EPISODE 4 〜大乱射〜
スケアクロウとゲドがアリーナ会場に出現したテロ部隊を全滅させてから、数日たったある夜の事だった。
第3層・産業区のグラン採掘場。
ここでは、キサラギの社員達が、作業用ロボットに乗って、レアメタル鉱の採掘を続けている。
じつは、キサラギはミラージュと契約をして、グラン採掘場の貸出し期限をもらっていた。
その期限中に、レアメタル鉱の採掘をしても良い事になっている。
だが、キサラギはその期限がすぎている事にもかかわらず、採掘を続けていたらしい。
これは、ミラージュは、重大な裏切り行為だと言いながら、「採掘を止めろ」「期限オーバーだ」「責任を取れ」と社員達に罵倒させながら、
何日か何日か、その社員達を送り出して採掘をやめろコールをあびせていた。
これに対してキサラギは、「採掘さしとめの命令が出るまでは、採掘を止めるわけには行かない。
期限等知った事では無い」と、冷酷な判断を下した。それが、ミラージュを怒らせる結果となった。
ミラージュは数十人ほどの社員達を送り出して、
「契約をしておいてその契約を捨てさる気なのか」「管理者に訴えてやる」「採掘場はお前等だけのものだと思っているのか」
「薄情者どもめ」「お前等みたいなやつがいるからこの世界の社会の秩序が乱れるんだ」と、社員達に罵倒を投げ付けさせる。
キサラギの社員達は、うんざりしながら、「エラソーな事を聞きやがって」と、ミラージュの社員達にイライラしていた。
作業が続いて、深夜一時に差し掛かった時。
ガシン、ガシン。
出入り口の方から、重たい足音が響いた。
「何だ?」
一人の現場監督は、足音に気づいた。そして、MTに乗り込んで出入り口の方へ近づいた。そして、ゲートの前でこう叫んだ。
「オイ、誰だ!! こんな所で何をしている!!」
叫んだとたん、ゲートが開いた。そのゲートの向こうにいたのは、1機の青い4脚型のACだった。
「ああっ!?」
現場監督は驚いた。ACは突然、火炎放射器を構え、現場監督のMTに向かってぶっぱなした。
「ぎゃあああああああ・・・・・・」
現場監督のMTは断末魔の悲鳴を上げて、灰燼と化した。
一方、その悲鳴は、奥の方にあるプレハブの休憩所や、となりのブロックで作業しているMTや作業員、そして作業用ロボット達にも聞こえた。
「何だ何だ!?」
「どうしたんだ!?」
「喧嘩かぁ!?」
作業員達、パトロールのMT部隊は一斉に出入り口付近に集結する。
その途端、ガシャン! と、何かが落ちた。
「わぁっ!!」
作業員達は目を丸くして驚いた。
その何かは現場監督のMTの残骸だった。
「あああああ!!」
作業員達はその後ろにいたものに驚いた。
そこには、青い4脚型のACがいた。
このACのパイロットの名は「プラス」。ACの名は「クールヘッド」だ。
「社会の秩序を乱すやつには容赦しないよ、僕は」
プラスは呟く。
プラスは実は前に、ミラージュからグラン採掘場の制圧を請け負われていた。
「我々の説得を受けても採掘場を開け放さないんだ。何とかしてくれないか」
と、言われ、これにはプラスも黙ってはいられなかった。そして、快く引き受けた。
ドカーン!!
ドオオン!!
ドオオン!!
グラン採掘場の中で、激しい爆発音が響いた。クールヘッドの通った後に、
作業用ロボット、MTの残骸が転がっていた。
「お・・・応援を、応援を頼む! 大至急応援を!!」
作業員の一人が、通信機を持って壊された休憩所の片隅に縮みながら、通信機を片手に叫んでいた。
すると、
ピーッ、ガタン!
と、近くでブザーがなり、ゲートが開く音が響いた。
「!?」
作業員は音のした方をドキッとしてそっちを見ると、ガシャン、ガシャン、と、重たい足音が響いた。
すると、休憩所の近くに何かが現れた。それは、MTだった。
「うわっ! だ、誰か!!」
そう叫んで逃げようとした作業員を、MTはマシンガンで銃撃した。
ドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!
「ぐわぁぁぁぁぁぁ・・・・・」
作業員は悲鳴を上げ、マシンガンの弾を体中に受け、蜂の巣と化してしまった。
MTは作業員の死体を見下ろす。暫くして、フン、といわんばかりにそっぽをむいて、引き返して行った。
引き返しに行ったところで、プラスと合流した。
「どうした?」
プラスが聞くと、
「作業員の一人が、仲間に知らせたようだ。もうすぐこの採掘場に残っている奴等がここに集まってくる」
と、MTは答えた。
このMTのパイロットは「コールハート」。MTの名は「ザ・サン」だ。
コールハートは、プラスが出撃する前、一緒に闘う僚機を選べと問われ、プラスが選んだのが、この彼だ。
「これは大乱射の場となるな」
「ああ」
プラスとコールハートはお互い頷きあう。すると、
ビーッ、ビーッ!
ガタン、ガタン、ガタン!!
ガシャガシャガシャガシャガシャガシャ!!
ブザーが鳴り響き、ゲートが一斉に開いた。そこからMT部隊がわっとあふれ出してきて、
機材や器物の後ろに隠れるようにして、一斉に武器を構えた。
「動くな!!」
「武器を捨てろ!!」
MTに乗った作業員の一人が叫んだ。
すると、プラスとコールハートはお互いの顔を見せあうと、左右に分かれた。
すると、MT部隊たちの銃が一斉に火を吹いた。
ドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!
ドガァン、ドガァン、ドガァン!!
ババババババババババババババババ!!!!
ガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!
ドガァン、ドガァン、ドガァン!!
採掘場は凄い修羅場となり、銃弾が飛び交い、爆発が激しく起こる。
まず最初にプラスが火炎放射器の炎を左側のMT部隊にばらまいた。その炎を浴びたMTと戦闘メカが次々と倒れていき、
暫くすれば灰燼と化していった。次にコールハートは器物の後ろに隠れて、じっと息を潜めていた。
その途端、コールハートが右側のMT部隊に突っ込んでいった。不意を突かれたMT部隊が左をむく。
それを待っていましたとばかりにコールハートが飛び出した。そして、ロケット弾とマシンガンの嵐をMT部隊に吹かせる。
さらに不意を突かれ、MTたちは倒れていき、爆発した。
「これで全部だな」
「ああ」
プラスとコールハートが顔を見合わせた途端、
「バカめ!! スキを見せたな!!」
と、何処からか叫び声が響いた。
「なにッ!!」
二人が声のした方をむくと、右のゲートの近くにMTが一台、隠れていた。どうやらこれは生き残りらしい。
「死ね!!」
MTは武器を放とうとする。が、プラスの方が早かった。
「お前だッ!!」
プラスは火炎放射器の炎をMTに浴びせる。
「ぎゃああああああ・・・・」
MTはあっという間に灰燼と化した。
「・・・・・まったく」
プラスは愚痴を零した。
すると、通信が入った。
「敵戦力の殲滅を確認。なかなか素晴らしい働きだったぞ。帰還してくれ」
ミラージュからの通信だ。プラスとコールハートは顔を見合わせて、
「帰還するか」
「おう」
と、お互いに言いながら、出入り口のゲートへ向かった。
作者:武田 慎さん
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