サイドストーリー

第9.5話 戦い終わって…ハプニング(前編)
 基地外部で…
辰「なぁ、努達が基地に入ってからどれくらいたった?鞠絵」
 いまだに辰也達は基地に侵入している努達の帰りを待っている
鞠「えっとですね…だいたい53分くらいです」
航「はぁ…もうそんなになるんですか…」
咲「いくらなんでも遅いな〜…基地内部もジャミングがかかってて調べれないし…」
春「…でも、大丈夫ですよね?きっと…お二人とも…」
 そう…たかがACを一機倒しに基地内部に行ったにしては時間がかかりすぎている
 同じレイヴンなら心配するのは当然の事だ…
咲「当然!大丈夫に決まってる♪あの兄さんと鈴凛さんなら放射能まともに浴びたって…」
努・鈴「「大丈夫なわけ無いだろ!!!」」
 咲耶が大げさな説明していると…すかさず努と鈴凛がツッコミを入れる…
 それは努と鈴凛が無事に帰ってきた証拠でもあった
辰「お〜、やっと出てきたか…遅いぞ〜」
鞠「ほんと、待ちくたびれましたよ…お二人がた…」
航「それより無事で…なによりです…努さん!」
春「鈴凛さんも…無傷ではないようですが…よかったです」
 みんながそれぞれ努達を歓迎する…ただ一人を除いて…
努「…ん、あれ?咲「兄さん!!!鈴凛さん!!!」
 一人会話に加わっていなかった咲耶がいきなり努と鈴凛に向かって大声を張り上げる
努「うわぁ!さ、咲…耶…?」
鈴「あ〜…耳が…」
咲「二人とも!!!基地内部にジャミングがかかってること知ってたんでしょ!?
  どうしてすぐわたしに教えてく…」
鞠「あ〜はいはい、咲耶さん…その位にしておいて…無事に帰ってきたのですから」
 本気で怒っている咲耶を鞠絵がなだめる
咲「うぅ〜…ホントに心配したんだから…もうこんな事しないでよ…お願いだからぁ…」
 鞠絵の説得が通じて咲耶の口調が急に穏やかになる
努「すまん…みんなには心配かけたな…それじゃあ帰…ん?緊急回線…」
???「…とむ…ん…努…さん…努さ〜ん!聞こえますか!?」
 努が言い終わる前に通信してきた人物が喋り出す…その人物はとゆうと…
咲「この声…雛子ちゃん?どうしたのよ?」
 その声の主は意外にも雛子であった
努「で、雛子ちゃん…俺に何か用があるのか?いちいち緊急回線で通信してくる位の…」
雛「う、うん…兄貴と…兄貴と源兄ぃがぁ…」
 極度の緊張状態にあるのか、雛子はろれつが回っていない
辰「ん、あいつら二人が…どうかしたのか?」
雛「ゲーセンで二人とも本気で大喧嘩始めちゃったの!!!」
 「「「「「「「…はぁ!?な、なんで!?」」」」」」」
 みんなの心が1つになった決定的瞬間だった…
雛「と、とにかく!…もう努さん達じゃないと止めれそうに無いんだよ〜…だから…」
努「はぁ…デートしていると思ったら今度はケンカか…落ち着きの無い奴等だ…
  わかった、すぐにそっちに向かう。それまで待っててな、雛子ちゃん」
雛「ありが…あっ、兄貴っ!それ以上は…!す、すいません!切ります!!」
 雛子の背後から雄叫びに近いこえが上がると雛子は慌てて通信を切る
咲「む、向こう側で何が起きてるの…?」
鞠「後ろから何か…ものすごい声がしていましたが」
航「で、努さんどしますか?って言っても…」
春「もう決まっていますよね?」
 …どうやら努はこのメンバーには完全に頼られているらしい
辰「ハハッ、すっかりみんなのお守り役だと思われちゃってるな。努さんよぉ」
努「はぁ…まったくだよ…ま〜た仕事が増えた…」
 それを努は理解しているらしい…
鈴「いいじゃない努、嫌われてるよりはね」
努「あぁ。今度こそ帰るか…ったく、こっちは一仕事終わったばかりなのに…」
咲「はいはい、ぼやかないの…今、輸送機を手配したから鈴凛さんと航…それから
  そこの岩陰に隠れてる青色のACさん達もついでに乗ってく?」
 咲耶の言うとおり少し離れた岩陰に3機のACが立っている
伸「き、気づいていたのか…」
努「なんだ?俺達の後をつけてきたのか?」
伸「うっ…そ、それは…」
 どうやら伸次達は基地を出てからずっと努達の事をつけていたようだ…
忍「すいませ〜ん…実は、ぼく達…」
舞「…恥ずかしながら…私以外、二人とも方向オンチ…なのです…」
 すまなさそうに舞がその質問に答える
鈴「じゃあ手っ取り早く舞が道案内をすれば…」
舞「それは…さっきの戦闘で私のマップはもう使い物にならなくて…それに
  伸次さんも忍ちゃんも基本的にレーダーにマップがついてい無いもので…」
努「おいおい、方向オンチならそれくらい装備しておかなきゃいかんだろ?」
伸「う、うるさい!わざわざレーダーな…」
忍「伸次兄ちゃんってばレーダーなんてつけると“何かに負けた気がする!”って言って
  全然つけようとしないんだよね…」
 意地張っている伸次の変わりに忍が訳を答える
伸「し、忍…な、なんだよその目は…笑いたければ笑うがいいさ!」
努「いや、画面は出てないぞ…」
咲「はいはい、そこまでにしといて…で、結局乗るの?乗らないの?」
伸「あ…う…ま、舞にはもう無理させたくないから…出来ればのせてって…ほしい…」
 やっと観念したのか伸次は咲耶にそう申し出る
咲「そうそう、人間素直が一番…ってね♪」
努「まぁ、そんな感じで動ける俺達は先にガレージに戻っておくから…そうだな、
  とりあえず舞達を降ろしたら鈴凛達は俺のガレージに来てくれ」
鈴「わかったよ」
航「あっ!僕はこれからちょっと用事があるんで…あ〜あ、面白そうなのに…」
 残念そうに航が嘆く…どうやら裕紀と義大のやりとりをよほど見てみたかったのだろう
咲「ホント残念でした♪あの二人のやり取りは半端じゃなく面白いのに♪」
 咲耶がそれを見て航をからかい始める
航「くっそ〜…あぁ!見てみたい!!でもこれだけは外せない用事だし…」
努「そ、そうか…じゃあ辰也と春歌は俺と一緒に来てもらうからな」
辰「わかってるって」
春「了解しましたわ」
鞠「ではわたしは咲耶さんと一緒にそちらまで向かいます」
咲「じゃ、兄さん気をつけてね♪それと、航…また今度一緒に…」
航「うん…また今度…」
努「…あんまり見せ付けるなよ…まぁいい、じゃ、行くぞ」
 こうして努達一行は地上から一足先に地上から…
 鈴凛、航、そして伸次一行は少し待って輸送機から帰っていった…
 
