サイドストーリー

MISSION4

「……さあ答えなさいスケアクロウ、あたしのお姉さまをどこに隠したの!?」
「誰がかかしだ、コラ」
 シズナ専属のガレージ内にて、今日もキャロットの声が響く。



 MISSION4:SHORT REST(小休止)



「だから、朝っぱらに『ちょいと野暮用』とか言って出て行ったっつってんだろ」
 マイクはライフルを磨いていた。テントほどもある白い布を手に、ACがライフルの汚れを懸命に落とそうとしている光景はそれなりにシュールではある。
「いーえそんなはずは無いわ!」
「……何か約束でもしてたのかよ?」
「そんな物は不用!何故ならあたしとお姉さまは心の絆で繋がったソゥルフルな関係なのよっ!」
 思うに、キャロは何か人として大事なタガが外れているような……まさかシズナは自分にキャロを押し付けたかったのかという考えが、マイクの脳裏に巡った。
「と、ゆー訳でそろそろあなたの妄想は抜きにして本当の事を話しなさい!」
 人の話を聞かない女の相手というのは疲れる。死後何年だか忘れたが、今になってようやく悟った。
「知らねっつってんだろ」
「あくまでシラをきるつもりね、このスケアクロウ」
 さっきからスケアクロウと連呼するのは、アセンがテトラとよく似ているACアドヴェントに乗っているレイヴン、スケアヘッドと引っ掛けているのだろうが……あまり『かかし』と連呼されていい気はしない。
「だあ、しつけえぞテメエは!」
 マイクはがちゃりと、手にしたライフルの銃口をキャロに向けた。子供ほどの頭もある銃口を向けられては普通ならば怯えも入るだろうに、キャロはただきょとんとした目を向ける。
「あれ?ライフル替えた?」
 これはこれで大物なのかもしれない……。確かに今、テトラが持っているのはいつものARF−120ではなくRF−160であった。脇にどけてある左腕用のライフルもARFL150ではなくRFL/150になっている。
「……まあな。ちと考えさせられる事があったんで色々試してみようと思ったんだ」
 マイクは少し鼻白み、手のライフルをかざしてみせた。元々がアサルトライフルにそこまでこだわりを持っていた訳でもない。かつて使っていた銃は六連式のリボルバーだったが、ACにリボルバーは無かったから何となく使っていただけだ。
「新人なのに新しいライフルなんて生意気ね。安い方とはいえ」
「……借り物だよ。悪かったな」
 というより、テトラの構成パーツは全てシズナの所有物なのだ。アリーナでは独立しているが、未だテトラはシズナの保有AC扱いとなっている。
 つまりマイクは周囲からはヒモ男として見られているが、それはさておき。
「お姉さまが?ライフルなんて持ってたんだ」
「……というか、一部の重いやつ除きゃあ武装パーツほとんど揃えてやがる。ほこり被ってるけどな」
 二人して意外な声。シズナはいつも同じ武器しか使わないというイメージがあったのだ。実際、二人が知り合ってからはその通りである。
「んじゃ、今度あたしもおねだりしてみよっかな」
「貸してはくれるだろうが、壊したりすると五月蝿いぞ、あいつ」
 普通レイヴンは物の貸し借りは行わない。もとい、それほど信頼できるだけの相手を持つ事が稀なのだ。
 地獄の沙汰も金次第、が基本の乾いた世界である。当のシズナだって、マイクが来るまでは一人で行動してきた。
「んで!お姉さまはどこ!?」
「知らんっちゅーとろーが!」
 振り出しに戻る。



 意識が覚醒した時に映るのは、いつも自分自身の顔。
 このような変な目覚め方をするのは自分くらいだろう。Xはそんな事を思いつつ身を起こした。
 幼い頃に視力を失った――原因は栄養失調か脳の血管が一部詰まって壊死したか神経が切れたか、幼少の頃の事なので記憶がはっきりしないが――彼にとっては、あの玩具のようなバイザーがまさに『目』である。あれのスイッチを切れば、自分の視界は闇に染まってしまう。
 当然、できれば四六時中身につけておくのが望ましい。しかしXとしても、寝ている時くらいはこのようにぶっとく重い物は外したい。
 そこでバイザーを作った技師に頼み、ナノマシンによる遠隔リンクを活かし意識が覚醒すれば電源が入るようにしてもらった。そして寝る前に、ベッドの側のテーブルの上に自分が見えるように置く。
 だからして、起きてまず視界に映るのは自分の横顔なのだ。
 そういえば盲目の人間は、四六時中何か物が顔に当たるかもしれない恐怖に苛まれるので顔が引きつり、その状態が常になり顔が歪んでしまうという話を聞いた事がある。その説自体が迷信なのかXが早い内に視力を戻したからかは知らないが、幸運にもそれなりに顔は整っている方だと思う。ただ、盲目なだけに目の焦点が合っていないため気の抜けた顔に見えるのはどうしようもないだろう。
「……もうこんな時間か」
 バイザーを装着し、ベッドの側に置いた時計を見てうめく。朝方に何か用事が無ければいつまでも寝てしまうのは悪癖だった。目覚ましを使わないとまず早起きはしない。
 外が眩しい。長く慣れ親しんできた人工の光がカーテン越しに差しこんでくる。明るさだけならば本物の日光と大差無い。はずだ。
 彼の所属している組織の様々な都合から、ペルソナの運用はレイヤードよりも地上の方が増えてきた。しかし整備や指揮その他施設はレイヤードのまま。お陰で出撃の度に、レイヤードと地上を行き来する必要がある。
 Xがペルソナを壊す事は滅多に無いが、関節系の負担が大きいため、連戦はできるだけ避けねばならなかった。兵器というのは消耗品なのだ。頑丈なようでいて脆い。
(今日は検診があったな……身支度を整えるか。エリの奴は待たせると五月蝿い)
 ぼんやりと昼からの予定を思い起こす。ACだけではなく自分にも点検が必要だというのは笑えるかもしれない。
 高カロリーのゼリー食品をずるずるとすすりつつ、Xは寝グセを直すべく鏡の前へとのそのそ歩いていった。



