サイドストーリー

EPISODE 6  〜双角の鬼神〜
ファン、ファン、ファン・・・・
ある日の夜、とある地下高速道路の内部で、サイレンの音がけたたましく鳴り響く。
「スパイが逃げたぞー!!」
「チクショー、あの男は我がクレストの兵器開発の情報を完全に盗聴していたのか?何て凶悪な!!」
クレスト社の警護部隊が車両にのって追跡している。
その先を逃げているのが、1機の赤いMT「フィーンドーNB」だった。
「くそ! ついにバレたか!!」
MTは叫ぶ。
じつは、クレスト社の内部で、クレストの兵器開発情報を盗み取っていたスパイが1人いたのだ。
そしてとうとう気づかれて、追い詰められそうになったスパイはMTを奪って逃走した。そのMTに乗っているのが、このスパイなのだ。

「こちらの準備は出来てるわよっ!! いつでも来なさい!!」
このとき、高速道路の中を2?ほど進んだ所で、一体の2脚ACが仁王立ちして、怒鳴っていた。どうやらパイロットは女らしい。
そう、このレイヴンの名は「ツインヘッドB」。ACの名は「パトリオット」。
アリーナでは弟の「ツインヘッドW」とともに数々の強敵を倒してきたところで、勇猛果敢なことから「双角の鬼神」と呼ばれていた。
このツインヘッド姉弟は、クレストの依頼を受けて、スパイのMTを破壊するようにと指示をされている。
「いつでもこいはいいんですけどね、ツインヘッドBさん・・・・」
後ろにいるクレストの2体の警護部隊のMTが、溜息をつく。
「溜息をついてる場合じゃ無いでしょ! 前を見なさい!」
ツインヘッドBに促され、「え?」と、MTが前を見る。
その時、逃亡者のMTが凄いスピードでこっちのほうへ逃げてきた。後ろにいる車両も逃亡者を追ってきている。
「止まれ!! 危険走行をやめて止まるんだ!! 止まらないと発砲するぞ!!」
ツインヘッドBと2体の警護部隊のMTが合わせて叫び、武器を構える。
「うわっ!!」
逃亡者は驚いて、足を止めようとした。だが止めるわけにもいかない。
「オープンファイア!!!」
ツインヘッドBが叫び、パルスライフルを逃亡者めがけて発砲しまくった。後ろの2体の警護部隊のMTもガトリングガンを連射する。
「くそ!!」
逃亡者のMTは避けきれない。そして火を体中に噴かせた。
「やったか!?」
ツインヘッドBはパルスライフルを降ろした。
「や・・・役目は・・・・果た・・・せた・・・」
逃亡者のMTは爆発した。だが、これは・・・・
その時、通信が入った。
「本部から通信が入りました。そのMTは偽者です!! 本物は、先を進んでいます!
」
「なんですって!?」
ツインヘッドBは驚いた。勿論、警護部隊のMTたちもだ。
予定通り引っ掛かってくれた。計画通りだ!」
と、逃亡者の仲間のMTと戦闘メカが後ろに現れた。
「!! 二人とも、後ろだ!!」
ツインヘッドBが叫ぶ。警護部隊のMTも振り返る。
「くそっ!!」
1体のACと2体の警護部隊のMTは銃撃戦を繰り広げた。
「姉さん、ここから先は、僕に任せてくれ」
通信が入った。弟の「ツインヘッドW」からだ。
「・・・・・頼んだわよ」
ツインヘッドBは、静かな声で言った。

「何とか振り切れたか・・・」
本物の逃亡者のMTは、別の通路から通って先を進んでいた。
「さてと・・・」
MTは先に進む。すると、レーダーにACの反応が現れた。
「・・・・・!? ACだと!? もう1機いたのか!!」
MTは引き返すわけにもいかない。猛スピードで先へ進む。
すると、先に1機の白い4脚型ACが現れた。あれは、ツインヘッドBの弟、ツインヘッドWの乗る「スクリ−ミングアニマル」だ。
「くそ!! クレストめ、策を二重に張っていたのか!!」
MTはACの反対側の方向へ寄ろうとした。だが、遅かった。
「おっと!」
ツインヘッドWは逃亡者のMTを軽々と鷲掴みにした。
「つかまえた」
ツインヘッドWはクレストに通信を送る。
「さすが」
クレストのオペレーターは感心した声を送る。
「捻り潰してやる!」
ツインヘッドWは右手に力を入れた。
バキバキバキッ・・・ピシピシピシッ!!
「ぐぁ・・・・・ぁぁぁ・・・・ぁ・ぁ・ぁ・・・・!!!」
逃亡者は断末魔の声を上げた。そして、MTごと握りつぶされ、爆発を起こした。
「こちらツインヘッドW。逃亡者のMTの破壊に成功した」
ツインヘッドWはクレストに通信を送る。


その後。
任務を終えたツインヘッド姉弟は、グローバルコ−テックスのACガレージ内部で、クレストからの報告を受けていた。
「弟よ、喜べ! スパイを撃破できたからクレストが特別報酬をくれるって!」
「えっ、あのクレストが!?」
「仕事も成功したし、報酬もガッポリ。いい事って重なるものだな」
「幸運の女神様に感謝しなくてはね」
たまにこの「双角の鬼神」に、幸運が舞い降りる事もある。
勿論長続きはしないのだが・・・・。



武田です。
今回はツインヘッド姉弟を主役に「逃亡者追撃」をもとに書かせて頂きました。
本当は「逃亡者追撃」は機動力のあるACで行った方がよっぽど楽だと思いましたが・・・・・。
さて、次回は「モノレール防衛」をもとに話を作ります。
宜しくお願いします。
作者:武田 慎さん