EPISODE 21 心なき戦士
第三層・産業区のグラン採掘場。
ここに、キサラギの残党が、集結しつつある。
幾度かの戦いでクレストやミラージュに、何度か破れ去ったキサラギだが、今ここで体勢を立て直すつもりだ。
ところが、これに気づいたクレストは、半分の勢力の矛先をキサラギに向け、キサラギ撲滅を図っている。
しかし、昨年の管理者部隊襲撃により、多くの戦力を失ったので、今キサラギに向ける戦力はあまり残ってはいない。
そこでクレストは、一計を案じた。それは、複数のレイヴンとの共同作戦を出すようだ。
また、これにたいしてキサラギは、各地に残っていた戦力をこちらに廻し、クレストとの全面戦争を覚悟しているようだ。
こうして、クレストとキサラギの、全面戦争が始まろうとしていた。
ついにグラン採掘場にクレストの雇った複数のレイヴンが攻め込んだ。開始時に、クレストの通信士が全員に連絡を送る。
「敵は、セクション連絡路から増援を送っているようだ。気をつけろ」
「了解」
複数のレイヴンは警告を飲み込むと、各々の場所で戦闘を始めた。
ボーキュバイン「A04ポイントクリア。この辺りに敵の司令部は見当たらない。前進する」
通信士「了解。バーブドワイヤー、前進しろ」
トラファルガー「B43クリア。ここには敵の拠点が設けられているようだ」
通信士「了解。ダブルトリガー、兵員宿舎や弾薬庫等は全て破壊するように」
プラス「N41ポイントクリア」
ビルバオ「S07ポイントクリア。撃破した後にEN切れを起こしてしまった」
ローテーション「N13ポイント・・・敵を殲滅中、きりが無い!」
フラジャイル「S04ポイントクリア。ここには何も見当たらない。通信士、どうなってる?」
ブレーメン「C13ポイントクリア。通信士、情報を頼む」
カラミティメイカー「ダイナミックトラップ、S27ポイントクリア」
通信士「了解、ダイナミックトラップ、前進だ」
複数のレイヴンは各拠点を押さえ込み、キサラギ部隊を倒してゆく。
一方、採掘場の最奥部にあるキサラギ中央司令部では、キサラギ部隊員が援軍要請を司令官に申し込んでいた。
でも、司令官は耳を貸そうとしない。
「各方面の敵強く、押され気味です! 援軍を、お願いします!」
「それでも我がキサラギの精鋭か!! 持ちこたえろ!!」
「俺はここで敵を押さえる。お前は中を頼んだぞ」
「了解した」
一方、ある一角で、2機のACが二手に別れた。1機は第一資源採掘場内で、もう1
機は資材置き場で敵を排除する事にした。
ヴゥン・・・プシューッ・・・
第一資源採掘場のゲートが全てロックされた。進入した1機のACが振り返って驚く。
「ゲートがロックされている・・・閉じ込められたか!」
焦りを見せるAC。このACは「クローバーナイト」で、パイロットは「ゴールドブリット」。
地方を守る団体の1人で、オーソドックスな戦いを見せるレイヴン。
ゴールドブリットが前を向いた途端、前方に12機の特殊分離型MT「エクスファー」が群がっていた。
「こちら第一ブロック守備隊、ACを確認。これより排除する」
「了解」
エクスファーに乗り込んだキサラギ部隊員たちが通信を送り返しをしている。その途端に、一斉に攻撃をしてきた。
一斉攻撃をかけられてもクローバーナイトも応戦する。
ドドドドドドドドドドドドドド!!
バシュ、バシュ、バシュ!!
カシッ・・・シュゴォォォォーーーードボボォォム!!
シュゴォォーーードボォォム!!
ミサイルとバルカン砲の撃ち合いが続く。だがその内にエクスファーの大軍が徐々に押されはじめた。
そして何分もしない内に、エクスファーは全滅した。
「フッ・・・MTごときが・・・」
ゴールドブリットは銃を降ろそうとした。その途端、
「クレストの連中・・・やはり来たか!」
と、後ろのゲートが開いてACが1機現れた。振り返ると、
「こちらムーンサルト! 敵ACを確認。これより排除する!!」
そのACはキサラギの司令部に連絡を送る。そこにいるAC「ムーンサルト」パイロットは「オーリー」だ。
目立ちたがり屋のレイヴンである。通信インカムを降ろしたオーリーは、
「行くぞ!!」
と、言いながら襲い掛かってきた。クローバーナイトはシールドを構えレーザーライフルをムーンサルトに向ける。
バシュゥゥン!! バシュゥゥン!!