 世の中に美男美女しかいないのかと言われると、当然そんな訳は無い。
 例えば視線を巡らせていれば、千差万別。体型だけで大雑把に言っても高い者低い者、細い者もいれば太い者もいる。
 まあレイヴンに限って言えば、様々な意味で体力がいる職業なのでデブは少ないらしいという説はある。が、ついこの間『苦労太り』と言い張るレイヴンに会った。それが本当かどうかはさておき、ストレスが溜まると無駄食いして太るという人種だっているだろう。
 などという事を考えつつ、アリーナの控え室にてレイヴン『キャロット』は長椅子に座り、ポップコーンを貪り食っていた。今回は自分の試合は無いため、むしろキャロナイナ・コーストとして、かもしれないがレイヴンでなくばこの部屋には入れない。
 それに――先ほどの話に一つ付け加えるならば、自分やシズナのような、何故レイヴンなのか疑問に思われる者、つまり場違いに見える者もいる。シズナの場合はすでにキナ臭い気のようなものが染み付いているため、修羅場を生き延びてきたと言われてもどこか説得力を感じさせるが――
(そこがいいのよねえ……でも)
 今日はシズナと二人で観戦しようなどと思っていたのに。いたのは幽霊付きのAC一体。興味があるない以前に選択肢として問題外だ。
(ああもう、腹が立つぅっ!)
「いよう嬢ちゃん、今日は愛しのオネーサマは一緒じゃないのかい?」
 ポップコーンを食べる勢いを増した途端に、横から軽薄な声をかけた相手にキャロは精一杯殺気を篭めた視線を送る。
 『あらら、ビンゴなのね』などとさして困ったようにも見えない口調で現われたのは、この間に一度だけ会ったレイヴン『ガンスレイヴ』――スレイであった。もっとも、キャロはほとんど印象に残っていないのだが。試合前なのか後なのか知らないが、またしても耐G性のパイロットスーツを着こんでいる。
 そのままスレイはどっこいしょ、とか言いつつ勝手にキャロの隣りに座りこむと、やはり勝手に人のポップコーンを食べ始めた。
「で、嬢ちゃん。折角観戦に来たんだ、勉強していきなよ」
「勉強って、何の?」
 分からないというよりも単にスレイが気に入らないので、考えずに返答する。そんなキャロの口振りに苦笑しつつ、スレイはとりあえず答えてやった。
「何って戦術さ。レイヴンって変わり者の集団だから戦闘スタイルはかなり細かく分かれるけど、こんだけ数が多いんだ。似たような戦い方をする奴とか一人はいるだろう。そんな奴のは参考になるよ?そうでなくても、結構色々と学ぶ事は多いんだ。アリーナにいるのが任務先で敵だったりする時もあるし。まさかこの控え室にいる奴が皆、暇潰しに来てるとでも思った?」
 このスレイという男、案外言う事はいつもマトモである。軽そうなのに。キャロは意外そうな顔をすると、どうやらそれが通じたらしい。
「……俺そんなバカに見えるかなー……ま、今日はあんまり大物はいないけどさあ。ついこないだはイヴァ・ラピスがやったから大入りだったよ。相手は……そんな強かなかったけど」
「ふうん」
 つまならそうな声。キャロにとってはシズナ以外のレイヴンにはさしたる興味も無いのだろう。特に『最強の女レイヴン』と呼ばれている彼女の存在は面白く無いのかもしれない。
「彼女は参考に――なるっちゃなるし、ならないっちゃならない。なんていうか理想的なんだよ。普通は頭で分かっていてもそう上手く動かせないもんだけどさ。経験あるだろ?納得できるけど実践は無理っての。第一が嬢ちゃんの戦闘スタイルとはかけ離れてるしなあ……嬢ちゃんに近いのは――」
 キャロのスタイル。近距離ではバズーカ乱射しつつ果敢に月光の突き。ミドルレンジではミサイルに投擲砲の乱射。あとOBも結構よく使う……スレイは困った。似たような奴いない。そもそもアリーナにいるタンク脚使いの大半が、何故か武器腕使いなのだ。
「……まあ三年前はもっとすごいのがいたさ、軽量ニ脚は。その頃の俺はレイヴンとして駆け出しだったから思い出に拍車がかかってるのかもしれないけど」
 返事が思いつかず、スレイは強引に話を一つ前へと戻した。
「もっとすごいって……何が?腕?」
「いや腕の話じゃなくて、与える印象が違うんだ。ありゃ理想っていうか――夢だな。悪い夢だった」
 実際に嫌な思い出を振り返るような苦い顔で、しかしどこか熱っぽくスレイは続けた。
「縦横無尽に暴れ回っては、あらゆる敵を根こそぎ倒す。戦い方は型破りで真似するのは自殺行為。当時アリーナで死神って言っちゃあ、奴の事を指したんだ。あっちはイヴァ・ラピスと違って愛想悪かったしなー、周りは気にしないが来るなら潰す、って感じだった。実際そうしたし。最後はアンチ派の大部隊相手に壮絶な討ち死にしたって噂だ」
「……死んだの?死神なのに」
「当たり前だろ?盛者必衰。レイヴンって格好つけてもただの人間なんだし、ACって人殺しの道具で撃ち合うんだ。いつ死んだって不思議じゃない」
 妙なところが引っかかったらしく、首を傾げるキャロに律儀に答えてやるとスレイはどっこらしょ、と長椅子から立ち上がった。
「さーて、そろそろ準備の時間だ。後で試合あるから応援してくれると嬉しいなあっと……ポップコーンご馳走さーん」
 ひらひらと手を振るスレイに言われ、キャロは手元を見る。ポップコーンが入っていた紙袋はいつの間にか空になっていた。
「……試合前にポップコーンなんて食べてるんじゃないわよ……!」
 結局言われ放題食い放題、スレイの一人勝ちだ。今頃になって思い出した最初の苛立ちもプラスされ、キャロはこのこみ上げる怒りを何にぶつけるべきかで頭を悩ませるのであった。



