の機体が肩に装備されたグレネードキャノンを構え…まずは義大の機体に狙いを
 つける
裕「やらせるかよ!」
 そこに裕紀の機体が割って入り…両手の装備を連射する
麗「無駄…です」
 だが、藍華の盾になるかのように麗華の機体が裕紀の攻撃をいとも簡単にはじき返した
麗「その程度…平気…です」
裕「ちぃっ!2脚型なのにどういう装甲して…うおわぁぁぁっ!!!」
 不意に物凄い反動が裕紀を襲う
藍「邪魔…するの…。なら…あなたから…壊します」
 藍華は麗華の機体からわずかに見える裕紀の機体に強力なグレネード弾を狙い撃ち
 してきた。わずか数十センチずれただけでも麗華の機体に直撃しかねない距離なのに…
ちか「裕紀!?」
裕「くっ…左腕を吹っ飛ばされた…ビットも1つ、いかれたみたいだ…」
 裕紀の機体にはすでに左腕は無くあった場所は今、無残にも火花を散らしている状態だ
義「ダメだと思ったら退けばいい!自分のために無茶はするな!!」
ちか「義大の言うとおりだ。裕紀…今は退いて…守ちゃん、わたし達がやるよ」
守「うん。…義大さん、まってて…すぐに足を止めてみせるから!」
 最近一緒に行動する事が多くなってきた守と千影…今度はその2人が突っ込んでいく
藍「…?あれ…2つが…1つ…?数が…減った」
麗「藍華…右からくる…です…。一応…警戒」
 どうやら早速千影はステルスを起動させたらしい…今、藍華達が目で見える機体は
 守の機体だけだ
守「はぁぁぁっ!」
 守の機体がマシンガンを連射するが…案の定、麗華の機体に弾かれる
麗「あま――!?うあ…そんな…」
ちか「いくら強化人間でも…このステルスは見切れまい!!」
 千影がブレードで麗華の実シールドごと左腕を切り裂く…これでもうこの腕は使い物に
 ならないだろう
ちか「これで五分五分――!?な、何がッ!?」
 突然、千影の機体に衝撃が起きるとほぼ同時に千影のモニターが真っ暗になる
藍「麗華…まだ…いける?」
麗「左腕回路切断…うん…問題なくいける…です」
 千影の機体の頭部とほぼ同じ位置にあった麗華の機体の腕にレーザーキャノンでできた
 穴があった。つまり、藍華は麗華の腕を貫通させ千影のメインモニターである頭部を
 撃ち抜いたのだ
義「なっ…味方の機体を目くらましにしただと…。藍華…なんてことを」
守「そ、そんな…千影さんが」
ちか「くっ、予備のモニターの復旧…ダメか…頭部が完全消滅してる…これじゃ」
藍「あなたも…敵…壊す…」
麗「これで…やっと1人…です」
 2つのACが同じレーザーキャノンを1つの機体…身動きのとれない千影の機体に
 標準をあわせる
裕・義「「そんなこと…やらせはしない!いけっ、ビット!!」」
 しかし、裕紀と痺れを切らした義大のビットが藍華と麗華の機体を取り囲み始め…
裕「おれのは…麗華のキャノンを落とせ!あれさえ落とせば…戦力はかなり落ちる!!」
義「自分のは…藍華の武器をすべて狙え!…自分のコレなら…できるはずだ!!」
 お互いに狙いを定める
藍「――!…う…く…で、でも…まだ…」
 藍華は両手のマシンガンを乱射しビットを落としていくが撃ちもらしたビットが
 着実に藍華の武装を破壊していく
麗「えう…うぅ…これ…じゃあ…ダメ…破壊される…です」
 だが、麗華のほうはチェインガンを発射し抵抗はするもののそれ以上大した
 抵抗もできず肩に装備されたキャノンはビットによる攻撃を受け、破壊された
藍「両腕…両肩武器…損傷率…限界値突破…ダメ…壊れる…」
 藍華の機体もついに装備された武装が限界を迎え…爆炎を上げ地面に落ちる
裕「今だ!義――うぐっ!?」
麗「まだ…です!」
藍「まだ…落とされるわけには!」
 藍華と麗華が初めて感情のこもった声を上げ、オーバーブーストを使い裕紀の機体に
 突撃してきた!
義「裕紀!」
裕「ちっ、ちっくしょう!あの時のでバランサーもいかれてやがったのか!?」
 左腕の損傷でバランサーが不安定になっていたのか…2人の体当たりを受けてあっさり
 転倒してしまう。そしてその上に藍華の機体が覆い被さるように乗る
藍「敵…1人でも…多く壊す…」
 藍華の機体が右腕を振り上げ…裕紀のいるコックピットを狙う
義「くそっ!藍華、やめろ!!裕紀ぃ!!!」
 藍華の機体が腕を振りろし、コックピットを叩き潰した…と、誰もが思ったが
藍「あ…?う…動かな…い?どうして…動いて…動いてよ…」
 腕を振り上げたまま藍華の機体は動きを停止させている。ただ1つだけ普通のと
 違うのは…藍華の機体からはブレードの刃が出ている事だ
守「ぼ…ボク…だって!いつまでも足を引っ張るわけにはいかないんだ!!」
 守の機体に装備されたブレードが藍華の機体のジェネレータを貫いていた
義「守ちゃん…」
守「え…へへ。ボク、少しは役にたっ――きゃぁぁぁっ!?」
麗「まだ…まだ…です!!」
 油断していた守の機体に麗華の機体が殴りかかり、守の機体は吹っ飛ばされる
守「う…あ…」
 外部の損傷よりも守自身への衝撃の方が強かったらしく守は失神してしまう
麗「こう…なったら1人…だけで――!?あ…れ?う、動かない…?」
 守に追い討ちをかけようとしてた麗華の機体を止めたのは…
 意外にも頭部の無い千影の機体であった
ちか「ふっ…サポートありがとう…裕紀」
裕「なに、千影のプログラミングのおかげだ。ったく…まさかおれのメインモニターを
  お前のに移し変えるなんてな」
 聞いてのとおり、頭部を失った千影が取った行動は先ほど押し倒された裕紀の機体から
 映像データを引っぱってくることであった。そうすれば裕紀の画面に映っている画像が
 千影の所でも見える…聞こえは簡単そうだが回線をこの短時間で結ぶのは結構大変な
 作業である
ちか「ちょっと前にね…街で鞠絵さんに会ったときに教えてもらったんだ。…コツさえ
   わかれば結構、簡単だったよ…」
裕「そ、そんなものなのか?まぁ、それはそうとして…義大、今ならいいだろ」
守「…う…ん。ジェネレータを壊したら…さすがにもう、動けないはずだから…」
 守も失神から目を覚ましたらしい
義「あぁ…3人とも、本当に…本当にありがとう…それじゃ、行ってくる」
 