ビバシュゥゥン!! ビバシュゥゥン!!
シュゴォォォー・・・ドゥゥボォォム!!
シュッ・・・グォォォォー・・・ドボォォム!!
空中戦が得意なオーリーには、この狭いような広いような部屋で戦うのは、少し不馴れである。そのせいか、徐々に押されはじめた。
「口ほどにも無い。そろそろ終わらせるぞ」
ゴールドブリットはEOのトリガーを引いた。
すると、2つのEOのマシンガンが火を吹き、それと同時にレーザーライフルの一斉射撃の形となった。
三つ巴の攻撃を受けたムーンサルトの体に火が纏い、やがて爆発を起こした。
「うわああぁぁぁっ!!」
ドバォォォォン!! ガシャン・・・ドカァァァン!!
爆発した後のムーンサルト、いやムーンサルトらしきものの残骸は、黒くなって拉げたコアと右脚の切れた脚部だけになっていた。
もうもうと煙が上がっている。
そして敵が全滅したと同時に全ゲートのロックが開いた。
ゴールドブリットはインカムをとり、資材置き場側のレイヴンに通信を送る。
「おい、そっちは済んだか? 俺は今から地下に向うが」
「すまない、未だ敵の掃討に手子摺っている。先に行ってくれ」
「わかった」
ゴールドブリットは隣の部屋に通じるゲートを開き、中の方へ入っていった。地下のエレベーターは隣の部屋の奥にあるのだ。
ドウッ!! ドウッ!! ドウッ!!
ババババババババババババババババ!!!
ガッ、ゴッ、ブゥゥゥーーーンドバゥッ!!
ドウッ!! ドウッ!! ドウッ!!
ドシュ、ドシュ、ドシュ!!
一方、資源置き場では、片っ端から攻撃してくるギボンをブレードやライフルで叩っ斬り、撃ち抜いて撃破しているACがいた。
ACの名は「スタティック・マン」。パイロットは「ストリートエネミー」だ。
「くそッ! きりが無い!」
ストリートエネミーはライフルやブレードで何回か斬って撃って撃破しても、だんだん数を増すギボンに疲れを見せている。
だが5、6体倒した時、ギボンは増援を出さなくなってきた。そして、10体倒した時、ギボンの増援はぴたりと止まった。
その時、ゴールドブリットの通信が入った。
「そっちは済んだようだな。俺は今地下へ向っている途中だ。
ゲートのロックは解除・・・・・ガー・・ガガガー・・・した・・・・ザザザー・・援護を・・・ブッ」
途中でノイズ音が入り、ゴールドブリットの通信は切れた。
「おい、どうした?」
ストリートエネミーが通信インカムを手に叫んでみたが、インカムからかえって来た音は、
「ツーーーー・・・ツーーーー・・・」という音だけだった。その時、クレスト通信士の通信に切り替わった。
「通信障害が起こっているようだ。援護に向ってくれ」
クレスト通信士の指示で、ストリートエネミーは資源採掘場のエレベーターにのって地下へ向った。
パパパパパパパパパパ!!
ガッ、ガッ、ガッ、ガガガガガガガ!!
ドシュウウ、ドシュウウ、ドシュウウ!!
シュッ・・グォォォォォーーーー!! シュッ・・グォォォォォーーーー!!