「お久しぶりですね……いえ、改めて初めましてを言うべきでしょうかね?」
「ご自由にどうぞ」
「……相変わらずですね、あなたは」
「それはお互いさまです、レイヴン」
 とある喫茶店。一人の女性と向かい合っていたシズナは、大仰に嘆息してみせた。今日は珍しく紺のスーツにタイトスカートを着込み、足元はハイヒール。まだ洒落っ気が足らない感があるが、いつもよりは女らしい格好である。
 普段はストレートロングのままの金髪も結い上げ、金色の瞳を隠すようにサングラスをかける。変装と呼べるほど高尚なものではないが、この程度の小手先技術でも通りすがりの注目を逸らす程度にはなってくれる。
「でーすーかーらー、レインさん?もう私はあなたと組んでいないんですから、そのレイヴンっていうのはどうにかならないんですか」
 相手の女性の名はレイン・マイヤーズ――かつては共に仕事をした仲だった。そしてその頃から、シズナは常に彼女から『レイヴン』と呼ばれていた。
 余談だが、グローバルコーテックス社の女性社員は原則として制服着用となっているらしいが、私用だからかレインも私服であろうベージュのスーツ姿だ。
「失礼、癖ですので」
「あんまり街中でレイヴンレイヴン連呼しないで下さいよ?」
「善処しましょう」
 あまり悪びれた様子もなく、コーヒーの入ったカップに口をつける。一口飲みカップを置くと、レインは変わらず感情を篭めぬ声で言った。
「それにしても、コーテックスのオペレーターに直接コンタクトを試みたレイヴンなど私は聞いた事がありませんよ」
「そうですね。私も無いです。……でもまあ少々気になる事がありまして、あなたなら知っているかなーと」
「あなたには新しい専属オペレーターがついているはずですが?」
「こんな危なっかしい事、とてもじゃないですけど頼めませんね」
「私はいいんですか」
「もしあなたなら、言わなくても調べてますから」
 シズナも負けじと悪びれずに告げると、コーヒーを一口。やはりコーヒーはブラックに限る。
 それに、仮に彼女がまだ自分とタッグを組んでいたなら――間違い無く彼女はそうしたはずだ。昔から気になる事はこちらが言わなくとも勝手に調べ上げ、機を見ては一方的に報告してくる。たまにかなり危なそうな話も混じるので、どうも見ていられなかった。癖といえば、これがレイン最大の悪癖だ。どうせ今も治っていないだろう。
「単刀直入に言いましょうか。正体不明のACについての情報が欲しいんです。紺色の」
「やはりその件ですか。手持ちの情報に関してはとりあえず、こちらにまとめておきました。大した量ではありませんが」
 レインは懐から小型のデータディスクを取り出す。シズナが手を伸ばすと、あっさりと手渡した。
「が、それだけの用ならばメールでも充分でしょう。本題は何ですか?」
「今度会ったら御飯奢るって言ったじゃないですか。忘れました?」
「……『馳走する』というからにはランチかディナーを想像していましたが」
 ウエイターが持ってきたチーズケーキに嬉々としてフォークを伸ばすシズナだが、レインの言葉に固まった。
「冗談ですよ。どうせなら直接色々と聞いてみようかと思いましてね、その機体の事とかあれこれ」
「問題の機体ですか。コーテックスがその存在を確認したのは半年前――ですが実際には、それよりさらに前から活動していたと見られています。確認当初は『スカル』と呼称されていたこの機体には依然として不明な点が多いですが、機体名は『ペルソナ』……パイロットは『X』、と登録されているようです」
「詳しいじゃないですか。登録って、どこに登録されているので?」
 レインの口振りから、ペルソナという呼称はコーテックス社の方で仮に設定したものではないらしい事にシズナは眉をひそめた。
「闇アリーナについては?」
「……ああ、なるほど」
 アリーナでは勝敗に『AP制』を採用しており、武器もいくらか出力を制限している。あくまで娯楽的な側面が多いためだ。
 ところがそのような規制があっては楽しめないという過激な者達も存在し、そして作り上げたのが実戦そのままの試合を行わせる場であった。最早ただの殺し合いを演じさせるそこは、通称闇アリーナと呼ばれている。
 敗者はやはり死亡してしまう事も多く非公式でのACの運用はコーテックスとしても見過ごす訳にはいかず、と諸々の事情から闇アリーナの活動はそう活発ではない。とはいえ試合にはレイヴンを雇ったりする事もあるらしく(レイヴンからしてみればそれも一つの任務に過ぎない)、コーテックスとしては悩みの種の一つである。
「三ヶ月ほど前から、そちらで何度か試合を行ったそうです。結果は全て圧勝に終わっています。中にはあなたが乗っているのではないかと噂も立ちましたが、パイロットは男らしいと分かりその噂は霧消したという小話もありますが」
 Xや昔の自分うんぬんよりも、シズナはその闇アリーナとやらについてやけに詳しいのが気にかかった。コーテックスがそれだけ力を入れているのか、はたまたレインの独力か。後者だと言われても納得できてしまうのがレイン・マイヤーズという女性の怖い所だ。
「私が持っている情報はこの程度のものですが……実際に相手をしたあなたからの見解はどうですか?」
「どうと言われましても……まず腕のサムライの出力は軽く五割は上がってますね。ブリューナクのダガーをあっさり止めてましたし。バックブースターの噴射口を増設して多目的ブースターに仕立ててますし、まさにブレード戦のみを念頭に置いた機体に仕上がっています。接近戦では舌を巻くしかありませんでした――その代わりに装甲は紙ですがね。まさかあんな命知らずがいるとは」
「無茶はあなたの専売特許のはずでしたが」
 レインは涼しい顔で、またコーヒーを飲む。ケーキにはまだ手を付けていない。嫌いなのだろうか?
「茶化さないで下さい。……まあ、一番無茶苦茶なのはパイロットですね。ああもことごとく狙いを外すなんて、まるでこっちが弾をどこに撃つのか分かってるみたいで気味が悪いですよ。それに反応速度も滅茶苦茶ですし、その割に動きは柔らかいですし」 「成る程、私物とは思えませんね」
 無茶苦茶な反応速度に柔らかい動き。この二つが両立できる時点で、レインに強化人間の可能性を示唆するには充分だろう。
「ケーキ食べないんですか?食べないならくれません?ケーキ三つごとに割り引きなんです」
「詳しいですね」
「この店でバイトした事ありますから。参考までに裏メニューはハヤシライスです」
 レインは遠くの客を接待しているウエイトレスに目を移した。可愛げのあるフリフリ付きの服を着ている。これをシズナが?
「……なんか今、鼻でフッて笑いませんでした?」
「気のせいです、レイヴン」
 レインは残り少ないコーヒーを飲み干した。完全に冷めきって底に砂糖が溜まっており、甘かった。



 アリーナの名物の一つに、Gとアイアンマンという二人のレイヴンの試合が挙げられる。この二人の数々の好勝負はよく話題となっている。
 では他に何があるのかといえば、例えば色物レイヴン筆頭と囁かれるホスロー・ワン。試合の様子を中継するモニターの一つが彼のACアインボールを映している。近頃どうも負け越している印象があるが、彼とて仮にもBランクのランカーだ。赤の機体がグレネードを放ち、それで勝負が決まった。
 そして今、一番大きいモニターに映っているのは重量級同士の対決。犬猿の仲とされる、とある二人の戦いであった。
 一方は頭を黄、胸を紫、右腕を橙、左腕を緑、足を青に塗り分けた悪趣味な色使いのAC。脚部こそ重量二脚だが、残りは中量級だ。背にはマルチミサイルにオービット、手にはレーザーライフルに月光。特徴としては、全てのパーツがミラージュ社製である――という事か。
 もう一方はやたらとカクカクした直線的なパーツが多く、緑と茶の迷彩塗装もあってか戦車のような感のあるAC。武装は携行型リニアキャノンに大型ロケットを背負い、レーザーライフルを持っている。こちらは全てクレスト社製パーツだ。
 互いにCランクに所属している『露山』と『トレンドセッター』……近頃ではこの二機の対決もまた、一つの名物と化していた。
『今日こそ、その悪趣味極まりない機体に風穴を空けてくれる!』
 クレスト社のパーツに盲信的な執着を見せるレイヴン、『李峰』は露山にキャノンを撃たせるべく構えの体勢に入らせた。
『ハハハ、先進的って言って欲しいねー!まあロートルなクレスト社のパーツを後生大事に重宝してるようなボンクラには分からないかい!?』
 対してミラージュ社の熱狂的なシンパであるレイヴン『グルービー』は、連動ミサイルと共にオービットを射出させる。
『物は言いようだな、その子供の落書きの出来損ないが先進的だと!?』
 露山はOBで構えを強制的に解除すると真横に飛びミサイルを回避。そのまま余剰出力で滑るように移動しつつ大型ロケットを放つ。
『うわ寄らないでよ、カビ臭いじゃん!』
 間合いを詰めてくる露山に、トレンドセッターがマルチミサイルで弾幕を張る。
『やかましいわ、新し物好きの尻軽企業の犬が!』
 露山はミサイルを胸の機銃とエクステンションのアンチミサイルで迎撃しつつ飛び込む。が、EOとレーザーライフルの弾幕の前に一旦退いた。
『何で分からないかなこの機能美!』
『機能美が聞いて呆れるな、そのオービット兵器のへたれた射撃補正は何だ!?それから新型ジェネレーターといいプラズマキャノンといい拡散バズーカといい、あんな重い物何に載せる気だ!固定砲台か!?』
『重量だけでチョイスするなんて三流の証拠じゃないの!?第一クレストだって、何だい実弾EOって!?目新しい事に疎いロートル企業が変な色気出すから失敗するのさ!』
『あんな物は邪道だ!私は認めん!』
 このように、ひどく低レベルな口論が中継放送から流れてくる。普通、戦闘中にこうもやかましく喋る奴などいないのだが……この二人の場合はいつも回線をオープンにしたままで、なおかつそれも特例的に全て放送されている。
 果敢に間合いを詰める露山、するとトレンドセッターが今度は月光を構えて迎撃する。
 すると露山はここぞとばかりにさらに踏み込み、左腕のダガーを発振させた。クレスト社のパーツは当然、このようなマニアックな品まで揃えているのが彼だ。それにしてもダガーの短い刀身をうまく月光の刀身に合わせるとは中々いい腕である。無駄に使っていると言わざるを得ないが。
『ふはは見たか!これぞ王道、最先端よ!』
『そんな申し訳無さそうな長さで何ができるのさ!?』
 李峰がちゃっかりと大型ロケットの砲口を向けている事に気付いたグルービーは機体を後退させた。レーザーライフルの弾丸が露山の装甲を削るが、露山はかなりの重装甲。李峰も大して意に介した様子が無い。
 余談だがこの二人、自らが支持する企業は勿論の事、相手の企業のパーツに関する情報も相手をこき下ろすべくマメに入手しているのだ。周りのレイヴンは彼等の会話から新規パーツ購入についての参考にしているとかいないとか……
 それにしても、堅実そうに見える李峰の方が突撃を頻繁に試み一発狙いのバクチ戦法なのに対し、グルービーは冷静にミサイルとオービットの連携にライフルを絡め、近づいてくればEOと月光で迎撃。地道なれど確実な戦法を取っている。第一印象とはまるで逆である。
「まあよっぽど暇なんでしょーね、この二人」
 空の紙袋を抱えたまま、キャロはそう結論づけた。事実それは正しかった。