 努達のちょっとした帰り道で…
辰「なぁなぁ、さっき努が話していたやつらって…誰?」
春「そうです…ワタクシもさっきから気になっていたのですが…」
 当然の質問である。どう見てもさっきから普通に話していた人物は
 辰也達の記憶には無かったのだから。
努「あ、そういや言っていなかったな…あいつらは…」
 努は基地内でおきた事を順を追って説明した。
辰「なるほど…簡単に言えばあれはレニッシュと…」
春「彼女の婚約者とその弟…という訳ですね」
努「そんな所だ。舞も、もう襲ってくる事は無い…とりあえず決着はついた」
辰「ふ〜ん…まぁ、これからは普通のレイヴンとして接していけるんだな」
春「そう…ですね。でも、前に辰也さんを殺めかけた人物…ワタクシとしてはどうも…」
 あの時の事を今知らされた春歌はどうもふに落ちないらしいが…
努「あの時のレニッシュは別人だ…強化人間としての人格が完全に精神を支配していた
  だけだから…もう、元の人格に戻っているはずだから大丈夫だぞ」
 それをすかさず努がフォローする…
辰「…強化人間の別の人格?なんだ、それ?」
 どうやら努はさっきの話の中に強化人間については語っていなかったらしい。
努「話すと長くなるからまた今度…それよりほれ、あそこが俺のガレージだ」
春「…では、また今度ゆっくり聞かせてもらいますね…」
努「あぁ…わかってる…さてと、こちらヴァルキリーフェイバーだ。扉を開けてくれ」
 努が通信を入れるとガレージの扉が開く
 こうして努達はガレージ内に入っていった
 
 努のガレージ内ではもうすでにオペレーターコンビと鈴凛が待っており
 努達の到着と同時に咲耶の操る万能トレーラーにみんなが乗りこんで出発した
 
 ゲームセンターで…
努「おまたせ!雛子ちゃ――!」
雛「あう〜…努さ〜ん…」
 努が入ってくると同時に雛子が飛びついてくる
努「あ〜、まずは落ち着いて…で、何が起こったか話してくれないか?」
雛「はい…今は守さんと千影姉ちゃんがなだめてるけど…」
 雛子がこうなった経緯を話し始める
 
