サイドストーリー

EPISODE 11  〜案山子散る〜
“黒い死神”エグザイル――――。
数々のレイヴンと渡り合い、
そして葬ってきた、
そしてエースよりも強い最強のレイヴン――――――――。
そのエグザイルが、今、自分達の前にいる・・・。
全員に冷や汗が流れた、その途端――――――。

「お前か!!」
と、何者かが沈黙を破って前に出た。
「!?」
と、ゲドたちが一斉に声のした方を向いた。
「こんな物を俺に投げ付けてきた奴はぁぁぁ〜〜〜〜っ・・・・」
スケアクロウだった。どうやら怒気で語調が変わっていて、エグザイルにエネルギーライフルの銃口を向けている。
左腕にパワードスーツ隊を握りしめていて、パワードスーツ隊は
「く、く、苦し〜〜〜〜」「お、お、降ろして」と、もがいている。
「ほう・・・・お前が“黒い案山子”か。やっと会えたな」
エグザイルは残忍な表情で口元を歪ませて笑いながら、言葉を投げる。
「誰だ、お前・・・」
スケアクロウが沈んだ声で言うと、
「・・・・・エグザイルだ。“黒い死神”エグザイル」
エグザイルは告げる。
「エグザイル・・・・死神・・・・流浪の死神・・・か」
スケアクロウが言った途端、いきなりエグザイルが突撃してきた。
「!!」
スケアクロウはエグザイルに左腕に握りしめていたパワードスーツ隊をぶつける。
その前にエグザイルはマシンガンのトリガーを引き、パワードスーツ隊を粉々にした。
どこだとばかりに辺りを見回すと、上から突然スケアクロウがブレードを突き立ててきた。
エグザイルはそれを軽々と躱し、
「いくら攻撃力が高かろうが!! そんな動きではな!?」
エグザイルは高出力のブレード「MLBーMOONLIGHT」をブラックエビルの右腕に突き刺した。
バチバチバチバチ、ボボボボボッ!! ドカァァァァァァァン!!
ブラックエビルの右腕が爆発した。そしてブレード「KLBーTLS/SOL」が無傷のまま、地面に落ちた。
「何ッ・・・・!?」
スケアクロウは驚く。だが驚いている暇もない。その途端エグザイルがつかみかかって、
ブラックエビルを跳ね飛ばした。
「ぐわっ!!」
ブラックエビルは壁に激突。そのまま崩れかかった。
「くっ、速すぎる! お前、まさか『強化人間』か!?」
スケアクロウは問うが、
「差別的な物言いだな」
と、エグザイルはマシンガンのトリガーを引いた。
ドドドドドドドドドドドドド!!
ガーン、ガーン!! 
「がっ・・・・!!」
スケアクロウはマシンガンの銃弾を連続で浴びる。その途端に強烈なショックを受けて、
頭が突然ガーン、ガーンとなり、視界にザーーーーーッと、砂嵐が吹き荒れる。
「よせ!!」
突然、ゲドがエグザイルに食って掛かる。
「無駄だと言うんだ」
エグザイルは突然MOONLIGHTを振り返りざまに、ゲドに向かって振るう。
その途端、青白い光波がゲドの胴体を袈裟がけに斬り捨てていく。
「ぐわ・・・・・ぁぁ・・・・ぁ・・・」
ゲドの断末魔の声が響く。そしてゲルニカは大爆発を起こした。
「くっ、化け物め!」
フラジャイルはたじろぐ。その途端、エグザイルの後ろで何かが立ち上がった。
「!!」
エグザイルは振り返った途端にその何かに叩き付けられた。その何かとはスケアクロウのブラックエビルだった。
「逃げろ! フラジャイル!!」
スケアクロウが叫ぶ。
「しかし・・・・」
フラジャイルも叫ぶが、
「早く行け!! こいつは俺に任せろ!! 早く!!」
もう一度にスケアクロウは叫ぶ。
フラジャイルは両腕でコールハートのザ・サンとギボン2体を抱え込み、そのまま出口へ走る。
そして、ゲートへ向かうが、カチカチッ、と、エラーの音が響く。
「くそおッ、ゲートが開かねえ!」
フラジャイルは奮闘する。

「スケアクロウ! まだ生きていたのか!!」
エグザイルはブレードをコアに突き立てた。だがスケアクロウがブレードをエネルギーライフルの銃口で弾き返す。
「そんなもの!!」
スケアクロウはトリガーを引いた。そして、パシュッ、と、紫の光が炸裂した。
だがエグザイルのいる方向を僅かに掠っただけだった。
「もういい、これで終わりだ!! 死ね!!」
エグザイルはブレードをもう一度コアに突き立てた。そして、高出力のブレードをスケアクロウのコアに突き刺す。
「ぐぁ・・・あぁぁぁぁ・・・・ぁ・・・・ぁ・・・ぁぁ・・・」
スケアクロウは断末魔の声を挙げつつ、だんだん光に飲まれていく。そして、蒸発した。

ドゴォォォォォォォン!!
大爆発が起こった。スケアクロウのブラックエビルが大破した音だ。
ゲートが開かずにロック解除に奮闘していたフラジャイルも、ハッとして振り返る。
その途端、ゲートが開いた。すると、アップルボーイのエスペランザ、レジーナのエキドナがそこに立っていた。
どうやらスケアクロウの救援に駆け付けてきたらしい。
「スケアクロウさんは!?」
「今の大爆発、何かあったんですか!?」
「何をしているんだ君達は!? 早く逃げろ!!」
3人がもめあっていると、その途端、ガチッ、バチッ、ガチャガチャガチャッ、と、音が響いた。
3人が振り返ると、エグザイルが残骸と化したブラックエビルの右腕武器「MWGーXCW/90」、
肩武器「CWCーGNLー15」「CWMーS60/12」の3つをもぎ取った。
「戦利品として、これらは貰ってゆくぞ。ブレードは使えぬから、残しておく」
エグザイルは笑いながら言う。まるで死者に鞭打つかのように戦利品を漁る、非情な男のように見えた。
「何やって・・・・・!」
レジーナが前に出てきて叫ぶが、その光景に目を手で覆った。
そこにはエグザイルのアフターペインだけが佇んでいて、黒い煙りをあげる二つのACの残骸が残っている。
「こいつらの腕はなかなか良い物だった。楽しいゲームの相手だったぞ」
エグザイルは言いながら2つのパーツを背中のジョイントにつけて、1つのパーツを左腕におさめる。
「ついでにだ、これも貰っていこう」
と、死者から金品を剥がし取るように、もう1つの機体の肩武装「CWMーS60ー10」までもをもぎ取ると、
壊された穴の奥から外へとび去っていった。

そこで、愕然としている3体のAC、3体のMTを残して。
作者:武田 慎さん