「さて、と……お決まりの質問なんだけど。体に違和感とか、不快感とか。何か痛みのようなものは感じる?」
 一通りXの検診――ありきたりの心音、脈拍、血液検査その他――を終えると、白衣の女性はカルテを睨みながら言った。
「いや。すこぶる快適だ」
 その答えがまるで不本意であるかのように、女性はカルテから目を離すとXの顔をまじまじと見つめてみせる。
「……お前は神経質が過ぎる、エリ」
「医者は疑り深いくらいで丁度いいのよ。特にあなたみたいに、何でも自分の中にしまいこみがちな患者が相手ならね」
 半眼でXを見つめたまま、エリ――エリシャ・マクレーン女史は言う。彼女は言わば、Xの主治医であった。御歳三十一。は、今は関係無い。
 ちなみに、本来の専門分野はナノマシン医療である。人工器具と人間の神経をナノマシン経由で直接繋ぎ、失った身体機能を補う。彼女が医療の一つの形として、この手法でXに光を取り戻したのが、そもそもXが強化人間となった一つのきっかけであった。
 エリシャ自身は医療を第一の目的として研究していたのだが、これにより一つの可能性が見出せた。かねてよりのAC界における命題の一つ、人が中に乗り操縦するが故に生じるパイロットの思考が機体に伝わるまでの一瞬のタイムラグ。それをナノマシンを媒介にしてACと操者を直接繋いでしまう事で、強引に解決してしまうのだ。ただし、今現在までに開発されたナノマシンには相性があるらしく、誰でもよい訳ではないらしい。
 最も、この技術が確立するまでは頭蓋骨に穴を空け妙なジャックを取り付け、ケーブルでACと脳を直接繋いでいたそうだから、その意味ではXは感謝している。
「第一、最初の頃の自覚症状なんて微々たるもんなんだから。私みたいなのがしつこく言わないと、絶対忘れちゃうわ」
 何の自覚症状かといえば、平たく言ってしまえば強化手術の拒否反応であった。人間の体内に、生来持っていない物をあれこれと積め込むのだ。人間の体は異物を拒むようにできている。事実、以前の強化人間はまれに全身を鋭い痛みを襲われる事もあった、と報告されている。
 とはいえナノマシンは体質によっては拒否反応を起こすが、昔の強化人間のそれは外科手術により埋め込まれた人工筋や骨格を補強する金属フレームに対する一種の拒否反応であった。Xの場合、そういった炎症をある程度抑えこむナノマシンも使っている。そのため痛みに鈍くなるのでは、とエリシャは心配しているのだろう。
 実のところ、Xはかつて存在した強化人間ほど体にメスは入れていない。その分ナノマシンが多くなっている。
「一応、各ナノマシンは安定してるようだけど……念の為に補充しておきましょうか。腕でも首でも太股でもいいから、どっか適当に出して」
 消毒用のアルコールを綿に染みこませながら、えらくアバウトな事を言う。要はある程度太い血管があればどこでもよいのだろう。
「吸収効率を二の次に考えるならカプセルで飲んでもいいんだけど。注射がダメってもんでもないし、別にいいわよね?どうせさっき血液採る時に一本刺したし、一本も二本も変わらないわよ」
「それが医者の台詞か……?」
 Xが二の腕を差し出すと、アルコールで拭かれ体温が逃げ、肌に寒気を感じた。そして次には針が刺さっている。注射の痛みなどとうに慣れたつもりでいたが、それでも少し腕が強張ったのは仕方のない事ではないだろうかと思えた。痛みに慣れるという事は、言葉ほど格好のいい事ではない。
 補充したナノマシンは、基本的に身体能力を高めるためのものだ。新陳代謝の活発化から脳内麻薬の調整、筋力増強、とそれぞれの役割を持つナノマシンを数種。自己増殖はするらしいので、補充はあくまで念の為である。
「はい、検診終わりー。次も遅刻しないで来るように」
「まあ――」
 そこでXは口篭もった。以前『次があればな』と何気なく言ったのだが、神妙な顔つきでこう言われたのだ。
『私はあなたが万全の体勢で死にに行けるように診てるんじゃないのよ』
 それからもっと自分の命を大切にしろだのあの子が浮かばれないだの、懇々と説教された。あれはもう御免だ。
「……?まあ、何?」
「いや、何でもない」
 適当に言葉を濁して、Xは診療室を後にした。