 数時間前…裕紀と義大が会った場所がゲームセンターだった事が始まりだった
 ゲームセンターのとある場所で…
裕「さてと、千影はトイレか…って、あれっ?よ…義大…?」
 ゲーセン内をふらふら歩いていた裕紀が見なれた顔を見つけて驚く
義「ん?あっ、裕紀じゃないか…どうしてゲームセンターに…」
裕「どうしてって…お前こそどうして?」
義「へ?自分は…ま、守ちゃんが最後にここに来たいたいって言ったから…」
 少し言いにくそうに義大が答える
裕「なんだ、またデートか…よくやるね〜」
義「なっ!デ、デート…だなんて…」
 まぁ、いつもの反応だ
裕「はいはい、ごちそうさま…相変わらずお熱い事で…」
 少し呆れたように裕紀が言う
義「なっ、じゃあお前はどうなんだ?」
裕「へっ!?おれは…なんだ、その…」
 今度は裕紀が言いすくめられる番だ
ちか「裕紀…待たせたね」
 そこにちょうどいいタイミングで千影が裕紀達の所に現れる
裕「ち、千影!いや、全然待ってないから」
義「…なんだよ、お前もか…まっ、この際だから何にも言わないけど…」
ちか「やぁ、義大…やはり来ていたのか」
義「あれ?なんで知って…あ、まさか」
守「義大さ〜ん!さっきトイレで千影さん見…あ、千影さんに裕紀さん、こんばんは〜」
 守も義大達に合流する…とりあえず、ある意味いつものメンバーだ
裕「せっかく会ったんだし、場所も場所だから…パーッと遊ばないか?」
ちか「うん、それはいい考えだ…私は賛成だよ…」
義「ふ〜ん、裕紀にしてはいい考えだな」
守「うん!ボクも賛成♪」
裕「じゃあ、まずは…」
 
雛「こんな感じで遊び始めたらしいんだけど…」
 ここでいったん回想ストップ
努「ふむ、ここまでは何にも無いようだな」
辰「あれ?雛子ちゃんはその場にいたわけじゃないのか?」
雛「うん…あたしはたまたまシュミュレータしに来ただけだったの」
鞠「そこに物凄い音がして見てみたら」
咲「自分の兄貴とその親友がいた…てわけね」
 あの時の…通信が入ったときの状況を思い出しながら鞠絵と咲耶がそう言う
雛「はい…」
努「まぁいいや。じゃあ続けてくれ」
守「あ〜、ここからはボクと」
ちか「わたしが説明しよう」
辰「あれ?あの二人を放っておいていいのか?」
守「義大さんと裕紀さんには先に帰ってもらったから大丈夫だよ」
努「それなら頼む」

 再び回想スタート
裕「まずは…あのシューティングで勝負でもすっか」
義「なんでも協力プレイもできるらしいが…」
裕「そんなんじゃつまんねぇだろ?やっぱこうゆうは勝負するのが一番だよな♪」
ちか「義大…付き合ってやってくれ…私はどうもこうゆう類のものは苦手で…」
 じゃあなんで来たんだと言うツッコミはおいといて…
 基本的にAC以外には興味を示していなかったため千影はこうゆう類の物が苦手だった
守「ん〜…じゃあ、千影さんはボクとシュミュレータ…はありきたりだから
  あっちのレースゲームでもしよう♪」
ちか「えっ、だ、だからこうゆうのは苦手で…他のなら」
 珍しく動揺する千影をズルズルと引きずりながら守は反対側に向かっていった
裕「…じゃ、千影は守ちゃんに任せて、こっちはこっちでやるか」
義「あ…あぁ、でも本当にいいのか?」
裕「いいに決まってるじゃん♪それより手加減は無用だぜ」
 いつも以上にハイテンションな裕紀
義「…わかった。それよりも、後で怒るなよ」
裕「ACとゲームの違いを思い知らせてやるよ!」
 この裕紀の自信がこの後起こる惨劇に始まりだった…

 そして数分後…
裕「あっ!ち、ちっくしょぉぉぉ!」
 そのゲームは銃の形をしたコントローラーを操って目標を撃ちぬくシンプルなゲームだ
 そのシンプルさゆえに腕の差がはっきりとしてくる
義「ふぅ、これで自分の4連勝…もうやめとくか?」
 裕紀の間違いはもともとスナイパーである義大に勝負を挑んだ事
裕「なっ!このまま負けつづけておれの気がおさまると思うのか!?」
 そして自分もガンナーであるがゆえ出てくるプライドが引く事を拒んでいた
義「ん、わかった…」
 そう言って再び義大は構える
裕「いい気になっていられるのも今の内…」
 裕紀が気合を入れなおしていると…
守「千影さ〜ん!今度はこっちのゲームしましょ〜♪」
ちか「ま…まだやるのかい…」
 妙に楽しそうな守と妙にげんなりとした千影が裕紀達の方に向かってきた
 
