サイドストーリー

EPISODE 22 イレギュラーは抹消する
ある日、ストラングとロイヤルミストのもとに、ミラージュからの1つの依頼メールが来た。
その題名には、「侵入路探索」という5文字しか書かれていなかった。開いてみると、こう書かれていた。
「Re:侵入路探索
 依頼主:ミラージュ
 成功報酬 0c(前払報酬 55000c)
 地下世界最下層にある遺跡の奥に、管理者の下へ続く通路があるらしい。
 そこで我々は偵察部隊を派遣したが、今の所特に警戒すべき点は無い。
 引き続き調査を依頼する」

「どうしたのですか、先生?」
ロイヤルミストが声をかける。このメールを見た途端にストラングは、何か考え込んでしまったのである。
「・・・何か怪しいな。ミラージュはこんな依頼を出すつもりは無いのだが・・・」
「・・・そうですかね?」
2人の間に怪しい空気が漂っていた。
「ミラージュが何を企んでいるかは知らないが・・・。とにかく、ここは引き受けて様子を見る事にしよう」
「そうですね」
2人はとにかく、引き受ける事にした。だがこの後、予想外の結末が、2人をまっていた・・・・・。


依頼を受けた2人は、グローバルコーテックスのガレージ内のACに乗り込んだ。そして、問題のマグナ遺跡へと向っていった。
その途中の通路で、1体のACと2体の黒のカラーリングのMTと出会す。1体のACは
ピンクとオレンジのカラーリングを交ぜた色だ。ACはこういう。
「同作戦に、依頼主の呼び出しで共に参加する事になりました。「リップハンター」と言います。
あと、こちらは同行部隊のMT「デュミナス」「アジャンテ」です」
リップハンターが紹介する。黒いカラーリングの迷彩MT「カルバリー」に乗った女性のMT乗りが言う。
「初めまして。ミラージュ配属の同行部隊隊員「デュミナス」と言います。
今回は「アリーナの師弟」のストラングさん、ロイヤルミストさんと共に仕事できるなんて光栄です。宜しくお願いします」
デュミナスは半分ドキドキしていたらしく、堅苦しい言葉で挨拶する。
すると今度は同じく黒のカラーリングの近距離格闘型MT「ギボン」に乗った男性MT乗りが挨拶をする。
「同じくミラージュ配属同行部隊隊員「アジャンテ」です。宜しくお願いします」
青年の声が聞こえた。アジャンテは若くしてからMT乗りになったようだ。
「では、3人とも、宜しく頼むぞ」
ストラングが3人の同行部隊に言う。同行部隊は「はい」と、声をそろえて返事をする。


「ここか・・・。「管理者」の下へ続く「通路」のある遺跡とは」
ストラングが最初に遺跡内に入って、辺りを見回した。だが、何やら怪しい気配がする。
ロイヤルミストは専属オペレータのレインに通信を送る。
「何か感じるか、レイン?」
「おかしいですね・・・遺跡内に微弱な熱源反応が・・・」
レインはコンピュータの熱源の数値を見て言う。表示された数値には、微弱な反応と数少ない数字がある。
「敵の伏兵がいるに違い無い。デュミナス、アジャンテ、注意しろ」
「了解しました」
ロイヤルミストがデュミナスとアジャンテに警告を送る。その途端――――。
レーダーに何個かの赤い反応が見えた。敵!? と、ロイヤルミストは驚いた。
その途端、遺跡内にゆらりと何体かのMTが姿を現わし、そしてゆらりと消えた。
「敵!? 囲まれてる!!」
レインがレーダーに写った幾つかの赤い反応を見て驚く。
「これは・・・」
「ステルス型MT『フリューク』だ! 気をつけろ!!」
ゆらりと現れては、ゆらりと消える、亡霊のようなステルス型MT「フリューク」の姿に冷や汗を流すリップハンターに、ストラングが叫ぶ。
フリュークは15、20体はこの遺跡内にいる。でも、クレストやキサラギやユニオンも、こんな戦力は持って無い筈だ。
「こいつらは雑魚だ! 吹っ飛ばせ!!」
ストラングはフリュークの大軍に突っ込み、チェインガンのトリガーを引く。
ガガガガガガガガガ、と、チェインガンは火を吹く。途端にそれを待っていたのか、四方八方からフリュークは攻撃を仕掛けてきた。
「ストラング、1人じゃ無理です!」
リップハンターはそう叫んで加勢した。その後にロイヤルミスト、デュミナスとアジャンテの3人も戦線に突入する。
幾ら倒してもフリュークはどこからでも湯水のように湧き出てきては姿を消し、四方八方の方向から攻撃を仕掛けてくる。
「くっそーーー、きりがねぇーーーーッ!!」
「AP4000を切った! これ以上喰らうとヤバいです!!」
アジャンテとリップハンターの2人が悲鳴をあげる。ストラングはどうすれば良いものかと、戦いながら辺りを見回していた。
その時、左右の壁に開いた扉みたいなものがあった。あそこからフリュークが湧き出てきていると見たストラングは、
「ドアだ!」
と、叫んで右の壁の扉をバズーカで攻撃した。すると、扉が壊れ、岩と瓦礫が崩れてそこは通行止め状態になり、
そこから出ようとするフリュークが出ようしても出られなく、詰まってしまったようだ。
ストラングの今の行動を見た4人は、左の壁の開いた扉からフリュークが湯水のごとく湧き出ていると見た。
ロイヤルミストは左の壁の扉めがけて拡散投擲銃のトリガーを引いた。その途端に―――――。
ドオン!! ゴオオッ!! ゴガシャァァァン、バキベキドゴン!!