地下へ辿り着くと、そこではゴールドブリットが謎の1機のACと戦っていた。ストリートエネミーにはあのACが何者なのかが分かった。
「・・・クライゼンか!」
ストリートエネミーは謎のACのパイロットの名を叫んで、ゴールドブリットの加勢に入る。
謎のACの正体は、「インソムニア」。パイロットは「クライゼン」。オーリーと同じくキサラギ側のレイヴンだ。
それと、ストリートエネミーとは何かの関係がありそうなレイヴンでもある。
「上の奴等は全滅か・・・まあ良い!」
クライゼンは今度はストリートエネミーに標的を変えて攻撃してきた。
インソムニアの右腕のマシンガンから放たれる銃弾がスタティック・マンに向って、矢のごとく飛んで行く。
ストリートエネミーはブーストのトリガーを右に倒し、右のブースト移動で間一髪で避ける。そして、ゴールドブリットに向って叫ぶ。
「気をつけろ、こいつは手強いぞ!」
「わかっている! このACはトップランカー級のようだ!」
ゴールドブリットは返事を返しながら、EOのトリガーを引いた。
クローバーナイトのコアから射出されたEOがインソムニアめがけてバルカンを放つが、クライゼンは
ブーストのトリガーを弾の飛んできた反対の方向に倒すだけで、軽々と躱してしまう。
「どうやら、腕は落ちていないようだ!」
クライゼンはにやりと笑った。
一方、キサラギの中央司令部では・・・
未だ泣きつく部隊員と司令官との口論が続いていた。
「もう半数の部隊が持ち堪えられません! 援軍を!!」
「勢いを盛り返せ!! 命がけで奮戦するのだ!!」
「敵AC1機、最終防衛ライン突破してきます!!」
部隊員と司令官の口論は、突然クレスト側のACが接近してきていると、通信士の言葉でぴたりと収まった。
だがその時にはもう遅かった。1機のフロート型ACがハンドガンを司令部に突き付けていた。
「!! うわああああああああああああああ!!!!!」
司令部にいたキサラギの部隊員たちと司令官が一斉に悲鳴をあげた。
「悪く思うな、キサラギの残党ども。これも、『管理者』の決定だ!」
ハンドガンを突き付けたAC――サイプレスの駆るテン・コマンドメンツはそう言いながらトリガーを引いた。
「うおおおおおあああああああ!!!!」
iストリートエネミーとゴールドブリットは、クライゼンと激闘を続けていた。
重量逆脚ながら、インソムニアはブースト移動でこちらの動きを翻弄しながら、
マシンガンとロケット、ブレードのEN波を正確にあててくる。
それで逆にクライゼンから、ストリートエネミーとゴールドブリットは何発か喰らった。喰らった時は、息が止まりそうだった。
「くそーーーーっ、当たれーーーーーッッ!!」
2人はOB、EOを的確に使いつつ、クライゼンめがけて何発か撃ちまくった。
だが、それは全て躱されてしまう。だが途中で、インソムニアのブースト移動が途中で止まった。
「!? しまった!! エネルギー切れか!?」
クライゼンが焦りを見せた。よくみると、ブーストゲージの右側に、CHAGING(エネルギーチャージ中)と、表示されていた。
ブーストゲージのボルテージが、赤くなっていて、チッ、チッ、チッ、チッ、と音を立ててチャージしている。
「今だ!! 撃て!!」
「えッ!? ああ!!」
ストリートエネミーがゴールドブリットに向って叫んだ。
途端に弾かれたようにゴールドブリットがEOとエネルギーライフルのトリガーを同時に引いた。
すると、クロバーナイトのコアのEOが再び射出され、エネルギーライフルとEOの同時射撃が始まった。
パパパパパパパパパパパパパパ!!!!
ガシュッ・・・ガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!
ガン!! ドォゥ!! ボバァォォン!! ドウォォォォォォッ・・・!!
「がぁああぁぁ・・・・・!!」
同時射撃を体中に受けたインソムニアは、頭部と両腕を吹き飛ばされ、さらにコアまでもを吹き飛ばされ、大爆発を起こした。
そして、クライゼンの断末魔の声が響いた。
「敵勢力の全滅、司令部の破壊を確認。皆、よくやってくれた」
全レイヴンにクレスト通信士の通信が入る。
その通信を聞きながら、ストリートエネミーは、眼前に立つ脚部のみになったインソムニアを見て、呟いた。
「クライゼン・・・」
どうも、武田です。
キサラギ掃討はこれにて書き終わる事が出来ました。
いよいよ終盤に入ってきていますね。
次回はいよいよ「侵入路探索」をもとに話を作ります。
〈新しく登場したレイヴン〉
名称:ゴールドブリット(29)
秩序を守る団体に属しているレイヴン。そのオーソドックスな戦闘スタイルは、
教科書を読んでその教科書通りに戦ってきて身につけたものである。
今や最近負け続けてきた事を、正しいように戦ってきているのになぜ負け続けているのか疑問に思ってきている。
AC「クローバーナイト」を駆る。
名称:オーリー(25)
生まれてから目立ちたがり屋のレイヴンで、派手なカラーリングと戦闘スタイルを好んでいるのは、目立とうとしているらしい。
そのカラーリングを嫌悪している者が多いが、本人にとってはそれは最高の出来らしい。
今回の章で、キサラギ側のレイヴンとして戦うが、クローバーナイトに殺された。AC「ムーンサルト」を駆る。
名称:サイプレス(28・強化人間)
管理者を最も厚く信奉しており、戦う時に管理者に祈りを捧げると言う、管理者を崇拝するレイヴン。
構成パーツは全てクレスト社の製品であり、管理者に一番信奉されている企業のパーツを選んだと言う理由がある。
フロートの機動力を活かし、敵を撹乱しつつ確実にしとめる。フロートAC「テン・コマンドメンツ」を駆る。
作者:武田 慎さん
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