藍「くっ…動いて…お願い…」
 藍華はコックピットの中でもう動くはずの無い機体を動かそうと必死にであった
藍「エース様の…敵…壊さなきゃ…ひっ!?」
 金属の裂ける音がしたかと思うとACによってコックピットが引き剥がされようとして
 いた。そして、完全に外部が見えるようになると向い合ったACの中から人が出てくる
義「藍華!」
藍「や…嫌ぁ…敵…壊さなきゃ…」
 必要以上に怯える藍華。やはり、義大の事も覚えていないらしい
義「お前…自分がわからないのか?義大だ…藍華、自分の顔をよく見ろ!」
 義大が藍華のコックピットに乗りこみ、藍華の肩を掴む
藍「顔…?え…変な顔…かな?」
義「変って言うなや!…っと、今はそんな場合じゃなくて…よく見てみろ、ホラッ!」
 場の雰囲気に似合わない珍妙な反応に思わずツッコミを入れるがすぐに気持ちを元に
 戻して藍華に問いただし始める
藍「う…ぐ…エース…様…違う…この声は…あ、兄…上?」
義「声…結局、顔は関係無しか…」
 徐々に藍華の目に光りが現れ…
義「まぁそんな事はどうでもいい…そうだ!思い出してくれ…藍華!!」
藍「兄上…――!兄上ぇッ!!」
 藍華の目に、完全に光りが戻った。と、同時に義大に飛びついていく
裕「んあ?どうした、守ちゃん?」
守「ん…いや、何でもない…よ」
 それを見ていた裕紀達は守に何か不機嫌オーラを一瞬だが発していたような気がした
ちか「大丈夫だよ…守ちゃん。相手は一応、妹なのだから…」
裕「あっ、言い忘れたけど、あの義大の妹って…2人とも義理のだったんだっけな?」
守・ちか「「え゛ッ!?」」
 
 藍華をとりあえず守達に(少々危険だと思ったが)預け、義大は続けて
 麗華の機体に向かった。先ほどと同じようにコックピットをこじ開けると…
麗「あ…う…ひっく。やぁ…敵…敵ぃ――!来ないでぇ!!」
 藍華以上に怯えている麗華。…元々の性格がそうさせているのかもしれないが…
義「麗華、安心しろ。自分の顔をよく見るんだ」
麗「やだぁ…うっく…へ、変な…顔?」
義「お前も同じ反応かい!」
麗「ひっ――!」
 藍華と同じ反応に思わずツッコミを入れてしまうが、麗華はそれでまた怯えてしまった
義「あっと…いけない…つい地が…。麗華は…ほら、自分の声をよく聞いて…」
 義大はもう、顔では無駄と判断したのかさっきとは変わって優しい声を投げかける
麗「うぅ…こ…え?」
義「そうだ、麗華。自分の声を…」
麗「あ…これ…聞いたこと…うくっ!これ…に…兄…ちゃ…んの」
義「もう少しだ…思い出してくれよ」
 麗華の目にも光りが戻り始め…そして
麗「兄ちゃん…なの?うあ…ホント…だ――!兄ちゃんっ!!」
 麗華の警戒心が完全にとけ、自分の兄を確認するとそこに飛び込んで行った
守「あう〜…な〜んか複雑」
ちか「う…む。た、多分…義大はまともな趣味だと思うから大丈夫だと…」
 そんな様子の守を見て千影がすかさずフォローをいれるが…
裕「いや〜、あいつったらなんか12人の妹(笑)が出てくるゲーム…やってたかな〜」
 裕紀の一言がすべてを打ち砕いた
守・ちか「「はぁっ!?」」
守「ま、マジッすか!?」
 …今までにない不安材料を守に残し、とりあえず2人の救出は成功した
 
 次の話…努達は今、何をしているのか?
 
                         弟11話(後編)に続く…
あとがき
 
これでそろそろSSの書置きが無くなります(汗)。
詳しい事は後編で…
作者:キョウスケさん