拡散投擲銃の弾があたって壁と扉が崩れ落ちて、そこも通行止めとなった。
「これで敵の拠点は絶つ事が出来た。後は雑魚だ。吹き飛ばせ!!」
ストラングが叫ぶ。勢いを盛りかえした全員は一気にフリュークを殲滅した。
「敵部隊の全滅を確認。引き続き、調査を行って下さい。しかし、それにしても変ですね。
クレストもキサラギもユニオンも、こんな余戦力は持っていないはず・・・」
レインの通信が入った。その途端に、
「・・・やはり、この程度では不利か・・・」
と、男の声がどこからともなく響いた。
ストラングたちが声に気づいて辺りを見回していると、向側のゲートが開いて、1機の紺色のACが姿を現わした。
「・・・ファンファーレか!」
ストラングは、そのACが一体何者なのかが分かった。
Bー2の「青き鎮魂歌」ファンファーレ。
全身ロケット尽くめの重量2脚のAC「インターピッド」を駆るその姿には、ストラングやロイヤルミストにも見覚えがある。
ストラングはファンファーレに向ってこう言った。
「ファンファーレさん!? 何故、あなたが・・・」
ストラングの告げられたあのACのレイヴンの名前に、デュミナスとアジャンテはパニックに陥る。
ファンファーレはそれを無視して、驚くべき一言を告げる。
「『イレギュラー要素は抹消する』。ミラージュはそう判断した」
ファンファーレの言葉に、ストラングは返事を返す。
「なるほど・・・つまり貴様は私とロイヤルミストを殺す為に、こんなちんけな誘導計画を立てて、その首謀者となったわけか」
「ええっ!?」
ストラングの言葉にますます驚くデュミナスとアジャンテ。するとファンファーレは動じたかのようにブースト移動でこっちに迫ってきた。
「・・・管理者を破壊する? 馬鹿げた事を・・・」
ファンファーレは口元を歪ませて言う。どうやら戦いを挑むという意志があるようだ。
途端に、リップハンターが、
「この世界に・・・貴方たちは不要なのよ・・・・・消えなさい、イレギュラー!!」
突然、そう叫んだ途端にストラングに襲い掛かった。レインが慌てて叫ぶ。
「ストラングさん、逃げて下さい!! 1人で2人を相手にするのは無理です!!」
だがストラングは動じる事なく、こう言った。
「リップハンター、貴様もグルだったか・・・だが!!」
ストラングは目の色を変えた。その途端にOBのトリガーを引いて、リップハンターの方に突進した。
「なっ!?」
リップハンターは驚く。
その途端に、バキッ!! と、音が響き、コクピットのモニターに浮かんだのは、宙を舞う自分の愛機の左腕だった。
「その程度の人間では、私を倒す事はできない!」
ストラングは振り返って言う。ガシャッ、と、音が響き、ルージュの左腕が地面に落ちた。
これを見たファンファーレは、面白がって言葉を投げた。
「フ・・・フフフ・・・2人でも一筋縄で行く相手じゃ無かったな・・・だが!
この私は貴様が倒して来た屑共とは違う!! 死ね、ストラング!!」
ファンファーレは口元をきゅっとあげて笑い、もう一度ストラングに襲い掛かった。
それに応じてストラングは正面からファンファーレと勝負に挑む。
「やめろ!!」
ロイヤルミストも加勢する。だが途端にリップハンターが、
「無駄な抵抗は止めなさい!!」
と、ロイヤルミストの背中に体当たりを喰らわせた。
ドンッ!!
「うおっ!!」
地面に倒れ込むカイザーとルージュ。その形はルージュがカイザーの背中の上に乗り込むような形となった。それを見たアジャンテが、
「やめろゥ・・・リップハンタァーーー!!」
と、叫んで右腕のENショットガンをルージュに向けて連射した。
ガン、ガン、ガン、ガン!! パシュ・・・パチパチッ・・・ドガァム!!