守「それから…」
努「はい。…この後何が起きたか大体わかった…」
 そこまで聞いて努は回想を強制的にストップさせた
ちか「やっぱり…わかるかい」
辰「どーせその後、裕紀のやつは義大にコテンパンにのされた所を」
鞠「千影さんに見られて逆上して義大さんに殴りかかったんでしょう?」
春「まさにお約束のパターンですね」
 全員が全員、気がついていることだ
咲「う〜ん…千影さんにやられた所を見られただけで怒るなんて…」
雛「兄貴ってば、よっぽど千影姉ちゃんにお熱なんだね」
 と、そこに咲耶と雛子のダブルパンチ
ちか「えっ…!そ、それは…」
 それを聞いた千影は顔を真っ赤にして珍しく照れ始める
鈴「はいはい、からかっちゃだめだろ?」
 とりあえず鈴凛が話しを区切る
守「それで…その…義大さんと裕紀さんを仲直りさせたいんです」
 自分が千影を連れてきた事が原因だと思っている守は今回の事に責任を感じていた
努「そう来ると思った。聞いてる間に大体頭の中で計画、まとめといたよ」
守「へっ?ほ、ホントですか!?」
努「あぁ、それには…咲耶、鞠絵さん、雛子ちゃんの協力が必要なんだが…いいか?」
鈴「その3人で何をする気なんだ、努?」
 妙な組み合わせの3人に思わず鈴凛が聞き返す
努「咲耶に雛子ちゃんはシュミュレータに乗った事あるな?」
咲「へ?何言ってるのよ、兄さん」
雛「乗った事はあるけど…」
努「二人とも…実戦、体験してみたいと思わないか?」
咲・雛「「はい!?」」
 なかなか意表を突く発言に二人は言葉がそれ以上出てこない
鞠「ど、どうゆうことですか?」
 珍しく鞠絵も辰也以外の事で驚きが顔全体に表れている
 
 義大の家で…
義「いつつ…裕紀のやつ、珍しく本気で怒ってたからなぁ」
 ゲームセンターでつけられたと思われるあざをなでながら義大はそうぼやいている
義「やっぱ千影の前で…あれ言ったのはやばかったか…」
 義大が裕紀の逆鱗にふれた言葉とは…
 
義「お前はちゃんと狙って撃てよ…マシンガンとこれとは違う事を考えてだな…」
 ここまで言った時点で千影が苦笑したから裕紀は顔を真っ赤にして義大に殴りかかった
 
義「はぁ…しかたない、今度会ったらあやまって…ん?メールが1つ来ているな。
  えっと…!ひ、裕紀から?」
 とりあえずメールで呼び出そうとして部屋の隅にあるパソコンを開いて見ると
 裕紀からメールが届いていた
義「まさか…な。あいつと考えが同じわけないし…まぁいいや、内容チェ…!!!」
 裕紀のメールを開いて見るとそこに書かれていた文章に義大は目を疑う
 その内容は…

送信者 石原 裕紀
 よぉ、義大…今日の報復にお前のた・い・せ・つ・な奴を依頼と言って呼び出して
 今、ちょうどいたぶってる最中だ。早く来ないとホントに死んじまうぜ?
 それでもいいなら…
 
義「場所は……か。あいつ…今回ばかりはもう容赦しない…引導を渡してやる!!!」
 どう見てもうそ臭い文章なのに義大は逆上し途中まで読んで家を飛び出して行った
 
 メールに書いてあった場所は一年中雪に包まれているスノーフィールドであった
義「…一応、戦闘があったようだな…地面に銃弾の跡が残っているし…」
 雪の積もる地面にハッキリと真新しい銃弾が当たった焦げがついている
義「あの輩…いったいどこにいるのだ…ん?AC反応は北に一機…って、まさか!?」
 この時、義大の脳裏によぎったのはこの短時間の間に起きた最悪の事態の事…
 それは裕紀の実力を一番知っている義大だからこそ考え付く物だった
 そして義大は鉢合わせた…今、一番会いたい相手に…
裕「義大!…てめぇ、千影をどうした!?今すぐ出せっ!!!」
義「何を言うか裕紀!…お前こそ守ちゃんをどうした!!答えろッ!!!」
 一触触発の状態で2機のACが向かい合っている
裕「どうしても言わないと言うのか…義大、ならば」
義「そっちこそ…決着をつけるぞ!裕紀!」
 お互いがメインウェポンを構えると…
???「アッハハ♪ばっかみたいな感じ」
 甲高い女性の笑い声が二人の注意を引いた
裕「――!!!くぅ…だ、誰だぁ!」
 裕紀が耳を押さえながらいきなり乱入してきた女性に問いただす
???「「「フフッ…わたし達は…」」」
 義大の背後から雪に紛れ3機のACが姿を表した
義「なッ…3機もいただと!?」
                        弟9.5話(後編)に続く…
作者:キョウスケさん