「私の裁量では正直、あなたに言っていいものかどうか分かりかねますが――」
 珍しくレインは歯切れの悪い言葉を前に置いた。
「そのペルソナに対処するために、『デウス・エクス・マキーナ』が動く事になりました」
 シズナは目線を皿の上のシフォンケーキからレインへと向け、口の中のケーキを飲みこむ。
「あのカブキ者集団が?騎士団……の方ではなくてですか」
「『ハーモナイズ』は団体で行動する事を前提としています。神出鬼没のあの機体を捉えるのは難しいでしょう……それにあちらはあちらで、これを機に闇アリーナを始めとした非公式でACを運用する団体の根絶に、本格的に乗り出すようです」
 近年創設されたというコーテックス直属部隊。まともなレイヴンならば一生関わる事はまず無いだろうという奴か。何にせよ穏やかではない。
「大きすぎますねえ……」
 その呟きは別にレインに向けたものではなかったのだが、それでも彼女は律儀に答えた。
「イヴァ・ラピスが取り逃し、次いでシズナ・シャインとは引き分けた。上層部は『ペルソナ』の危険度を最上ランクにセットしました。今後あの機体に関するあらゆる情報は規制が入るでしょうから、おいそれと見る事はできませんし――」
「そっちじゃありませんよ」
 レインは『たかが不明機一体に対する処置が』と解釈したらしいが、そうではない。違うのだ。
「たかだか私一人なんかにする話にしては大きすぎる、というんですよ……レインさん」
「あなたがそれを言いますか?コーテックスはまだあなたを――いえ、かつてのあなたが為した事を忘れてはいません」
「だから、もうヤなんです」
 半ばやけっぱちに、シズナは残り大半のシフォンケーキを口へと強引に押しこむ。入りきらない分が皿にボロボロと落ちた。
「ほほろへ、へいんはん――」
 噛みながら喋ったら人外の言語が出た。とりあえずコーヒーを飲み、無理矢理流しこみ一息ついてからシズナは改めて口を開く。
「レインさん、イヴァ・ラピスってレイヴンについて分かります?なんかよく名前聞くんですよねえ、最近」
「そういうあなたはどの程度ご存知ですか?」
「名前くらいしか」
 つまり誰でも簡単に分かる事程度の情報しか持っていない、という事だ。シズナは元々無頓着な女である。自分の事にすらまともに気を回さないのに、特に関係の無い他人にわざわざ気を回そうとは思わない。今回の事もたまたま気が向いただけの話だ。
(シェラさんにこの業界は不向きだって言いましたけど――情報に疎いようでは人の事は言えませんね)
 シズナは苦笑した。だからこそ、こんな性格のレインとウマが合ったのだろう。
「では、今話せるだけの情報を……イヴァ・ラピス、本名は不明。年齢は二十代半ばというのが有力です。レイヴンとしてはあなたよりも以前から活動をしていたようですが、アリーナに登録されたのは彼女の方が少し後です。順調にランクを伸ばしていましたが、Bランクニ位の時に一度、登録が抹消されています」
「それ、いつの事ですか?」
「……あなたがアヴァロンヒルで消息不明となってすぐの事です」
 アリーナに登録されている彼女の機体情報――朱塗りの軽量AC、それが唐突にある記憶と結びついた。
「ひょっとして、その頃って私の機体の色違いみたいなACに乗っていたりしてました?」
「よくご存知ですね?彼女の搭乗機が初めてアリーナに姿を見せた時、あなたの機体にそっくりでしたのでちょっとした話題になりました」
 シズナが三年、レイヴン業界から姿を消す直接の要因となった最後の大乱戦――シズナとしてもどんな連中がいたか、逐一覚えていられないほど多彩な連中がいたが一機だけ、ほとんど自分の機体と色違いの機体があった。あれのお陰で生命線の左腕もやられたので、よく覚えている。
「もしやと思っていましたが、戦場で会いましたか」
「お陰で死にかけましたよ」
 シズナは新しいコーヒーの注がれたカップを口にした。苦い。
「三年のブランクを経てこの業界に舞い戻った彼女は、瞬く間にAランクまで順位を上げました。最も、当時はまだAランクの増員がありませんでしたが……控え室のような場所にも積極的に顔を出すため、レイヴン内ではかなり顔が割れているようですね。一種のカリスマ的立場にあるようです」
「無用心ですねえ」
 レイヴンという職はとにかく恨みを買いやすい。伊達に不吉を運ぶカラスを名乗ってはいない。闇討ちにあったとか、ひどいものでは控え室で刺されたとか。そんなレイヴンもいる。
 とある有名なレイヴンの言葉らしいのだが、目立って得をする事もあれば損をする事もある。名声とそれに伴うリスクを取るも取らないも当人次第だ――と。ラピスは取った。シズナはかつて取って失敗し、今は取らぬよう努めている……つもりだ。
 何となく、彼女とは気が合わない予感がする。元々レイヴンは我が強い人間が多い(正確には結果的にその方が生き延びる率が高いらしい)ので不思議は無いが。
「失礼ですが、人の事は言えないのではないでしょうか」
「彼女は鋼鉄の扉を素手で叩き壊せるんですか?」
 レインはあえて口を閉ざした。この沈黙が意図するものは伝わるだろう――普通は想像もしないぞ、と。
「お望みでしたら、もう少し詳しく調べておきますが?」
「結構ですよ、お礼参りにでも行く訳じゃなし。仕事上の事――おまけに三年も前の事をひきずるなんてキャラじゃありませんし、彼氏が殺されたとかいう訳でもありません。そんな事で逐一恨んでいてはこの仕事は続けてられませんよ。考えようによっては彼女も被害者という解釈もできますし」
 少々いたずらめいた事を尋ねるレインに、シズナはこう続ける。
「それに直に会ったら撲殺したくなっちゃうじゃないですか。感情が納得してくれなかったりして」
 ここはひょっとして笑うべき所なのだろうか。涼しい顔でマロンケーキを口に運ぶシズナを前に、レインは途方に暮れた。



「うーん……弱ったなー……」
 頬杖をつきつつ、空いた左手で億劫にキーボードを叩く。グローバルコーテックス社の制服に身を包んだ小柄なこの女性こそが、今のところ音声しか出番の無いシズナ専属オペレーター、シェラ・オニキスその人であった。
 彼女は現在、ミッションのオペレートから諸々のマネージメントまで行う『仕事場』にいた。社の方から用意された小さな部屋。所狭しと――という程でもないが、様々な機材が詰め込まれている。ハイテク化と集約が進んだ結果、大抵の事はこの大型パソコン一つでこなせるからこの程度で収まっている。
 オペレーターには原則として個室が割り振られている。オペレーターと組むレイヴンの秘匿性を維持するためのせめてもの対応だ。ただ、四畳半ほども無い、狭くておまけに窓も無い部屋にずっと缶詰め状態であるこの職場環境がシェラは好きになれなかった。絶対健康に悪い。成る程、こういった意味でも体力が要求される職だといえる。
 ところでシェラが何をしていたのかというと、紺の機体――『ペルソナ』の事について自分なりに調べていたのだ。
 シズナは『レポートは書かなくていい。催促来ても突っぱねろ』と言っていた。レイヴンの意向には原則として従う必要があるためレポートはそうしたが、あんな厄介な相手の事を放置していられるほどシェラも能天気ではなかった。
 そこで自力で調べてみる事にした。ところが、社のデータベースには一切記述が無い。少なくともシェラが閲覧できる範囲には。他にもあちこち調べてみたが、コーテックス社絡みの情報は全て規制が入っているらしい。
 最も、シェラがそれらの情報を入手できたところで手持ちの情報を超えるほどのものは無いのだが彼女は知る由もない。
「手詰まり、かあ……」
 先日の戦闘画像をぼんやり眺めつつ、シェラの目線はペルソナからその相手をしているブリューナクへと向けられた。先ほど暇になったので、ペルソナではなくブリューナクの動きの方を解析させてみようと思ったらエラーを起こした。この中古品が。
 考えてみればシズナも謎だらけだ。元々レイヴンは謎が多くて当たり前だが、そういう問題ではない。
 今までの戦歴のようなものも手元にあるものの、そこには『レイヴン試験 良』とだけ、素っ気無く記されているだけである。資料を信じるのならば、レイヴンになってまだ一年も経っていないはずのようだ。
 シズナの履歴書も持ってはいる。レイヴンとなるには家柄も人種も関係無いが、万が一にも凶悪な犯罪者等がレイヴンを隠れ蓑にされては困るため、試験の前にコーテックスに提出するのである。
 とはいえ、その内容を念入りにチェックされる訳ではない。精々がACから降りている間に何か問題を起こした時、引っ張り出される程度だ。よって履歴書にはいい加減な事を書く者もいる。
 ……だからといって、名前(正確にはレイヴンネーム)欄以外は全て白紙などと大胆な真似をしたのは彼女くらいであろうとシェラは信じたい。
 実はシェラは、この職に就くまではACやレイヴンの事については疎かった。レイヴンと組んだのもシズナが初めてであったので、最初の頃は『レイヴンは誰でも彼女くらいの事ができる』などと怖い考えを持っていた時期もあったのだ。さすがに最近は、それが大いなる間違いである、と思い知らされてきているが。
『うまくやっていくコツは、知りたがらない事です』
 ペアを組んでから初めて仕事をする際、シズナはシェラにこう助言した。あれは思ったより深い言葉なのかもしれない。
「はぁ……あたしって孤独」
 肉の固くなった肩を回し無理にほぐすと、シェラは再びモニターとにらめっこを始めた。彼女の言葉通り、オペレーターは孤独な職なのだ。



