サイドストーリー

プロローグ〜男の子〜
--  「え・・・?」 そこは大惨事と形容しても良い有り様だった。

ビルが壊れ、崩れ、倒れ。窓と言う窓が全て割れ、道路は見渡す限りが何らかの損傷を得ている。
所々に車が横転、もしくは潰され、敷かれたカエルの様に地面へと平伏している。
水道管が破裂したようで、道路の切れ目からは水が止めどなく溢れ、噴水を作り出していた。

 「そんな・・・」

 まだ9歳ほどにしか見えない男の子が目撃したもの、それはコンクリートのの残骸と化した我が家、その下から突き出た真っ赤な手。  

 男の子はへたり込む様に既に冷たく、真っ赤になった手を触り、すぐに離した。手はゴムの様にだらんと落ちた。
おそらくもう間に合わないと悟ったのだろう。
そして自分一人では瓦礫を退かせず、助けを求めても誰も助けてくれはしない事も。
また、その男の子も母親に初めてのおつかいを頼まれていなければ、家族と同じ目に合っていたのだ。

 絶望した男の子の目の前に一機のAC (アーマードコア)と三機のMT(有人マッスルトレーサー)が降り立ち再び戦闘が開始される。
男の子の目は紅い色のACに釘頭けになった。

真紅のACは、肩にある大型リニアキ?ノンを発射し、目の前MTを三機まとめて消滅させた。

 「あれが・・・あの赤いロボットが・・・ぼくの家族を・・・?」 

また三機のMTがビルの裏から現れた。紅いACが右手に持っていたマシンガンで一機のMTを打ち砕く、
それと同時に横にあったビルが「がらがら」と、音を立てて崩壊した。
破片が男の子の体、顔に容赦なくぶつかる。しかし男の子は、そんな事が無かったかの様に立ち尽くしている。

 「アイツがぼくの家族を・・・父さんを、母さんを、妹を・・・」

 紅いACは、五機目のMTを左手のENブレードで薙ぎ払い、六機目のMTをグレネードで吹っ飛ばした。
弾はMTを貫通し、後ろに建っていたビルの中心に風穴を空けた。

 「あのロボットが・・・あの機械が・・・」男の子はその肩にある数字の0を模したエンブレムを見つめていた。

 ACは目的を達した様で、迅速にその場を離れていった。

 後に残った男の子はその場に座り込み、ロボットの消えていった方向をずっと見つめていた。
作者:エクボンさん