「う・・・!」
ブースターパックを今の攻撃で破壊され、背中に痛みが走ったリップハンターは、ルージュごとドカッ、と、横倒しになった。
その隙にロイヤルミストは、今がチャンスだ
と判断し、ブーストジャンプでカイザーを起こし、ストラングの加勢に入ろうとした。
だが後ろでルージュが起き上がり、もう一度押さえ込もうとしているのを気づかない。
その途端に、ファンファーレと戦っていたはずのストラングがOBでロイヤルミストの横を通り過ぎた。
「先生・・・!?」
ロイヤルミストが振り返る。OBを発動したツェーンゲボーテASの向かった先は、
左腕を失い、ブースターパックを破壊されたルージュの所だった。
「!!!」
リップハンターの視界に飛び込んできたものとは、ツェーンゲボーテASの左腕だった。
その左腕のブレードが緑色の光を発している。その途端―――――。
ガギッ・・・ビュ!! バシュゥゥゥ・・・・ッ!
緑色の閃光が発せられる。そしてツェーンゲボーテASが通り過ぎる。ルージュのコアに、一筋の亀裂が入っていた。
「な・・・・あッ!」
ルージュの中のコックピットが、突然スパークを起こしはじめた。すると―――。
バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!
突然、ルージュのコアの亀裂から、噴水のごとくスパークが飛び出した。
「ああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ!!!!
」
リップハンターの肉体を強烈なスパークが襲う。その途端にルージュが爆発を起こした。
ドバァァァァァァァァム!!
ルージュは大爆発を起こし、リップハンターごと跡形も無く消え去った。リップハンターが一瞬にして撃破された。
それを見たファンファーレは半分驚きながらも、
「このっ・・・イレギュラーがッッ!!!」
と、三たびストラングに襲い掛かった。
「貴様もイレギュラーのくせに・・・知った口を聞くな!!」
ストラングとロイヤルミストは声を揃えて叫ぶ。
2人で左右に別れてブーストのトリガーを左右に引いて、ファンファーレをサイドアタックする形となった。
「動きを封じ込めろ、デュミナス、アジャンテ!」
ストラングが叫ぶ。その途端にファンファーレの前と後ろに周りこんだデュミナスとアジャンテ。「何ッ!?」と、ファンファーレは驚いた。
「先生!」
「行くぞ、ロイヤルミスト、デュミナス、アジャンテ!」
ファンファーレの4方向を囲んだストラングたち。
「ま・・・まさか・・・!?」
ファンファーレは驚く。
「フォース・アタック!!」
ストラングとロイヤルミストが叫ぶ。すると全員がファンファーレに向かって一斉射撃を始めた。
ファンファーレは四方八方から集中砲火を受ける羽目となった。
「ぐああああああっッッ!!」
これが、ストラングとロイヤルミストの連携攻撃「フォース・アタック」。
普段は2人で敵を囲んで集中砲火を浴びせる「サイドアタック・リベンジ」が多用されるが、
ストラングとロイヤルミストの他に、僚機が2人いると、4人で敵を囲んで集中砲火を浴びせる「フォース・アタック」を使う。
この連携技で数々の敵が沈んでいったので、レイヤードの住人たちの誰もが知っている。
やがて弾幕が濃くなって視界が見えなくなった頃、ストラングたちは連射を止めた。
薄くなった頃に、両腕と武器を全部破壊され、反撃不能となったインターピッドの姿が見えた。
それでも、関節の部分だけで、ガクッ、ガクッ、と、動いている。
「ハァ、ハァ・・・ゴハァッ・・・ガ・・・餓鬼・・がぁぁぁ・・・・」
中からファンファーレのうめき声が響く。そして、デュミナスとアジャンテの方を向いて、こう言った。
「同行部隊・・・のくせに・・・この・・私に・・・こんな事を・・・して・・・・・・グハッ・・・
どういう・・・事になるか・・・わかっている・・・だろう・・・・・・・な・・・・」
ファンファーレの咽の中では、途切れ途切れの言葉の合間を縫い付けるように、呻き声ともうすぐ死ぬ音が響く。
「それ以上喋るな」
ストラングがバズーカを構えた。その途端にファンファーレは、痛みに吠えながらストラングに機体を突進させる。
「それ以上喋るな!!」
ストラングはトリガーを引いた。バシュッ・・・と、1つの炎の弾が、インターピッドを貫通した。
その途端にファンファーレの断末魔が聞こえる。
「こ・・・こんなはずは・・・ぐあああああああああああああああああ」
バグォォォォン!!!
そして、「インターピッド」は爆発した。
跡形も無く消え去った2体のAC。この後を見回す4人。この後でストラングが口を開く。
「これでよかったのだ」
と。
その後にレインから通信が入る。
「敵勢力の全滅を確認。帰還しましょう」
作者:武田 慎さん