 新しいポップコーンを買い直し、再びがっついていたキャロであったが、新しく映し出されたモニターの画像を見て渋い顔をした。
『B−5 フレイヤ ヴァルハラ vs C−3 ガンスレイヴ グラジオラス』
(つまりはあの軽男ね……メインモニター張るなんて大した身分じゃないの)
 未だアリーナに出入りするようになって日の浅いキャロにはよく分からないが、どうやら彼女曰く軽男――スレイは、中堅レイヴンの中では割と人気がある方らしい。周りから野次も飛んでいる――『よー、待ってたぜ大将ー!』『今日はどんだけ蜂の巣空けんだー?』……どんな手合いからどういう具合に支持されているか大体わかりそうなものだ。
(対戦相手は……うっわ、すごいガチタン)
 ガチタン、即ちガチガチタンクの略。キャロの抱いた感想は恐らく万人共通のものであろう。
 頭部、コア、腕部、脚部全てが最高の防御力を持つとされるパーツなのだ。さらにはエクステンションにも左手にも実シールドを装備している。これでもかとばかりに防御力に特化したACで、火力で常に相手を粉砕する戦法を取るスレイのグラジオラスとは正反対である。
 キャロは知らない事だがこの二人は反りが合わず、すでに何度も試合を行ってきたお馴染みの二人であった。
『だっしゃああああ!』
 試合が始まるとスレイは何やら雄叫びを挙げつつ、いきなりミサイルを七発放つと共にEOとグレネードも発射した。
 これをヴァルハラはOBを使い真横に飛ぶ。ミサイルが数発当たったが損傷は微々。
 しかしOBはそう長い時間は持たないし、連続して使用するのも無理がある。動きが止まったヴァルハラに、スレイはいきなり全弾発射を仕掛けた。
 矛盾という言葉があるが、ACの世界では現在、矛の方が優勢なのだ。各段の進歩を遂げている武装に対し、装甲の方はそれに釣り合うほど性能を上げていないためである。そのためか昨今では火力重視の機体が増え、防御に特化した機体は減りつつあった。
 とはいえ、グラジオラスの弾幕に真っ向から立ち会ってまだまだ余裕がある――最早その重装甲は脅威のレベルである。
 しかしヴァルハラが決め手を欠いているのも確かだ。肩にレーダーを積んでいるため(頭部も防御力を優先させレーダーの無い物を積んだ埋め合わせだ)、武装がチェインガンとプラズマキャノンのみ。プラズマキャノンは痛いが、スレイとて承知しているのか三秒もせずに全弾発射の姿勢を解き八の字に機体を動かし始めた。
 勝負は恐らくスレイが押しきるだろう。ヴァルハラとて止まってはおらず、遠距離からの射撃というのは標的が少し動くだけで大きく逸れる。それにミサイルは胸部機銃の迎撃もあってかかなり無効化できている。
 ところがグラジオラスの弾はヴァルハラによく当たるのだ。ヴァルハラは頻繁にブーストジャンプやOBを使っているが、それでもよく当たる。FCSに頼りきっていない証拠だ。
 スレイには悪癖がある。射撃の腕自体は確かで命中率が高いが、バカのように撃ちまくるのだ。つまり大半の場合には不必要なほどの弾を過度に叩きこむという不経済な行動をする。ところが最硬のACであるヴァルハラが相手ならば、火力はほとんど無駄にならない。
 場がアリーナである、というのも大きかった。障害物が皆無であるため、猛烈な弾幕を防ぐ術が無い。ACとして防御の極地であるヴァルハラですら、このザマだ。打たれ強さだけではグラジオラスを倒せない。
(……意外と強いのね、あの軽男。でも何で相手の人は、もっと武器積まないのかな……?)
 それは他の観客にとってはさらに強く抱いている疑念だった。いつも戦っているのだからそのままだと勝ち目が薄い事くらい分かっているはずなのだから。余談だが、勝率はスレイが七割でフレイヤが三割。
 当然、フレイヤも任務で出撃する際は頭部をレーダー搭載タイプに変えて空いた肩に武装を積んでいる。では何故そうしないのか?
 理由は極めて単純かつナンセンスだ。この勝負自体が意地の張り合いだからである。
 やはりアリーナという場は、戦場とは根本的に異なるのかもしれない……



「まだ気になるような事が何かありますか、レイヴン」
 返答に困ったレインは話題を変える事にした。またレイヴンと呼んでいる……
「そうですね、前々から聞こう聞こうと思ってたんですが……っていうか何度か聞いたんですけど」
 決めた。今日こそきちんと聞いてやる。シズナはそう誓ってみた。
「なんでいつもレイヴンって呼ぶんですか私だけ。他のレイヴンは普通に呼んでいるでしょう?」
 共同任務で他のレイヴンと組みレインが指示を出すような場合もあった。しかしレインは相手方のレイヴンはきちんとレイヴンネームで呼び、シズナは相変わらず『レイヴン』と呼ぶのだ。任務の際にいくら聞いても『任務中です』とか言って答えてくれないし、一度メールの隅に書いたら無視されたので、それ以来聞くのは止めた。
「まだ気にしていたのですか」
「気にはかけてましたよ、ずっと」
 珍しい事にレインは一つ溜め息をついた。二杯目のコーヒーをスプーンでかちゃかちゃとかき回し俯いている。
「私はあなたを担当する前に二人ほどレイヴンを受け持ちました」
 嫌な予感がする。シズナは失敗だったかとこめかみをぽりぽりと掻く。
「一人目は、私が始めて組んだレイヴンでした。まだ仕事に不慣れな私は任務の際もまごついていて、ある日情報の多さに混乱し誤った情報を出してしまいました。そのせいで退路を失い、彼は死亡しました」
 話の内容はこんなだが、レインの声音に変化は見られない。これが経験を積んだ結果なのだろうか?
「それから二人目のレイヴンと組み、私はあらかじめ大量の情報を整理してから様々な指示を飛ばしました。いつも高収入な任務ばかりを好んで引き受けるレイヴンでしたが、幸運な事に三度死にかけて三度生き延びました。ところがそれで自分の力を過信してしまい、任務先で会った上位ランカーにあっさりと倒されてしまいました」
 レインの瞳の奥がゆらゆらと揺れる。あれはコーヒーの水面が映っているのか?サングラス越しでは、生憎とよく分からない。
「仕事上の関係に一線を引いておくのは普通ですが、私は契約したレイヴンとはあらかじめさらに一歩下がった所に線を引こうと思いました。それから五人目に組んだレイヴンがあなたです。あなたは私があれこれと口を挟むのを嫌いました。危なっかしさは二人目のレイヴン以上だったかもしれませんが、それでもあなたは全ての障害を跳ね除けていきました。正直、あの頃は自分の仕事の意味を見失いかけましたが」
 ここでレインは苦笑してみせた。シズナとしても苦笑し返すしかない――あの頃は自分の事で手一杯で、まさかそんな悩み方をされていたとは思ってもみなかった。
「そして、そのあなたもいなくなりました。今組んでいるレイヴンは七人目です」
 シズナが眉をひそめると、レインはアリーナの事故でした、とだけ言った。
「苦労したんですね」
「苦労せずとも暮らしていけるのは家畜くらいです」
「……違いありませんね」
 シズナは四杯目のコーヒーを飲み干した。たまには砂糖を入れてみるのも悪くないかもしれない。
「それに、私に限った事ではありません。オペレーターを続けていけば誰であろうと経験する事です。『レイヴンは嫌な奴がいい。いつか死んでしまうから』――かつて、そんな事を言ったオペレーターもいます」
 直接命を危険に晒す事は無いが、常に死と向かい合う職。顔も知らぬ相手が通信機の向こうで死んでいくのはどのような気分だろう。
 それはそれで、嫌なものだ。きっとレインの給料は高額に違いない。
「私にも一つ聞き返させてもらえますか、レイヴン」
「どうぞ?」
「そういうあなたは何者なのですか」
 シズナは人差し指を立てると、大真面目な顔で答えた。
「実は、とある怪しい機関が開発した生体兵器なのです」
「……その冗談は笑えません」
「あ、そうですか。……ただの孤児ですよ、ただのね」
 何も無い孤児が、身売りと大差無いレベルでレイヴンを志望するというパターンは別に珍しくは無い。むしろ若い方が色々と成長が速い場合もある。
 結局出生の謎の方はほったらかしだが、レインはただそうですか、とだけ答えた。



 まだ日も明るい内から客引きをやっている風俗店を横目で見やりつつ、Xは街を歩いていた。
 AC以外は何でも揃うというのが謳い文句だったか。昔から馴染みの歓楽街だ。馴染みといっても、大した縁がある訳ではない。ここで拾われたというだけの縁だ。
 いつからか、暇な時にはこの通りをぶらぶらと歩く癖がついてしまった。別に酒も女も買いはしない。ただ歩くだけの不毛な時間。
(別に構わんか。俺には何も無い……無駄な時間を本来費やすべき事も無い)
 本来ならば鍛練でもするのが本道だろう。一応断わっておくが、そういった事はきちんとやっている。それにぶらぶら歩くといっても、それで足が痛くなっては話にならないのでその辺はわきまえている。
 それと、外を歩く時はいつものでかいバイザーでは目立って仕方が無いので、今は戦闘用の物とは異なるサングラス型の極薄センサーを装着している。オプション機能が備わっていない上にバッテリーが二時間しか持たない欠点があるので、常に三個は予備を服の裏に忍ばせているが。
 道を行き交う人々。性別も格好も様々だが、もう少しちゃんとしたなりの連中が来るのは照明が落ちた後だ。地上では『日が沈んでから』と言うらしいが、それに比べると実に浪漫が無い。
 この間は父娘くらい歳差の離れたスーツ姿の男と似合わぬ服を着た童女を見つけたが、別に気になるものでもない。よくある事だ。
 色々な奴等がいる。企業に勤めている者、職を求め彷徨う者、日雇いの帰りというのもいる。怪しげな路上販売、それに自分のような鴉も――
(いや、俺は鴉じゃないな。さしずめ……犬か)
 そう思い直した。確かに自分には、鎖を外されては噛みついてくるだけの存在だ。
 その喩えが我ながらうまくいったので乾いた笑みを浮かべつつ、Xは歩いていた。
「……おい、痛ぇな兄ちゃん!」
 言われてXは振り向いた。コロコロとした体型の男がこちらを見つめている。どうやら肩が当たったらしい。道は人が多いとはいえ混んでいるというほどではなく、前に気を配っていたら避けていたはずだった。
 しかしそれは向こう側にもいえる事だ。つまりこちらが勝手に避けるだろうと思い避けようとしなかったのか、わざとぶつかったのか。
「ああ……すまなかった」
 かなりボソボソとした声だが、聞こえたはずだ。しかし男は憤怒の情を浮かべたままである。
(確か、医者とグルになっている当たり屋がいるというのはこの通りだったか……?)
 わざとぶつかり相手に因縁をつけ痛めつけ、親切な野次馬が紹介した医者で莫大な治療費が要求される。そんな輩がいると前に聞いた事を思い出す。
「すまんで済んだらガードは要らねえだろ!?一発殴らせろや!」
 わざわざ握り拳に息を吹きかけてから、男が殴りかかってきた。Xは男の拳を腕で受け止める。余談だが、Xの体には耐G性を向上させる一環として、随所にチタンバーやセラミックフレームが埋め込まれている。
「おごおおっ!?」
 男は殴った方の手を抱えた。かなり本気で殴ったらしく、指の骨が折れたようだ。Xも殴られた腕を見てみる。痣くらいは残るかもしれない。
 この頃にはすでに、周りの通行人はXと男を避けて通っていた。我関せずというよりはむしろ興味津々、といった風体である。ここは素直な街だ。おまけに娯楽には飢えている。
「何しやがるテメェ!この俺が『ナイスピッチング』だと知っての事かコラ!?」
 そう言うとジャケットの片袖に刺繍されたミットとボールの絵柄を示す。どうやらこの男、レイヴンらしい。
 しかし聞かない名前だ。Xも仕事柄、有名なレイヴンならばあらかた名前は覚えているつもりであるのだが。まあその気になればいつでも改名できるので改名したばかり、という可能性もあるがそれを誇らしげに名乗っているのも馬鹿馬鹿しい。
「馬鹿か?」
 反射的にXは言ってしまっていた。迂闊さに我が身を呪いたくなる。
「んだと?」
「馬鹿かと言った。翼の無い鴉など姦しいだけだ」
 言ってしまっては引っ込みがつかず、Xは言葉を付け足した。ナイスピッチングとやらは怪訝そうに顔をしかめた。喩えが分からないらしい。
「ACを降りたお前など、ただのチンピラだと言っている」
「誰がチンピラだ!」
 もう片方の拳を振りかぶったので、Xはガラ空きの足元を払った。ナイスピッチングはかなり危ない角度で転倒し、妙な具合に手をつこうとしたがそれが負傷した手の方だったので思い止まり逆の手をつく。嫌な音がした。
(近頃の鴉はカルシウムが足りていないのか……?というか手先が命の職なのに両腕共負傷して明日からどうする。ペルソナのようにBCSでも積んでいるならば話は別だが、全て脳波で操るというのも大変だぞ)
 言葉にならぬ苦悶の声を挙げるナイスピッチング。喧嘩の趨勢は決したという事で人だかりも無くなる中、数名の男女がナイスピッチングへと歩み寄る。虚ろな目をした男や、うわ言のように誰かの名を呟く女。彼等はうまく立つ事すらできない男を見下ろすと、蹴り始めた。多分、レイヴンに何かしらの被害を受けた連中だろう。
 レイヴンは時として市街地だろうとどこであろうと平気で蹂躙する。勿論レイヴンだから必ずどうという考え方が正しいとは思わないが、恐れられ憎まれるだけの力をレイヴンが持っている事もまた事実である。しかしそれを操るのは所詮人間、ACを降りてはただの一個人でしかないのだ。
 だからして公衆の面前で自分はレイヴンだ、と告発する人間はほとんどいない。特に治安が悪く、誰かが発砲して死人でも出ない限りはガードも寄りつかないこの区画では。Xとの応酬で両腕を負傷した以上、報復を恐れる事も無いという事か。
 そう。ここは素直な街だ。
(……飛べぬ鴉ほど、惨めなものは無い……か)
 リンチを見物していても気分が良くなるものではない。人波に紛れて去ろうとしたら、その前を遮る者がいた。
「いよう兄ちゃん。大したもんだねえ」
 伸ばし放題の髪と髭は同化し、完全にくたびれたシャツを着た男。こう言っては何だが、いわゆる路上生活者といった類だろう。とりあえずXは無視し、男の脇を通りすぎた。
「それにしても、ぼけーっとしてどうしたい?神様にでも祈ってたかい」
 Xは足を止めた。シャツのボタンをいじる男の様子を横目で観察しつつ、うめく。
「……祈るべき神などいない」
「じゃあ紹介してあげようか?とっておきの女神を」
「女は気紛れだ。アテにならん」
 つれなく突っぱねた返事をするが、男はひつこく喋りかけてくる。
「そうかい?それはとにかく明日は娘の命日なんだけど、土産は何がいいかなあ」
「酒か花が無難だ」
 再度適当な事を言うと、これ見よがしに舌打ちをすると今度こそ足早に場を去る。
(ポイントデルタに二時間以内、か。ハートレスめ)
 というのも今のホームレス風の男は、ハートレスの部下なのだ。あの変わり者はこのご時世に、非効率な事に諜報員と直接接触させ指令を出す。先ほどの会話も簡単な隠語になっている。
 何よりもXが感心したのは、そのハートレスのナンセンスな命令にきっちり従う部下がいるという事であった。今の変装も完璧だ、『休暇中に悪いが緊急の任務』を意味する『神に祈る』の言葉が無ければ気付かぬまま去っていただろう。
 ちなみにいじるボタンの位置が時間を、誰の命日かが向かう場所を意味している。
(ペルソナは高いからなるたけ使わない、だと?あのペテン師は……)
 ボキャブラリーの少ない悪態を心中で吐きつつ、Xは移動を開始した。



  次回予告
「謎の機体は謎ほったらかしで、今度は選定試験とやらを受けに行け。
 なんだかまるで『今から大変ですよ』と言わんがばかりで腹が立ちますね。そうは思いません?
 結局、これが私の生きる道なんですかね。自由な鴉?ユカイなのは顔だけにしましょうね。
 ……へ?また謎の機体?いい加減にして下さいもう」
 NEXT MISSION:DRY RUN(前哨戦)



  あとがき
 えーと。ぶっちゃけ、あんま言う事無い……
 今回は幕間っていうか、そんな感じのパートを繋げただけなもんで。
 シズナはケーキ食ってばっかだし。前回出番が少なかったキャロは今回もお姉さまと絡めず不満げ。スレイは何故いい人になっているのだろう……
 あと、今回出てきたレイヴンってみんな極端だなあ。一応彼等の名誉の為に言っておくけど、任務出る時はちゃんとそれなりにアセン変えてますから。
 ……え?コーテックス直属部隊?それはまた今度にでも(逃げた)。



レイヴン名:李峰  年齢:不明。推定三十代前半 性別:男性
アリーナでのランクはCの中位。クレスト社を心底崇拝しているレイヴンで、そのため機体のパーツは全てクレスト社製だが、非難する点を見つけるべくミラージュ社製パーツの情報も精力的に集めている。同ランクにいるグルービーとは犬猿の仲で、よくアリーナにてけなし合いつつ決闘を行う。
ACname:露山  エンブレム:クレスト社の物の上に『峰』の文字。
頭:CHD-06-OVE
コア:CCH-OV-IKS
腕部:CAH-23-XB1
脚部:CLH-04-SOD
ブースター:CBT-FLEET
FCS:VREX-F/ND-8
ジェネレータ:CGP-ROZ
ラジエータ:RIX-CR14
インサイド:CWI-FM-30
エクステンション:CWEM-AM40
右肩武器:CWR-COTTOS
左肩武器:CWC-LIC/100
右手武器:CWG-XCMK/70
左手武器:CLB-LS-3771
オプション:E/SCR S/STAB E/CND SP/E++ E/RTE
ASMコード:CX8mL1YY6f5SCPm601
備考:李峰の機体。塗装は緑をベースに黄土の迷彩。
例によってパーツはクレスト社のみの構成。個人的にはカクカクでぶっといフォルムが結構気にいっている。実はレーダーが無い。
右手のレーザー銃はカラサワに対抗し開発されたらしいが、はっきり言って威力弱い。そんなものわざわざ選ぶあたりミラージュ社への敵意剥き出し。
ちゃんと無難な任務用の装備もございます。というかこれは使い辛すぎる。

レイヴン名:グルービー  年齢:二十代半ば 性別:男性
アリーナでのランクはCの中盤、大抵李峰の前後にいる。ミラージュ社の強烈なシンパで、当然機体の構成パーツは全てミラージュ社製。しかし李峰をバカにするために、クレスト社パーツの情報も細かくチェックしている。李峰とはよくアリーナで戦う姿が見られるが、一部では実はお前等仲良しだろ、とか言われている。
ACname:トレンドセッター  エンブレム:ミラージュ社の物を機体塗装と同じ五色で塗り分け。
頭:MHD-MX/RACHIS
コア:MCM-MX/002
腕部:MAM-SS/ALS
脚部:MLH-MX/VOLAR
ブースター:MBT-NI/MARE
FCS:AOX-F/ST-6
ジェネレータ:MGP-VE905
ラジエータ:RMR-ICICLE
インサイド:MWI-DD/20
エクステンション:MWEM-R/30
右肩武器:MWC-OC/15
左肩武器:MWM-MM16/1
右手武器:MWG-XCB/75
左手武器:MLB-MOONLIGHT
オプション:S-SCR E/CND L/BRK M/AW EO-LAP
ASMコード:M4GgOHJ73DnRyMH0Y2
備考:パーツは全てミラージュ社製。OPスロットが結構余っている。『ミラージュ社の傑作』とかの踊り文句が多い編成。EOに月光やオービットと、ミラージュを象徴する武装が多い。
塗装は頭が黄、胸が紫、右腕が橙、左腕が緑、足が青(しかも全部蛍光色)と派手かつ悪趣味だが、戦い方は意外と堅実的。右手は実はカラサワを持ちたかったが重量の問題で断念。

レイヴン名:フレイヤ  年齢:二十代後半 性別:女性
アリーナでのランクはBの中位、『ACは防御』がモットーのレイヴン。そのためガンスレイヴと反りが合わずよく勝負するのだが、勝率は彼女が三割。
余談だがレイヤード側所属のレイヴン、ワルキューレとの因果関係は別に無い。
ACname:ヴァルハラ  エンブレム:槍を振りかざした天女(サンプル参照)
頭:MHD-SS/CRUST
コア:CCH-OV-IKS
腕部:MAH-SS/CASK
脚部:CLC-D3TA
ブースター:None
FCS:PLS-SRA02
ジェネレータ:CGP-ROZ
ラジエータ:RGI-KD99
インサイド:MWI-EM/15
エクステンション:CSS-IA-64S
右肩武器:MRL-SS/SPHERE
左肩武器:CWC-CNG-500
右手武器:MWGG-XCG/20
左手武器:KSS-SS/707A
オプション:S-SCR E/SCR S/STAB L/TRN CLPU
ASMコード:KXDS1XZeAm4qQdWW40
備考:多分、沢山の人が考えたであろう防御力最硬アセン。
EX、左はいずれも実弾盾をチョイス。色は一応古城とかそっち系のイメージ。
攻撃力に難が残るため、任務では頭部をRACHISに替えて空いた肩にミサイルとか積む。
なお、実はフレイヤ自身は北欧神話に明るくないんでヴァルハラの事をよく知らない。参考までに北欧神話によると、フレイヤはヴァルハラとは別にフェンサリスという館を持っている。ヴァルハラはオーディンの館なので間違い。
作者:ラッドさん